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建設業のHubSpot活用とは?竣工後の改修需要を取りに行く顧客データ設計と事例

作成者: 田村 慶|2026/10/30

国土交通省の調査によれば、令和7年度末時点の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度からの増加は123業者、率にして0.03%でした。3年連続の増加ですが、実質的には横ばいです。一方で令和7年版 国土交通白書は、建設業の29歳以下の就業者割合が11.7%(全産業16.9%)、55歳以上が36.7%(全産業32.4%)であることを示しています。

48万社が市場に残ったまま、担い手だけが減っていきます。そこへ2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情があって労使が合意した場合でも年720時間以内という上限が課されました(厚生労働省・時間外労働の上限規制)。人を増やして受注量を伸ばすという方法が、制度の側から閉じられたことになります。

この状況で受注を確保する方法は多くありません。私たちが建設業の企業を支援する中で繰り返し確認しているのは、新しい顧客を探す前に、すでに関係のある相手との接点が社内で管理されていないという事実です。竣工した瞬間に顧客情報が担当者の手元に残り、会社としては誰ともつながっていない。この記事では、ゼネコン・サブコン・工事会社・住宅事業者それぞれの顧客管理をHubSpotでどう設計するかを、清水建設とクラッソーネの事例を交えて整理します。

この記事のポイント

  • 建設業のCRMが効くのは受注前ではなく竣工後。改修・増築・設備更新という次の需要が、担当者の記憶にしか残っていない状態を仕組みに置き換える
  • 施主・設計事務所・協力会社・管理会社が入り混じる関係者は、関連付けラベルで役割を明示しない限り、誰に提案すべきかがレコードから読めない
  • 時間外労働の上限規制により、営業活動の総量を増やす選択肢が閉じた。残るのは受注確度の高い案件に時間を寄せる判断材料を持つこと

目次

  1. なぜ建設業の顧客情報は、竣工した瞬間に途切れるのか?
  2. 2024年の上限規制は、営業と顧客管理に何を求めたのか?
  3. 施主・設計事務所・協力会社が入り混じる関係者は、どう持つべきか?
  4. 指名・紹介が中心の受注活動は、パイプラインで管理できるのか?
  5. 竣工後のOB顧客と改修需要は、どう仕組みにするのか?
  6. 技術情報の発信は、どうやって受注につながるのか?
  7. 建設業のHubSpot活用事例——清水建設とクラッソーネ
  8. 施工管理システムとCRMは、どう棲み分けるのか?
  9. 最初の90日は、どこから着手すべきか?
  10. よくある質問

なぜ建設業の顧客情報は、竣工した瞬間に途切れるのか?

建設業の仕事は、着工から竣工までの期間が区切られています。この区切りが、顧客との関係にもそのまま適用されてしまうことが問題の出発点です。引き渡しが終わると、現場は解散し、担当者は次の現場へ移ります。顧客情報は工事台帳と担当者の名刺入れに残り、会社としては誰ともつながっていない状態になります。

ところが建物は竣工後に使われ始めます。10年後に設備が更新時期を迎え、15年後に外装の改修が必要になり、20年後に用途変更や増築の検討が始まります。この需要は確実に発生するにもかかわらず、発生したときに声がかかるかどうかは、当時の担当者がまだ在籍しているかという偶然に左右されます。

工事台帳は顧客管理の代わりにならない

多くの企業が「工事台帳があるから顧客情報は管理されている」と考えています。しかし工事台帳が記録しているのは工事であって、顧客ではありません。同じ発注者から3件の工事を受注していても、台帳では3行の別々の記録として並び、「この発注者とは何年にわたり何件の取引があり、現在誰が窓口か」を問われても答えられません。

私たちが建設業のCRMを設計する際は、工事を取引(案件)として、発注者を会社として、担当者をコンタクトとして分けて持つことから始めます。分けたうえで関連付けるから、発注者単位の取引履歴が見えるようになります。この構造はHubSpotの標準オブジェクトで素直に表現でき、工事種別や発注区分といった自社固有の項目はプロパティとして足していきます。

担当者の異動が、顧客との関係を切ってしまう

建設業は異動と転籍が多い産業です。国土交通白書が示す年齢構成を見ると、55歳以上が36.7%を占めており、今後10年で相当数の担当者が退職します。担当者が持っている「あの会社の設備担当は誰で、どういう経緯で前回の案件を受注したか」という情報が、引き継ぎ資料に書かれないまま失われていきます。部門をまたいで情報が分断される構造は組織のサイロ化を解消するデータ設計で扱っています。

この損失は、CRMに入力する習慣があるかどうかで決まります。入力させるには、入力した人に見返りが必要です。私たちは、営業担当が自分の案件を進めるために必要な情報(過去の見積・前回の担当者・競合の有無)がCRM上で見られる状態を先に作ってから、入力のルールを決めています。順序が逆になると、入力は義務になり、形だけの記録が残ります。

2024年の上限規制は、営業と顧客管理に何を求めたのか?

2024年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されました。原則は月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情があり労使で合意した場合でも年720時間以内が上限です。原則である月45時間を超えられるのは年間6か月までと定められています。この規制は現場の施工管理だけでなく、営業部門の働き方にも及びます。

国土交通白書によれば、建設業の年間平均労働時間は2,018時間(2023年度)で、他産業より62時間長い水準にあります。4週8休以上の確保は公共工事で約3〜4割まで進んだ一方、民間工事では約1割強にとどまっています。労働時間を削りながら受注量を維持するには、1件あたりにかける時間を減らすか、受注確度の低い案件に時間を使わないかのどちらかしかありません。

見積作成の前に、受注可能性を判断できるか

建設業の営業で最も時間を消費するのが見積の作成です。積算に数日かかる案件を、受注可能性の判断なしに引き受けていると、労働時間の上限が先に来ます。判断の材料になるのは、過去の類似案件で実際にどれだけ受注できたかという実績です。

HubSpotでこれを実装する場合、取引に「発注形態(指名・公募・紹介・飛び込み)」「競合社数」「既存取引の有無」といったプロパティを持たせ、カスタムレポートビルダーで発注形態別の受注率を集計します。指名案件の受注率が70%、公募案件が12%という数字が出れば、どちらに積算工数を割くべきかの議論は数字の上で行えます。

労働時間の制約下では、記録を残す行為そのものが削られる

皮肉なことに、時間が足りない状況で最初に削られるのはCRMへの入力です。この問題に対して「入力を徹底する」という精神論で対応しても結果は出ません。入力の手数を物理的に減らす設計が必要です。

具体的には、メールの履歴を自動で記録する受信トレイ連携を使い、営業担当が手で入力する項目を5つ以内に絞ります。入力項目が20個あるCRMは使われません。私たちが初期設計で必須にするのは、案件名・発注者・金額・次回アクション日・段階の5つだけです。残りは任意項目として用意し、必要になった時点で埋める運用にしています。次回アクションはタスクとして持たせると、担当者の予定表と連動させられます。

施主・設計事務所・協力会社が入り混じる関係者は、どう持つべきか?

建設の案件には、発注者だけでなく設計事務所、監理者、元請、協力会社、ビル管理会社、テナントといった複数の組織が関わります。しかも案件ごとに立場が入れ替わります。ある案件で元請だった会社が、別の案件では協力会社として参加することもあります。

この関係を会社レコードの「取引先区分」というひとつの項目で持とうとすると破綻します。区分は案件ごとに変わるものであり、会社に固定で貼れる属性ではないためです。関係は会社ではなく案件との間に持たせるのが正しい構造です。

関係者 案件での役割 CRM上の持ち方
発注者・施主 予算と最終決定を持つ 会社+コンタクト。関連付けラベル「発注者」
設計事務所・監理者 仕様を決め、施工者の候補を左右する 会社+コンタクト。ラベル「設計」「監理」。次案件の情報源にもなる
協力会社・専門工事業者 施工を分担する 会社。ラベル「協力会社」。稼働可能時期を属性に持たせる
管理会社・テナント 竣工後の改修要望を最初に受け取る 会社+コンタクト。ラベル「管理」。OB営業の起点になる

この表の4行目を軽視しないでください。竣工後に不具合や改修要望を最初に聞くのは、発注者本人ではなく建物を管理している会社です。管理会社の担当者がCRMに登録されていれば、改修需要の発生を最も早い段階で捉えられます。登録されていなければ、情報は他社経由で入札情報として表に出てから届きます。

関連付けラベルは、何種類まで作るべきか

HubSpotの関連付けラベルは自由に定義できますが、増やしすぎると入力されなくなります。私たちは最初に5つ程度で始め、運用の中で実際に使われたものだけ残す方法を取っています。定義の段階で網羅性を追うと、使われないラベルが並び、どれを選ぶべきか現場が迷います。

同じ案件に複数の会社を関連付ける際、レコードの関連付けは標準で複数件に対応しています。発注者1社・設計1社・協力会社5社という構成をそのまま表現できます。

個人の施主をどう扱うか

戸建住宅やリフォームを手がける場合、顧客は法人ではなく個人です。HubSpotではコンタクトのみで管理し、会社レコードを作らない構成が扱いやすくなります。法人案件と個人案件が混在する企業では、取引パイプラインを分けることで、商談期間や受注率の平均値が混ざらないようにします。

指名・紹介が中心の受注活動は、パイプラインで管理できるのか?

「うちは指名と紹介で仕事が来るから、営業パイプラインという考え方が合わない」という声をよく聞きます。実際、公共工事の入札や特命随意契約では、一般的な営業プロセスの型が当てはまりません。

それでも管理すべきものはあります。案件の存在を知った時点から受注までの間に、何が起きているかです。入札情報を見つけた日、現地を確認した日、積算を始めた日、辞退を判断した日。これらは記録できます。そして記録すると、案件を知ってから判断するまでに平均で何日かかっているかが見えます。

受注できなかった案件こそ記録する価値がある

多くの企業で失注案件は記録されません。受注した案件だけが工事台帳に残るためです。しかし経営判断に必要なのは、どういう案件を逃しているかという情報です。金額帯で負けているのか、工期で負けているのか、そもそも声がかかっていないのか。

HubSpotでは失注理由を選択式のプロパティとして持たせ、取引を失注として閉じる際に必須入力にします。パイプラインルールで、失注段階へ移動する際の必須項目として設定すれば、入力漏れを仕組みで防げます。半年分の失注理由が溜まった時点で、どの条件の案件に勝てていないかが数字で出ます。

長期の案件を忘れないための仕組み

再開発や大規模改修の案件は、情報を掴んでから発注まで数年かかることがあります。この間、営業担当は他の案件に追われ、長期案件は意識から外れます。パイプラインの自動化で、一定期間動きのない取引の担当者に通知を送る設定をしておけば、放置された案件が定期的に視界に戻ります。

竣工後のOB顧客と改修需要は、どう仕組みにするのか?

建設業でCRMの投資対効果が最も明確に出るのが、この領域です。新規の発注者を開拓するコストと、過去に施工した建物の改修案件を取りに行くコストでは、後者が圧倒的に低くなります。すでに関係があり、建物の構造も施工時の経緯も自社が把握しているためです。

必要なのは、竣工した建物を資産としてCRMに持つことです。工事が終わっても建物は残り続け、設備の更新時期を迎えます。この「建物」を取引(終わるもの)ではなく、カスタムオブジェクト(続くもの)として持つのが設計の要点です。

建物をカスタムオブジェクトとして持つ

建物オブジェクトには、竣工年月・構造・延床面積・主要設備とその更新周期・前回改修時期・管理会社を持たせます。会社レコード(発注者)と取引(施工案件)の両方に関連付ければ、「この発注者が保有する建物」と「この建物で実施した工事の履歴」の両方向から辿れます。

カスタムオブジェクトの作成はHubSpotのEnterpriseで利用できる機能です。設計の考え方はHubSpotカスタムオブジェクトの設計で整理しています。

更新時期からワークフローで逆算する

建物オブジェクトに設備の更新予定年月を持たせたら、ワークフローで「更新予定の18か月前に担当者へタスクを作成する」という動きを設定します。空調設備なら15〜20年、外装改修なら12〜15年が一般的な周期です。自社の施工実績から実際の更新タイミングを集計すれば、より実態に即した周期を設定できます。竣工年月から経過年数を自動で出す場合は計算プロパティを使います。

18か月前という設定には理由があります。設備更新には予算計上が必要で、発注者の予算編成に間に合うタイミングで提案しなければ、1年先送りになるためです。競合が入札情報を見てから動くのに対し、予算編成の前から相談を受ける位置に立てます。

技術情報の発信は、どうやって受注につながるのか?

建設業の発注者は、工事を発注する前に情報を集めます。耐震改修の工法、省エネ設備の選択肢、法規制への対応方法。この段階で情報を提供している会社と、入札情報が出てから接触する会社では、提案の立ち位置が変わります。

ここで注意が必要なのは、建設業のウェブサイトの多くが施工実績の羅列で終わっていることです。実績は信頼の証明にはなりますが、発注者が検討初期に探している情報ではありません。検討初期に探されているのは「自社の建物にこの工法が適用できるか」「概算でいくらかかるか」という判断材料です。

施工実績を、検索される形に変える

施工実績のページを「用途×構造×工事種別」で検索できる形に整理すると、発注者は自社に近い条件の事例を見つけられます。HubSpotのContent Hubでは、実績をカスタムオブジェクトやデータベース機能として持ち、条件で絞り込めるテンプレートでページを構築できます。問い合わせの受け皿となるフォームの送信データは、そのままコンタクトとして蓄積されます。この構成にすると、実績ページがCRMと同じデータを参照するため、営業が提案時に使う資料と公開情報が一致します。

サイト経由で問い合わせた相手が、すでにCRMに存在する発注者の担当者である場合もあります。HubSpotはメールアドレスでコンタクトを一意に扱うため、既存顧客からの問い合わせがそれと分かる状態で届きます。

個人施主の検討期間は長い

戸建住宅・リフォームでは、検討開始から契約まで半年から1年かかることが珍しくありません。この期間、何も接触しなければ他社に流れます。かといって営業電話を重ねれば敬遠されます。

株式会社クラッソーネは、解体工事会社と施主をつなぐプラットフォームを運営しており、毎月数千件のリードを獲得しながら、その多くが離脱するという課題を抱えていました。HubSpot Marketing Hubでカスタマージャーニーに沿ったシナリオを設計し、属性と行動に応じた情報を自動配信する仕組みを構築した結果、リードから見積もり依頼までの引き上げ数が262%増加しています(クラッソーネの事例)。

建設業のHubSpot活用事例——清水建設とクラッソーネ

株式会社100は、世界上位1%・日本唯一のHubSpot認定エリートパートナーとして、建設業の企業を支援しています。以下はいずれも公開許諾をいただいた事例で、数値は各社へのインタビューで確認したものです。

2社は事業の形が大きく異なります。一方は創業220年を超える総合建設業者、もう一方は解体工事のマッチングプラットフォームです。それでも、顧客との接点を会社として持てているかという論点は共通しています。

清水建設:3万人の来訪者の声を、どう資産にするか

清水建設株式会社は、超高層ビルや病院、工場、高速道路といった社会インフラを手がける総合建設業者です。同社が2023年9月に設立したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」には、設立以来3万人を超える顧客が来訪しました。

課題は、来訪者との関係をどう継続させるかにありました。拠点に来た人の感想や関心は、その場で聞いて終われば記録に残りません。同社初の本格的なマーケティングとして、顧客の声の可視化と関係継続の仕組みづくりにHubSpotを活用しています(清水建設の事例)。

建設業にとって示唆があるのは、この取り組みが工事の受注活動とは別の文脈で始まっている点です。拠点に来訪する顧客は、特定の案件の発注者であるとは限りません。将来の共創相手として関係を築く対象であり、その関係を会社の資産として持つために顧客データの基盤が要ります。

クラッソーネ:毎月数千件のリードが離脱していた

株式会社クラッソーネは「街の循環再生文化を育む」をビジョンに掲げ、解体工事会社と施主をつなぐプラットフォームを運営しています。毎月数千件のリードを獲得していましたが、その多くが何らかの理由で離脱していました。

解体工事は、施主にとって一生に数回あるかないかの発注です。検討の進み方も、情報を集める順序も人によって違います。同社はリードナーチャリングに着目し、カスタマージャーニーに合わせたシナリオを設計して、属性と行動に応じた情報を自動配信する仕組みを構築しました。結果として、リードから見積もり依頼までの引き上げ数が262%増加しています。(クラッソーネの事例)

この事例が示すのは、接触の回数ではなくタイミングと内容の設計が成果を分けるということです。同じ回数のメールでも、相手の検討段階に合っていなければ離脱を早めます。

施工管理システムとCRMは、どう棲み分けるのか?

建設業にはすでに多くのシステムが入っています。施工管理、原価管理、工程管理、安全管理。ここにCRMを足すとき、どこまでをCRMで扱うかを決めないと、二重入力が発生して現場が離れます。

線引きの基準は単純で、受注する前の情報はCRM、受注した後の情報は基幹システムや施工管理システムです。CRMは受注を取るための仕組みであり、工事を遂行するための仕組みではありません。この境界を曖昧にして「CRMで工程も管理しよう」と広げると、現場の道具としては使いにくいものになります。

受注したら、どの情報を引き継ぐか

取引が受注で確定した時点で、工事番号・発注者・契約金額・工期を基幹システムへ渡します。連携はAPIで自動化できますが、月間の受注件数が数十件規模であれば、手動の転記でも実務は回ります。自動化すべきかどうかは件数で判断してください。

逆方向、つまり基幹システムからCRMへ戻す情報は、竣工日と最終的な請負金額の2つで足ります。この2つがCRM側に戻れば、建物オブジェクトの竣工年月が埋まり、改修提案の逆算が始められます。

協力会社の管理はCRMで行うべきか

協力会社との取引条件や評価を、顧客と同じCRMで管理するかは判断が分かれます。私たちは、同じポータル内で会社レコードとして持ち、ユーザー権限で閲覧範囲を分ける構成を勧めています。別システムに分けると、どの協力会社がどの案件に入っているかを横断で見られなくなるためです。

最初の90日は、どこから着手すべきか?

建設業でCRMを導入するとき、全社・全支店で一斉に始める計画は避けてください。支店ごとに顧客も商習慣も違い、全支店の合意を取ろうとすると設計が決まりません。1支店、または1事業部から始めるのが現実的です。全社一斉の展開が崩れる理由はCRM全社導入で失敗する企業と成功する企業にまとめています。

着手領域の選び方には優先順位があります。新規開拓からではなく、既存顧客の情報整理から始めてください。既存顧客のデータは社内にすでに存在し、整理すれば改修提案という形で短期に成果が出ます。新規開拓は成果が出るまでに時間がかかり、CRMの価値を社内に示すまでに推進力が尽きます。

最初の30日:何を1件と数えるかを決める

工事を1件と数えるのか、発注単位で数えるのか、現場単位で数えるのか。設計変更や追加工事を別件とするのか。この定義が揃っていない状態でデータを入れると、後から集計できません。

あわせて、過去何年分のデータを移行するかを決めます。全件移行は不要です。改修提案の対象になる築10年以内の建物と、過去3年の取引実績があれば、運用は始められます。インポートファイルの準備は定義が固まってから着手します。

31〜90日:OB顧客への提案を1件出す

2か月目に建物オブジェクトへ竣工データを入れ、更新時期が近い建物を抽出します。3か月目には、そのリストから実際に提案を出します。CRMの価値を社内に示すうえで、レポートの画面を見せるより、CRMから見つけた案件で受注する方が説得力があります。

この段階で出てくる典型的な問題が、データの精度です。竣工年が分からない建物、担当者が退職している発注者が必ず出ます。完璧なデータを揃えてから始めようとすると、いつまでも始まりません。分かる範囲で入れ、提案の過程で埋めていく進め方で十分です。表記ゆれによる重複は重複レコードの管理で統合し、全体の状態はデータ品質コマンドセンターで定期的に点検します。

よくある質問

Q1. 公共工事が中心で、営業活動の余地が少ないのですが、CRMは必要ですか?

入札の結果を左右できなくても、どの発注機関のどの案件に応札し、どの価格帯で負けたかの記録は蓄積されます。この記録があると、翌年度の応札方針を感覚ではなく実績から決められます。また公共工事であっても、発注前の技術提案や事前相談の段階で接点を持てる案件はあります。その接点を記録できるかどうかで差が出ます。

Q2. 現場の担当者がCRMを使ってくれるとは思えません。どうすればよいですか?

現場の施工担当に入力を求めないでください。CRMを使うのは営業・設計・経営企画の範囲に限り、現場には求めない設計にします。建設業で導入が失敗する典型が、全社員に入力を義務づけて現場の反発を招くパターンです。入力者を絞ると情報量は減りますが、運用は続きます。閲覧だけを現場に開放したい場合は、チームの設定で編集権限を持たない利用者を分けられます。

Q3. 顧客情報を会社で管理すると、営業担当が情報を出し渋るのではないですか?

実際に起こります。対処として有効なのは、評価の仕組みを変えることです。CRMに記録された案件からの受注を、記録した担当者の実績として明示的に認める運用にします。情報を抱えることが有利な状態が続く限り、入力は進みません。

Q4. 建物オブジェクトを作るには、HubSpotのどのプランが必要ですか?

カスタムオブジェクトはEnterpriseの機能です。Professional以下のプランで同様のことをする場合、取引オブジェクトを流用し、パイプラインを「施工案件」と「建物管理」に分ける方法があります。完全な代替にはなりませんが、更新時期の管理という目的は達成できます。プランごとの機能差は改定されることがあるため、契約前に最新の公式情報をご確認ください。

Q5. 施工実績を公開すると、発注者から掲載を断られることが多いのですが。

実名での掲載が難しい場合、用途・構造・規模・工期・工事種別だけを公開する匿名の実績として整理する方法があります。発注者が検討初期に見たいのは「自社と似た条件の建物を施工した経験があるか」であり、固有名詞そのものではありません。匿名でも検索の受け皿としては機能します。

Q6. 改修提案の時期を逆算する周期は、どう決めればよいですか?

一般的な周期を初期値として置き、自社の施工実績から実際の更新間隔を集計して補正してください。同じ設備でも、建物の用途・稼働率・立地によって更新間隔は変わります。工場と事務所ビルでは空調の更新タイミングが異なります。初期値のまま運用を続けると、提案のタイミングが早すぎたり遅すぎたりします。

Q7. 設計事務所との関係をCRMで管理することに、どんな意味がありますか?

設計事務所は、施工者の候補を発注者に提示する立場にあります。設計事務所の担当者と継続的な関係があれば、案件の情報が入札公告より前に届きます。ただし関係の維持には、単なる営業訪問ではなく技術情報の提供が必要です。どの設計事務所にどの技術情報を提供したかを記録しておくと、次の接触の材料になります。

Q8. 既存の顧客管理ソフトからHubSpotへ移行する場合、何に注意すべきですか?

建設業向けの顧客管理ソフトは、工事を中心にデータが組まれていることが多く、そのまま移すと顧客単位の情報が作れません。移行前に、工事データから発注者を抽出し、同一企業の表記ゆれを統合する作業が必要です。「株式会社○○」と「(株)○○」が別会社として登録されている状態は、ほぼ確実に存在します。

建設業のCRMは、新規開拓の道具として導入すると効果が見えにくく、既存顧客との関係を資産として持つ道具として導入すると投資対効果が明確になります。48万社が横ばいのまま競い、担い手は減り、労働時間の上限が制度として定まった以上、営業活動の総量を増やす方向での解決は閉じています。すでに施工した建物という、他社が持っていない情報をどう使うかが分岐点です。

株式会社100は、世界上位1%・日本唯一のHubSpot認定エリートパートナーとして、建設業における顧客データの設計と改修提案の仕組み化を支援しています。自社のどの領域から着手すべきかの整理を含めて、お問い合わせフォームからご相談ください。

最終更新日: 2026年10月23日(掲載している統計・製品仕様は同日時点のものです。HubSpotの機能およびエディション要件は変更される可能性があるため、導入前に最新の公式情報をご確認ください)