請求管理は、営業部や経理部における重要業務のひとつです。近年では「請求管理システム」を導入し、手間のかかる請求業務の効率化を図る企業が増加しています。
しかし、株式会社ROBOT PAYMENTが行った調査によると、現在利用している請求管理システムに「満足している」と回答した人の割合は、わずか7.7%であることが明かされました。単に請求業務のデジタル化を図るだけでは、業務改善が難しいことが伺えます。
このような課題を解決するためには、営業から見積・請求、会計処理の業務フローを「一気通貫」で管理することが重要です。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)と請求管理システムを連携させることで、情報の二重管理や、情報共有不足によるミス・漏れを防止でき、業務効率の向上につながります。
そこで本記事では、世界的なSFA/CRMツール「HubSpot」と、日本の商習慣にマッチした請求書作成ソフト「board」の連携機能について解説します。メリットや活用事例などもあわせて紹介するため、自社の営業・販売・会計業務の改善を目指している方はぜひ参考にしてください。
HubSpotは、顧客情報の管理に役立つSFA/CRMツールです。請求書作成ソフトであるboardと連携することで、営業活動における一連の業務プロセスが効率化します。
以下では、HubSpotやboardとはどのようなツールなのかを紹介したうえで、HubSpotとboardの連携機能の詳細を解説します。
出典:HubSpot
HubSpotは、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けのソフトウェアが集約されたCRMプラットフォームです。2025年3月現在、世界135カ国以上で24万8000社を超える企業に活用されています。
米HubSpotが提供する以下の製品群は、すべてが基盤となるCRMデータベースに接続されています。顧客に関わるすべての情報・業務を一元管理することで、一貫性のある顧客体験を提供可能です。
出典:HubSpot
HubSpotは、顧客を起点としたビジネス活動をオールインワンで管理できるソフトウェアです。
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出典:board
boardとは、ヴェルク株式会社が開発・運営している請求書作成ソフトです。2025年3月現在の有料導入数は5500社を超え、小規模ビジネスを中心とした多くの企業に支持されています。
boardの特徴は、見積書や請求書など各書類の作成機能はもちろん、業務管理機能や分析・予測機能も搭載されていることです。一般的な「請求書作成サービス」と「ERPツール」の中間に位置するシステムだといえるでしょう。
boardに搭載されている主要な機能は以下のとおりです。
【案件単位での書類管理】
納品日や請求日などを管理しつつ、案件(契約)に紐づいた請求書や見積書などをいつでも発行できます。
【受注管理】
多くの請求書作成ツールにはない、受注ステータス管理機能が搭載されています。受注に至っていない案件が可視化されるため、対応漏れを防止できます。
【定期請求】
「いつからいつまで請求するのか」といった請求期間を管理できます。契約内容に応じた請求ができるため、契約終了後に誤った請求が発生する事故が起こりません。
【書類のメール・郵送・捺印申請】
作成した書類の送付、捺印申請ができます。書類の作成から送付までの一連の流れがboard上で完結します。
【インボイス制度対応】
インボイス制度対応の適格請求書・適格返還請求書を作成できます。1枚の書類を「双方向のインボイス」形式にすることも可能です。
【案件単位の損益管理】
受注案件に紐付く発注額を管理できます。「利益が出ているか」「損失が発生しているか」を案件ごとに確認可能です。
【未請求や未払いのアラート】
請求漏れや支払い漏れを防止するために、メール・Slack・Chatworkにアラート通知ができます。
【電子帳簿保存法への対応】
自社発行の書類を、電子帳簿保存法にもとづいて保管できます。
【外部サービス連携】
会計ソフト・電子契約サービス・ストレージサービス・SFA/CRMなどさまざまな外部サービスと連携できます。
このように、boardではさまざまな機能を手ごろな価格で利用できます。「請求書作成だけではなく、業務管理や経営管理も担うツールが必要」「しかしERPはコスト的に躊躇する」といった悩みを抱える小規模~中規模企業に最適です。
出典:board
boardに搭載されている「HubSpot連携機能」は、株式会社100(ハンドレッド)監修のもと開発された機能です。この機能を活用し、HubSpotで管理しているリード情報をboardに連携することで、営業管理業務と見積・請求業務がスムーズにつながります。
本連携機能を活用する大きなメリットは、HubSpot単体では実現が難しい、変則的な請求にも対応できるようになることです。boardは日本式の請求書作成に強みのあるツールなので、案件にあわせた柔軟な対応が可能になります。
一方、board単体では本格的な営業管理は実現できません。そこでHubSpotが、顧客と有効なコミュニケーションを図るうえでのデータ管理・活用領域を担ってくれます。
HubSpot連携機能に加え、会計ソフト連携機能も利用すれば、リード管理から会計処理までを一貫して運用可能です。
HubSpotとboardを連携すると、営業管理業務と見積・請求業務の分断が解消されます。以下では、本連携機能によってHubSpotとboardのデータがどのように連動するのか、具体的な操作画面にもとづいて解説します。
HubSpotで登録した「取引」を、boardの「案件」へ連携できます。これにより、HubSpotに登録した以下の情報をboardで扱えるようになります。
HubSpotから連携された取引情報は、board上では「下書き案件」として登録されます。
出典:board
ここからboardに新規案件を登録する際は、HubSpot側に登録された情報(顧客名・案件名・受注ステータスなど)が自動的にセットされた状態でスタートできます。
出典:board
案件登録が完了すると、見積書の編集画面に移動します。HubSpotの取引において「商品項目」を登録している場合は、その内容が自動セットされます。
出典:board
このように、全体を通して入力の手間を省きつつ、HubSpotの情報をboardに取り込むことができます。
連携したHubSpotの「取引」とboardの「案件」は、以下のように相互に連動します。
【HubSpot側の情報を変更する場合】
【board側の情報を変更する場合】
HubSpot側には「board連携から除外」プロパティーが自動で追加されるため、特定の取引のみ連携から除外することもできます。
HubSpotと連携した案件の書類(見積書や請求書など)をboardで発行すると、自動的にHubSpotの「アクティビティー」に登録されます。
具体的には、メール・郵送・電子契約サービスによって送付したタイミングで履歴が反映され、HubSpot側でも書類の発行状況を確認できるようになります。
出典:board
書類の送付手段ごとに、アクティビティーへ登録されるタイミングは以下のように異なります。
関係部署がリアルタイムで書類の発行状況を確認できるため、書類提出後のネクストアクションをすばやく起こせます。
HubSpotの取引画面に「board連携」セクションが追加され、boardとの連携状況が表示されます。これはHubSpotの「CRMカード」という機能です。
出典:board
boardの案件情報・見積書編集画面へのリンクも表示されるため、スムーズにツール間を行き来できます。
HubSpotとboardを連携するメリットとして、大きく以下の4点が挙げられます。
それぞれの詳細を見ていきましょう。
HubSpotはグローバルなツールであることから、日本の法律や特有の商習慣に完全には対応していません。そこで役立つのがboard連携です。
boardは日本企業の経営者が自ら仕様の検討・開発を行っているツールなので、日本の業務・経営に完全にマッチした使い心地を実現できます。たとえばHubSpot単体では難しい、以下のような書類を作成可能です。
HubSpotとboardを連携することで、ビジネスに必要な書類をよりスムーズに作成できます。
HubSpotで管理していた取引情報をboardに連携することで、営業管理から見積もり・請求、そして会計処理まで、一貫した業務フローを構築できます。
業務フローを一気通貫させることの利点は、情報管理や部門間のやりとりの際に発生しやすい「業務効率の低下」を防げることです。HubSpotとboardを連携すると、具体的には以下のような効率化が実現します。
このように、営業活動全体の「無駄」が削減されることで、業務効率を大幅に向上させることができます。
HubSpotとboardを連携することで、作成した書類に関する情報をリアルタイムで関係部署と共有できます。具体的には、以下のような情報をHubSpot上で誰もが確認できるようになります。
関係部署とのコミュニケーションコストが削減されるため、営業担当者は顧客に向き合う時間が増え、より戦略的な業務にリソースを集中できます。案件や数字の全体像が可視化されることで、経営層の意思決定も迅速化するでしょう。
boardは、中小企業向けのコストパフォーマンスの高い料金体系が魅力のツールです。HubSpotとの連携機能も「追加費用なし」で利用できるため、導入企業の費用負担を軽減できます。
SaaS製品は、カスタマイズやAPI連携を利用する際に追加費用が発生するケースも少なくありません。一見して月額費用の安いツールでも、開発費用や保守費用、データ量に応じた課金などによってトータルの運用コストがかさむ場合もあります。
この連携機能は、HubSpotユーザーならboardの月額利用料のみの費用負担で利用可能です。
HubSpotとboardの連携機能を利用するためには、boardにおいて以下いずれかの料金プランを選択する必要があります。
boardの料金プラン(2025.3時点)
本連携機能は、HubSpotの無料ツールを含むすべての料金プランで利用可能です。
HubSpotとboardを連携する際は、以下のポイントを事前に確認し、準備を進めておくことが大切です。
それぞれの詳細を解説します。
HubSpotとboardの連携に限らず、連携するツールを選ぶ際は、自社のビジネスモデルとの適合性を慎重に検討する必要があります。自社の業務プロセスに適さない機能を導入すると、作業手順の大幅な変更を強いられ、生産性の低下を招くおそれがあるためです。
現場の業務効率を向上させるためには、「必要最低限」のツールから連携し始めることをおすすめします。上層部だけではなく、現場の意見も取り入れながら連携すべきツールを検討しましょう。
すでに使用しているシステムがある場合、既存システムとの連携性を事前に確認しておくことも重要です。
board側が提供している機能によって連携できる外部サービスには、以下のようなものがあります。
その他、サードパーティーによる連携も可能なものの、システムの安定性やセキュリティを考慮する必要があります。boardを導入する際は、公式の連携機能で既存システムとの連携が可能なのかを事前に確認しておくことをおすすめします。
ツール連携を行うと、これまでの業務プロセスが多少なりとも変化します。HubSpotとboardの連携においても、これまでHubSpotを活用していた従業員は新たにboardの操作も覚える必要があるでしょう。
そこで欠かせないのがトレーニングです。まずは、操作性や業務フローの変更点を、ツールを使用する全従業員に理解してもらう必要があります。
トレーニングを実施する際は、マニュアル整備やサポート体制の構築にもあわせて取り組みましょう。疑問発生時に迅速な解決ができなければ、現場にツールを浸透させることが難しくなります。
ツールを「導入して終わり」ではなく、活用を定着させる取り組みを継続することが大切です。
実際にHubSpotとboardを連携している企業は、どのような業務効率化を実現しているのでしょうか。
以下では2社の事例を取り上げ、解決できた課題や得られたメリットなどを紹介します。自社の現状と照らし合わせ、課題解決の参考にしていただけますと幸いです。
出典:ハレフル
株式会社ハレフルは、HubSpot・Salesforceの導入支援、システム開発・Webサイト制作支援を提供している企業です。
【抱えていた課題】
同社の見積・請求業務は「Excelで作成した見積書を会計ソフトに転記する」という流れで対応していました。共同代表と2人体制の段階では支障がなかったものの、メンバーの増加や会社の成長を考慮すると、見積・請求の業務プロセスを見直すべきだとの結論に至りました。
【HubSpotとboard連携を実現した経緯】
同社ではHubSpotを利用していましたが、HubSpotの見積作成機能は日本人として馴染みづらく、直感的に活用できていませんでした。
そこで認知したのが「board」です。既存システムのHubSpotと連携でき、問題となっている見積・請求業務を効率化でき、さらには会計ソフトとも連携できる。同社が必要としている機能をすべて備えていたことに加え、コストパフォーマンスに優れている点が導入の決め手でした。
【実現できたこと】
これまで分断していた見積・請求業務が、1つのシステムで完結できるようになりました。さらに、会計ソフトとも連携することで、商談管理から見積・請求、会計処理までの業務の一元管理を実現しています。
【HubSpotとboard連携で得られたメリット】
HubSpotには顧客とのコミュニケーション履歴が残るため、見積・請求時にHubSpotを見れば、案件の経緯をすべて把握できます。
顧客の担当者と異なる人が請求書を作成する場合でも、HubSpotの履歴を確認すれば、わざわざ担当者にヒアリングする必要がありません。社内のコミュニケーションコストを削減でき、業務効率の低下を防止できています。
株式会社100は「HubSpot Best Partner in Japan」を2年連続で受賞した、HubSpotの日本国内パートナーです。HubSpot導入企業のビジネス成長を支援している専門家集団であり、本連携機能の開発を監修しています。
【抱えていた課題】
100創業当初の案件数が少ない時期は、会計ソフトに付随している帳票作成機能を使用していました。しかし、帳票作成機能のみでは「案件単位での進捗」を管理できません。
取引が増加するにつれて、案件ごとの「見積もり→請求→入金」の流れをスムーズに管理する必要性が増していきました。
【HubSpotとboard連携を実現するに至った経緯】
代表取締役は、以前に別の会社を創業した際もboardを活用していました。複数のSaaS製品も試したものの、自社の業務にマッチする柔軟性、他ツールとのデータ連携の容易性を考慮すると、100創業時もboardを導入する以外の選択肢はありませんでした。
boardの請求書は、顧客ごと・案件ごとに通貨を分けられ、海外取引の際にも臨機応変に対応できます。さらに、請求書のメール送信方式を選択できること、分割請求への細かな設定が可能なことなど、かゆいところに手が届く使いやすさが長期利用を続けている理由です。
【実現できたこと】
HubSpotとboardを別々に活用していた際は、HubSpotに登録している会社や担当者の情報を、見積書の作成時にboardへ転記する必要がありました。見積書のデータはboard上に蓄積し、見積もり提出前後のコミュニケーション履歴はHubSpot側に記録されるといった情報の分断が発生していたのです。
連携機能を活用することで、このような二重管理・二重作業の手間を削減できました。
【HubSpotとboard連携で得られたメリット】
HubSpotの「取引」とboardの「案件・見積情報」を紐づけることで、取引が見積もりに至った経緯や見積書の内容、提出後のやり取りなどをすべてHubSpot上で確認できるようになります。
また、見積書を提出した後のアクションも起こしやすくなります。見積書提出後のステータス管理はboard単体でも行えるものの、HubSpotと連携することで、以下のようなネクストアクションを喚起できるのです。
HubSpotとboard連携を活用すれば、単にデータを蓄積するだけではなく、データを活用した顧客との継続的なコミュニケーションを実現できるようになります。
HubSpotとboardを連携させることで、営業管理から見積・請求、会計処理までの業務を一気通貫で管理できるようになります。書類作成に関連する情報の可視化・共有が促されることから、営業活動の生産性向上を目指せるでしょう。
HubSpotではカバーしきれない、日本の商習慣にマッチした書類を作成できることがboardの利点です。
「現在HubSpotを利用しているが、見積書・請求書の作成がスムーズにいかない」「業務プロセスにおける無駄を排除し、請求漏れリスクを低減したい」といったお悩みを抱えている方は、HubSpot×board連携機能の活用を検討してみてはいかがでしょうか。