ナレッジベースを活用したことはありますか?ナレッジベースとはいわゆるFAQサイトを指し、社内での従業員向け、社外の顧客向けと様々な用途で活用されています。
多くの情報が提供されるこの時代に、顧客はできる限り自分の都合の良いタイミングでの自己解決を望んでいます。問い合わせをするために電話をすると、なかなか繋がらない、たらい回しにされるといった経験があるのではないでしょうか。
顧客はまずはWebで情報収集を行い、自己解決に失敗した場合3人に2人が他社乗換を検討するといった調査結果があります。残りの人は不満を感じながらも有人解決に移行します。直接問い合わせが増えてしまうと、社内での負荷増加や顧客対応が遅れるといったデメリットがあります。そんな中、ナレッジベースを構築し顧客に自己解決を促す企業が増えています。
そこで本記事では、HubSpotのナレッジベースとは何か、そのメリットや他のリソースとの役割の違いを解説します。
ここではナレッジベースの基本的な概念についておさらいした上で、HubSpotやHubSpotナレッジベースについてご紹介します。
そもそも「ナレッジベース」とは、組織の日々の業務や活動にまつわる有用な知識(ナレッジ)を情報として記録できるデータベースのことです。セルフサービス オンライン ライブラリーという言い方もできるでしょう。有用な知識とは各個人の経験や知見、資料、ノウハウやトラブル解決法などであり、組織の他のメンバーによって検索・参照されることを前提としています。
知識は、企業活動の基盤となるものです。そこでナレッジベースを構築することで、個人の経験や勘に基づくノウハウなどの情報を誰が見ても理解できる形式で共有できるようになります。そのためトレーニング、新人研修などに活用できるというわけです。
情報共有がうまくいけば業務の属人性を排除できるほか、効率化はもちろん組織全体の能力向上につながることから、ナレッジベースの構築は非常に重要だと言えます。
またナレッジベースなどを活用して組織内の知識を管理することを「ナレッジマネジメント」と言います。個々の組織メンバーが持つ知識を共有することで、組織全体で新たな知識を創造していくことがナレッジマネジメントの目的です。
HubSpotとは、米国のHubSpot社が提供するCRMプラットフォームを基盤にしたクラウド型ソフトウェアです。
HubSpot社は2006年、米国マサチューセッツ州で創業して以来、「インバウンド」の理念を掲げてHubSpotソリューションを開発・提供しています。世界のCRM市場の拡大に伴い、今や120か国以上の国において19万4,000社以上(2024年2月時点)で導入されるまでにHubSpot社は成長しました。
HubSpotを1つ導入すれば、さまざまなチャネルを介して発生した顧客とのやり取りを一元管理できるほか、営業やマーケティングに役立つ高機能なHubSpot製品を組み合わせることで、部門間の垣根を越えたシームレスな連携を実現できるようになります。
CRMデータがすべてのHubSpot製品の基盤となっているために、顧客が購入プロセスのどの段階にいるのかを正確に把握できるようになるのです。そのためキャンペーンなどを簡単に最適化・パーソナライズでき、すぐれた顧客体験を提供できるようになるのです。
HubSpotの特徴は、自らが提唱するインバウンド思想をもとに構築されている点が挙げられます。インバウンド思想は、顧客との間に有意義で長続きする関係を構築することで組織やビジネスの成長につなげていく思想です。
実際にHubSpot社ではこのインバウンド思想に基づき、驚くほど数多くの機能を搭載したツールを無料で提供しているので試してみてはいかがでしょう。永久無料のCRMに加えて、すぐれた顧客体験の創出に必要なHubSpot製品群の基礎的な機能をすべて無料で使えます。
出典:HubSpot|ナレッジベースツール
HubSpotが提供するナレッジベースツールの役割は、「顧客自身による問題解決」を促すいわゆるFAQサイトです。たとえば、よくある質問に対するヘルプ記事、動画やドキュメントのライブラリーを作成します。作成したヘルプ記事などをカテゴリー別に整理して関連検索キーワードでタグ付けすれば、顧客自身で必要な解決策を最適なタイミングで見つけられるようになります。
HubSpotのツールを使用してナレッジベースを構築・公開すれば、今まで繰り返し発生していた問い合わせへの対応が減るために、カスタマーサポート業務の効率化につながります。ガートナー社の調査によると、現在リアルタイムで有人でサポートしている問い合わせの40%はセルフサービスチャネルで解決できる問題であると指摘がされています。顧客のセルフ解決を促すことで、特殊な案件や複雑な案件に専念する時間が増え、カスタマーサポート業務の生産性が大幅に向上します。
顧客自身が解決策を見つけるだけでなく、サポートチーム内で業務用のマニュアルとして活用することも可能です。顧客からの問い合わせにすぐに回答できないときは、ナレッジベースを検索して適切な回答を見つけてから対応するという使い方もできます。
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HubSpot社は、ナレッジベースツールを使って作成したナレッジベースをHubSpotユーザー向けに公開しています。HubSpotの機能や活用に役立つ記事およびガイドが検索可能なライブラリーとして公開されているので、Web検索で見かけたことがある人も多いでしょう。HubSpot社のナレッジベースを閲覧すれば、自社が作成・構築するナレッジベースをイメージしやすくなります。
Eメール、チャット、電話による日本語カスタマーサポートは、有料プランを購入しているユーザー向けです。そのため無料ツールを使っているユーザーは、ナレッジベースを駆使したり、HubSpotコミュニティーで質問や回答を閲覧したりしてHubSpotの使い方を学んでいくことになります。
FAQ、ブログ、HubSpotアカデミーなどのリソースも提供されていますが、それぞれどのような役割を持っているのでしょうか?ここではナレッジベースと他のHubSpotリソースの違いについてご紹介します。
出典:HubSpot|ナレッジベース
HubSpotユーザー向けのナレッジベース内を検索すると、FAQ(よくある質問)を見つけられます。FAQの役割は、あるトピックにまつわる頻繁に検索される質問、回答、全般的な情報をまとめることで、関連する情報を素早く抽出できるようにHubSpotユーザーを支援することです。
さらにFAQをあらかじめ作成しておけば、あるトピックに関連する情報を一元的に提供できるようになります。その結果、顧客があるトピックに関連する情報を何度も検索する手間を省けるようになるのです。
HubSpot社では公式ブログを運営しており、ビジネスを加速させる最新トレンドやノウハウを幅広く紹介しています。編集長によるとHubSpotブログの役割は「ビジネスに関する課題を持たれている方に、有益なコンテンツやソリューションを提供すること」です。
実際に公式ブログはマーケティングブログ、営業、カスタマーサービス、ウェブサイトに分かれています。そのため、HubSpotユーザーやHubSpotをすでに知っている人だけを対象に公式ブログは提供されているわけではありません。日々の業務に課題を感じているビジネスパーソンを広く対象にしており、インバウンド思想と呼ばれる訪問者の興味や関心を引き寄せる施策の一環で提供されているのです。
自社の顧客向けに問題解決のセルフサービスを促す目的のナレッジベースとインバウンド思想を実践するブログは、根本的にその役割が異なることを知っておきましょう。
HubSpotは単にソフトウェアという括りでおさまりきらないほど、ビジネスの成功に直結する幅広い知識と実践を必要とする製品です。HubSpotを使いこなすためには、膨大なインプットと学習が必要になります。そこでHubSpotユーザーの自己学習・スキルアップを支援することを目的として2012年、HubSpotアカデミーはスタートしました。
HubSpotユーザーのキャリアアップやビジネス成長をサポートする役割をもち、インバウンドマーケティング、インバウンドセールス、カスタマーサービスなどを軸にした無料オンライントレーニングが提供されています。学習コンテンツや動画を視聴できるほか、HubSpot認定資格を取得するためのオンラインテストも設けられているのです。
顧客自身による問題解決を促すナレッジベースと比べると、デジタル時代に最適なコンテンツを幅広く学習できるほか習得度もチェックできます。日本語で提供されていないコースもあるため、一部英語で学習することになりますが、HubSpotアカデミーはスキルアップしたいという気持ちにしっかり応えてくれるでしょう。
ここでは、HubSpotナレッジベース機能を活用するメリットを3つ見ていきましょう。
ナレッジベースの作成および公開は、カスタマーサポート部門の負担を軽減し、業務効率化につながる点がメリットです。
顧客からのちょっとした質問への対応にカスタマーサポートチームが時間を取られていると、複雑で特殊な案件に取り組む時間を確保できなくなります。しかしツールを活用してナレッジベースを公開すれば、顧客が自力で解決策を見つけられるようになるので、サポートチームへの問い合わせ件数を減らせるでしょう。
つまりナレッジベースで検索して、自力でトラブルや疑問を解決する顧客が増えれば、カスタマーサポート部門が直接かかわる業務が減るわけです。またナレッジ記事を作成しておくことで、問い合わせメールに返信する際にも、リンクを添付するだけで顧客と情報を共有できるようになります。
HubSpotのツールを使ってナレッジベースを公開すると、顧客視点でみれば問い合わせにまつわるストレスがなくなるというメリットがうまれます。ナレッジベースが公開されていれば、24時間365日、好きなタイミングで知りたい情報に顧客はアクセスできるようになるからです。
実際に問い合わせのために、電話をかけたりメールを送ったりすることを億劫に思う顧客が多いことを知っておきましょう。ナレッジベースで問題が解決できれば、わざわざ問い合わせをしたり、回答を待ったりといった顧客のストレスがなくなります。その結果、自社が提供する製品・サービスへの顧客満足度も向上するでしょう。
顧客からの信頼を獲得するために必要な「一貫性」のある情報を、ナレッジベースにおいて提供できる点はブランディングの観点からみるとメリットです。コミュニケーションにおいて、統一されたブランドイメージ、アイデンティティや価値観を顧客に示すことは、信頼感、認知、顧客ロイヤルティの醸成に役立ちます。
自社ブランドが変化や競争の激しい市場の中で、ターゲットオーディエンスとより強固なつながりを築くためにも一貫性の重要性を認識しながら情報を提供することが重要です。シームレスで信頼性の高い顧客体験を提供するためにも、自社のブランドイメージに合わせてヘルプ記事やナレッジ記事のテキストを制作すれば、その一貫性から顧客の中に信頼感を醸成できるでしょう。
HubSpotには、インバウンドマーケティングに役立つブログ機能も搭載されています。ブログは購入の段階を「待ちの姿勢」で望むインバウンドマーケティングの実践に役立つ機能です。訪問者にとって役立つブログを作成して公開すれば、ウェブ検索やSNSを通じて読者の流入を促進したり、CTAを埋め込むことで訪問者をリードへ転換したりする役割が期待できます。
一方のナレッジベースは、顧客自身の問題解決に役立つために作成・公開されることから、見方によってはブログと機能が似ていると感じる方も多いでしょう。ではナレッジベースはブログと、具体的にどのような点で異なるのでしょうか?
ここではHubSpotブログとナレッジベースの違いを3つご紹介します。
HubSpotのナレッジベースを使ってヘルプ記事などを作成すると、「この記事は役に立ちましたか?」ボタンが記事の下部に設置されます。「はい」「いいえ」のクリック数を計測することで、大まかな効果測定が可能です。
標準的に設置される「この記事は役に立ちましたか?」ボタンを使って、効果測定が可能な点がHubSpotナレッジベースのメリットです。一方のブログには「この記事は役に立ちましたか?」ボタンは標準で装備されていません。
「はい」が多ければ改善を検討する必要はありませんが、「いいえ」が多いようであれば記事を改善した方が良いでしょう。
自社サイトを運営していく上で、顧客にとって役立つナレッジベースを構築したいときに、「この記事は役に立ちましたか?」ボタンによる効果測定を活用しましょう。
ナレッジベースを使ってライブラリーを構築しておけば、メール編集画面の下部にある挿入メニューからナレッジベースの記事を検索して、メールに挿入できるようになります。HubSpotナレッジベースを活用してヘルプ記事などのライブラリーを構築しておけば、メールによる顧客からの問い合わせにスムーズに回答できるようになるのです。
HubSpot CRM内のメール編集画面から、ヘルプ記事を検索してメールに挿入できるために、ブログよりもカスタマーサービス業務との親和性が高いと言えるでしょう。ブログでは、メール編集画面において記事検索・挿入ができません。そのため問い合わせへの対応を効率化できる点は、ナレッジベースを使ってヘルプ記事を充実させる施策のメリットです。
デザインのカスタマイズ性においては、HubSpotブログのほうが柔軟に対応できます。HubSpotナレッジベースの場合は、5つあるテンプレートからのみ設定が可能です。
デザインのカスタマイズ性が低いために、自由なデザインやレイアウトで公開したいといったニーズをHubSpotナレッジベースは満たすことができません。共通ヘッダー・フッターも設置できないので、デザインにこだわりたい人からすると物足りなく感じる点はデメリットです。
HubSpotナレッジベースは、カスタマーサービスソフトウェアに相当するService Hubで提供されています。Service Hubの料金プラン「Professional」あるいは「Enterprise」を利用しているユーザーが使用できる機能であり、HubSpotの無料ツールには含まれていません。
ナレッジベースでは、自社が提供する製品・サービスについて顧客が抱くであろう疑問に答えるヘルプ記事を作成します。ここではHubSpotナレッジベースの記事作成ステップを見ていきましょう。
HubSpotのナレッジベースを利用したことがない場合は基本設定を行う必要があります。ナレッジベースのタイトル、言語、ドメイン選択など流れに沿って必要な項目を入力していきましょう。
最後に「カテゴリー」を選択します。「カテゴリー」はナレッジベースを整理するために活用され、コンテンツのファイルフォルダーのようなものです。ナレッジベースの記事をカテゴリで分類分けすることで、ユーザーは必要とする情報に辿り着きやすくなります。
HubSpotアカウントにて、「サービス」をクリックして「ナレッジベース」を選択します。右上にある「記事を作成」をクリックしてください。
記事エディタ画面を開くと、執筆する際のヒントとなるタイトル、サブタイトル、本文(回答)のガイダンスが示されています。
ガイダンスを参考にしながら、顧客が抱える疑問や問題を解決できるように記事を作成していきましょう。
記事エディタの上部にある「設定」タブをクリックして記事の設定をカスタマイズしましょう。設定タブではURLスラッグやナレッジベース記事のルートURLをカスタマイズしたり、カテゴリーを割り当てたりタグを追加したりできます。
メタディスクリプションを記事に追加することも可能です。メタディスクリプションの欄に入力した説明文は、検索結果でページタイトル直下に表示されます。
ナレッジベースのドメイン、訪問者のアクセス、言語を設定するには、メインナビゲーションバーに表示される設定アイコンをクリックします。左サイドバーメニューにある「ウェブサイト」そして「ナレッジベース」の順に移動すれば、設定画面を開けます。
ナレッジベースはアクセス管理を行うことができ、「公開」「非公開」と設定が可能です。目的に応じて設定を行いましょう。
また、HubSpotナレッジベースにはサポートフォームを設置することができます。サポートフォームとは訪問者が質問の回答を見つけられない場合に、フォームからサポートチームに連絡ができるようになります。
サポートフォームを利用するためには、「設定」→「ウェブサイト」→「ナレッジベース」から「サポートフォーム」の「テンプレートをカスタマイズ」をクリックします。
近年では、あらゆる人が正確な情報や必要な答えを電話やメールという手段を使わずに、すぐに入手したいと考えています。そこで本記事では、自分で問題を解決したいというニーズに応えられる、HubSpotのナレッジサービスについて解説しました。
HubSpotのナレッジサービスツールを活用すれば、繰り返し発生する同じ質問への回答にかかる時間を削減し、カスタマーサービスの業務効率化や生産性向上につながります。ナレッジサービスは一度作成したら、継続的に見直していくことが大切です。顧客はもちろん、マーケティングチームなど社内の意見も取り入れて改善していきましょう。