オウンドメディアとは「企業が所有するメディアの総称」であり、オンラインマーケティングの分野では、自社で運用し情報発信を行うブログやウェブサイトなどを指します。
株式会社ベーシックの調査によると、BtoB企業の約40%がオウンドメディアを運用しており、検討中の層を含めると、約60%が運用に積極的な姿勢を示していることがわかっています。
オウンドメディアは、ペイドメディア(広告を出稿する他社のサイト)やアーンドメディア(自社からの情報を発信できるソーシャルメディアなど)と組み合わせることで、幅広いユーザーにアプローチすることができます。また、SEO対策を実施することで検索エンジンからの流入を増やし、認知度向上や売上増などのメリットも期待できます。
一方で、オウンドメディアを停止した担当者のうち、8割以上が2年未満で運用を中止している事実もあり、その理由は「ブログのネタ切れ」「コンテンツの量を確保するのが難しい」「人手不足」などさまざまです。
オウンドメディアを効果的かつ持続的に運営するためには、その特性や運用上のポイントを理解したうえで取り組む必要があるといえるでしょう。
本記事では、オウンドメディアの広意、狭意でのビジネスブログであるオウンドメディアの重要性、目的、メリット・デメリット、成功事例、立ち上げの手順やポイントについてわかりやすく解説します。また、他のメディアとの違いやチャネルの種類についても詳しく説明していますので、参考にしてください。
オウンドメディアの定義は、企業や媒体(メディア)によって異なります。オウンドメディアの特性や効果を理解するためには、まず正確な定義を知ることが重要です。
ここでは、オウンドメディアの定義と重要性について解説します。
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運用するメディアです。「Owned」が「所有される」という意味であることから、「自社メディア」とも呼ばれます。
現代のビジネスシーンでは、「オウンドメディア=ブログ形式の情報サイト」という意味で用いられるケースが多いです。具体的な例として、ウェブマガジンやビジネスコラム、社内ブログがあげられます。
ただし、広義ではXやInstagramなどのSNSアカウントや、企業ホームページ(コーポレートサイト)、ウェブセミナー、ホワイトペーパーなど、さまざまな媒体を含むこともあります。
全研本社株式会社の「2022年オウンドメディアに関する調査」によると、オウンドメディアの運営企業のうち、8割以上の企業が2~3年以内に運用を開始したとされています。オウンドメディアは業界・業種を問わず多くの企業で導入されていますが、これほどまで重要視される理由は何なのでしょうか。
ここでは、オウンドメディアの重要性が増すと考えられる根拠を、4つの項目で解説します。
一つ目の理由は、クッキーレス時代の到来です。昨今、データ漏洩や個人情報の不正使用が頻発する中でユーザーの懸念が高まり、法的規制の厳格化が進んでいます。
クッキーレスとは、ウェブサイトの閲覧履歴を保存する「Cookie」による情報の取得が制限される動きです。Cookieには、ユーザーがアクセスしたウェブサイトのドメインから発行される「ファーストパーティークッキー」と、広告など異なるドメインから発行される「サードパーティークッキー」があります。
EUやアメリカでは、法律によりCookieによる情報の取得が制限されています。実際に、Googleは2024年1月4日から、Chromeのブラウザを使用しているユーザーのうち1%に対して、サードパーティークッキーの利用を無効にするテストを開始しました。また、Appleもファーストパーティークッキーの取得制限の強化を行っています。
日本のデジタルマーケティングの基盤となっているCX(顧客体験価値)やリターゲティングは、Cookieに大きく依存しており、クッキーレスはその仕組みを揺るがしかねない事象です。
サードパーティークッキーは今後数年間で段階的に廃止されることが予想されており、多くの企業はオウンドメディアからアクセスできるファーストパーティーデータに焦点を当てています。
オウンドメディアが重要になる理由として、インバウンドマーケティングへの注目もあげられます。インバウンドマーケティングとは、メディアを通じて情報を提供することで消費者との信頼関係を築き、最終的な顧客への転換を目指す手法です。
インバウンドマーケティングの中でも特に効果的とされているのが、ウェブマガジンや電子書籍、ブログなどのオウンドメディアです。ユーザーは自身の問題を解決するために検索し、企業のオウンドメディアを訪れます。その過程で商品やサービスを知り、課題の解決策として自ら「購入したい」「申し込みたい」と考えるようになることが期待できます。
Googleなどの検索エンジンのアルゴリズムの大幅な変更も、オウンドメディアが注目される理由の一つです。
以前は、サイトの検索順位を上げるために有料のリンクを購入することで効果を得ることができましたが、2011年以降、Googleはこのような手法に対して取り締まりを強化し、検索結果の品質向上を図っています。具体的には、検索エンジンの利用初期に行われていた悪質なブラックハットSEO(被リンクの大量設置や不自然にキーワードを盛り込んだ文章など)は、Googleの規約違反となります。
このような時流から、良質なコンテンツをより多く網羅的に公開し、ユーザーにとって有益な情報を提供するオウンドメディアが、現在の検索トレンドに適合しやすくなっていると考えられます。
オウンドメディアの重要性が高まる理由として、広告費用の高騰もあげられます。HubSpotが実施した「マーケティング組織が抱える課題についての意識調査」では、62.3%の回答者が「広告費の高騰」を課題としてあげています。
また、総務省の「令和5年版 情報通信白書|広告」によると、日本の広告市場における2022年の総広告費は、デジタル広告とマスコミ4媒体をあわせて7.1兆円以上と、過去最高を記録していることが明らかになりました。
ウェブ広告には高額な出稿費用がかかりますが、オウンドメディアは広告出稿に比べると低コストで運用できます。オウンドメディアを活用することで広告費を削減できる可能性があることから、注目度が高まっていると考えられます。
ウェブメディア戦略にはオウンドメディアのほかにも、「ペイドメディア」「アーンドメディア」「シェアードメディア」があります。
このうち、オウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアの3つのメディアを組み合わせた総称を「トリプルメディア」と呼び、シェアードメディアを加えたものを「PESOモデル」と呼びます。
出典:SPINSUCKS
複数のメディアを組み合わせることで、各メディアの弱点を補い、より効果的なWeb戦略が可能になります。ここでは、オウンドメディアと他のメディアとの違いについて解説します。
ペイドメディア(有料メディア)は広告の一形態であり、企業が費用を支払い、広告を掲載する手法です。リスティング広告やディスプレイ広告、新聞・雑誌・テレビ・ラジオの4大媒体を利用した広告を指します。
ペイドメディアの最大の利点は、広告を不特定多数の人々に効果的に伝えることができる点です。これにより、オウンドメディアではカバーしきれないターゲット層に対しても、短期間で大規模なリーチが可能になります。
一方で、ペイドメディアのデメリットとして費用が発生することや、オウンドメディアのような永続性がないことがあげられます。広告を停止すると、自社ウェブサイトやランディングページへのトラフィックが途絶えるため、長期視点ではオウンドメディアと組み合わせた活用が望ましいでしょう。
アーンドメディアは、一般的には第三者が情報を発信するメディアです。主に、SNSや口コミサイト、動画投稿サイト、Q&Aサイト、まとめサイト、個人ブログなどがあげられます。
アーンドメディアの特徴は、ユーザーが自発的に情報を共有してくれることで費用がかからないことです。良い口コミや商品レビューは、売上だけでなく信頼性にも影響を与える可能性があります。
一方で、アーンドメディアのデメリットは、情報のコントロールが不可能である点です。オウンドメディアやペイドメディアとは異なり、第三者が情報を発信するため、自社が訴えたい内容が拡散・共有されるとは限りません。しかし、この点が、アーンドメディアが信頼性の高いメディアと見なされている理由ともいえます。
これに対して、オウンドメディアはサイトに蓄積されたコンテンツによって、継続的な検索流入が期待できるという利点があるため、こちらも併用することが一般的です。
シェアードメディアは、製品やサービスの共有を促進するためのメディアです。主にSNSの「シェア」機能を活用したメディアであり、拡散力の高さが特徴的です。
また、口コミなどによってユーザー同士が情報を広めることも可能であり、ユーザーの関心度を試験的に把握し、彼らの反応を見ながら製品開発を進めることも可能です。
オウンドメディアは既存の顧客やファンに対して情報を提供するのに役立ち、シェアードメディアは広告や記事のシェアにより、新しいオーディエンスへのリーチを可能にします。そのため、両者を併用することで、オーディエンスの拡大と信頼の構築の促進が期待できます。
オウンドメディアとして利用できるチャネルには、さまざまな種類があります。チャネルとは、ユーザーを集めるための媒体や経路です。
ここでは、代表的なオウンドメディアのチャネルを7つご紹介します。
企業の公式ウェブサイトは、オンライン上で企業を紹介し、広く社会やステークホルダーに向けた情報提供を行う場です。
会社概要や理念、製品・サービスの詳細、歴史やビジョン、コンプライアンス、品質管理など、多岐にわたる情報を掲載できます。
日本ではオウンドメディアと公式ウェブサイトは区別するケースが多いですが、広義では、企業の公式ウェブサイトもオウンドメディアに含まれます。
ブログとは、総務省の定義によると「自分の考えや社会的な出来事に対する意見、物事に対する論評、他のWebサイトに対する情報などを公開するためのWebサイトのこと」とされています。
一般的に、オウンドメディアとブログ型情報サイトは同じ意味で用いられることが多いですが、ブログはより特定の読者層に対象を絞り、定期的に情報を発信する場として活用される傾向があります。本来は広義な意味を持つオウンドメディアですが、現状だと「オウンドメディア=企業が情報を発信するブログ」と認識されることが多いです。
特にBtoB企業の場合、見込み客への認知拡大を目的として、業界の専門的な情報や知見、トレンドなどの発信に有用です。
なお、ブログは別ドメインで独立したサイトとして立ち上げられることもありますが、企業の公式ウェブサイト内に組み込まれることもあります。
ウェブセミナー(ウェビナー)は、特定のトピックに興味を持つ人々や学びたい人々に向けて行われる、知識提供の場としてのイベントです。
対面のセミナーは会場を借りる必要がありますが、ウェビナーはウェブ会議システムなどを使用してオンライン上で実施できるため、地理的な制約がなく気軽に参加できる点が特徴的です。
Eブック(eBook)とは、電子フォーマットや画像を活用した緻密なコンテンツであり、ホワイトペーパーは専門的な内容や業界トレンド、将来の見通し、ノウハウなどを根拠にまとめられた資料です。
BtoB領域では、これらは主に、ウェブサイト上でダウンロードを促すコンテンツとして利用されます。
ポッドキャストは、インターネットを介してオーディオコンテンツや番組を聴くことができるメディアです。Fortune Business Insightsのレポートによると、2022年のポッドキャスティング市場は、約22億2000万ドルと推定されており、2023年から2030年までの期間に急速な成長が見込まれています。
ポッドキャストの制作は動画などと比べて手軽であり、過去のコンテンツをアーカイブすることも可能です。ポッドキャストの活用は、オウンドメディアのマーケティング活動における、世界的なトレンドとなっています。
出典:Adobe Experience Cloud ポッドキャスト
ハウスリストとは、企業がマーケティングや営業活動によって獲得した見込み客の情報を記載したリストです。
問い合わせフォームや資料請求、名刺交換、過去の受注など、企業と接触があった見込み客(リード)の情報を整理して保管し、必要な時に参照できるようにすることが主な役割です。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、LinkedInなどの相互作用型メディアです。アーンドメディアであり、シェアードメディアでもあります。
ユーザーは自由にアカウントを作成し、情報を発信し、他者とコミュニケーションを取ることができ、個人だけでなく、企業も顧客とのやり取りやブランディング、リクルーティング、営業活動などの目的で活用しています。
オウンドメディアを運用する目的や期待できる効果はさまざまです。株式会社ベーシックの実態調査では、オウンドメディアの運営を計画している30人の担当者に対して、「オウンドメディア運営に期待すること」を尋ねたところ、90%の人が「リード獲得(問い合わせや資料請求など)」を期待し、60%が「ブランディング」、56%が「認知拡大」を期待していることが明らかになっています。
ここでは、オウンドメディアの目的を3つの項目に分けて解説します。
オウンドメディアの主な運用目的として、サービス・商品の問い合わせや資料請求などの「リード獲得」があげられます。これは、広告手法が一般化し、広告出稿の費用が高騰した結果、オウンドメディアが注目されるようになったことに起因していると考えられます。
オウンドメディアにて質の高いコンテンツを作り込み、継続して運用することで、メディア自体を資産化することが可能です。そのため、長期的視点では費用対効果が高くなり、広告への予算配分の削減にもつながります。
■オウンドメディアの例:BOXIL Magazine|スマートキャンプ株式会社
オウンドメディアは、企業のブランディング施策にも活用されます。ブランディングとは、自社ブランドへの顧客の忠誠心や共感を高め、独自の価値を生み出し、競合他社との差異化を図ることです。
オウンドメディアの場合、コンテンツの内容や発信方法を自社でコントロールできるため、ユーザーに与えたい印象を意識して一貫したコンテンツを発信することで、ブランディングの成果を高められます。
■オウンドメディアの例:THE BAKE MAGAZINE|株式会社BAKE
オウンドメディアは、課題が明らかになっている顕在層だけでなく、潜在ニーズを抱えた「非認知層」への認知拡大の目的でも利用されています。
例えば、自社の会計ソフトがあまり知られていない場合、直接検索によって会計ソフト名や会社名を入力してくるユーザーを集めることは難しいでしょう。オウンドメディアの場合、経理や総務の担当者が関心を示しそうなコンテンツや、彼らの抱える課題を解決する情報を継続的に発信することで、自社の会社名やサービス名を広く知ってもらうきっかけを作ることが可能です。
さらに、オウンドメディアによる認知拡大は、企業の採用力向上にも寄与します。社員へのインタビューやイベントの紹介、日々の業務の様子など、企業内の活動に焦点を当てたコンテンツを積極的に発信することで、企業の文化やビジョンに共感する可能性のある求職者を引き寄せることができます。
■オウンドメディアの例:TechAcademy公式ブログ
オウンドメディアを運用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、オウンドメディアのメリットを4つご紹介します。
オウンドメディアを運営するためには、管理やコンテンツ制作に必要な人件費のほか、サーバー・ドメイン・CMSの維持費、分析ツールの費用、必要に応じてコンサルティングを依頼する場合の費用などが発生します。
オウンドメディアのスケールやジャンルによって異なりますが、目安として月30万〜50万円ほどです。
一方で、ペイドメディアの費用相場は以下の通りです。
ペイドメディアは、自社サービスを確実に広く知らせるために多くの予算や人脈が必要なメディアです。費用面だけで見ると、オウンドメディアはペイドメディアよりもコストを抑えやすい手法といえるでしょう。
オウンドメディアのメリットとして、情報発信における自由度が高いこともあげられます。自社の権限の下で運営されるため、他社からの許可や広告費の支払いなどの手続きを必要としません。このため、さまざまな施策を柔軟に取り入れることが可能です。
具体的な施策として、以下のようなものがあります。
さらに、顧客へのインタビューや企業理念の紹介、社員の日常を紹介するなど、多様なアプローチが可能です。
LTV(顧客生涯価値)への注目からも分かるように、将来的なマーケティング戦略では顧客との接点を増やし、関係性を築くことが重要視されています。オウンドメディアは、ユーザーとの双方向のコミュニケーションが可能なメディア戦略です。
対して、ペイドメディアは企業主導の一方的なアプローチが主流であり、ユーザーとの双方向のコミュニケーションが難しい傾向があります。双方向のコミュニケーションを促進するオウンドメディアを活用することで、ファンを獲得し、信頼性や満足度を高める効果が期待できます。
オウンドメディアでは、通常の企業ウェブサイトでは提供しづらい内容も掲載でき、企業の認知につながるような有益な情報を発信することが可能です。高品質で役立つ記事であれば企業のイメージ向上にもつながるでしょう。
認知拡大にはマス広告が効果的ですが、そのためには膨大な広告費が必要です。しかし、オウンドメディアは低コストでの運用が可能であり、多くの企業が取り組める認知拡大の施策となります。
オウンドメディアの運用にはメリットが多い反面、デメリットといえる側面もあります。デメリットも理解しておくことで、対処しやすくなるはずです。
ここでは、オウンドメディアのデメリットと対策を2つ解説します。
オウンドメディアの運用には、中長期的な視点が求められます。成果が出るまでに時間がかかることが多く、会社の経営陣もそのことを理解する必要があります。
例えば、検索エンジンからの流入を接点としてオウンドメディアを運用する場合、1年以上の期間が必要なことも珍しくありません。
運用にはプロジェクトマネジャーやコンテンツディレクター、コンテンツ制作者などの専門家が必要であり、適切なリソース配分とコンスタントなコンテンツ公開が重要です。また、継続的な施策を展開するためには、適切な環境や予算の確保も求められます。
オウンドメディアの運用には手間がかかることも留意しなければなりません。特に、リード獲得を目指す場合は、検索エンジン向けの施策を軸に展開することが一般的であり、SEOの知識が不可欠です。
具体的には、ターゲットユーザーに焦点を絞ったコンテンツの作成や、サイトの適切な構造化、 「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」やモバイルファーストへの対応などが求められます。これらの作業には専門的な知識が必要であるため、自社で人材が不足している場合は、専門家の支援を受けることも検討した方が良いでしょう。
実際に、オウンドメディアの運用で成功している企業も多くあります。ここでは、オウンドメディアの運用例を3社ご紹介します。
引用:三菱電機:DSPACE
「DSPACE」は、三菱電機株式会社が運営するオウンドメディアです。宇宙や宇宙開発に関する情報を幅広く提供しています。
同社は家電製品などで知られていますが、発電機や産業用ロボットなど多岐にわたる製造事業のほか、宇宙・通信システム事業も手がけています。「DSPACE」は同社の宇宙関連の取り組みを紹介し、一般の人々も楽しんで読めるような構成となっている点が特徴的です。
同オウンドメディアでは、宇宙に関する最新ニュースをわかりやすく紹介する連載コラムや特別企画が、定期的に更新されています。これにより、一般の読者でも宇宙に関する情報を身近に感じ、宇宙開発に興味を持ってもらえる効果が期待できます。
引用:ANA Professionals 青い翼にかけた想い
「ANA Professionals」は、全日本空輸株式会社(ANA)が運営するオウンドメディアです。ANAのプロフェッショナルが活躍する航空業界の最前線を紹介することをコンセプトに、さまざまなエピソードや航空業界の最新情報を発信しています。
特徴は、同社のサービスを支える多様な職種の仕事内容について、普段は見られないような現場の声を知ることができる点です。オウンドメディアを通じて業界全体の情報や取り組みを積極的に紹介することで、ANAが航空業界におけるリーディングカンパニーである姿勢を示していると考えられます。
引用:RedBull.com
「Red Bull」は、レッドブル・ジャパン株式会社が運営するオウンドメディアです。主に、モータースポーツ、バイク、サーフィンなどのスポーツやアスリート、音楽などのクリエイティブに関する情報を、記事や動画で提供しています。
同オウンドメディアの特徴は、自社が製造・販売するエナジードリンク「Red Bull」の紹介を前面に出すのではなく、スポーツやアスリート、クリエイターの魅力や活動に焦点を当てている点です。この姿勢により、ファン層の拡大や「スポーツやクリエイティブといえばRed Bull」といったイメージの醸成やブランディングに成功している事例といえます。
オウンドメディアの立ち上げ時には、いくつかのポイントを押さえることで成功につながりやすくなります。
ここでは、オウンドメディアの立ち上げ時のポイントを4点解説します。すでに運営されている方も、改めて見直しをする際にお役立てください。
ターゲット層ごとに適切なコンテンツを提供するためには、配信内容や目的を明確に定めることが重要です。まずは、読者にとってのメリットや、オウンドメディアの設立目的を明確にしたうえで、社内の共通認識として共有しましょう。
例えば、BtoB企業のオウンドメディアでは、一般的に次のような目標が掲げられるケースが多いです。
この時、ひと言で「リード獲得」といっても、企業ごとに求めるリードの特性は異なるため、独自のメディアのコンセプトが求められます。自社が望むターゲットに対して、どのようなコンテンツを提供していくかを具体的に検討することが重要です。
具体的な目標や成果を定めずに運用を開始すると、継続の意味を見失い、運用中断につながりやすくなってしまうため、目標と成果を明確に定義すると良いでしょう。
オウンドメディアは長期的な運用が必要であり、組織内での運用や体制を構築することが重要です。運営を軽視し、十分なリソースを割かずに取り組んでしまうと、結果的に運用を継続できなくなってしまいます。
Zenken株式会社が実施した「オウンドメディアに関する調査」によれば、運営停止中のオウンドメディアのうち、開始からわずか半年以内には65.5%が更新を停止していることが分かりました。運営停止の主な理由は、「自社の運営担当者がいなくなったため(運用するリソースが不足したため)」であり、54.3%と最多であることが報告されています。
オウンドメディアでは、一つのコンテンツを作成するだけでもユーザーのニーズの把握や、高品質なコンテンツの作成が求められます。特に検索エンジンをタッチポイントとする場合、検索ユーザーのニーズも変化していくため、コンテンツのメンテナンスや改善が必要です。運用体制を明確にし、リソースを確保したうえで立ち上げの準備を進めましょう。
オウンドメディアの効果は、すぐには現れるものではありません。そのため、経営層にも、成果が数字で表れるまでに時間がかかることを理解してもらうことが必要です。
株式会社ベーシックの調査によると、オウンドメディアの運営期間を「5年以上」と回答した担当者は全体の3割以上にのぼり、長期的な視野での取り組みが求められてることがわかります。
特に、新しく立ち上げたばかりのオウンドメディアは、SEOの効果が現れるまでには通常半年以上かかるため、成果が見られないとしても、諦めずに長期的な視点で取り組む必要があります。
オウンドメディアの運営には、コンテンツの作成や更新が不可欠であり、専任の担当者を社内に配置することが望ましいです。
特に、コンテンツの制作には予想以上のリソースが必要であり、SEOを考慮した高品質なコンテンツ作りは手間のかかる作業であるため、人的リソースの確保が不可欠です。
オウンドメディアで成果を上げるためには、最終的な目標(KGI)と、その目標に向かって進む中間の指標(KPI)を設計することが重要です。オウンドメディアの成熟度やフェーズに応じて、適切なKPIを設定しましょう。
ここでは、オウンドメディアでよく使われるKPIを、ビジネスの「初期・中期・後期」フェーズごとにご紹介します。
ビジネスの初期フェーズでは、主に行動量が重要な指標となるため、KPIとして明確な「記事の公開数」を設定することが一般的です。新しいメディアの立ち上げから直後の段階、または運用中のメディアを本格的に活用する予定の場合も同じフェーズに該当します。
この時期の主な目標は、具体的な数字よりも、まずは運用体制を整えることです。まずは長期的な成功に向けて着実に記事公開数を増やし、基盤を確立していきましょう。
PV(ページビュー)は、特定のウェブページが読み込まれた回数であり、オウンドメディアの認知度を測る際に代表的な指標です。コンテンツマーケティングでは、中期的なフェーズでのKPIとして用いられます。
各ページのPV数を合計することで、オウンドメディアの運営状況を把握することや、どのコンテンツが読まれているかを把握するのに役立ちます。
オウンドメディアが一定のアクセス数を達成し、成熟期に入ると、コンバージョンをKPIとして導入できます。コンバージョン(CV)とは、最終的な成果を示す指標です。
オウンドメディアの目的や役割に応じて、コンバージョンとして何を設定するかは異なりますが、一般的には商品の購入、サービスの申し込み、お問い合わせ、資料請求、会員登録、メールマガジンの登録などが設定されることが一般的です。
オウンドメディアは、適切な構築と運用によって費用対効果の高い成果をもたらします。しかし、オウンドメディアの立ち上げはハードルが高いと感じる担当者もいらっしゃるでしょう。
そこで、最後にオウンドメディアの立ち上げ手順を、7つのステップに分けて解説します。
はじめに、オウンドメディアの目的に応じて、ターゲット層やペルソナ、KPIなどを明確に設定します。戦略を持たずにただ始めることは避け、事前に計画を立てることが重要です。
マーケティングにおける「ペルソナ」とは、自社の製品やサービスの典型的なユーザー像を表す仮想的な人物です。ペルソナを活用することで、よりユーザーに焦点を当てた戦略を立てやすくなります。
明確な顧客像に基づき戦略を策定することで、オウンドメディアのコンセプトを一貫性のあるものにできるため、ターゲット層・ペルソナ・KPIはできるだけ詳細に設定しましょう。
オウンドメディアの目的やターゲット層を明確にできたら、適切なテーマを選択します。この段階では、一方的なプロモーションではなく、読者にとって価値のあるコンテンツを提供することが重要です。
例えば、「IT企業が自社の認知度を高めるために、IT技術者向けの知識を提供するオウンドメディアを作成する」といったように、目的に基づきテーマを決定しましょう。これには、顧客からのフィードバックや、キーワードリサーチツールなどを活用したリサーチが有用です。
オウンドメディアを効果的に運用するためには、コンテンツの品質と一貫性を確保できるよう、制作方法と運用体制を明確に定める必要があります。
具体的には、編集長(責任者)や社内の担当者、ライターを内製化するか外部委託するかなど、記事を継続的に公開していくために必要な体制を整えましょう。
次に、記事コンテンツの配信チャネルを検討します。ターゲットオーディエンスが、どのようなプラットフォームを利用しているかを分析する必要があります。
SNSやブログ、メールニュースレター、ウェブサイトなど、複数のチャネルを活用してコンテンツを配信することが効果的です。また、チャネルごとに適切な形式やスタイルを検討し、オーディエンスの興味を引くコンテンツを提供することが重要です。
続いて、対策キーワードを選定しましょう。キーワードとは、ユーザーが検索する際に使用される単語やフレーズであり、「対策キーワード」は自然検索からのトラフィックを増やすために選定されるキーワードです。
一般に多くのユーザーが検索するキーワードであるほど、競争が激しくなります。上位表示ができれば大きな効果を期待できますが、競合が激しいため上位表示するのは容易ではありません。一方で、検索数が少ないキーワードでも、上位表示すれば効果を発揮することがあります。
オウンドメディアの目的やコンセプト、ターゲット層を考慮し、目的達成につながるキーワードを選びましょう。
オウンドメディアの運用で成果につなげるためには、高品質なコンテンツ作成と定期的な配信が不可欠です。ユーザーのニーズや興味を理解し、価値ある情報を提供することで、ブランドの認知度や信頼性を高めることができます。
ユーザーの「知りたい」というニーズに応えるためには、記事構成案を綿密に調査・作成することが重要です。競合記事との差異化を図るためにも、オリジナルな要素を取り入れたコンテンツを目指しましょう。
サイトの構築とコンテンツの投稿が完了したら、オウンドメディアを公開します。しかし、オウンドメディアは公開して終わりではなく、継続的な運用と改善が必要です。
例えば、特定のページでの離脱率が高い場合や、コンバージョン率が低い場合など改善策を実行し、変更後の効果をモニタリングしましょう。ユーザーの反応や行動を理解し、分析と改善を繰り返すことで、オウンドメディアの成果を最大化できます。
オウンドメディアは、企業にとって欠かせないメディア戦略の一つであり、自社の認知拡大や見込み客の獲得が期待できます。
自社で発信や管理をコントロールしやすいことや、コストを抑えて運用しやすいこと、ユーザーと双方向のコミュニケーションがとれる、会社の認知につながる情報を発信できるなど、多くのメリットがあります。
しかし、ただ闇雲にコンテンツを発信しても成果が得られるわけではありません。オウンドメディアを効果的に運用するためには、まず運用する目的を明確にし、成果指標を定めることが重要です。正しい戦略設計に沿って、継続的な運用と改善によって、オウンドメディアの成果の最大化を目指しましょう。