ブログ

HubSpotの計測設計|トラッキングコード・UTM・キャンペーンとGA4のずれを整理する

作成者: 田村 慶|2026/11/08

月次のマーケティング報告会で、同じ月のセッション数がHubSpotとGA4で二割ちがう。どちらが正しいのかと役員に問われ、担当者が答えに詰まる。翌月には「ダイレクト流入が全体の半分を超えている」という資料が出てきて、施策の評価ができないまま予算の議論だけが進む。CRMとウェブ解析を並走させている組織で、この光景はめずらしくありません。

数字がずれること自体は異常ではありません。HubSpotとGA4はセッションの定義も、流入元の判定単位も、アトリビューションの考え方も違うツールです。問題は、違う理由を説明できないまま「どちらかが壊れている」と扱ってしまうことにあります。説明できない数字は意思決定に使われず、やがて誰も見なくなります。

この記事では、株式会社100がHubSpotの認定エリートパートナーとして計測基盤を設計する立場から、トラッキングコードの設置と計測漏れ、UTMとキャンペーンの設計、ドメインをまたぐ訪問の扱い、そしてHubSpotとGA4で数字がずれる構造的な理由を整理します。

目次

  1. なぜHubSpotとGA4の数字は一致しないのか?
  2. トラッキングコードはどこに入り、どこで漏れるのか?
  3. ドメインをまたぐ訪問はなぜ別人になるのか?
  4. UTMとHubSpotのソース判定はどう噛み合うのか?
  5. キャンペーンとアトリビューションはどう設計するか?
  6. Cookieと同意はどこまで計測に影響するのか?
  7. 計測設計をどの順序で組むか?
  8. よくある質問
  9. まとめ:計測は「合わせる」のではなく「説明できる」状態にする

なぜHubSpotとGA4の数字は一致しないのか?

先に結論の枠組みを置きます。両者のずれは、セッションの区切り方、流入元の判定単位、計測対象ページ、同意とフィルタという四つの層から生まれます。どの層のずれなのかを切り分けられれば、修正すべき設定なのか、仕様として受け入れる差分なのかが判断できます。

セッションの区切り方はどこが違うのか?

HubSpotのセッションは30分間の操作なしで終了し、アカウントのタイムゾーンで深夜0時にリセットされます。さらに、訪問者が別の流入元から戻ってきた場合には新しいセッションキャンペーンとして新しいセッションが始まります。

一方GA4では、既定では30分間操作がなければセッションが終了し、セッションの継続時間に制限はありません。深夜0時でのリセットも、キャンペーンパラメータの変化によるセッション分割も行われません。

タイムアウトの長さだけが同じで、区切りの規則が二つ違う。深夜をまたぐ訪問と、流入元が切り替わる訪問の分だけ、HubSpotのセッション数は構造的に多く出ます。HubSpotとGoogleアナリティクスでは、両者を厳密に突き合わせるのではなくトレンドを比較することが推奨されています。

流入元の判定はどの単位で行われるのか?

二つめのずれは、流入元をどの粒度で見るかの違いです。HubSpotはリファラーのドメイン(google.com、facebook.comなど)を基準にセッションを測り、GA4は参照元/メディアの組(google / organic、direct / none など)を基準に測ります。同じ遷移が、片方では別セッション、もう片方では同一セッションとして数えられます。

分類の受け皿も揃っていません。HubSpotはGoogle広告からの指標をPaid Searchにまとめるのに対し、GA4は広告の種類に応じてPaid Search、動画、ソーシャル、クロスネットワーク、ディスプレイのいずれかに振り分けます。チャネル別の構成比を二つのツールで比べても、そもそも分類軸が違うため一致しません。

私たちがレポートを設計する際は、チャネル構成比はどちらか一方のツールに寄せ、もう一方は補助として使う方針をとります。両方で同じ表を作って突き合わせる運用は、合わない理由の説明に時間を取られるだけで、意思決定を速くしません。

Cookie同意と内部トラフィックはどこに効くのか?

三つめは同意とフィルタです。オプトインを必須にしたCookie同意バナーを使っている場合、訪問者がバナーを拒否するとHubSpotは匿名のビューをカウントする一方、HubSpotページのインテグレーション設定経由で読み込まれるGoogleアナリティクスのスクリプトは読み込まれず、ビューはカウントされません。同意の扱い方がそのまま母数の差になります。

加えて、IPフィルタとボットフィルタの設定が両ツールで揃っていなければ、除外される内部トラフィックの範囲が変わります。HubSpotのトラッキングコードは、HubSpot内のプレビューページやコンテンツエディタ上では発火しない仕様である一方、GA4のタグはHubSpotページのヘッダーHTMLに差し込まれているため、こうした画面でもセッションを数える場合があります。制作作業が多い時期ほど、GA4側のセッションが膨らみます。HubSpot側の集計挙動はウェブトラフィック分析のよくある質問(HubSpot公式ナレッジベース)に整理されています。

トラッキングコードはどこに入り、どこで漏れるのか?

ずれの議論の前に、そもそも計測できていないページがないかを確認する必要があります。計測漏れは数字のずれではなく欠落であり、気づかないまま施策評価を続けると、評価されない施策だけが打ち切られることになります。

どのページに自動で入り、どこは手動なのか?

トラッキングコードはHubSpotのブログページ、ランディングページ、ウェブサイトページには自動で含まれ、HubSpot外でホストしているページには手動での設置が必要です。設置はHTMLの閉じ</body>タグの直前に貼り付けます。シングルページアプリケーションや独自のイベント送信が必要な場合は、トラッキングコードAPI(HubSpot公式ドキュメント)でのカスタマイズが前提になります。

計測されたデータはウェブトラフィック分析ツール(HubSpot公式ナレッジベース)のソースタブで確認します。日本の大企業で計測漏れが起きやすいのは、コーポレートサイトと製品サイトとオウンドメディアが別々の基盤で動いているケースです。HubSpotで作ったランディングページだけが計測され、既存のコーポレートサイトが丸ごと計測対象外になっている状態は実際によくあります。CMSとCRMを繋いだリード獲得設計の観点では、まず計測範囲の地図を描くところから始めます。

外部ページにコードを入れたあとは、レポート設定側にそのドメインを追加する作業が残ります。外部サイトのドメインをレポート設定に追加しないと、HubSpotのアナリティクスには含まれません。コードを入れただけで終わらせると、ここで取りこぼします。

二重設置や未設置では何が起きるのか?

同じページに複数のHubSpotトラッキングコードを設置してはいけません。複数設置された場合は最初に読み込まれたものだけが発火し、以降のコードは読み込まれません。タグマネージャー経由とテーマ直書きの両方で入っているケースは、サイトリニューアルの引き継ぎ時によく見つかります。

逆にコードが入っていないページでは、トラフィック、ページビュー、訪問者のアクティビティー、サイトイベントのいずれも記録されません。ライブチャットのようにトラッキングコードに依存する機能も読み込まれず、HubSpot外のフォーム送信も捕捉されません。AMPページは対象外で、広告ブロッカーが干渉する場合もあります。

外部ページに埋め込んだHubSpotフォームについては、追加のサイトドメインとして登録していない場合、送信がスパム送信にフィルタされる扱いが2024年5月16日以降に適用されると記載されています。フォームは動いているのにコンタクトが増えない、という相談の原因がここにあることがあります。

訪問者はどう識別されているのか?

HubSpotはブラウザーCookieで訪問者を追跡し、コンタクトになる前から匿名で記録します。フォーム送信時には、過去のページビューを紐づけます。手動作成・インポート・同期で作られたコンタクトは、HubSpotフォームの送信か、追跡対象のマーケティングメールのクリックがあるまでページビューを紐づけられません。

見落とされやすい仕様として、同一のコンタクトに多数の送信が紐づく場合、1,000件のフォーム送信を超えると以降の送信がコンタクトに紐づかない状態で表示され、レポートやエクスポートに影響する可能性があることが記載されています。展示会で一台の端末から入力を繰り返す運用では、フォーム側の「新しいメールアドレスの場合は常に新規コンタクトを作成する」設定を有効にしておく必要があります。

ドメインをまたぐ訪問はなぜ別人になるのか?

企業サイトがコーポレート、製品、採用、オウンドメディアと複数ドメインに分かれている組織では、ドメイン間の遷移をどう扱うかが計測設計の中心論点になります。既定では、ドメインが変わった時点でリファラーが変わるため、多くの解析ツールは別セッションとして数えます。

クロスドメイン設定を入れないと何が起きるのか?

クロスドメインリンクを使うと、HubSpotは複数ドメインを訪問した一人の訪問者のプロファイルを統合できます。有効化すると、パラメータ(__hsfp、__hssc、__hstc)付きのURLが生成されます。設定は、トラッキングコード設定の「詳細トラッキング」タブで対象ドメインを追加して行います。

設定を入れないと、自社の別ドメインからの遷移が外部からのリファラルとして計上され、流入元の内訳が自社サイト同士の行き来で水増しされます。逆に設定を入れると、追加したドメイン間の将来のトラフィックは自社サイトの一部として扱われ、ソースレポートにリファラルとして現れなくなります。どちらが正しいかは分析の目的によるため、入れる・入れないを決めてから運用に乗せる必要があります。

サブドメインとトップレベルドメインでは挙動が異なります。サブドメインを追加すればそのサブドメインのみ、トップレベルドメインを追加すれば配下のすべてのサブドメインが対象になります。ブランドドメインの置換を伴うサイト移行では、この設定の引き継ぎ漏れが起きやすい箇所です。

HubSpotとGA4で対象ドメインを揃えないとどうなるのか?

HubSpotとGoogleアナリティクスで同じドメインをクロスドメイントラッキングの対象にしていない場合、両ツールのセッション数は一致しません。GA4側の設定はクロスドメイン測定の設定(Google公式ドキュメント)に手順があります。

私たちが計測設計を引き受ける際は、対象ドメインの一覧をスプレッドシートで一元管理し、HubSpot側とGA4側の両方にチェック欄を置きます。片方だけ更新される事故を防ぐには、設定画面を見比べるのではなく、管理表を正とする運用に寄せるのが確実です。

UTMとHubSpotのソース判定はどう噛み合うのか?

UTMは「つければ分かる」ものではありません。つけ方の規則が決まっていないと、同じ施策が複数行に分かれ、集計のたびに手作業の名寄せが発生します。ここは設計の巧拙がそのまま運用コストに跳ね返る領域です。

HubSpotのトラッキングURLとGA4のUTMは同じものか?

HubSpotのトラッキングURLビルダーではUTMキャンペーン、ソース、メディア、ターム、コンテンツを設定でき、キャンペーン名の指定は必須です。キャンペーン名が必須なのは、その値がHubSpotの複数のレポートで使われるためです。

ソースはドロップダウンから選ぶ形式で、Eメールマーケティング、有料検索、オーガニックソーシャル、有料ソーシャル、その他のキャンペーン(カスタムUTMソースを入力)が用意されています。つまりHubSpot側ではソースの値が事実上の選択式になっており、自由記述のUTMをそのまま解釈するGA4とは設計思想が異なります。

GA4側の規則はカスタムキャンペーンのデータ収集(Google公式ドキュメント)に整理されています。utm_source、utm_medium、utm_campaignはどのケースでも使用すべきであること、パラメータの値は大文字と小文字が区別されること、UTMが設定されていない場合はレポートに「(not set)」が表示されることが記載されています。「Meta」と「meta」、「SpringSale」と「Spring_Sale」は別物として扱われます。

なぜ「ダイレクト」が想定より多いのか?

ダイレクト流入の肥大は、計測設計の不備が最も分かりやすく現れる症状です。HubSpotがダイレクトに分類する条件は、いくつかのパターンに整理できます。

原因は大きく、リファラーが失われる経路と、トークンが渡らない経路に分かれます。前者には、参照元がメールドメインやRSSリーダーである場合、リファラーが空の場合、参照元がhttpsで自社ドメインがhttpの場合が含まれます。後者には、トラッキングコードのないページでのフォーム送信、Forms API経由やCookieトラッキングを無効にしたフォームでユーザートークンが渡らない場合、訪問者がCookieを承諾しなかった場合が含まれます。

設定起因の原因として見落とされがちなのが、HubSpotのマーケティングメールで「すべてのURLにソーストラッキングタグを追加する」が選択されていないケースです。このときメール内リンクにトラッキングパラメータが付かず、メール経由の訪問がすべてダイレクトに計上されます。HubSpot以外のメール配信基盤を併用している場合も同様です。営業メールのクリック計測は、マーケティングメールとは別系統です。

命名規則は何を決めれば破綻しないのか?

UTMの命名で決めるべき項目は多くありません。私たちが設計する際は、次の四点を先に固め、それ以外は自由にしています。規則が多いほど守られなくなるためです。

  1. 大文字小文字:すべて小文字に統一する。GA4では値が大文字小文字を区別するため、ここが揺れると同じ施策が分裂します
  2. 区切り文字:ハイフンかアンダースコアのどちらかに統一する。混在が最も多い分裂要因です
  3. utm_campaignの発番ルール:施策名と完全一致させ、年度や四半期の接頭辞を付けるかどうかを決めておきます
  4. utm_mediumの語彙:チャネルごとに一意の値を決め、一覧を公開して増やさない運用にします

GA4のベストプラクティスでも、プラットフォームごとに一意のutm_sourceを一つだけ、チャネルごとに一意のutm_mediumを一つだけ使うこととされています。自由度を下げることが、そのままレポートの精度になります。

キャンペーンとアトリビューションはどう設計するか?

UTMが整うと、次はキャンペーン単位の評価に進みます。ここでHubSpot特有の落とし穴があり、知らないまま運用すると「施策は実行したのに数字が出ない」という結果になります。

キャンペーンに後から紐づけると何が欠落するのか?

キャンペーンの概要レポートの指標は、アセットをキャンペーンに関連付けた日時から計算されます。関連付け以前のアセットのデータは、これらの指標に含まれません。

施策を走らせてから「あとでキャンペーンにまとめよう」と考えると、走り出しの数字が落ちます。アセット単位のセクションレポートには関連付け前のデータも含まれるため、概要とアセット別で数字が合わない現象もここから生まれます。私たちがキャンペーン運用を設計する際は、アセットを作る前にキャンペーンを先に作る順序を徹底します。

キャンペーンのコンタクトアトリビューションは、画面上でファーストタッチとラストタッチを切り替えられます。キャンペーン単位の寄与はキャンペーンアトリビューションレポート(HubSpot公式ナレッジベース)でも確認できます。ROIレポートの計算式は(収益・アトリビューション収益・関連付けられた取引額のいずれか − キャンペーン費用の合計)÷ キャンペーン費用の合計 × 100 です。分母がキャンペーン費用である以上、費用の入力がなければROIは出ません。

HubSpotのアトリビューションモデルはGA4と何が違うのか?

ここは両者の思想がはっきり分かれる箇所です。HubSpotではFirst Touch、Last Touch、Linear、Time Decay、Empiricalの各モデルを選択できます。EmpiricalはU字型・W字型・J字型・逆J字型のモデルを置き換えたもので、出現頻度の低いインタラクション種別により大きな重みを与える仕組みです。

対してGA4では、ファーストクリック・線形・減衰・接点ベースの各モデルが2023年11月をもって利用できなくなりました。現在選べるのはデータドリブン、有料およびオーガニックのラストクリック(間接的ラストクリック)、Googleの有料チャネル(ラストクリック)です。キーイベントのルックバックウィンドウは既定で90日間です。

観点 HubSpot GA4
ファーストタッチ系モデル First Touchを選択可能 ファーストクリックは2023年11月に廃止
線形・減衰モデル Linear/Time Decayを選択可能 いずれも2023年11月に廃止
機械学習型モデル Empirical(出現頻度に基づく重み付け) データドリブン(経路データの機械学習)
セッション単位の既定 キャンペーン変化で新セッション 間接的ラストクリック
計測対象 コンタクト作成/取引作成/取引収益 キーイベント

この差は「どちらが優れているか」ではなく、評価したい対象の違いに由来します。HubSpotは取引と収益まで一気通貫で追える代わりに、プランの要件が付きます。アトリビューションレポートの利用にはMarketing HubまたはContent HubのProfessional以上が必要で、取引作成アトリビューションと取引収益アトリビューションはMarketing Hub Enterpriseのみです。

レポートの上限とサンプリングはどこに効くのか?

大量の接点を持つ組織では、レポートの内部仕様が結果に影響します。アトリビューションレポートは1レポートあたりのインタラクション数に上限を持ち、これはサンプリング後の件数です。可能な場合は少なくとも1年分のインタラクションが対象になり、1レポートあたり最大100件のイベント入力種別を含められます。

サンプリングの対象になるのは、Eメールのインタラクションやページビューのような高頻度の種別です。フォーム送信、通話、ミーティングのような低頻度の種別はサンプリングされません。つまり上限に触れる規模の組織では、ページビューの寄与が実態より小さく出る方向にバイアスがかかります。レポートを読む側がこの性質を知らないと、「コンテンツは効いていない」という誤った結論に進みます。

広告については、接触からコンバージョンまでの間に訪問者がCookieを削除した場合、アトリビューションの対象になりません。検討期間の長いBtoBでは、この影響が無視できない大きさになります。

Cookieと同意はどこまで計測に影響するのか?

計測設計の最後の層が同意管理です。ここは法務部門と情報システム部門の合意が必要な領域で、マーケティング部門だけで決められません。設定の選択肢と、それぞれが数字に与える影響を整理しておくと、合意形成が速くなります。

HubSpotはどのCookieをいつ落とすのか?

HubSpotが訪問者のブラウザーに設定するCookieは、必須・分析・機能の各カテゴリーに分類されています。分析カテゴリーは同意バナーで制御される非必須Cookieで、訪問者が同意しなければ設定されません。

計測の中核になるのは、訪問者を追跡する主要Cookieである__hstcと、訪問者の識別子を保持するhubspotutk、セッションを管理する__hsscです。__hsscの有効期限は30分で、先に触れたセッションの30分ルールはこのCookieの寿命と対応します。同意を拒否した訪問者はこれらのCookieを持たないため、フォーム送信時に過去の閲覧履歴が紐づきません。

Global Privacy Controlのバナー非表示を記録するCookieは有効期限が180日、同意したカテゴリーを記録するCookieは6か月と、Cookieごとに寿命が異なります。同意の再取得サイクルを設計するときは、この寿命を踏まえて「いつ再度バナーが出るか」を想定しておく必要があります。

同意バナーの設定はどこで決まるのか?

バナーをカスタマイズできるのは、スーパー管理者とウェブサイト設定の編集権限を持つユーザーです。GDPRやCCPAへの対応を目的とした設定です。ポリシーはドメイン単位で作成でき、URLパスを指定したサブディレクトリ単位の出し分けや、訪問者のIPアドレスから判定した国別の出し分けも可能です。

運用上の注意として、v1のCookie同意バナーは段階的に廃止され、v2への移行が進んでいます。自動移行は2026年5月11日に開始され、アカウントごとに順次適用されています。移行後にバナーの表示条件や文言が変わると同意率が動き、分析Cookieの取得率も動きます。移行のタイミングは計測データの不連続点として記録しておくべきイベントです。

なお、自社の状況に応じたコンプライアンスの助言を得るうえで最良のリソースは、自社の法務チームです。日本国内の運用では、個人関連情報の第三者提供に関する規律との関係を含め、自社の法務部門の確認を前提にしてください。

計測設計をどの順序で組むか?

ここまでの論点を実装の順序に落とします。順序を間違えると、後の工程で前の工程の値を作り直すことになり、過去データとの連続性が切れます。

私たちが計測基盤を設計するときは、計測範囲、識別、分類、評価という順に固めます。範囲が決まらないうちにUTMの命名を議論しても、計測されないページが残っていれば意味がありません。

  1. 計測範囲の確定:自社が持つドメインとサブドメインを棚卸しし、どこにトラッキングコードが入っているかを一覧化します。重複設置と未設置の両方を潰します
  2. 識別の確定:クロスドメインリンクの対象ドメインを決め、HubSpot側とGA4側で揃えます。同意バナーの方式もここで決めます
  3. 分類の確定:UTMの命名規則とHubSpotのトラッキングURLビルダーの使い方を決め、キャンペーンの発番ルールを定めます
  4. 評価の確定:アトリビューションモデルを一つ選び、報告資料ではそれだけを使います。複数モデルの併記は比較検討の場に限定します
  5. 差分の文書化:HubSpotとGA4の数字が構造的にずれる理由を一枚にまとめ、報告資料に添付します。毎月同じ質問が出る状態を終わらせます

最後の一項目は軽視されがちですが、実務では最も効果があります。HubSpot分析の効率化という観点でも、数字を作る工数より、数字を説明する工数のほうが大きくなっている組織は少なくありません。

よくある質問

GA4とHubSpotのどちらを正とすべきですか?

用途で分けるのが現実的です。サイト内の行動分析とチャネル別の集客評価はGA4、コンタクト・取引・収益に接続した評価はHubSpotに寄せると、重複が減ります。両者の数値を直接比較するのではなく、トレンドを比較することが推奨されています。一つの指標を二つのツールで併記するのは避けてください。

トラッキングコードを入れ直すと過去のデータは消えますか?

トラッキングコードはアカウントごとに固有で、同じアカウントのコードであれば、再設置によって過去のデータが失われる挙動は公式ドキュメント上で確認できませんでした。一方、二重設置の状態から一つを外す作業では、外す側のコードが先に読み込まれていた場合に計測が復旧する形になります。作業前後でセッション数の段差が出る点は、関係者に事前共有しておくと混乱が減ります。

同意バナーで拒否された訪問はまったく計測できませんか?

オプトインを必須にした場合、訪問者が拒否するとHubSpotは匿名のビューをカウントします。個人の識別には至りませんが、ページ単位のビューは残ります。ただしフォーム送信時に過去の閲覧履歴を紐づけられないため、リードごとの行動履歴は取得できません。

UTMを後から一括で付け替えることはできますか?

既に流入が発生した分のパラメータを遡って書き換える手段は、HubSpot公式ドキュメントに記載は確認できませんでした。実務では、命名規則を変える際に切り替え日を決め、レポート側で旧規則と新規則を束ねる定義を作る対応になります。切り替え日を記録しておかないと、後任者が原因不明の断層として扱うことになります。

アトリビューションレポートが使えないプランでは何ができますか?

アトリビューションレポートの利用にはMarketing HubまたはContent HubのProfessional以上が必要です。下位プランでは、トラフィックアナリティクスのソースレポートとキャンペーンの集計、コンタクトの「元のソース」プロパティーを組み合わせた評価が基本になります。ファーストタッチの近似としては機能しますが、複数接点の寄与配分は行えません。

自社の別ドメインからの流入がリファラルとして計上されます。どう直しますか?

トラッキングコード設定の詳細トラッキングタブで、対象ドメインを追加サイトドメインとして登録します。追加したドメイン間の将来のトラフィックは自社サイトの一部として扱われ、ソースレポートにリファラルとして現れなくなります。過去分は遡って再分類されないため、切り替え時点を記録しておいてください。

HubSpotのセッション数が月初に跳ねるのはなぜですか?

HubSpotのセッションはアカウントのタイムゾーンで深夜0時にリセットされます。日付をまたぐ訪問が多い業種では、この仕様が日次の数値に影響します。月初に跳ねる要因としては、キャンペーンの開始日が月初に集中していることや、キャンペーンにアセットを関連付けた日時が月初になっていることのほうが大きいため、関連付けの日時を確認してください。

クロスドメイントラッキングを有効にするとURLにパラメータが付きます。SEOに影響しますか?

クロスドメインリンクが有効になると、__hsfp、__hssc、__hstcのパラメータ付きURLが生成されます。パラメータ付きURLの正規化については、canonicalタグの設定で対応するのが一般的な実装です。影響範囲は自社サイトの構成によって変わるため、公開前にステージング環境で確認してください。

まとめ:計測は「合わせる」のではなく「説明できる」状態にする

HubSpotとGA4の数字を一致させることはできません。セッションの区切り方、流入元の判定単位、分類の受け皿、同意の扱いがそれぞれ違う以上、一致しないのが正常です。計測設計のゴールは、二つの数字を揃えることではなく、違いの理由を毎回説明できる状態を作ることにあります。

そのために必要なのは、計測範囲の棚卸し、クロスドメイン設定の一致、UTM命名規則の固定、アトリビューションモデルの一本化、そして差分の文書化です。この五つが揃うと、報告会で数字の正しさを議論する時間がなくなり、施策の是非を議論する時間が戻ってきます。株式会社100は日本唯一のHubSpot認定エリートパートナーとして、計測設計からレポート運用までを支援しています。お問い合わせよりご相談ください。

 

本記事の記述は2026年10月23日時点で公開されているHubSpot公式ナレッジベースおよびGoogleアナリティクス公式ヘルプに基づいています。各機能の提供条件、プラン要件、レポートの上限は変更される可能性があるため、導入判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。