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汎用AIか業界特化か。選ぶ前に自社の強みを言語化する

作成者: 田村 慶|2026/08/27

営業やマーケティングの会議で、「うちもAIをちゃんと使おう」という話になったときのことを思い出してみてください。最初に盛り上がるのは、たいてい「まずは全部門にChatGPTやGeminiを配ろう」という話です。誰でも使えて、導入も早い。反対する理由が見当たりません。

ところが半年ほど経つと、少し違う声が聞こえてきます。「営業は営業で、マーケはマーケで、それぞれ好きなように使っているだけで、業務そのものは何も変わっていない」という声です。私自身、いくつかの会社でこの声を聞いてきました。

「導入した」と「業務に組み込んだ」の間にある溝

この感覚を裏づける数字があります。IPA「DX動向2025」を引用した記事によれば、日本企業のうち生成AIを導入済みまたは導入予定の企業は5割強にのぼる一方、部署の業務プロセスへ組み込んでいる割合は1割程度にとどまるそうです。

試しに使ってみる段階の会社は、もうかなり増えました。でも、実務そのものを任せる段階まで進んでいる会社は、まだ少数派だということです。この溝の正体を考えていくと、「汎用型か、業界特化型か」という問いに行き当たります。

汎用AIと業界特化AI、選ぶ順番を考える

町医者と専門医、AIにも同じ順番がある

先ほどの記事は、業務効率化AIを大きく3つのタイプに分けて説明しています。幅広い業務に使える汎用型、Microsoftやセールスフォースなど既に使っている製品の中で動く既存製品連携型、そして専門用語や独自帳票、取引先ごとのルールを前提に設計される業界特化型・オーダーメイド型です。

これは、町医者と専門医の関係に近いと思っています。体調が悪ければ、まず町医者にかかる。汎用AIも同じで、最初はとりあえず何でも相談できる窓口として使われます。ところが症状がはっきりしてくると、今度は専門医を頼るようになる。AI選びも、どうやら同じ順番をたどっているのではないでしょうか。

広く浅く汎用AIを入れた組織ほど、次の一手で「どこを狭く深く掘るか」という判断を迫られる。これが、今まさに起きている絞り込みの局面だと感じています。

「AGIが来れば全部解決する」という期待には注意が必要

絞り込みを先送りにする理由として、「もっと賢い汎用AIが出れば、いずれ何でもできるようになる」という期待も根強くあります。ここで一つ、冷静になっておきたい記事があります。

AGI(汎用人工知能)の実現時期について、2027年という強気の予測から10年以上先という慎重な見立てまで、識者の間で大きなばらつきがあります。

「そのうち何でもできるAIが来る」という前提で判断を先送りにするのは、実はいちばんリスクの高い選択かもしれません。今すぐ使える範囲を見極めることの方が、よほど現実的だと思うのです。

業界特化を検討すること自体が、棚卸しになる

興味深いのは、業界特化型AIの前提そのものです。先ほどの記事は、業界特化型・オーダーメイド型を「専門用語、独自帳票、取引先ごとのルールなどを前提に、特定業務へ合わせて設計するもの」と説明していました。

裏返せば、業界特化型を検討するプロセスそのものが、自社の仕事の癖やデータ資産を言葉にする機会になります。「うちの商談って、実はどんな型に分かれているんだっけ」「うちの顧客データ、どこにどう散らばっているんだっけ」。こういう棚卸しは地味ですが、AIに何かを任せる前段階として、ずっと効くと思っています。

様々な場所で、汎用AIと業界特化AIをどう使い分けるかというテーマが、ちょうど今、あちこちで取り上げられ始めています。一つのベンダーや一つの国の話ではなく、業界を問わず起きている問いなのだと思います。

CRM・マーケティングでは、どこを絞るべきか

質問に答えてもらう使い方では、汎用AIで十分です。要約や下書きなら、業界を知らないAIでも困りません。

でも、実際に業務を動かしてもらう、さらには安心して任せるところまで進もうとすると、話は変わってきます。自社の商談の型、失注理由の傾向、更新が近い顧客の兆候。こうした文脈をどれだけ厚く持たせられるかが、そのまま任せられる範囲の広さになります。

だからこそ、CRMやマーケティングの領域で最初に絞るべきは、派手な新機能ではなく、「自社にしかないデータやルールが、いちばん濃く溜まっている場所はどこか」という問いだと思っています。リード獲得の初期対応か、商談化した後の提案づくりか、それとも既存顧客の更新提案か。全部を同時に広げようとせず、まず一箇所だけ深く掘ってみる方が、結局は早いはずです。

来週、使える3つの問い

  1. 自社で今使っているAIは、汎用型・既存製品連携型・業界特化型のどれに当たるだろうか。まず現在地を言葉にしてみる。
  2. 「これはうちにしかない」と言えるデータやノウハウは何だろうか。CRMや商談履歴の中を、一度棚卸ししてみる。
  3. CRM・マーケティング業務のどこを狭く深く絞れば、安心して任せられる範囲が広がるだろうか。

全部を汎用的に広げようとするより、どこか一箇所を狭く深く掘る。その選択の差が、来年のこの時期には、思ったより大きな差になっている気がしています。