ビジネスの効率化や生産性向上が求められる中、人材の早期育成やマネジメントに悩みを抱えるマネージャーも多いのではないでしょうか。特に、組織やチームが持つノウハウやナレッジを言語化できておらず、何度も同じミスを繰り返したり、人によってやり方が属人化していたりするといったケースも少なくありません。
そこで役立つのがプレイブックです。組織が持つ戦略やナレッジをまとめたプレイブックを活用することで、業務の効率化につながります。特に、HubSpotのプレイブックツールを活用すれば、だれでも簡単にプレイブックを作成することが可能です。
本記事では、HubSpotのプレイブックの基本から料金プラン、そして実際にプレイブックを作成する方法について、わかりやすく紹介します。ビジネスの効率化に向けて、プレイブックの作成を検討している方はぜひ参考にしてください。
HubSpotのプレイブックツールは、営業やカスタマーサービスの効率化を図るために役立つ機能です。この機能を活用することで、組織内のナレッジ共有が効率化され、業務プロセスの標準化と最適化が可能になります。
ここでは、そもそもプレイブックとはどんなツールなのか解説するとともに、HubSpotプレイブックの特徴を詳しく見ていきましょう。
ビジネスシーンにおけるプレイブック(Playbook)とは、組織が持つ戦略やナレッジを言語化し、共有するための戦略集のことです。その他、セキュリティ対策の分野では、インシデントレスポンスに関する手順や要領をまとめたチェックリストとしても用いられます。
したがって、特定の事象やシチュエーションが発生した際に、どのように行動すべきかを具体的にまとめた指南書ともいえるでしょう。日本ではまだプレイブックは浸透していませんが、米国では、企業がプレイブックを用いてチームメンバーに戦略や知識を共有し、業務を効率的に進めるのが一般的となっています。
プレイブックには、経験から得た学びや成功のためのナレッジや行動要領がまとめられており、チーム全体が同じ方向を目指すためのガイドラインとして機能します。これにより、新しいメンバーの教育や、組織内のナレッジ共有が効率化され、生産性の向上に寄与します。
出典:HubSpot
HubSpotのプレイブックとは、コールの台本、競合他社の比較情報、自社のポジショニングに役立つガイドなど、営業力の強化や顧客との関係構築に役立つさまざまなコンテンツを作成できるツールです。
特に営業やカスタマーサービスの分野で活用が見込まれる機能で、HubSpotのプレイブックを使用することで営業プロセスや顧客対応の手順を標準化し、効率的に業務を進めることができます。
また、チーム内でのベストプラクティスや成功事例を共有し、組織全体のスキルアップを図ることも可能です。このように、HubSpotのプレイブックを活用することで、組織の一貫性を保ちつつ、個々のメンバーの裁量を活かした柔軟な対応が実現できます。
出典:HubSpot
HubSpotのプレイブックは、営業力やカスタマーサービスの質の向上に役立つさまざまなコンテンツをHubSpot内で共有することが可能です。ここでは、HubSpotのプレイブックの主な活用用途を詳しく解説します。
HubSpotのプレイブックは、営業活動を大きくサポートします。営業担当者は、プレイブックを通じて競合他社の情報、コールスクリプト、自社のポジショニングに役立つガイドなど、営業力を高めるさまざまなコンテンツを簡単に参照できます。
例えば、見込み客との初回ミーティングの際は、プレイブック内のスクリプトを参照しながら的確に質問を投げかけることが可能です。また、競合他社との比較検討時には、他社に関する情報を確認し、自社の製品やサービスの強みを効果的にアピールできるでしょう。
さらに、プレイブックは新入社員が社内のベテラン営業担当者のノウハウや成功事例を学ぶためのプラットフォームとしても重要です。社内で蓄積された知識や経験を共有することで、新入社員は既存の営業チームの一員として短期間での成長が期待できます。
HubSpotのプレイブックは、カスタマーサービスにも有用です。製品購入後のフォローアップやオンボーディング、トラブルシューティングなどのプロセスをサポートします。例えば、新しい顧客が製品を効果的に使用できるようにするためのステップバイステップのガイドや、一般的な問題の解決方法を提供する際に活用できます。
このようにカスタマーサービスチームがHubSpotプレイブックを活用することで、顧客の問題を迅速かつ効果的に解決できるようになり、結果として顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
HubSpotのプレイブックは、営業活動やカスタマーサービスの業務効率化と対応の一貫性を高めるための重要なツールです。営業担当者やカスタマーサービス担当者は必要な情報をすぐに参照でき、パフォーマンスの最大化が可能になります。ここでは、HubSpotプレイブックの特徴やメリットを詳しくみていきましょう。
HubSpotのプレイブックを活用することで、新入社員を短期間で戦力化することが可能です。プレイブックには、製品知識、市場分析、顧客対応のベストプラクティスなど、営業に必要な情報が網羅されています。新入社員は自らのペースで学習を進めることで短期間で必要なスキルと知識を身につけることができます。
また、プレイブックは必要な情報をいつでも簡単に参照できるため、予期せぬ事態が発生した際や、これまでに経験したことがないシチュエーションが生じた場合でも、プレイブックの情報を参照にしながら、慎重に対処できるようになります。
プレイブックを使用することで、社内に蓄積されたノウハウや知識を効果的に共有することができます。例えば、顧客との商談や会話の中で知り得た情報や、成果につながったナレッジをHubSpotプレイブック上でシェアすることが可能です。
他の担当者は、プレイブックにアクセスすれば、製品知識や市場に関する情報、最新の顧客情報を容易に知ることができ、顧客とのコミュニケーション強化に役立ちます。また、プレイブックは常に最新の状態に維持されるため、新入社員が古い情報に基づいて行動するリスクを防げるでしょう。
HubSpotのプレイブックを利用することで、属人的になりがちな営業やカスタマーサポートのプロセスの標準化が可能です。これにより、個々の担当者に依存することなく、組織全体で一貫した顧客対応を実現します。プレイブックには、営業戦略や顧客サービスの手順が明確に記載されているため、新人メンバーも短期間で業務の流れを覚えることやポイントを掴むことが可能です。
また、プレイブックによる標準化は、チーム間のコミュニケーションを改善し、業務の透明性を高めます。チームメンバーが同じガイドラインに従うことで、業務の進め方や期待される成果についての認識の齟齬を減らし、効率的な情報共有と業務管理を実現できるでしょう。これにより、顧客対応の品質向上とチームの生産性向上が期待できます。
HubSpotのプレイブックによるプロセスの効率化は、営業チームやカスタマーサービスチームの生産性向上に大きく貢献します。営業現場においてはプレイブックを活用することで顧客とのコミュニケーション、リードの追跡、取引の管理などのタスクを迅速かつ効果的に実行できるようになります。
また、プレイブックによって営業プロセスの各段階でのベストプラクティスを提供し、営業担当者がより戦略的に顧客との関係構築を支援します。例えば、見込み客の資格付け、提案の提示、クロージング戦略など、各段階での効果的なアプローチがプレイブックによって提供されます。
一方、カスタマーサービスチームにおいても、プレイブックは顧客対応の効率化に役立ちます。例えば、顧客の問い合わせへの対応方法、製品やサービスに関するFAQ、トラブルシューティングのガイドラインなどにより、カスタマーサービス担当者は迅速かつ一貫した対応が可能になるでしょう。
また、顧客からの同様の問い合わせに対して、時間をかけて個別に対応するのではなく、標準化された回答を用意しておくことで、対応時間を短縮し、より多くの問題解決を実現します。
HubSpotのプレイブックは、「Sales Hub」「Service Hub」の2つの製品で利用可能です。また、契約する料金プランによって、プレイブックの使える機能が異なります。
ここでは、HubSpotのプレイブックを活用できる料金プランについて、Sales HubとService Hubでそれぞれ詳しく見ていきましょう。
Sales Hubでは、プレイブック機能をProfessionalおよびEnterpriseプランで利用可能です。Professionalプランでは、基本的なセールスイネーブルメント機能としてプレイブックを活用でき、営業プロセスの標準化と効率化を図ることが可能です。
一方、Enterpriseプランでは、より高度なカスタマイズと統合機能を利用できるため、大規模な営業チームや複雑な営業プロセスを持つ企業に適しています。また、Enterpriseプランでは、より詳細なレポーティング機能や、高度なセールスオートメーション機能を利用して、営業活動の最適化が可能です。
<関連記事>
・HubSpot Sales Hubとは?営業効率化に役立つSFA、Sales Hubの機能、価格、事例を解説!
Service Hubにおいても、プレイブック機能はProfessionalおよびEnterpriseプランで提供されています。Professionalプランでは、カスタマーサービスの基本的なプロセスを標準化し、顧客対応の品質を向上させることができます。
Enterpriseプランでは、より高度なカスタマイズオプションと統合機能が提供され、大規模なカスタマーサービスチームや複雑な顧客対応プロセスを持つ企業に最適です。Enterpriseプランでは、詳細な分析ツールや高度なカスタマイズ機能を利用して、カスタマーサービスの効率と効果を最大限に高めることができます。
ここまで、プレイブックの特徴やメリット、活用用途を解説しました。しかし、実際にプレイブックを作成するとなると「どのように作成すれば良いのだろうか……」といった悩みを抱える方も多いでしょう。
そのようなときに、HubSpotを使えばかんたんにプレイブックを作成できます。HubSpotのプレイブック作成は一般的に次の手順で進めていきます。
続いて、各ステップの操作方法を詳しく解説しますので、参考にしてください。
※HubSpotのプレイブック機能を利用するには、Sales Hubまたは、Service HubのProfessional/Enterpriseのアカウントが必要です。
HubSpotでプレイブックを作成する方法は2つあります。
ここでは、テンプレートで作成する手順を解説します。HubSpotでは、「販売プレイブック」や「サービスプレイブック」などの様々なテンプレートが用意されており、これらをもとにカスタマイズが可能です。目的や用途にあったテンプレートを選択することで、プレイブックの基本構造の理解や、独自の質問を追加できるようになりますので、初めて利用する際はテンプレートの活用がおすすめです。
<手順>
次に、プレイブックに見出しやリード文を追加します。ここでは、プレイブックの目的や使い方を記載しましょう。見出しはプレイブックのセクションを示し、リード文はそのセクションの概要を示します。
テキストはフォントの種別・サイズ・色のほか、下線や太字などの設定が可能です。テキスト以外にも、画像・動画・リンクの追加ができるので、ユーザーが理解しやすいように、見やすさやわかりやすさを意識して情報を整理しましょう。
質問を追加するには、挿入リンクから行います。質問は記述式で登録し、回答は3つのタイプから選択します。
<回答タイプ>
決まった回答が想定される場合は、[回答オプション]を作成しておくと、会話をしながらの入力が簡単になります。また、質問の回答を[必須]に設定することで、ユーザーはプレイブックに入力または更新する際、質問に回答する必要があります。
回答タイプで[プロパティーを更新]を選択すると、質問の回答がレコードに登録されます。
関連付けが可能なプロパティーを、会社、コンタクト、取引、チケットのいずれかから選択し、更新するプロパティーを設定します。これにより、質問の回答結果を自動的にレコードに反映させることが可能になります。
続いて、[設定]タブを開き、エンゲージメントのタイプとタイミングを設定します。プレイブックでは、エンゲージメントのタイプと、それらを記録するタイミングを設定することができます。エンゲージメントのタイプとは、プレイブックが記録される場所のことで、コール、ミーティング、Eメール、メモから任意で設定できます。(複数選択可)
プレイブックの作成が完了したら、右上の[公開]をクリックして完了です。プレイブックの一覧画面から、該当するプレイブックのプレビューを確認できます。
公開されたプレイブックは、営業チームやカスタマーサービスチームが実際に使用できるようになり、顧客とのコミュニケーションを効率化し、標準化するためのガイドとして機能します。
本記事では、HubSpotのプレイブックの基本から特徴とメリット、活用方法、作成方法まで詳しく解説しました。プレイブックを活用することで、属人的になりがちなプロセスを標準化し、組織全体の生産性向上に役立ちます。また、プレイブックは新人社員の育成にも有用なツールであるため、短期間での戦力化および売上の向上が期待できます。
特にHubSpotのプレイブック機能は、テンプレートの選択から始まり質問の追加やエンゲージメントのタイプ設定にいたるまで、手軽に扱えることが大きな魅力です。公開したプレイブックは編集や追加、停止も容易なので、営業部門やカスタマーサービス部門は、顧客との深い関係構築や組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
プレイブックは、ビジネスの成長と発展を支援するための重要な資産となりますので、ぜひ興味をお持ちの方はHubSpotを活用してみてください。