「サポート時間を40%削減し、顧客満足度も向上させる」
これは、AIとCRMを正しく組み合わせることで、多くの企業がすでに実現し始めている現実です。
本記事では、『次世代カスタマーサポート』を実現するための具体的なステップを、HubSpotの最新AI機能を交えながら解説します。後半では視点を広げ、企業全体でAI導入を成功に導くための戦略的ロードマップを、HubSpot自身のAIファースト戦略から紐解きます。現場担当者から経営層まで——AI時代を乗りこなし、ビジネスを加速させるためのヒントをお届けします。
HubSpot Japanが主催したオンラインイベント『Learn With HubSpot』(2025年7月11日開催)に、「AI時代のカスタマーサポート戦略」というテーマで登壇しました。ここでは、その内容をさらに深掘りし、AIとCRMの活用がいかにしてカスタマーサポートを革新するのか、その本質と具体的な戦略について解説します。
あなたの会社では、次のような悩みはありませんか。
「顧客からの問い合わせにはすぐに対応したい。しかし、24時間365日のサポート体制を維持するのはコスト面で難しい。」
多くの企業が直面するジレンマです。調査結果では、現代の顧客の90%が問い合わせ時の「即時対応」を重要視しており、その「即時」とは10分以内を意味します。
一方で、サポート現場では、同じ質問への繰り返し対応やチケットの初期分類、ナレッジ共有不足など、非効率な業務が時間を圧迫しています。この「理想と現実のギャップ」を埋める鍵が、戦略的なAI活用です。
カスタマーサポートにおけるAI活用が注目される背景には、3つの大きな転換点が存在します。
AIツールを導入するだけでは、課題は解決しません。効果を出すには、戦略的な進め方が必要です。
サポート業務を「AIに任せる業務」と「人間が対応すべき業務」に分類します。
AIの回答精度は、学習させるナレッジ(知識)の質と量に直結します。
AI導入は、いきなり全社展開せず、小さく始めて成功体験を積み重ね、効果を可視化しながら進めることが成功の鍵です。
AIでは対応しきれない状況を想定し、適切なタイミングでスムーズに人間に引き継ぐ(エスカレーションする)仕組みを整えることが重要です。
ここまで紹介した戦略を実行するための具体的なツールとして、HubSpotのAI機能群「Breeze」があります。
Webチャット、メール、WhatsApp、Facebook Messengerなど、複数チャネルで24時間365日の即時対応を実現。CRMデータと連携したパーソナライズ対応が可能です。
例えば「注文の配送状況を教えて」という問い合わせに対し、その顧客の実際の注文データを参照し、「〇月〇日に発送済みで、現在△△にあります」といった個別の回答を返せます。
導入効果の例: サポートチケットの50%以上をAIで自動解決し、対応時間を約40%短縮。
もう一つの革新的な機能が、ナレッジの自動拡充です。
この設計で「問い合わせ対応 → ナレッジ蓄積 → AI学習 → 解決率向上」という成長サイクルが回ります。
AI活用というと大げさに聞こえるかもしれませんが、まずは以下の小さな一歩から始めてみてください。
この簡易分析だけでも、AI導入の具体的なメリットや投資対効果が明確に見えてくるはずです。
カスタマーサポートにおけるAIの活用は、単なる「コスト削減」や「効率化」に留まりません。「顧客満足度」と「従業員満足度」の両方を向上させるための戦略です。
自社の現状を正しく把握し、小さく始めて、成果を積み重ねていく。これが、AI時代のカスタマーサポート変革を成功に導く、確実な近道です。
ここまで具体的な戦術を見てきましたが、最後に、企業全体としてAI導入をどう進めていくべきか、その全体戦略とロードマップを描いていきましょう。
ここまで、顧客接点、AIとの協働思想、そして具体的な業務活用術と、AIがもたらす変化を多角的に見てきました。
最後に、企業としてAI導入をどう進めていくべきか、HubSpotのAI戦略を紐解きながら、企業がAI×CRMで成功するための具体的な道筋を解説します。
2022年11月のChatGPT公開時、HubSpotは既存のプロダクト計画を一時停止し、AIファーストへ全面転換。4ヶ月後の2023年3月には「ChatSpot」「Content Assistant」をリリース。変化に即応する経営判断が、スピードと成果を生みました。
なぜこれほど迅速な対応が可能だったのか。それは、HubSpotが「変化を恐れずに顧客価値を追求する」という明確な経営方針を持っていたからです。多くの企業が「慎重に検討」を重ねている間に、先進的な企業はすでに実装フェーズに入っている。この現実を、私たちは直視する必要があります。
HubSpotのCEO、ヤミニ・ランガン氏が提唱する「AI進化の三段階モデル」は、自社のAI活用レベルを客観的に把握する上で役立ちます。
国内企業の多くは、まだ第1段階の入口にいます。しかし、グローバルの先進企業はすでに第2段階、さらに第3段階を見据えて動いています。
特に重要なのが第2段階の「差別化」です。AIの性能を左右するのは、AIモデルの「知能」そのものよりも、AIに与える「文脈」、つまり良質なデータです。HubSpotは、長年蓄積してきた膨大な顧客データをAIに活用させることで、他社にはない独自の価値を生み出しています。
長年の取引で得た顧客情報、現場に眠る業界特有の知見、築き上げてきた信頼関係。これらはすべて、AIと組み合わせることで他社が模倣できない競争力に変わりうる、貴重なデータ資産です。
「AIによって、営業やマーケティングの仕事はなくなるのでは?」
このような不安の声を耳にすることもあります。しかし、HubSpotの事例は、AIが人間の仕事を「代替」するのではなく、むしろ「拡張」する存在であることを示しています。
AIが単純作業を担うほど、人はより高付加価値な仕事に集中できます。
最後に、AI導入に向けて今すぐ始められる3つのアクションをご紹介します。
変化のスピードは想像以上に速く、1年後には競争環境が全く違うものになっているかもしれません。しかし、過度に恐れる必要はありません。HubSpotのような先進事例から学び、自社に合った形でAIを活用していけば、必ず新しいビジネス価値を生み出せます。
カスタマーサポートの現場改革から、企業全体のAI戦略まで、AI×CRMがもたらす変革の可能性を解説しました。重要なのは、AIを「人間の仕事を奪う代替ツール」ではなく、「人間ならではの価値を最大化する拡張ツール」と捉えることです。定型業務をAIに任せるほど、人間は顧客との関係構築や複雑な問題解決といった、より創造的な仕事に集中できます。
HubSpotが既存の計画を一時停止してまでAIファーストへ舵を切ったように、変化のスピードは私たちの想像を上回ります。まずは、不安がらずに小さな一歩を踏み出すことで、より良い環境作りができます。
まずは、「直近1ヶ月の問い合わせ内容を分類し、頻出質問TOP10を特定すること」ここから始めてください。見えてくる課題と効率化の可能性が、AI戦略の出発点になります。小さな成功の積み重ねが、AI時代の勝者への道筋を形づくります。