検索エンジンとユーザーの要望に適したコンテンツを生み出す手法として注目を集めているのが、「トピッククラスター」モデルです。
昨今のGoogleのアルゴリズムの変更により、有益な情報を提供するサイトを選定する基準として、サイトの「専門性・権威性・信頼性(E-A-T)」が重要視されるようになりました。ユーザー側の検索エンジンの利用方法も大きく変化しており、ナイルのマーケティング相談室の調査によると、検索する際にキーワードを複数入力する人は、全体の約7割にのぼることが分かっています。
このような変化に伴い、ブログ作成やSEO対策の際も、ユーザーが入力する「検索クエリ」と実際に提供される情報のギャップを考慮し、ユーザーが本当に必要としている情報に焦点を当てたコンテンツの作成と管理を行う必要があります。
そのためには、ブログ記事を主要なトピックごとに整理し、クラスター化することが不可欠であり、HubSpotが提供する「SEO戦略ツール」を活用することでトピッククラスターの管理に役立つはずです。
本記事では、HubSpotを活用したトピッククラスター作成・管理方法、作成するメリットについて解説します。HubSpotのSEO戦略ツールのサービス内容や料金プランもご紹介します。
まずは、トピッククラスターの基礎を理解するために、トピッククラスターの概要と構成、トピッククラスターが注目される背景を確認していきましょう。
トピッククラスターとは、関連したコンテンツを組み合わせ、特定の大きなテーマを戦略的に網羅することで、記事全体のSEO評価を向上させる手法です。
適切にトピッククラスターを構築することで、ユーザーと検索エンジンにとって理解しやすく、高い評価を得られるサイト構造が実現できます。
単なるキーワードではなくトピックに焦点を当て、サイトの構造を見直して関連性を高めることが、検索エンジン上でのランキング向上につながります。
トピッククラスターは、主要なトピックをまとめた「ピラーページ(ピラーコンテンツ)」と、その中身を詳細に掘り下げた「クラスターコンテンツ(クラスターページ)」で構成され、これらを「内部リンク」で結ぶことで完成します。
トピッククラスターの3つの構成要素の詳細は、それぞれ以下の通りです。
ピラーページは、主要なキーワードやテーマについて幅広い内容を簡潔に説明し、クラスターコンテンツの各サブトピックを紹介するまとめページです。トピッククラスターの中核を担う、重要な要素といえます。
ピラーページが持つ役割は、そのトピックに関する基本的な疑問を解消することであり、通常の記事よりも長い形式が一般的です。ただし、ピラーページで深い説明まで行う必要はなく、詳細な情報はクラスターコンテンツで紹介します。
クラスターコンテンツは、ピラーページで扱われたトピックを詳細に掘り下げ、関連性や補足情報を提供する個別記事です。
例として、「コンテンツマーケティング」がピラーページのトピックである場合、クラスターコンテンツには「方法」「成功事例」「コンテンツの種類」など、より具体的なサブトピックに焦点を当てた記事を追加します。
内部リンクはトピッククラスターを機能させるために不可欠な要素です。ピラーページからクラスターコンテンツへ遷移させるために、内部リンクを設置します。
一般的には、テキストや画像にハイパーリンクを埋め込む形式で対応します。これにより、読者がクラスターコンテンツを閲覧した後に、自然な流れでピラーページに移動できる動線が確立されます。
トピッククラスターが注目されるようになった背景として、検索エンジンのアルゴリズムの変更や、ユーザーの検索方法の変化があります。
Googleなどの主要検索エンジンは、ユーザーの意図を理解し、求められる情報を表示するために進化しており、トピックベースのコンテンツを優先するようアルゴリズムの変更を行っています。
また、ユーザーは有益な情報をピンポイントで見つけるために、長めの会話型検索クエリを使用するようになってきました。実際に、検索方法として「キーワードを複数入力する人」は約7割にのぼるという調査結果もあります。
そのため、ブログ作成やSEO対策の際には、ユーザーの検索クエリと知りたい情報のギャップを考慮することが求められます。
トピッククラスターを活用し、サイト内の記事を主要トピック別に整理することで、検索エンジンとユーザーの両者の要望に対応できるようになることから、注目されています。
コンテンツマーケティングの領域で注目度が高まっているトピッククラスターですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、トピッククラスターを作成するメリットを3つご紹介します。
トピッククラスターを導入するメリットとして、サイト構造が整理されることがあげられます。
サイト構造が明確になると、検索エンジンに記事同士の関連性が伝わり、サイト構造を理解しやすくなります。これにより、SEO(検索エンジン最適化)の評価向上が期待できます。
検索エンジンが信頼性や権威性を強調している現在のSEOにおいては、記事単体の質だけでなく、サイト全体の評価が重要な要素です。
さらに、サイト構造を整理し、トピックごとに内部リンクで記事を結びつけることで、ユーザーも目的のページに迅速にアクセスできるようになります。ユーザーにとっても使いやすいサイトであることも、SEOの評価向上に良い影響を与えると考えられています。
一方で、トピッククラスターを導入していないコンテンツはサイト構造が複雑化しやすく、複数のページで内容が重複するなど、ユーザーにとって情報を見つけにくく、利便性の低いサイトになる恐れがあります。
トピッククラスターを導入することで、関連性のあるコンテンツが整理されるため、ユーザーがより深く知りたい情報にアクセスしやすくなります。
トピッククラスターを導入したサイトでは、ピラーページが評価され閲覧数が増えると、それに連動し、内部リンクで結ばれたクラスターコンテンツへの流入も増える可能性が高まります。
これにより、サイトの総合的な評価向上にも寄与し、時間が経過するにつれて、ピラーページがカバーするサブトピックでも上位ランクになる可能性があります。
対して、トピッククラスターを採用していないサイトでは、コンテンツ同士の関連性が希薄になりやすく、一つのコンテンツの評価が他のコンテンツに影響しにくいといわれています。
また、トピックごとにコンテンツをグループ化することで、カニバリゼーションの発生を抑制することも期待できます。カニバリゼーション(カニバリ)とは、同じサイト内で似たようなキーワードや内容でページを複数作成した際に、各ページの順位が不安定になり、上位のポジションで競合してしまうことです。
サイトのコンテンツ全体を整理し、管理することで、同サイト内での競合を防ぎ、各関連ページの検索順位向上が期待できます。
トピッククラスターのメリットとして、サイト内でのユーザーのページ遷移率が向上し、サイト滞在時間やページビューが増加することもあげられます。
トピッククラスターは、一つのトピックに関する網羅的な情報をまとめたページであるため、一つのサイト内でユーザーのニーズに沿った総合的な情報提供が可能になります。
これにより、ユーザーの関心が引き続き保たれた状態でサイト内周遊を促せるため、ページビューも増加しやすくなるでしょう。
検索エンジンにとっても、整理されたサイトの構造は理解しやすく、関連性が高いと評価されるため、トピック全体での検索順位向上に寄与する可能性があります。
HubSpotでは、トピッククラスターの構築に役立つ「SEO戦略ツール」を提供しています。
ここでは、同ツールの概要やできること、利用条件などについて解説します。
HubSpotの「SEO戦略ツール(SEO&コンテンツ戦略ツール)」とは、SEO(検索エンジン最適化)戦略の構築やコンテンツの最適化、投資収益率(ROI)の計測ができるツールです。
具体的には、以下のような機能が含まれています。
SEO戦略ツールでは、ウェブサイトの最適化に関する推奨事項を確認できます。優先度が付けられて提示されるため、検索結果への影響が大きい対策から取り組むことが可能です。
たとえば、更新が必要なページや具体的な対策、検索順位の改善状況などが一目でわかります。
コンテンツ戦略の見直しでは、ユーザーにとって重要なトピックを特定し、関連性や競合状況、人気度を考慮したおすすめのトピックが提示されます。自社の主要なトピックに基づいたコンテンツを効果的に作成しやすくなるため、その分野での検索順位向上が期待できます。
標準搭載のアナリティクスツールやカスタムレポートを利用することで、検索順位や掲載結果も容易に確認することが可能です。
HubSpotのSEO戦略ツールは、CMSツールとも連携できます。HubSpotのマーケティングソフトウェア「Marketing Hub」やCMSソフトウェア「CMS Hub」と組み合わせることで、企業のインバウンドマーケティングを強化できます。
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・HubSpot Marketing Hubとは?インバウンドマーケティングを実現するMarketing Hubの機能や価格、事例について解説!
HubSpotのSEO戦略ツールは、「Marketing Hub」と「Content Hub」の、ProfessionalプランまたはEnterpriseプランで利用できます。
Marketing HubとContent Hubの料金プランは、2024年6月時点ではそれぞれ以下の通りです。
【Marketing Hub】
【CMS Hub】
このうち、SEO戦略ツールはStarterプランでは利用できず、Professional以上のプランで利用可能です。
なお、HubSpotの料金プランは変更される場合もあるため、最新情報については公式サイトにてご確認ください。
HubSpotのSEOツールを利用することで、企業の専門領域に基づくトピックやサブトピックのキーワードを調査し、整理することが可能になります。
ここでは、HubSpotを用いたトピッククラスターの管理手順を、4つのステップで詳しく解説します。
はじめに、トピッククラスターで取り扱うメイントピックを決定しておく必要があります。おすすめは、十分な検索ボリュームがあり、サブトピックを探索するのに広範囲な幅を持つメイントピックを選択することです。
トピックの選定する際には、ターゲットユーザーのペルソナ像を設定すると良いでしょう。自社のコンテンツをどのようなユーザーに提供するかを明確にするために、企業独自のペルソナを作成することが重要です。ペルソナを作成することで、ユーザーが求める情報や顧客の視点に基づいたコンテンツを提供しやすくなります。
次に、作成したペルソナをもとに、1〜2単語の広範なトピックを選択します。この時、トピックが広範すぎるとユーザーの検索範囲が広がりすぎ、コンバージョンにつながりにくくなる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
トピックを決定したら、HubSpotのSEO戦略ツールを使用して作業を進めていきましょう。
HubSpotアカウントで、[マーケティング]>[ウェブサイト]>[SEO(検索エンジン最適化)]の順に進みます。
最初のトピックの後に新しく作成するトピックに関しては、トピックの作成を終える前に、そのトピックフレーズの人気度や、Google検索結果でのランクインの難易度を確認することができます。
トピックを作成すると、対応するピラーページを添付できます。ピラーページは、特定のトピッククラスターにおける中核となるコンテンツであり、広範で基本的な情報を網羅的に提供するためのページとして機能します。
ピラーページから各記事へのリンクを組み込み、各記事ではそのトピックを多角的な視点から深堀りしていきます。
ピラーページの作成・添付手順は、以下の通りです。
ピラーページにトピックを添付した後は、サブトピックキーワードに基づいてサポートコンテンツを追加しましょう。これにより、トピックやサブトピックキーワードのオーソリティ(評価)が確立され、検索エンジン結果での評価向上につながりやすくなります。
なお、サブトピックとページを追加する際には、以下の点に注意する必要があります。
検索結果には平均月間検索数が表示され、関連するサブトピックキーワードの一覧が表示されるため、サブトピックキーワードを選択し、[保存]をクリックします。
右側のパネルから、サポートコンテンツを添付できます。
なお、サポートコンテンツを添付する際の注意点として、以下に留意してください。
最後に、クラスターコンテンツからピラーページへ内部リンクを組み込みましょう。
クラスターコンテンツは、下記の原則に基づき設定する必要があります。
クラスターコンテンツ同士をリンクさせることは避け、トピッククラスター内でのリンクを最大限に活用しましょう。
HubSpotが提供するSEO戦略ツールは、トピッククラスターの構築に役立ちます。トピッククラスターを導入することでサイト構造が整理され、関連ページの検索順位向上や、サイト滞在時間・ページビューの増加が期待できます。
検索エンジンにおけるSEOの評価が高まるだけでなく、ユーザーにとっても利便性の高いコンテンツを提供しやすくなります。
HubSpotでのトピッククラスター管理方法を参考に、トピッククラスターモデルを取り入れたコンテンツ作成を検討してみましょう。