HubSpotのService Hubが提供するチケットシステムは、顧客の問い合わせを一元管理し、顧客満足度を高めるための効果的なツールです。このシステムでは、問い合わせの優先順位や進捗状況を一覧で把握し、迅速で的確な対応を実現します。
PwCの調査によると、顧客の約32%が一度の不満足な体験で好みのブランドから離れると回答しているとのこと。カスタマーサポートへの問い合わせの大半が既存顧客からであることを考えると、これらの対応は売上に直結するため重要です。
この記事では、HubSpotのチケット機能の主要な特徴、その活用方法、さらに効率的なチケット作成の手順について、わかりやすく解説します。
HubSpotチケット機能とは、顧客からの問い合わせを「チケット」として管理し、顧客が抱えている問題の解決ステータスや優先順位の管理をする機能です。共有の受信トレイにチケットは一元管理され、メモや対応履歴などもすぐに確認できるため、顧客満足度を高める対応が可能となります。
ここからは、従来のチケット管理システムとHubSpotチケット機能の基礎知識を見ていきましょう。
チケット管理システムとは、顧客サービスやサポートの要求を追跡・管理し、効率的な問題解決を促進するためのツールです。顧客からの問い合わせを「チケット」として扱い、それぞれのチケットには、問い合わせ内容、対応優先度、対応者の情報などが記録されます。
主にカスタマーサポートで活用されますが、ITサービスデスクや人事が社内の技術的な問題やリクエストに対応するために活用することも可能です。チケット管理システムを導入する主なメリットは以下の通りです。
迅速で適切な顧客対応をすることで、顧客関係の強化を見込めます。さらに、チケットをもとにナレッジベースの構築や製品改善へと活かすことも可能です。
HubSpotのチケット機能とは、顧客の問い合わせやリクエストを効率的に処理し、追跡するシステムです。Service Hubの一部であるこの機能は、基本的な操作が無料で可能です。HubSpotチケット機能の主要機能は以下のようになっています。
出典:HubSpot
HubSpotチケット機能の最大の特徴は、CRM(顧客関係管理)システムとの統合にあります。これにより、カスタマーサポートの問い合わせが単にサポート部門内で処理されるだけでなく、セールスやマーケティング部門との連携が可能になります。たとえば、ウェビナー参加者の問い合わせをチケットとして記録し、マーケティングやセールス戦略のためのデータとして活用するなどといった具合です。
HubSpotチケット機能は、顧客からの問い合わせを単なるデータとしてではなく、価値ある顧客インサイトに変換する能力を持っています。各チケットが詳細に顧客の問題やニーズを反映し、これらの情報は企業がサービスを改善し、顧客体験をカスタマイズするための重要な情報源となります。
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HubSpotチケット機能は、顧客サービス管理を効率化し、顧客満足を高めるための多くの機能を備えています。ここからは、主な機能の特徴を見ていきましょう。
HubSpotのチケット機能は、Eメール、フォーム、チャット、電話など、多様なコミュニケーションチャネルからの問い合わせを一元管理することが可能です。このオムニチャネルサポートにより、顧客に対して一貫性のある対応を行うことができます。
たとえば、顧客が最初にEメールで製品に関する問い合わせを行い、その後チャットでフォローアップをする際、サポートチームはこれらのやりとりを同一のチケット内で追跡し、顧客の過去の問い合わせ履歴に基づいて適切な対応を行うことができます。
さらに、様々なコミュニケーションチャネルからの問い合わせがHubSpotのチケットシステムに集約されることにより、サポートチームは複数のプラットフォーム間での切り替えをせずに、効率的に対応することが可能です。
HubSpotのチケット機能におけるモニタリングと進捗管理は、各チケットの現状と進行具合をリアルタイムで追跡することを可能にします。利用可能なステータスは「新規」、「先方待ち」、「要対応」、「クローズ済み」の4種類で、フィルタリング機能を用いて特定のステータスのチケットを素早く抽出することも可能です。
たとえば、日の始めに「新規」ステータスのチケットを確認し、その日の優先タスクを決定できるとともに、「要対応」のチケットをチェックすることで迅速な対応が必要な問い合わせに素早く取り組めます。これにより、顧客の問い合わせに対する反応時間を短縮し、顧客満足度を高めることが可能です。
また、チケットのモニタリングと進捗管理は、サポートチームの作業効率を向上させるだけでなく、顧客サービスの品質管理にも寄与します。サービスマネージャーは、未解決のチケット数や平均解決時間などの重要なKPIを追跡し、サービス品質を向上させるための戦略を立案できます。
クローズ済みのチケットから得られるデータを分析すれば、一般的な顧客の問い合わせや問題点を特定し、根本的な解決策を立てることも可能です。たとえば、ある機能に関連する同様の問題が多く報告されている場合は、その情報を製品開発チームにフィードバックして製品改善を図ることができます。
リアルタイムのモニタリングと進捗管理を通じて、サポートチームは顧客のニーズに迅速に対応できる状態を維持しつつ、サービス品質の継続的な向上に努めることが可能です。
HubSpotのチケット機能では、チケットの割り当てと管理の自動化が可能です。この自動化機能には以下のようなものが含まれます。
これらの自動化機能により、顧客サポートの効率と効果を大幅に向上させることが可能です。結果として、顧客満足度の向上、チームの生産性の向上、そしてビジネスの成長を期待できます。
Service Hub ProfessionalおよびEnterpriseでは、下記4種類の顧客アンケートを実施できます。
ここでは、カスタマーサポートアンケートの詳細を解説します。カスタマーサポートアンケートは、カスタマーサポートの回答やサービスに関するフィードバックです。問題を解決できたかどうかを、7段階で評価してもらいます。Service Hubの場合、チケットがクローズされると、自動的にカスタマーサポートアンケートを配信することが可能です。
顧客からの直接的なフィードバックは、サービスの質を向上させる上で不可欠です。定期的にフィードバックアンケートを実施することで、顧客満足度を分析できます。また、HubSpotは業界標準アンケートを用いているため、競合他社との比較が容易です。
SLAは、企業が顧客に約束するサービスの品質やパフォーマンスを明確に定めた契約です。この約束には、カスタマーサポートチームが顧客からの問い合わせにどれくらい迅速に応答するか、問題解決に必要な時間などが数値化されて記載されます。SLAによって設定されたこれらの基準は、サービスの品質を一定のレベルに保ち、顧客の期待値をクリアにするための重要な指標となります。
SLAを設定することにより、カスタマーサポートチームの責任範囲と期待されるパフォーマンスが明確になるため、顧客の問い合わせへの迅速で効果的な対応が可能となり、顧客満足度の向上につながるでしょう。また、SLAに基づいた数値化された目標は、サービスの品質を測定し、継続的な改善を図るための基準となります。
また、SLAがあることで、顧客は安心感を得られます。顧客は問い合わせやサービスリクエストに対する回答時間や解決までの期間がどれくらいかを事前に知り、企業はサービス提供者としての信頼性と信用を構築することが可能です。
HubSpotのチケット機能は、無料プランと有料プランで提供されるサービスが異なります。ここからは、無料プランと有料プランでできることを見ていきましょう。
無料プランでは以下の機能を利用できます。
無料プランでも、上記の機能を使えるため、小規模ビジネスやスタートアップでも効果的なカスタマーサポートを実現することが可能です。
HubSpotのService Hubの有料プランには、Starter、Professional、Enterpriseの3つのレベルがあり、各プランによって利用できるチケット機能が異なります。
Starterでは、無料機能に加えて、以下のチケット機能を利用できます。
HubSpotのService Hub ProfessionalおよびEnterpriseプランは、Starterプランの機能に加えて、以下のチケット機能を利用できます。
ここでは、HubSpotチケット機能と以下の主なチケット管理システムの比較をしていきます。
出典:Zendesk
Zendeskは全世界で10万社以上が導入している顧客体験最適化プラットフォームです。主にカスタマーサービス、セールス、CRMプラットフォームなどを提供しており、チケット管理システムを含む多様な機能を搭載しています。
オムニチャネルサポートやヘルプセンターの構築、SLAの設定などが可能です。Zendeskの特徴的な点は、自動化機能に注力していることで、通話やボイスメール、テキストから自動チケットを作成。また、AIボットを用いた学習機能、顧客の目的や使用言語、感情に応じた自動チケット分類などがあります。これにより、カスタマーサポート向けの機能が非常に充実しています。
一方で、HubSpotはマーケティング、セールス、サービスを一体化したオールインワンのプラットフォームを提供しています。HubSpotの大きな強みは、そのCRM機能です。
顧客の購買履歴やコミュニケーションの詳細を一元管理し、マーケティングやセールス、カスタマーサービスの各部門がスムーズに連携して、顧客に対して一貫性のある体験を提供できます。HubSpotのチケット機能は、このCRMシステムに統合されており、顧客からの問い合わせやリクエストを効率的に追跡し管理できます。
さらに、HubSpotはカスタマーサービスだけでなく、マーケティングオートメーションやコンテンツ管理、ソーシャルメディアモニタリングなどの機能も提供しており、マーケティングとセールスの効率化も可能です。
出典:Zoho Desk
Zoho Deskは顧客サービスに特化したヘルプデスクツールであり、オムニチャネル対応、顧客満足度調査、ナレッジベース、繰り返し作業の自動化などの基本的な機能を提供しています。チケット機能に関しては、HubSpotと大きな違いはありませんが、2つの重要な異なる点があります。
まず、対応業務範囲の違いです。HubSpotはカスタマーサポートだけでなく、セールスやマーケティング機能も提供しており、これらの部門が統合的に顧客情報を共有し、一貫した顧客体験を提供することが可能です。
一方、Zoho Deskはカスタマーサポートに特化しているため、セールスやマーケティング機能が独立しており、これらの部門間で顧客情報の共有が難しい可能性があります。これにより、顧客体験に一貫性が生じないリスクが考えられます。
次に、料金の違いがあります。Zoho Deskは、スタンダードプランが月額1,680円/人(年間払い)という割安な料金設定であり、導入時の初期費用も発生しません。これは予算が限られているスタートアップや中小企業にとって、始めやすい選択肢となります。HubSpotもまた、料金は割安な部類に入りますが、Zoho Deskほどではありません。
Zoho Deskはカスタマーサポートにフォーカスし、予算が限られた企業に最適ですが、セールスやマーケティングとの統合を求める場合、HubSpotが適していると言えます。
出典:Freshdesk
Freshdeskは、6万社以上が導入しているカスタマーサポート向けソフトウェアで、その特徴は多様な機能と使いやすさにあります。チケット機能においては、マルチチャネルサポート、SLA、繰り返し業務の自動化など、基本的なサポートツールとして必要な機能を提供しています。
さらに、Freshdeskの特徴的な点は、チケット間のリンクや親子チケット機能を含む独自の機能です。これにより、広範囲にわたる問題や複数ステージを持つ問題を、より小さな子チケットに分割し、効率的に解決することが可能になります。
Freshdeskは、Zoho Deskと同じくカスタマーサポートに特化していますが、チケットのリンクや親子チケット機能によって、一度での解決が難しい複雑な問題を扱う企業に特に適しています。また、Freshdeskの月額料金も比較的割安であり、特に中小企業やスタートアップ企業にとって導入しやすい価格設定がされています。
HubSpotチケット機能では、Eメールやチャットなどさまざまなチャネルからチケットを自動生成できます。ここからは、各チャネルでチケットを自動生成する方法を見ていきましょう。
Eメールからチケットを自動生成するためには、まずはチームの共有アドレスを接続する必要があります。共有アドレスを使用することで、共有Eメールアドレスに送信されたメールを受信トレイで管理できるようになります。
設定 > 受信トレイ > 受信トレイの順にクリックし、[チャネルを接続] を選択。
[チームの共有アドレス] を選択。
チーム共有アドレスに使用するメールアドレスタイプを選択し、画面の指示に従い連携を進めます。
右側のプレビューを見ながら、コンタクトにEメールが届いたときに表示される情報を編集。
最後に以下よりコミュニケーションに関する処理を設定して終了です。
[受信したコミュニケーションをサポートチケットとして扱う] にチェックをつければ、Eメールに入ってきた全ての問い合わせがチケットとして記録されます。
次はチャットボット経由での問い合わせを自動でチケット化する方法を見ていきましょう。
コミュニケーション > チャットフロー > [チャットボットを作成] の順にクリック。
チャットボットの設置場所を選択します。
チャットフローの種類を選択。チケットの自動化をする場合は、[チケットボット] を選びましょう。
ボットとのチャット内容を表示する受信トレイと表示言語を選択。
[作成] タブでチャットボットのメッセージシナリオを作成。
[チケットを作成] のアクションをクリックすると、チケット名やステータス、チケットの優先度などを設定できます。
最後にプレビューで仕上がりを確認して完了です。
フォーム送信を自動でチケットに変換する方法を見ていきましょう。
設定 > 受信トレイ > 受信トレイの順にクリックし、[チャネルを接続] をクリック。
[フォーム] を選択。
受信トレイに接続する既存のフォームを選択、もしくは [新規フォームを作成] をクリック。
有料プランの場合、自動でコミュニケーションを割り当てるメンバーを指定して完了。
ワークフローを活用したチケット自動生成では、顧客からのメール、フォームの提出、または特定の行動など、予め定義したトリガーに基づいて自動的にチケットを生成できます。たとえば、特定の商品に関する問い合わせがあった際、自動的にサポートチケットを作成することが可能です。
ワークフロー機能は自動化を通じて、手動でのチケット管理にかかる時間と労力を削減し、チームの生産性を高めます。ただし、この機能をフル活用するには、ProfessionalまたはEnterpriseプランへの加入が必要です。これらのプランでは、より高度なワークフローのカスタマイズや複雑な自動化が可能となり、企業のニーズに合わせた柔軟なカスタマーサポート戦略を実現できます。
ここでは、チケットを手動生成する方法をご紹介します。
チケットパイプラインから手動で作成する手順は以下の通りです。
サービス > チケット > [チケットを作成] の順にクリック。
チケット名やパイプライン、ステータス、担当者などを入力し、[作成] をクリックして完了。
受信トレイから手動でチケットを追加する手順は以下の通りです。
コミュニケーション > 受信トレイの順にクリックし、チケットを追加するコミュニケーションを表示。
[チケットを作成] をクリックし、詳細を入力して完了。
なお1つのコミュニケーションに紐づけられるのは、1つのチケットです。コミュニケーションをゴミ箱に移動すると、関連付けられたチケットも削除されます。
チケットをパイプラインで管理することで、顧客とのやり取りをリアルタイムで把握できるようになります。問い合わせ内容や優先順別などでパイプラインを作成し、効率よくチケット管理をしましょう。
まずはパイプラインを作成する必要があります。作成できるパイプラインの数は、下記のとおりです。
設定 > オブジェクト > チケット > パイプラインの順にクリック。
[パイプラインを選択] のドロップダウンメニューをクリックし、[パイプラインを作成] を選択。
その後、パイプライン名を入力し、パイプラインのステージを編集します。
パイプラインを作成したら、[自動化] タブを開きましょう。[自動化] タブでは、以下の設定ができます。
チケットステータスの更新自動化では、Eメールの返信状況により、チケットのステータスを自動更新できるように設定可能です。
HubSpotチケット機能を使えば、顧客が抱えている問題の解決ステータスや優先度などを管理し、顧客満足度の向上やカスタマーサポート業務の効率化を実現できます。また、ワークフローの自動化機能を利用することで、繰り返し発生するタスクを減らし、サポートチームの生産性を向上させることも可能です。
HubSpotのチケット機能の最大の特徴は、CRMシステムとの統合により、セールスやマーケティング部門との情報共有が容易になり、全社的な顧客中心のアプローチを実現できること。ぜひチケット機能を活用し、カスタマーサポートの質を向上させるだけでなく、ビジネス全体の顧客体験を改善してください。