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【基礎徹底解説】CRMとは?機能やメリット、選び方など紹介

作成者: 渋谷 真生子|2025/04/22

CRM(顧客関係管理)は、顧客との良好な関係を構築・維持するために、顧客情報や購買履歴・接点などを管理することです。顧客満足度や企業利益の向上を目指すための手法として、営業活動やマーケティング活動を中心に用いられています。

CRMを実施するためのCRMシステムにはさまざまなものがあり、国内外で導入が進んでいます。Fortune Business Insightsのレポートによると、世界のCRM市場は、2024年の1014.1億米ドル(2025年1月現在の為替レートで約15兆8135億円)から、2032年には2627.4億米ドル(約40兆9707億円)に達すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は約12.6%になる見込みです。

広く浸透しつつあるCRMですが、効果的に導入・運用するためには、その機能や活用方法を理解しておくことが重要です。

本記事では、CRMの基本的な機能やメリット、選び方のポイント、無料・有料CRMの違い、導入手順や成功のためのポイント、おすすめCRMシステム、導入事例について詳しく解説します。

CRM(Customer Relationship Management)とは

まずは、CRMの基礎を確認しておきましょう。ここでは、CRMの概要や考え方と、 CRMを導入する目的、日本でのCRMの導入率、CRM導入が急速に進む背景について解説します。

CRMとは

CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)とは、顧客情報やコミュニケーションなどの接点を一元管理することです。

顧客ニーズに応じたサービス提供や営業活動を行うことで、顧客との良好な関係を維持し、企業の競争力を高めることを目的としています。

CRMを実施するためのシステムは、「CRMシステム」や「CRMツール」と呼ばれますが、これらを含む全体的な概念として「CRM」と表現されることも多いです。

従来、企業の営業活動やマーケティング活動では、顧客情報を各部署で個別に管理していたため、顧客とのやり取りが断片的になることがありました。しかし、CRMを活用することで、顧客の購買履歴や行動データ、問い合わせ内容などの情報を一元管理でき、部門間での共有が可能になります。これにより、顧客との関係性が強化され、より効率的な対応を実現しやすくなります。

CRMを導入する目的

CRMを導入する主な目的は、顧客との関係を強化して顧客満足度を向上させ、LTV(顧客生涯価値)を最大化することで、ビジネスの売上や利益を増加させることです。

CRMで顧客との取引やコミュニケーションに関するデータを一元管理・活用することで、顧客の潜在的なニーズを引き出し、最適な対応を実現しやすくなります。これにより顧客満足度が向上し、より多くの新規顧客を獲得できます。

さらに、CRMは新規顧客の開拓だけでなく、優良顧客の維持や育成にもつながります。顧客の購買履歴や問い合わせ内容などのデータを活用して、個別に最適化されたサービスを提供することで、より深い関係性を築くことができます。これにより、長期的な顧客ロイヤルティの向上が期待でき、ビジネスの成長につながります。

また、CRMには業務効率化を図る目的もあります。CRMシステムでは顧客情報を効率的に可視化できるため、営業担当者やカスタマーサポート担当者に分散している情報を統一して管理・共有することが可能です。顧客ごとの状況をリアルタイムで把握し、必要な情報を迅速に得ることで、顧客対応のスピードや精度が向上し、業務の効率化が進みます。

このように、CRMシステムの導入には、顧客との信頼関係を深めると同時に、業務の効率化を実現させるという目的があります。

日本でのCRMの導入率

IDC Japan 株式会社(以下、IDC)が、2024年6月に発表した「国内CX/CRMアプリケーション市場予測、2024年~2028年」によると、2023年の国内顧客エクスペリエンス(CX)関連ソフトウェア市場は前年より9.5%増加し、市場規模は7079億9800万円に達しています。

なかでも、主要市場となる2023年の国内CRMアプリケーション市場は、13.4%の増加を記録し、市場規模は2497億8600万円となっています。

IDCの予測では、国内のCX関連ソフトウェア市場とCRMアプリケーション市場は2024年以降も引き続き成長が見込まれています。その要因として、デジタルファーストを基盤にしたCX/ビジネスモデルの構築や、労働人口減少に対応するための生成AI機能を活用したシステムの刷新、その効果を最大限に引き出すためのデータ活用基盤の整備が挙げられています。

特に国内CRMアプリケーション市場は、2023年から2028年の間に年平均成長率(CAGR)9.6%で成長し、2028年には市場規模が3950億8200万円に達する見込みです。

CRM導入が急速に進む背景

CRMの導入が急速に進んでいる背景として、以下の3つが挙げられます。

  • 変化し続ける顧客ニーズに応えるため
  • 業務の効率化とコスト削減を実現するため
  • 顧客満足を向上させ、顧客生涯価値(LTV)を高めるため

現代は情報へのアクセス手段が多様化しており、一人ひとりのニーズにあわせたサービス提供が求められています。従来の一律なアプローチではすべてのニーズに応えることが難しく、CRMを活用して個別に最適化されたサービスを提供する必要性が高まっています。

また、CRMで顧客データを一元管理することで、情報の重複や非効率的な業務を削減することにも役立ちます。営業担当者やカスタマーサポートチームが必要な情報に迅速にアクセスし、業務を効率よく進められるため、コストの削減にも貢献します。

さらに、CRMを活用して顧客との関係を強化することで、再購入や継続的な利用を促し、長期的な顧客生涯価値(LTV)を最大化することも期待できます。

よく勘違いされるSFAやMA、ERPとの違い

CRMと混同されやすいツールとして、以下の3つが挙げられます。

  • SFA(Sales Force Automation/営業支援システム)
  • MA(Marketing Automation/マーケティングオートメーション)
  • ERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画、基幹統合システム)

これらのツールは、いずれもビジネスの効率化や顧客対応に関連していますが、それぞれが持つ役割や目的、使用される部門・部署には明確な違いがあります。

ここでは、CRMとSFA・MA・ERPとの関係性や違いについて詳しく解説していきます。

CRMとSFA・MA・ERPの関係性

CRMとSFA・MA・ERPは、企業の業務を効率化するために異なる領域で活用されるツールですが、それぞれ密接に関連しており、統合的に運用することで全体の業務効率を高められます。

【CRMとSFAの関係性】

SFAは、営業活動を効率化し、商談の進捗状況や営業活動を自動的に記録・管理するためのツールです。

CRMが顧客との関係全体を管理するのに対し、SFAは営業活動に特化しており、営業プロセスと顧客情報を統合することによって、より効果的な顧客対応を実現できます。

SFAによって営業部門が効率的に活動できると、商談の進捗状況がCRMに反映されやすくなり、常に最新の顧客情報を保持することが可能です。

【CRMとMAの関係性】

MAは、マーケティング活動の効率化を目的として、リード(見込み客)の獲得や育成を自動化するツールです。

CRMが顧客全般の管理を担うのに対し、MAは主に新規顧客の獲得(リードジェネレーション)に焦点を当てています。

MAは、CRMに蓄積された顧客データをもとに最適なコンテンツやキャンペーンを提供し、リードの育成を目指します。CRMとMAの連携により、見込み客から顧客への転換がスムーズになり、より効果的にマーケティング施策を実行できます。

【CRMとERPの関係性】

ERPは直訳では企業資源計画を指しますが、「統合基幹業務システム」の意味で使用されることが一般的です。企業全体の業務を一元的に管理するシステムであり、財務や人事、在庫管理、製造などの部門を統合的に管理する際に用いられます。

CRMが顧客との関係管理に特化しているのに対し、ERPは内部資源の管理を担います。ただし、顧客に関連するデータ(売上情報や在庫データなど)の統合のために、CRMとの連携が求められる場合があります。

ERPによって企業全体のリソースを最適化し、CRMで顧客との接点を最適化することにより、企業の業務全体における効率化と顧客体験の向上につながります。

CRMとSFA・MA・ERPの違い

CRMとSFA・MA・ERPには、それぞれ異なる目的や役割があります。各ツールの違いは、以下の通りです。

【CRM】
CRMは、顧客との長期的な関係構築を目的とし、顧客ロイヤリティを向上させるために利用されます。営業・マーケティング・カスタマーサポート部門を連携させ、顧客対応を効率化することで、顧客満足度の向上を図ります。

【SFA】
SFAは、営業活動を自動化して営業チームの効率を高めるために用いられます。CRMと異なり、SFAは営業プロセスに特化しており、営業部門に向けて設計されています。CRMが顧客全体を管理するのに対し、SFAは営業活動に焦点を当てています。

【MA】
MAは、マーケティング活動の自動化を目的とし、見込み客の獲得と育成を行うために活用されます。具体的には、CRMのデータを活用し、見込み客を顧客へ転換する役割を果たします。CRMが主に既存顧客との関係維持に利用されるのに対し、MAは新規顧客獲得に重点を置いています。

【ERP】
ERPは、企業内のリソース(財務・人事・在庫・製造・販売など)を一元的に管理するシステムです。顧客管理ではなく、企業内部の業務プロセスの効率化を目指す点で、CRMと異なります。

これらのツールはそれぞれ異なる役割を持ちますが、組み合わせることで企業全体の効率化と顧客満足度の向上に貢献します。

CRMを導入するメリット

CRMは、企業が顧客との接点を一元的に管理し、効率的に運営するための重要なツールとなります。ここでは、CRMを導入する具体的なメリットについて詳しく説明します。

情報のリアルタイム共有

CRMを導入することで、社内の各部門で顧客情報をリアルタイムで共有できるようになり、部門を超えた協業をより行いやすくなります。

2024年12月にソフトブレーン株式会社が実施した「営業とマーケの間にある溝とは?~営業部門/マーケティング部門の部門間連携に関する課題調査~」によると、営業部門の29.5%、マーケティング部門の37.4%が「部門間連携に満足していない」と回答しており、連携改善の必要性が浮き彫りになっています。

CRMを活用すると、営業・マーケティング・カスタマーサポート部門などが同じプラットフォームで情報を更新し、即座に確認できるため、部門間の連携が円滑になります。

例えば、顧客の購入履歴や問い合わせ履歴をすぐに把握でき、担当者が以前のやりとりを踏まえた対応を迅速に行えるようになります。これにより、顧客との接点で生じる情報の伝達ミスや対応の遅れを防ぐことができ、顧客満足度を向上させることが可能です。

さらに、リアルタイムでの情報更新により、営業部門が最新の顧客情報をもとに戦略的な営業活動を展開でき、競合他社との優位性を保ちやすくなります。

情報の一元管理による生産性の向上

CRMを導入するメリットとして、顧客情報を一元的に管理できる点も挙げられます。

総務省の令和5年版「情報通信白書」によると、顧客の基本情報などの「パーソナルデータ」の活用状況について、「既に積極的に活用している」および「ある程度活用している」と回答した日本企業の割合は52.8%でした。

引用:令和5年版 情報通信白書|企業の意識|総務省

この数値は、2019年度の調査結果から増加しているものの、諸外国の企業と比べると依然として低い水準にとどまっています。

CRMを導入し顧客情報を一元管理することで、顧客に関するデータを複数のシステムで管理する必要がなくなり、作業の重複を減らし、業務の効率化を実現できます。また、情報が一元化されることでレポート作成や分析が容易になり、意思決定の迅速化にもつながります。このような効率化により、生産性が大幅に向上し、社員の負担も軽減されます。

カスタマーエクスペリエンスの向上

顧客との関係を深め、満足度を向上させるためには、企業側が一貫性のあるサービスを提供することが重要です。

CRMを導入することで、部門間連携やリアルタイムでの情報共有が可能になり、顧客ごとの履歴や好みに基づいてパーソナライズされたサービスを提供しやすくなります。例えば、過去に購入した商品や問い合わせ内容をもとに、次に提案する商品やサービスを最適化するといった方法です。

さらに、CRMを活用して顧客からのフィードバックや評価を集めて分析することも可能で、迅速に問題点を把握し、改善策を講じることができます。

このようなデータドリブンなアプローチにより、顧客のニーズを先取りした対応ができ、結果として顧客のロイヤルティが高まり、リピート率の向上にもつながるでしょう。

自動化により業務生産性向上

CRMには、営業活動やカスタマーサポート業務の自動化機能が搭載されていることが多く、この機能を活用することで業務の効率が大幅に向上します。具体的には、通知機能やワークフローを活用することで、反復性のある業務を自動化し、業務生産性向上につながります。

例えば、営業活動の進捗管理や顧客とのメール対応の自動化を行うと、担当者が手動で実施していた作業を省略し、より重要な業務に集中できるようになるでしょう。

また、顧客の行動に基づいたトリガーアクション(例:購入後のフォローアップメール送信など)を自動で設定できるため、顧客対応の精度とスピードが向上します。これにより、営業チームはより多くの商談を効率的に進めやすくなり、営業活動全体の生産性を向上させることができます。

さらに、カスタマーサポートにおいても、よくある質問(FAQ)の自動応答システムを活用することで、対応時間の短縮が可能となり、スタッフはより複雑な問題に注力できます。

CRMの基本的な機能

CRMにはさまざまな機能が搭載されており、企業の目標や業務プロセスに応じて柔軟に活用できます。ここでは、CRMの基本的な機能について詳しく説明します。

顧客情報管理

顧客情報管理とは、顧客の基本情報に加えて、取引や商談の日付、商談内容などの履歴を一元管理する機能です。顧客との接点や履歴を統合的に把握し、顧客理解を深め、適切かつ迅速な対応を可能にする目的で活用されます。

【基本的な機能】

保存された顧客情報は、統一されたIDに基づき一元管理され、簡単にアクセスできるよう設計されています。さらに、管理したい項目をカスタマイズして追加することも可能です。

リード管理

CRMのリード管理機能は、見込み客(リード)に関する情報を管理し、購買や成約へと結びつけるための機能です。リードの獲得から育成、商談化に至るまでのプロセスを効率化し、売上の向上を目指す際に活用されます。

【基本的な機能】

リード管理機能は、営業部門とマーケティング部門の連携を強化し、商談率や成約率の向上するために役立ちます。

ワークフローの自動化

ワークフローの自動化機能は、タスクの管理・割り当て・進捗状況の把握・承認・報告といった営業プロセスを効率化するための機能です。主に、繰り返し発生する業務を自動化することで、業務効率の向上を目指すために活用されます。

【基本的な機能】

ワークフローの自動化機能では、案件の進展に応じてメールによる通知やタスクの割り当てを自動的に実行するため、対応漏れを防ぐことにもつながります。また、取引合意の承認や出張報告といった承認・報告プロセスも自動化できるため、社員の負担を軽減し、より重要な業務に集中しやすくなります。

データ分析機能

データ分析機能は、蓄積された顧客データをもとに、さまざまな観点から表やグラフを作成し、分析結果を表示する機能です。この機能の目的は、収集したデータを活用して洞察を得ることで、戦略的な意思決定をサポートすることにあります。

【基本的な機能】

データ分析機能を活用することで、成約率の高い営業アプローチの特定や、既存顧客の購買傾向の分析などが可能になります。これにより、迅速で的確な意思決定が可能となり、ビジネス全体の成果向上に寄与します。

モバイルアプリ機能

CRMのモバイルアプリ機能は、CRMのソフトウェア機能をモバイルデバイス上で利用可能にするための機能です。この機能により、外出先で顧客データを確認することやレポートの提出、迅速な顧客対応が可能になります。

【基本的な機能】

モバイルアプリ機能は、特にフィールド営業やリモートワークの普及が進む現代において、必須の機能といえるでしょう。

CRMの失敗しない選び方

CRMを導入する際には、適切なシステムやツールを選定することが重要です。自社のニーズと異なるものを選んでしまうと、運用が滞り、期待した成果を得られない可能性があります。

ここでは、CRM選定時に考慮すべき5つのポイントを解説します。

ユーザーの使いやすさ

CRMが現場で活用されるためには、ユーザーにとって使いやすいことが不可欠です。操作が複雑であったり直感的に利用できなかったりする場合、現場で定着せず、十分な効果を発揮できません。

株式会社IDEATECHが2024年11月に実施した調査によると、「現在使用しているHubSpotなどのツールの使用感について教えてください。」という質問に対し、「非常に使いやすい」と回答した人は16.7%、「やや使いやすい」と回答した人は43.6%で、合わせて6割以上が「使いやすい」と感じていることがわかりました。

引用:CRM担当者のCRMツール利用に関する実態調査|株式会社IDEATECH

一方で、「やや使いにくい」と答えた人は24.8%、「非常に使いにくい」と答えた人は1.0%と、約3割が使いにくさを感じている状況も浮き彫りとなりました。

また、「ツールが使いにくいと思う理由」を尋ねたところ、「操作が複雑で習得に時間がかかる」が最も多く65.4%、続いて「必要な情報の入力に時間がかかる」と「画面の遷移が多く、操作が煩雑」がそれぞれ34.6%となっています。

ユーザーが使いやすいCRMを選定するためには、具体的に以下の点に注目して選ぶと良いでしょう。

  • 操作画面のデザイン
  • トレーニングの容易さ
  • モバイル対応

直感的で分かりやすいインターフェースであるかを確認することが重要です。実際の使用感やトレーニングしやすさを確認するためには、現場の声を事前にヒアリングし、選定段階でデモ版を試用することをおすすめします。

また、外出先でもスマートフォンやタブレットで利用できるかという点もチェックすべきポイントです。

サポート体制が充実しているか

CRMを導入する際には、サポートが充実しているベンダーを選ぶことも重要です。特に、初めてCRMを導入する企業にとって、運用が軌道に乗るまでには多くの課題が発生する可能性があります。こうした課題に対処するためには、ベンダーからの手厚いサポートが欠かせません。

具体的に確認すべきサポート内容は、以下の通りです。

  • 導入時の支援
  • トレーニングプログラム
  • アフターサポート

初期設定やデータ移行、システムのカスタマイズに対応してくれるかを確認しましょう。また、担当者やスタッフ向けの研修やオンライン講座が充実しているかもチェックしておくと良いでしょう。

さらに、運用中のトラブルに迅速に対応できる体制が整っているかも重要な判断材料となります。サポート体制が充実しているベンダーを選ぶことで、システム導入初期の負担を軽減し、スムーズな運用を実現できます。

現状のSFA・MAなどの他システムとの連携

CRMを選定する際に、既存のSFAやMAとの連携が可能かどうかを必ず確認することが重要です。CRMは単体で運用する場合でも効果は得られますが、SFAやMAと連携することで、より高い成果が期待できます。

確認すべきポイントは、以下の通りです。

  • 既存システムとの互換性
  • データ一元管理の容易さ
  • APIの有無

現在使用しているSFAやMAがある場合、それらとデータ連携が可能かを確認することが重要です。異なるシステム間で、顧客情報がスムーズに共有されるかをチェックしましょう。また、カスタマイズが必要な場合に備えて、APIが提供されているかも確認しておく必要があります。

事前にシステム連携の可否を確認することで、導入後のトラブルや予期せぬ追加コストを防ぐことができます。

実績・評判を確認する

CRM選定において、ベンダーの実績や評判を調査することもポイントです。導入後の満足度や運用効果を確認するためには、以下の情報を収集すると良いでしょう。

  • 同業他社での導入事例
  • 口コミやレビュー
  • 導入実績数

業界特有の課題に対応できる適切なソリューションが提供されているかを確認し、第三者の評価やユーザーの口コミも参考にしましょう。広く利用されている製品は、信頼性が高い傾向にあります。

また、信頼性のあるCRMを選ぶためには、ベンダーの提供する情報だけでなく、自主的なリサーチも重要です。

CRMのカスタマイズ性

企業によって営業プロセスや業務フローは異なるため、CRMのカスタマイズ性は選定時の重要なポイントとなります。特に、複雑な営業プロセスや独自の業務要件を持つ企業では、柔軟に調整可能なCRMが求められます。

CRMのカスタマイズ性について確認すべきポイントとして、以下が挙げられます。

  • 項目や画面のカスタマイズ
  • ワークフローの設定
  • アップデートの柔軟性

必要なフィールドやレイアウトが簡単に調整できるかといった点や、独自の業務フローに対応した自動化ルールを設定できるか、システムが企業の成長に合わせて拡張可能かを確認しましょう。

事前にカスタマイズ性を確認することで、導入後に「期待した機能が実現できない」といった問題を防ぎ、長期的に安定した運用が可能なシステムを構築できます。

無料CRMと有料CRM

CRMには無料版と有料版があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、企業の規模や目的に応じた選択が重要です。

ここでは、無料版CRMと有料CRMの違いやおすすめの無料CRMツール、無料版を利用する際の注意点について詳しく解説します。

無料CRMと有料CRMの違い

無料CRMと有料CRMの違いとして、無料版では多くの場合、機能や利用範囲に制限がある点が挙げられます。

以下は、無料版と有料版の主な違いを5つの観点で比較した表です。

無料版は有料版の一部機能しか利用できないことが一般的です。特に、高度な分析機能やAPI連携などは有料版でのみ提供されるケースが多いです。

無料版は試験的に使用する際には便利ですが、本格的な運用を目指す場合には、有料版を選ぶことで制限を気にせず安心して利用できるでしょう。

おすすめ無料CRM

無料で利用可能なCRMツールとして、HubSpotZoho CRMについて、それぞれの特徴をご紹介します。

HubSpotは、世界135カ国以上で23万8000社(2025年1月時点)が利用する人気のCRMです。

引用:HubSpotの無料CRM

HubSpot CRMの無料版では、以下の機能を利用可能です。

  • ミーティングのスケジュール設定
  • Eメールテンプレート作成ツール
  • 無料のウェブチャット機能
  • AI搭載のEメール生成機能

特徴として、無料版の使用期間に制限がなく、コストを抑えながら企業の成長に応じて拡張できる点が挙げられます。特にインバウンドマーケティングを重視する企業に適しており、オンラインでのリード獲得やナーチャリングに強みがあります。

Zoho CRMは、世界で25万社以上が導入しているCRMです。無料版でもSFAやMAの基本機能が含まれており、小規模~中小企業での利用に最適です。

Zohoの特徴として、営業フェーズの管理や見積書・請求書の作成機能が充実しており、従来型の営業活動にも対応している点が挙げられます。また、低コストで導入できるため、小規模ビジネスにも適しています。

無料CRMを利用する際の注意点

無料CRMを導入する際には、以下の点に注意が必要です。

【利用期間の制約】
有料CRMを無料で試せる「お試し版」や「トライアル版」の場合、利用期間が限られることが一般的です。例えば、Zoho CRMの無料トライアルでは15日間、HubSpotの無料トライアルでは14日間の利用期間が設定されています。なお、Zoho CRMとHubSpotいずれも、無料版は利用期間に制限はありません。

【サポート体制と機能制限】
無料版では、サポート体制が十分でない場合があります。例えば、HubSpotの無料版のように、ライセンス数やデータ量に制限が設けられているケースも多いです。これらの制限が業務に影響を与える可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。

【セキュリティとデータ保護】
無料版はセキュリティ機能が限定的な場合が多く、顧客情報や重要なデータを扱う際にはリスクを伴うことがあります。特に高度なデータ保護が求められる場合は、有料版への移行を検討することが望ましいでしょう。

無料版は、基本的な機能を試すためのツールとして利用することが適しています。実際に業務で使用する場合は、有料版が必要になる可能性が高いため、まず無料版を試用し、自社の業務に合うかどうかを確認することをおすすめします。

CRMの導入時の重要なステップ

CRMは顧客満足度向上や業務効率化に貢献するツールですが、ただ単にツールを導入するだけでは、期待される効果を得られない場合も多いため、事前準備や社内調整が重要です。

ここでは、CRMを効果的に導入し、成果を最大化するために押さえておきたい重要なステップを8項目に分けて詳しく解説します。

1. CRM導入プロジェクトを立ち上げる

まず、CRM導入を成功させるためには、導入を推進するプロジェクトとチームの立ち上げを行う必要があります。

このチームには、システム管理を行うIT部門だけでなく、営業・マーケティング・カスタマーサポート部門など、実際にCRMを活用する現場からもメンバーを選出することが理想的です。

また、プロジェクトリーダーを明確にすることも重要です。リーダーは全体の進行を管理し、スケジュール調整や各部門間の意見調整を行う役割を担います。

さらに、定期的に進捗を確認するミーティングを設定することで、プロジェクト全体の透明性を確保し、チームの結束力の強化にもつながります。

2.CRM導入によって実現したいこと、現状の課題の洗い出し

次に、CRM導入の目的と現状の課題を明確にします。目的が不明確なまま導入しても、システムが効果的に活用されず、投資効果が得られない恐れがあるためです。

まず、現行の業務プロセスを詳しく分析して課題を洗い出し、目標達成のために必要なプロセスを再設計します。

例えば、「顧客情報が分散しているため情報共有が遅れる」「営業活動が属人的でフォローが不十分」といった課題を特定し、「データの一元管理」や「顧客ロイヤルティの向上」などの具体的な目標を設定します。これにより、CRM導入後の成果を測定しやすくし、プロジェクトの方向性を明確にできます。

3. 目標を達成するために必要な機能をリストアップ

自社の目標を達成するために必要な、CRMの機能の洗い出しを行います。必要な機能を明確にすることで、導入候補のシステムを効果的に比較・選定しやすくなります。

例えば、営業プロセスの可視化に役立つパイプライン管理機能や、顧客データを統合するための一元管理機能は、多くの企業で必須とされる機能です。

また、MA機能や、カスタマーサポートに特化した機能など、業界や業務に応じた追加機能についても検討しておきましょう。

4. 無料アカウントや無料トライアルを活用してUIや機能の確認

CRMの候補が絞り込まれたら、次に自社の業務に合ったシステムかどうかを確認するために、無料アカウントやトライアル版を活用します。この際、実際にシステムを使用する従業員に体験してもらい、操作性や機能性に関するフィードバックを集めることが重要です。

具体的には、ユーザーインターフェース(UI)が使いやすく直感的であるか、必要な機能に素早くアクセスできるかといった点を確認します。また、営業プロセスやデータ入力のシミュレーションを行い、業務との適合性を評価しておくこともポイントです。

この段階で収集したフィードバックは、最終的なCRM選定において貴重な判断材料となります。

5.ベンダー選定

CRM導入の成功には、信頼できるベンダーの選定が欠かせません。ベンダーの信頼性やサポート体制を慎重に調査し、自社に最適なCRMを選びましょう。例えば、ベンダーの過去の導入実績や顧客の評価を参考にすることで、信頼性を確認できます。

ベンダー選定では、料金体系を確認し、費用対効果を検討することも重要です。株式会社IDEATECHの調査では、ツール運用費用が高い理由として、「カスタマイズや追加機能の費用」が42.7%、サポートサービス料金が36.0%、訓練や研修コストが24.0%挙げられています。

引用:CRM担当者のCRMツール利用に関する実態調査|株式会社IDEATECH

初期費用や月額料金だけでなく、カスタマイズや追加機能にかかる費用や、学習サポートのためのコストなども詳細に比較し、自社の予算に合った製品を選ぶことが求められます。

さらに、導入後のサポート体制が整っているかどうかも重要なポイントです。24時間対応のサポート窓口があるか、カスタマイズ対応が可能かなどを確認しましょう。

6.移行データの準備と整理

CRM導入の際には、既存データの整理と準備が必要です。不正確なデータや重複情報を除去しておくことで、システム移行後のデータ品質の向上につながります。

例えば、顧客名や連絡先の一貫性を確認し、古いデータを削除することで、移行作業をスムーズに進めやすくなります。

また、データ移行前には、移行ツールやスクリプトを使用して、トラブルを未然に防ぐためのテストを行うことも推奨されます。

7. 社内でのユーザートレーニング

CRMの導入効果を最大化するためには、システムを利用する社員全員が基本操作や活用方法を理解していることが重要です。具体的には、実務に即したトレーニングプログラムを用意すると良いでしょう。

例えば、営業部門には商談管理の活用方法を、カスタマーサポート部門には問い合わせ管理の効率化について具体的に説明します。また、社内にマニュアルを整備し、トラブルが発生した際に即座に対応できる体制を整えておくことが重要です。

8. CRM運用開始

すべての準備が整った後は、段階的にCRMの運用を開始します。一部のチームで試験的に導入し、運用上の課題や改善点を確認した後、全社的な展開を行います。

運用開始後は、システムの利用状況や成果を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善を行います。仮に利用頻度が低い機能があった場合、その原因を特定し、適切な改善策を講じることが求められます。

CRMを定着させるポイント

CRMツールは営業やマーケティングの効率を高め、顧客との関係を深めるために有効なツールですが、導入と定着には課題も多く、適切なステップを踏まなければせっかくの投資が無駄になる可能性もあります。

2023年12月に株式会社OpenModelsが実施した「CRMツール浸透実態と課題に関する調査」によると、CRMツールの定着率は全体の40%にとどまっています。

CRMを定着させるポイントを実践することで、ツールを社内に定着させ、業務の効率化や顧客関係の強化を実現できる可能性が高まるはずです。ここでは、CRMを定着させるための具体的なポイントについて解説します。

導入の目的を社内で言語化する

まずは、CRMの導入によって何を実現したいのかを明確にすることが定着の第一歩となります。CRMはあくまでツールであり、導入目的が曖昧だと、利用者にとってツールの必要性が感じられず、積極的な活用が進みません。

例えば、営業チームの目標が「成約率の向上」であった場合、CRMを用いて顧客データを一元管理し、効果的なアプローチを可能にすることが目的となるでしょう。また、カスタマーサポート部門であれば、「問い合わせ対応の効率化」という目的が想定されます。

このように、部門ごとに目的を具体的に言語化し、全社的な共有を図ることで、社員が「何のために使うのか」を理解できるようにすることが重要です。

また、目的が共有されることで、導入後に行うべき施策や評価基準も明確になります。具体的には、「顧客データの入力率を80%以上にする」「対応時間を30%短縮する」など、測定可能な目標を設定しやすくなるでしょう。

経営層・マネジメント層のコミットメント

CRMの定着には、現場だけでなく経営層やマネジメント層の積極的な関与が不可欠です。しかし、すべての経営者がCRMのメリットや必要性を十分に理解しているわけではありません。

導入のプロセスでは、経営層やマネージャーに対し、CRMがもたらす具体的なメリットや活用方法を粘り強く訴えることが求められます。

また、CRMの導入は現場にとって大きな変化を伴う可能性があります。特に現場の担当者にとっては「自身の活動が可視化される」というプレッシャーもあり、抵抗感が生じる場合もあります。

そのため、早い段階で経営者を巻き込み、導入推進の旗振り役としてもらうことが大切です。

CRM運用における責任者・担当者を設ける

CRMツールを定着させるうえで、責任者や担当者の存在は欠かせません。現場のユーザーがシステムの使い方に迷った際や、不満を感じたりした際に、相談できる窓口がなければツールが十分に活用されないまま放置されてしまうことがあります。

責任者や担当者には、次のような役割が期待されます。

  • ユーザーの問い合わせや問題に迅速に対応する
  • 社内でのトレーニングや情報共有を行う
  • システムの運用状況を定期的にチェックし、必要な改善を提案する

特に、現場からの反発や抵抗感が生じた場合には、その原因を迅速に特定し、適切な対策を講じることが重要です。このような役割を担う担当者を設置することで、ツールの利用率が向上し、定着しやすくなります。

実際に弊社、株式会社100(ハンドレッド)が対応した事例として、CRM運用に責任者や担当者を設けたことで成果を上げたケースがあります。この企業様は、以前はCRMを十分に活用できておらず、高額なライセンス料に見合う効果を得られていないという課題を抱えていました。そこで、HubSpotへ移行し、専任の担当者を配置してユーザーが気軽に質問や相談できる体制を整えたことで、CRMの活用が大きく進展しました。

出典:SalesforceからHubSpotへの移行で年間2,000万円以上のコスト削減事例

導入だけではなく運用におけるPDCAを回す

CRMツールは、導入しただけでは効果を発揮しません。その真価は、運用を通じて得られるデータを活用し、業務改善を図るプロセスにあります。そのため、運用段階でのPDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを回すことが欠かせません。

例えば、以下のような運用プロセスが考えられます。

また、導入時には現場の従業員からヒアリングを行い、ツールが実際の業務フローに適合しているかを確認することも重要です。これにより、現場の抵抗感を和らげ、ツールの活用を促進することができます。

よく比較されるおすすめCRMシステム

CRMには多数のシステムがあり、それぞれに特徴や強みがあります。導入を検討する際には、自社のニーズに最適なシステムを選ぶことが不可欠です。

ここでは、よく比較されるおすすめのCRMシステムについて、それぞれの特徴を詳しくご紹介します。また、ビジネスソフトウェアやサービスのレビューサイト「G2.com」での評価や、導入されている企業の傾向についても解説します。

Salesforce 「柔軟なカスタマイズ性が評価を得ているAI搭載CRMツール」

引用:Sales Cloud|Salesforce

株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するSalesforceは、クラウド型の営業支援(SFA)・顧客管理(CRM)システムです。

顧客管理や営業支援、商談・案件管理、見積管理、売上予測など、多岐にわたる機能を搭載しており、営業活動の効率化や売上予測の精度向上、コールセンター業務の効率化と顧客満足度向上をサポートしています。

製品の一つである「Sales Cloud」は、AIを搭載したCRMツールです。この中に組み込まれたSales Engagement機能は、営業プロセスの効率化に役立ちます。

例えば、顧客が使用するあらゆるチャネルに対応して、営業担当者がSalesforce上で直接コミュニケーションを取ることが可能です。AIを活用することで、案件に関するインサイトの提供や成約見込みの高い商談への優先対応を可能にしています。

Salesforceは2025年1月時点で、G2にて5つ星中4.4の評価を受けており、使いやすさや高いカスタマイズ性が高く評価されています。

特に、中規模企業(従業員51~1000人)や大企業(従業員1000人以上)で多く利用されており、従業員50名以下の中小企業でも一定の支持を得ています。

一方で、Salesforceの課題として、学習曲線の長さや料金の高さが挙げられる点には注意が必要です。

Microsoft「Office 365と統一されたインターフェースのCRM・ERPツール」

引用:Microsoft Dynamics 365

Microsoft Dynamicsは、マイクロソフトが提供する業務用アプリケーションおよびプラットフォームの製品群の総称です。このシリーズは、CRMとERP機能を備えた「Dynamics 365」と、Power Platform製品で構成されています。

日本企業の海外展開や外資系企業の国内導入においても数多くの実績があり、特にOffice 365と統一されたインターフェースで操作できる点が特徴です。

このシステムでは、商談のスケジュール管理や顧客とのメールのやり取りを自動的にCRMに記録できるほか、CRMデータをExcelにエクスポートして分析レポートや報告書を効率的に作成できます。

また、必要な機能を段階的に導入できるため、最低限の範囲から開始し、業務プロセスを徐々に改善しながらコストパフォーマンスを最大化することが可能です。

G2では、2025年1月時点で5つ星中3.8のユーザー評価を受けており、特に使いやすさや他ツールとの統合性の高さが評価されています。また、中小企業(従業員50名以下)、中規模市場(従業員数51~1000人)、大企業(従業員数1000名以上)と、幅広い規模の企業で導入されています。

一方で、データの読み込み速度やパフォーマンス面での課題が指摘されています。

HubSpot「無料で始めて段階的に導入・拡張可能なCRMツール」

引用:HubSpot

HubSpotのCRMは、無料で利用できる顧客管理ツールです。運営元のHubSpot社はアメリカのマーケティングソフトウェア企業であり、インバウンドマーケティングに必要なマーケティング・営業・カスタマーサポート向けプラットフォームを提供しています。

HubSpot CRMでは、無料で最大1000件のコンタクト(顧客情報)を登録でき、ストレージ量は無制限です。HubSpot CRMのユーザー数制限を解除するには、Sales HubやMarketing Hub、Service Hubなどの有料HubSpot製品を併用する必要があります。

2025年1月時点で、G2では5つ星中4.4の評価を得ており、レビュー件数は1万2059件に達しています。長所として、使いやすさや直感的な操作性が挙げられており、短所としては機能不足が指摘されています。

利用されている企業規模は、主に中小企業(従業員50名以下)や中規模市場(従業員51〜1000名)です。見込み客へのアプローチを強化したい企業や、無料で始めて段階的に導入したい企業におすすめです。

SAP「豊富な機能があり、大企業向けのCRM」

引用:SAP

SAPのCRMは、独SAP社が開発したAI技術を活用した顧客関係管理ツールです。

顧客リスト管理や営業支援、ダイレクトメール、SNSの統合管理など、多機能を備えており、マーケティング・営業・顧客対応の3つの分野を網羅しています。一つのプラットフォームで業務を効率化し、部門を横断した情報やデータの集約、共有を可能にします。

また、生成AIを活用したマーケティング分析やコンテンツ生成、顧客からの問い合わせに対する自動応答機能も搭載しています。クラウド型でモバイル対応であるため、場所を問わずアクセスできます。

2025年1月時点でのG2での評価は、5つ星中4.1となっており、豊富な機能や使いやすさが高く評価されています。一方で、カスタマイズ性が限られている点がデメリットとされています。主に、従業員1000名以上の大企業での導入が多いことが特徴です。

Zoho CRM「コストパフォーマンスに優れた中規模向けのCRMツール」

引用:Zoho CRM

Zoho CRMは、中規模向けのクラウドベースの顧客管理ツールです。世界中で25万社以上に導入されており、グローバル規模での実績があります。

提供している機能として、以下が挙げられます。

  • 連絡先管理
  • 販売パイプライン
  • ワークフロー自動化
  • AIアシスタント
  • タスク管理
  • 顧客サポート など

Zoho CRMの特徴は、コストパフォーマンスの高さです。通常ライセンスには、基本機能に加えてオプションのAI機能やレポート機能も含まれています。

さらに、データ項目やタブのカスタマイズが可能で、データ処理やプロセス設計もドラッグ&ドロップで直感的に行えます。そのため、本番環境へスピーディーに移行できます。また、オフラインでのデータ編集・追加が可能で、オンラインに戻ると自動で反映される点も便利です。

G2では5つ星中4.1の評価を得ており、使いやすさや簡単な統合が高く評価されています。ただし、学習曲線の高さや機能不足、読み込み速度、統合の問題、顧客サポートの不足が短所として挙げられています。

主に中小企業(従業員50人以下)での利用が多く、中規模企業(従業員51〜1000人)やエンタープライズ(従業員1000人以上)でも導入されています。

CRMの導入事例を紹介

先述の5つのCRMツールの導入事例について、各企業が抱える課題や導入の背景、活用方法、具体的な取り組み、得られた成果をご紹介します。

営業データの整理や顧客情報の一元管理、大規模な顧客基盤の統合といった成功事例を参考に、自社に最適なCRMを選ぶ際の参考にしてください。

Salesforce CRM導入事例「効率的な営業基盤を構築し、3万件を超える顧客データの重複問題が解消」

引用:株式会社SmartHR

IT・ソフトウェアサービス業界におけるSalesforce CRMの導入事例として、株式会社SmartHRの事例をご紹介します。

株式会社SmartHRは、クラウド型人事労務ソフト「SmartHR」の開発・運営を行う企業です。同社では、より精度の高い顧客情報管理と戦略的な営業活動を実現するために、Salesforce CRMを導入。具体的には、下記の施策を実施しました。

  • Sales Cloudによって複数のツールを連携させ、広範囲の部門をサポートした
  • AppExchangeを利用した営業支援機能やアプリの活用を進めた

導入による主な効果は、3万件を超える顧客データの重複問題が解消され、CRM導入後は重複データ警告がなくなり、データ処理作業も不要になったといいます。さらに、CRMの使いやすさを実現し、さまざまなツールとの連携により、効率的な営業基盤の構築にもつながったそうです。

同事例は、顧客データの重複管理や営業基盤の効率化に課題を抱える企業にとって、参考になるでしょう。

出典:CRM導入の企業事例を12社紹介|各社の導入目的や施策の効果とは - Salesforceブログ

HubSpot CRM導入事例「顧客情報のサイロ化の課題を解決。HubSpot導入から1年以内で全拠点での売上成長を実現」

引用:AnyMind Group(エニーマインドグループ)

HubSpot CRMの導入事例として、AnyMind Group株式会社の事例を見てみましょう。

AnyMind Group株式会社は、インフルエンサー事業やDtoC支援事業を展開し、世界13カ国・地域に17拠点を持つグローバル企業です。800人以上の従業員がアジアを中心に活躍していますが、拠点間の物理的距離により、以下のような課題が発生していました。

  • 新しい営業担当者が過去の顧客情報を把握できず、無駄な営業活動やコミュニケーションロスが生じていた
  • 営業活動のブラックボックス化が進み、個人の営業進捗が追跡できず、マネージャーからのフィードバックも不十分だった
  • 世界中のマーケットで展開しているため、予算内でより多くのメンバーにアクセス権限を付与できるツールを探していた

同社は当初、業務改善ツールとERPシステムを導入して情報管理を試みましたが、顧客情報や見込み案件の管理には十分に対応できないことが判明しました。そこで、営業情報の一元管理を目指してHubSpotを導入しました。

HubSpotでは、コア機能である「コンタクト管理」や「取引パイプライン管理」を制限なく利用できます。管理者にのみ有料アカウントを提供し、他のメンバーは無料機能を使用できるため、同社のニーズにぴったりでした。

HubSpot導入から1年以内に全拠点で売上成長を実現し、いくつかの拠点では400%以上の成長を達成しました。

営業の可視化や情報共有に課題を抱える企業にとって、参考になる事例でしょう。

出典:HubSpot導入事例|AnyMind Group

Microsoft CRM導入事例「100万人以上の組合員管理を統合。認証基盤も整備」

引用:大学生協事業連合

Microsoft CRM導入事例として、生活協同組合連合会大学生協事業連合での事例をご紹介します。

同事業連合は、全国の大学生活協同組合を統括する組織であり、学生総合共済や書籍販売、就職支援旅行サービス、購買事業、食堂事業などを手掛けています。

導入前の課題は、地区ごとに運用されていた組合員管理システムを統一し、コスト削減を目指すことでした。さらに、組合員向けの多様なサービスを提供するための、強固な認証基盤が求められていたそうです。

解決策として、100万人以上の組合員管理をMicrosoft Dynamics 365に統合し、データ分析にMicrosoft Power BIを活用しました。さらに、現場担当者が利用できるマーケティング分析の仕組みを構築し、スマホやECサイトからアクセスできる認証基盤も整備しました。

これにより、数百万人規模の対応が可能となり、全地区でシステム移行が完了した場合、旧システムのハードウェアやソフトウェアの撤去と解約によって、年間約5億円のIT経費削減が見込まれるとのことです。

出典:導入事例 | Microsoft Dynamics 365 | 日立ソリューションズ

SAP CRM導入事例「消費者との一貫性のあるやり取りに注力し、購入体験を最適化」

引用:Versuni

続いて、小売および商社・卸業界でのSAP CRMの導入事例です。

Versuniは、オランダのアムステルダムに本社を100以上の国に拠点を構える非公開企業であり、家庭用電化製品の製造を行っています。

同社では従来、手動による注文プロセスを採用しており、購入体験の最適化が十分ではありませんでした。また、注文書や請求書といった重要な情報を、外部ERPシステムと自動的にやり取りするためのEDI統合にかかるコストも課題視されていたといいます。

これを改善するため、VersuniではBtoB顧客向けのセルフサービス発注ポータルを、SAP CXポートフォリオに基づいて構築しました。

さらに、SAP Commerce Cloudを活用し、DtoCのオンラインストアの試験運用も開始しました。このアプローチにより、消費者行動に基づいた洗練されたインタラクションを実現し、消費者の長期的なニーズを満たすためのデータと洞察を収集することにもつながっています。

出典:お客様の成功事例 | SAP Customer Experience (SAP CX)

Zoho CRM導入事例「他CRMからの移行を経て導入に成功。業務効率化が進んだ」

引用:SAKAI株式会社

建設・不動産業界でのZoho CRM導入事例として、SAKAI株式会社の成功事例をご紹介します。

SAKAI株式会社は、創業60年以上の歴史を持つ地域密着型の工務店で、主に住宅産業と不動産売買を行っています。課題として、異なる事業部門間で顧客情報を一元管理する必要性に迫られていました。

同社では、2014年にCRMツールとしてSalesforceを導入したものの、現場への定着が進まなかったため、2016年にZoho CRMを採用。導入の際には、1万件以上の顧客データを自社で移行するために半年を費やしたそうです。

経営者が作成した「経営計画書」には、Zoho CRMの活用を義務化する旨が何度も記載され、営業スタッフは毎日顧客情報を更新しました。その結果、さまざまなレポートが自動生成され、総務部門の業務効率化が進んだといいます。

この導入により、生産性向上とともにワーク・ライフ・バランスの改善が進み、業績向上に加えて最長残業時間を約6割削減することに成功しました。

顧客情報の一元化や業務効率化を求める企業にとって、参考になる事例でしょう。

出典:【課題・業種別】CRM/SFAの導入事例 | Zoho CRM

まとめ

CRMは、顧客情報やコミュニケーションの履歴といった顧客接点を一元管理する仕組みであり、これを実現するためのツールを「CRMシステム」や「CRMツール」と呼びます。

CRMを導入することで、顧客情報の統合だけでなく、情報をリアルタイムで視覚化し、営業活動やマーケティング活動に役立てることが可能です。

CRM選定で失敗しないためには、ユーザーの使いやすさやサポート体制、既存のSFAやMAとのシステム連携の確認が重要です。CRMを効果的に定着させるためのポイントを実践することで、ツールの導入がスムーズになり、業務効率化や顧客関係の強化が期待できます。

自社の規模や課題、導入目的に合ったCRMを選び、顧客関係を強化し、ビジネスの成長に役立てましょう。