HubSpotは、CRM(顧客関係管理)機能を軸に、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けのツールを統合したクラウド型のプラットフォームです。リサーチ&コンサルティング企業のGartnerによって、「B2B向けマーケティング オートメーション プラットフォーム」の中から、3年連続でLeaderに選出されています。
フォーチュン ビジネス インサイトの発表では、世界のCRM市場は2023年の710億6,000万米ドル(2023年現在の為替レートで約10兆6,336億円)から、2030年には1,575億3,000万米ドル(同条件で約23兆5,694億円)に成長すると予想されています。予測期間中の年平均成長率は12.0%になる見込みで、CRMが需要の高いツールであることは明らかです。
本記事では、世界のCRM市場をけん引する中の1つであるHubSpotについて、サービス概要や基盤となるインバウント思想、製品群、活用するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
HubSpotの導入がおすすめの企業や導入事例と、導入を成功に導くためのポイントも紹介していますので、HubSpotの利用を検討している方は参考にしてみてください。
出典:HubSpot
HubSpotとは、CRM(顧客関係管理)・MA(マーケティングオートメーション)・SFA(営業支援システム)・CMS(コンテンツ管理システム)など、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けの支援ツールを統合したプラットフォームです。
2024年9月時点では、世界135カ国以上で22万8,000社以上のビジネスがHubSpotの製品を採用しています。
ここでは、HubSpotを提供するHubSpot社の概要と、同社が提唱するインバウンド思想について解説します。
HubSpot社は、2006年にBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏とDharmesh Shah(ダーメッシュ・シャア)氏によって設立された米国企業です。2014年10月に、ニューヨーク証券取引所にて上場しています。
主に、マーケティング・営業・カスタマーサポート向けの顧客関係管理やコンテンツ管理など複数のツールを提供しており、2016年には日本法人のHubSpot Japan株式会社が設立されたほか、150社以上の日本のHubSpotパートナーとサービスプロバイダーが存在します。
HubSpotを活用することで、マーケティングや営業、カスタマーサポートなど、複数領域の業務を一元管理できるようになります。1つのCRMデータベースに6つのツールがリンクされているため、顧客の各購買段階において一気通貫したサポートを提供可能です。
具体的には、以下のような業務を効率化する機能が搭載されています。
HubSpotによって情報を一元管理することで、部門間の連携が強化されます。結果として顧客起点のビジネスを展開しやすくなることから、効率的な企業の成長が見込めます。
HubSpotは創業時から「インバウンド思想」を提唱しています。これは、顧客との関係を築く際に自社が価値を提供することで相互の利益を追求するものです。
HubSpotが考えるインバウンド思想は、顧客のニーズに合った情報や適切なコンテンツを提供することで、信頼関係を築きながら問題解決を目指すという考えです。
情報が一方的に送られてくる「プッシュ型」のアウトバウンドマーケティングとは異なり、望まれる価値を提供する手法といえます。
インバウンドマーケティングとは、顧客に価値を提供しながら関係を築き、自社と顧客の双方にメリットをもたらすマーケティングアプローチです。
従来の無計画なDM・電話といった非効率なアプローチとは異なり、顧客が主体的に商品やサービスに興味を持ちやすく、効果測定も実施しやすいため、現代の労働力不足や効率化の課題に対応した手法といえます。
インバウンドマーケティングで重要な点は、相手の意図を理解し、購買プロセス(バイヤージャーニー)を共に歩むことです。「顧客の成功は自社の成功につながる」という考えを軸に、関係構築を目指すことが大切です。
インバウンドマーケティングの実践方法として、HubSpotではフライホイールモデルを採用しています。
フライホイールモデルとは、「Attract(惹きつける)」「Engage(信頼関係を築く)」「Delight(満足させる)」の3つのステップを通じて顧客との関係を構築し、循環的に良好な顧客体験を提供する仕組みです。優れた顧客体験を最優先で提供することで、組織に勢いをもたらすことが期待できます。
なお、従来のマーケティングでは漏斗型の「ファネル」の考え方が一般的でしたが、ファネルでは顧客の口コミ、リピートなどの影響力を示せませんでした。そこでHubSpotでは、顧客同士で影響を与えあうことや、購買を繰り返す概念を表現するために、フライホイールの考え方を取り入れたとされています。
フライホイールモデルの概念は、マーケティング以外にも営業・カスタマーサービス・経営の領域にも適用され、顧客関係を継続的に重視し、サイクルを繰り返す考え方として浸透しています。
HubSpotが提供する製品群は、無料のHubSpot CRMと、5つの「Hub(ハブ)」製品で構成されています。ここでは、それぞれの製品概要と機能について解説します。
出典:HubSpot CRM
HubSpot CRMは、無料で利用可能なCRMツールです。CRMとは、「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の略称で、顧客情報や取引履歴の集約・管理を意味します。
CRMツールを導入することで、部門を横断した顧客情報の管理・活用が可能になるため、インバウント思想のビジネス展開に役立ちます。
HubSpotのCRMは最大5ユーザーが無料で使用することができるので、まずは無料版から使用してみてビジネスの成長に合わせて有料版にアップグレードしていくと良いでしょう。
HubSpot CRMの主な機能は、次の通りです。
【主な機能】
見込み客(リード)の行動を追跡(トラッキング)し、ユーザー行動をデータベース化することで、各ユーザーが購入プロセスのどのステージにいるかを明確に把握することが可能です。
HubSpot CRMはその他5つのHub製品の基盤となるツールであり、複数の製品と連携することで、より効果を高められます。現場の担当者だけではく、部署リーダー・マネージャー・経営層にとっても、1つのツールで業務上のつながりを追跡・管理しやすくなります。
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HubSpotが提供するMarketing Hubは、インバウンドマーケティングに必要な機能を一元管理できる、月額定額制のマーケティングソフトウェアです。簡単な操作でマーケティングに関する豊富な機能を利用でき、見込み客の創出(リードジェネレーション)・購買意欲の醸成(リードナーチャリング)・見込み客の絞り込み(リードクオリフィケーション)まで広く活用できます。
【主な機能】
具体的には、ターゲット一人ひとりにあったキャンペーンの提案や自動化、効果測定などが可能です。
他のマーケティングソフトウェアと違う点は、Marketing HubはCRMプラットフォームの一部であり、すべてのツールと機能が統合されていることで、複数のソリューションを一元管理できる点です。
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出典:Sales Hub
Sales Hubは営業活動を合理化し、営業チームの成果向上を支援するSFA(Sales Force Automation)ツールです。
見込み客との結びつきを深めながら効率的に業務を展開できるほか、営業リーダーにとっては、高度な分析機能によって包括的なチーム管理にも役立ちます。
【主な機能】
繰り返し行うタスクの自動化や、見込み客へのアプローチ状況などを効率的に管理できるため、営業担当者は営業活動の量よりも質へ注力できるようになります。
なお、Sales Hubを採用した企業では、導入から6カ月後には成約件数が24%増加、12カ月後には取引作成件数が12%増加という結果もでています。
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出典:Service Hub
Service Hubは、カスタマーサービスに必要な機能に特化したツールです。顧客データとコミュニケーションを一元管理し、顧客への適切なサポートを提供することで、顧客満足度や維持率の向上、長期的な関係構築に役立ちます。
【主な機能】
問い合わせ窓口専用のカスタマーポータルやナレッジベースの活用により、自己解決型の顧客体験を提供し、円滑なコミュニケーションと迅速な課題解決を実現できます。
これにより、カスタマージャーニー全体のサービス強化と、顧客満足度の向上に寄与すると同時に、問い合わせ数の削減も期待できます。
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出典:Content Hub
Content Hubは、Webサイト制作やコンテンツ管理・更新を容易に行える、多機能なCMS(コンテンツ マネジメント システム)です。
通常、プログラミングやデザインの専門スキルを要するWebサイト制作ですが、CMS Hubを利用すると、開発者の支援なしに高度な開発を行うことが可能です。
また、AIを活用したコンテンツ制作をサポートしており、企業のコンテンツマーケティングの強い味方となります。
【主な機能】
デザインテーマをカスタマイズすることで、パーソナライズされたWebサイトを構築できます。また、SEOアドバイスやCRM機能との統合も可能であるため、ページ訪問者の行動データをもとにWebサイトやコンテンツの改善を行えます。
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Operations Hubは、異なるアプリケーション間でのデータ同期やデータ品質管理などの、オペレーション業務を効率化するツールです。
組織の規模に関係なく、全組織を横断するレベニューオペレーション部門(RevOps)から、特定のオペレーション担当部門まで効果的に活用できます。
【主な機能】
Operations Hubでは、外部ツールとのリアルタイム・双方向同期が可能です。これによりデータ入力の手間を軽減し、業務の効率化を実現できます。
アプリマーケットプレイスでは、2023年10月時点で1,000種類以上のアプリが提供されており、既存データの追加や同期条件の設定にも対応しています。
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出典:Commerce Hub
Commerce Hubは、顧客への請求や売上の回収をサポートするコマースツールです。
従来は複数のツールで管理していた請求業務を1つのプラットフォームに統合することで、顧客との関係性構築に必要なあらゆる情報が可視化されます。
【主な機能】
Commerce Hubを活用することで、商談から収益獲得までのプロセスが合理化し、時間とリソースの節約が可能です。顧客にとって決済手続きが容易になるため、顧客満足度の向上にも貢献します。
インバウンドマーケティングを実現できるHubSpotの各種ツールですが、企業・組織として導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、HubSpotを活用する5つのメリットをご紹介します。
HubSpot製品の中心となるHubSpot CRMは無料で提供されており、これはよくある「トライアル」や「お試し」ではなく、基本機能を永久無料で使用できるというものです。
多機能で拡張性の高いHubSpot CRMが、なぜ永久無料で利用可能なのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その背景にはHubSpotのミッションである「Help millions of organizations grow better(何百万もの組織の成長を支援すること)」があります。
HubSpotの根底に、「優れたツールを無料で提供することは、中小企業やスタートアップにデジタル化の機会を提供し、成長に寄与することにつながる」という考えがあるため、導入企業は同ツールのメリットを無料で享受できます。
しかし、無料ユーザは最大5名に制限されているので、5名を超過する場合は有料プランへの移行や「表示のみのシート」の活用が必要になります。
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株式会社TSUIDEが2022年2月に実施した「SFA・CRM導入実態に関する調査」の結果によると、SFA・CRMツールを導入している企業は全体の9.1%で、「ツールを効率的に活用している」と回答した割合は73%、「活用できていない」と答えた割合は27%でした。
活用できていない主な理由として「使い方・操作が難しい(22.7%)」や「機能を使いこなせない(20.6%)」が全体の半数を占めており、操作性が大きな課題となっていることがわかります。
HubSpotのツールは、ユーザーフレンドリーな直感的な操作性が特徴的で、初めて使用する人にも親しみやすいUI(ユーザーインターフェイス)となっています。
操作性の高いツールを利用することで、現場での定着しやすさにもつながり、ツールのポテンシャルを最大限発揮できます。多機能なツールに慣れていない方も、無料版HubSpotをトライアルとして活用することで、使いやすさを実感できるはずです。
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HubSpotが行った「日本のマーケティング組織が抱える課題」についての意識調査では、マーケティング担当者の73.1%が、「過去1年間で目標達成の難易度が上がっている」と感じていることが明らかになっています。
顧客の課題やニーズは環境の変化によって移り変わるため、購買プロセスごとの見込み客の行動・思考を可視化するための「カスタマージャーニー」の設計が必要です。カスタマージャーニーとは、見込み客の経験を時系列で表現し、商品やサービスの選択から意思決定までをストーリーとして可視化する手法です。
これにより、顧客との相互作用を把握し、適切な場所やタイミングで最適な施策を実行できます。
HubSpotではマーケティングからカスタマーサービスまですべてを一元化されたプラットフォームで管理できる製品を提供しており、カスタマージャーニーを網羅した施策を実行することが可能です。
HubSpotでは常にトレンドに合わせた製品アップデートが実施されます。直近では、年次自社イベント INBOUND 2023にて、生成AIを搭載した新機能群「HubSpot AI」の提供開始と、Sales Hubの刷新が発表されました。
それぞれ、以下の機能が搭載・追加されています。
【HubSpot AI】
【Sales Hub】
HubSpot AIでは、生成AIによるAIアシスタントや、顧客対応の自動化やサービス向上に役立つAIエージェント、AI売上予測、独自のChatSpotなど、最新技術を用いたソリューションが提案されています。
Sales Hubの新機能でもAIを用いた取引管理や売上予測に焦点を当てており、効率性と成果の向上が期待できます。今後リリース予定の機能もあるため、最新情報をキャッチしましょう。
HubSpotアプリマーケットプレイスに掲載されている公式連携アプリは、2024年10月時点で1,700種類以上あります。
HubSpotの委託により作成されたIDCの最新のホワイトペーパーによると、2020年から2024年にかけてのクラウドコンピューティング市場は、年平均で22%の成長率を予測しており、企業は多くの業務支援ソフトウェアを利用することが期待されています。
HubSpotのユーザー企業は平均7個のアプリを連携させており、4分の1以上の企業が10個以上のアプリを利用しているとのことです。
また、海外で人気のアプリだけではなく、日本のユーザーから多くの要望が寄せられていた業務改善プラットフォーム「kintone」との連携なども実現しています。
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HubSpotを活用する上で多くのメリットがありますが、デメリットや課題といわれる部分もゼロではありません。
次の2つのデメリットと解決策を理解しておくことで、自社での導入の判断材料にすることや、導入の際の事前準備をスムーズに進められるはずです。
米国で開発されたHubSpotは、一部日本語訳に不自然さが残ることがあると指摘されています。外資系ツールの利用が初めての方にとっては、ハードルが高く感じる要因のひとつかもしれません。
しかし近年、HubSpotは日本市場にも注力しており、日本法人も設立されています。日本語コンテンツも充実してきているため、今後日本語訳の不自然さが改善されることで、より使いやすいプラットフォームになることが期待されます。
HubSpotは初期設定の段階から使いやすいツールですが、独自の機能の追加や詳細な設定など、より高度なカスタマイズをしたい場合には、不十分に感じるケースもあるかもしれません。
使いやすさには定評があるため、ITリテラシーが低い方が基本操作を行う分には問題はないものの、自社に合わせた複雑なカスタマイズを希望する場合には、専門スキルのある人材や経験豊富な管理者が必要です。
逆に、Salesforceなど他のCRMツールの場合、より複雑なカスタマイズは可能ですが、その分操作が難しいなど導入には高いハードルがあります。
企業の課題やニーズによって、基本機能の使いやすさを重視するか、高度な技術によるカスタマイズ性の高さを重視するかは異なるため、自社にとってバランスのとれたツールを選定するとよいでしょう。
なお、事前に要件定義を明確にしておくことで、導入後に「予定していた機能が不足していた」などのトラブルを防ぐことにもつながります。
HubSpotの導入を検討されている方向けに、各製品の価格帯を一覧にまとめました。
※月次での購入の場合
出典:製品・サービスカタログ(2024年3月時点の情報)
無料のHubSpot CRMは、各HubSpot製品の基盤のデータベースとして機能し、すべての有料版で使用できます。
なお、HubSpotはSaaS製品のため、料金プランと機能は定期的に更新されます。最新の情報については、HubSpot公式サイトをご確認いただくか、株式会社100(ハンドレッド)にお問い合わせください。
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インバウンドマーケティングを効率的・効果的に進めるための手段として、多くの企業がすでにHubSpotを導入していますが、自社でも導入すべきかとお悩みの方も多いでしょう。
ここでは、HubSpotの活用や導入をおすすめする企業の特徴をご紹介します。自社の課題やニーズと照らし合わせながら、参考にしてみてください。
インバウンドマーケティングを実施するには、価値ある情報や顧客が求める体験を提供し、顧客が自ら関心を持ち、商品やサービスにアプローチするような仕組みをつくる必要があります。
HubSpotのツールを活用することで、顧客の興味やニーズの理解からパーソナライズされたコンテンツの作成、適切なタイミングでの情報発信ができるようになります。
2024年4月にはHubSpotは「Content Hub」を発表し、AIを活用したコンテンツ生成機能を強化しました。インバウンドマーケティング機能が拡充されました。
例えば、HubSpotのCRMを基盤としたメールマーケティングツールで、魅力的なコンテンツをターゲットに送信することや、ユーザーの反応をリアルタイムで分析し、スピーディーな改善につなげるなどのマーケティング施策の実行にも役立つでしょう。
HubSpotの無料版・有料版では、必要な機能や容量を選んで利用できます。無料版であれば初期費用がかからないため、ミニマムスタートが可能です。有料版も、自社の課題や目標に合わせて必要な機能を洗い出しておくことで、不要なコストがかかりません。
他のCRM・MA・SFAツールの場合、活用しきれないような高機能まで初期搭載されていることがありますが、HubSpotであれば自社の成長段階にあわせて利用できます。
また、小規模のスタートアップ向けから大規模ビジネスを展開するエンタープライズ向けまで広く対応しているため、ビジネス拡大にあわせて拡張したい場合にも柔軟に対応できます。ビジネスの規模にあわせて無駄なくコストを投じたいという企業におすすめです。
新しいシステムの導入・移行は、社内での定着化に不安要素があるものです。導入における定着に課題がある場合、まずは無料のHubSpot CRMを利用してみることをおすすめします。
ユーザーフレンドリーな操作性で組織内のデータを一元管理できるため、部門を横断した顧客情報管理もスムーズに行えるでしょう。
社内でのシステム定着化に向けたサポートが必要な場合は、HubSpot社やHubSpotのパートナー企業が提供している導入支援を活用することも検討するとよいでしょう。
HubSpotは、これまでCRMやSFAなどのツールを使用した経験がない企業に特におすすめです。
無料版では、顧客情報の一元管理から、営業・マーケティング・カスタマーサービスの効率化まで多くの施策を手軽に試すことができるため、本格的な導入を検討する判断材料にできます。
CRMやSFAの連携のイメージが湧かないという方も、統合型のHubSpotであれば、自然と連携の仕組みを理解し、多角的に活用できるようになるでしょう。
HubSpotは、以下のような企業がリリースする製品とよく比較されます。
ここでは、各製品の特徴やメリット・デメリットをHubSpotと比べながら紹介します。
出典:Salesforce
Salesforceは、世界中で利用されている統合型CRMプラットフォームです。マーケティングや営業、カスタマーサービスなどの各部門が、顧客を中心とした360度すべての情報を共有できることから、このCRMは「Customer 360」と総称されます。
Customer 360を構成する代表的な製品群は以下のとおりで、すべてにSalesforceの生成AIである「Einstein」が標準で組み込まれています。
Salesforceの最大のメリットは、高度なカスタマイズ性と拡張性です。業界や企業特有のビジネスプロセスに、CRMを適応させたい企業には最適な選択肢となり得るでしょう。
一方で、このような柔軟性・カスタマイズ性はツールの複雑性に直結します。Salesforceを最大限に活用するためには、システム設計やCRMに精通した専任の担当者による管理が必要不可欠です。
IT人材や、ツール導入時のリソースを十分に確保できない企業にとっては、使いこなすハードルが高くなります。
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出典:Microsoft
Office製品で有名な米Microsoft.comは、「Dynamics 365」というCRM・ERPビジネスアプリケーションを提供しています。
Dynamics 365は複数の要素から構成されており、代表的な機能には以下のようなものがあります。
WordやExcel、PowerPointなどのOfficeアプリとシームレスに連携できる点が、Dynamics 365の大きな特徴です。操作性も似ているため、Microsoft製品を使い慣れている組織ではオンボーディングの工数を削減しやすいでしょう。
一方で、カスタマイズ性や拡張性に優れていることから、小規模ビジネスの現場においてはオーバースペックとなる可能性があります。HubSpotと比較して規模の大きい企業での導入割合が高いことからも、社内でMicrosoft製品を活用している中堅~大企業に適したツールだということが伺えます。
出典:Zoho
Zohoは、以下のようなビジネス向けクラウドソフトウェアを提供している企業です。
上記のツールを含む8製品をまとめた「Zoho CRM Plus」を導入することで、顧客にかかわる複数領域の業務を一元管理できるようになります。
Zohoは、CRMのデザインを自社の使いやすいようにカスタマイズでき、他社のツールと比較して低価格で運用できることが特徴です。企業の成長にあわせて段階的にアップグレードできることから、小規模ビジネスを中心に支持されています。
一方、国内最大級のIT製品レビューサイト「ITreview」では、マニュアルやコミュニティ、問い合わせサポートなどにおける日本語対応にやや難点があるとの口コミが複数見られます。
コストパフォーマンスに優れているツールですが、運用時の疑問を解決するハードルは高いことを留意しておきましょう。
出典:Marketo
Marketoは、自動処理、コンテンツ、リード開発、アカウントベースドマーケティング(ABM)の力を結集した単一ソリューションで、世界最大級のMAツールです。チャネルをまたいだ施策連携を実現し、顧客の獲得から育成、維持までを自動化・効率化します。
Marketoは、HubSpotのMarketing Hubと比較されることが多いツールであり、搭載されている主な機能には以下のようなものがあります。
特に、高度な分析からインサイトを導き出す機能に強みがあり、複雑なマーケティングキャンペーンを成功させたい企業に適しています。
Marketoは、多機能かつ高価なツールです。導入企業の約8割をミッドマーケット企業〜大企業が占めていることからも、スモールスタートを検討している企業にはやや不向きであることが伺えます。
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社内システムの刷新は、一朝一夕で完了するものではありません。ここでは、HubSpotの導入時に必要な費用や準備について解説します。
HubSpotでは、製品の導入・活用をスムーズに進めるための「導入支援」というサポートが用意されています。選択できる導入支援は、以下の2種類です。
Professional以上のHubSpot製品を選択する場合は導入支援が必須になるため、それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解することが必要です。
HubSpot本社の導入支援では、画一的なフローでリモートによるサポートが提供されます。アドバイスをもらう形式で進行するため、実際に手を動かすのは自社側です。
それに対して代理店の導入支援は、各社のニーズに沿ってカスタマイズが可能です。初期設定や各種設定を代行してくれるため、自社側が費やす労力を最小限に抑えることができます。
HubSpot本社の導入支援は、製品の最新情報をタイムラグなく入手できることがメリットですが、自社にカスタマイズされたサポートを希望する場合は、別途「プロフェッショナルサービス」を利用する必要があります。
IT人材や社内リソースの不足が懸念される場合は、代理店の導入支援を利用することも検討してみましょう。
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HubSpot製品において「Professional」または「Enterprise」プランを選択した場合は、導入支援の利用が必須となり、料金が自動的に請求されます。
月額料金に加え、1回限り以下の料金が発生することをおさえておきましょう。
(HubSpot Japan社が提供しているHubSpot導入支援料金※2024年9月時点)
導入支援の目的は、スムーズなツールの導入を実現することはもちろん、ビジネスを刷新して多くの顧客を惹きつけるうえでのトレーニングプログラムを提供することです。インバウンドマーケティングを順調にスタートさせるために、講師やコンサルタントによるサポートが行われます。
なお、「Starter」プランを選択した場合は必ずしも導入支援を購入する必要はありません。オプション費用を支払うことで、インバウンドコンサルティングを利用可能です。
HubSpotの導入時には、以下のような事前準備が必要です。
このように、HubSpotの導入には多くのリソースが必要になります。特にツールの導入が初めての場合や、社内にIT人材が不足している場合は、導入支援を上手に活用して効率化を図ることをおすすめします。
弊社にてHubSpotの導入を支援させていただいた企業事例を、3社ご紹介します。導入前の課題や導入時の取り組み、成果についても触れています。
出典:株式会社サカエ
株式会社サカエは、FAシステム(工場における自動化)やVA・VE(設計段階からのコストダウン)の提案、部品加工・修理・アフターメンテナンス・工事を手がける会社です。
HubSpot導入前は、内部の情報ツールが散在し、顧客情報が一元化されていないという課題を抱えていました。
導入時の取り組みとして、顧客情報のHubSpotへの集約と、マーケティングとセールスでのデータの一元管理・共有を進めました。
また、マーケティング施策として、HubSpotを使用したコーポレートサイトの構築とオウンドメディアの立ち上げ、メールマガジンやフォーム機能を使ったアンケートの実施を行いました。
HubSpot導入後は業務が効率化し、レポート機能を使用したことでセールスチームとの情報共有が円滑になったといいます。さらに、コーポレートサイトとオウンドメディアからの問い合わせ数は、前年比240%へ伸張し、メールの開封率も約140%へと改善しています。
ABM(アカウント ベースド マーケティング)のアプローチも可能になり、特定ターゲット企業に対して最新情報を提供することで成果につなげています。
出典:ランスタッド株式会社
ランスタッド株式会社は、人材派遣・人材紹介・アウトソーシング事業など、グローバルに展開する総合人材サービス企業です。
ランスタッドは2019年末、採用企業の不足や、求職者と企業との連携に課題を抱えていました。同時期は新型ウィルス感染症対策の影響で、市場の購買行動に変化が生じ始めていた時期でもありました。
そこで2020年に、海外ですでに浸透しているプラットフォームのHubSpotを導入する運びとなりました。
取り組みとして、Content HubにてBtoBサイトを構築し、各種サービスの提供を開始。特にコンテンツ・問い合わせフォーム・独自の派遣オーダーシートの実装に注力したといいます。
リブランディングやステップメールも導入し、法人向けブログのPVが300%増、問い合わせ数が150%増と、大きな成果につながっています。
同社では今後も、スモールスタート戦略で実験を行い、失敗を折り込みながら成果を追求する姿勢を重視し、社内浸透とリソースの最適利用に取り組むとのことです。
ジオマーケティング株式会社は、商業施設のテナントリーシング(*)や、店舗開発業務を支援するSaaS「gleasin(グリーシン)」を提供する会社です。(*市場のニーズや近隣の出店状況を踏まえた上で、テナントを誘致・契約する業務)
2020年のHubSpot導入当初の目的は、コンサルティングサービスの顧客増にあわせた管理方法の効率化にあったそうです。
すでに使用していた別のCRMツールからHubSpotへ移行した理由は、将来的に接触履歴やWeb解析をマーケティングに活用したいという目的によるものでした。
同社では顧客の発生から請求業務までの多岐にわたるタスクを自動的に管理する仕組みを構築し、オペレーション業務の効率化に成功しています。
Marketing Hub、Sales Hub、Service Hubを導入したことで、業務管理が効率的かつ網羅的に行えるようになり、コミュニケーションコストも大幅に削減されたそうです。
参考:HubSpot導入事例|ジオマーケティング株式会社
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HubSpotの導入事例を紹介!マーケティング、営業、カスタマーサポートまで幅広く活用できるHubSpotの事例、導入を成功させるためのポイントを解説!
HubSpotの導入を成功させるためには、いくつかポイントがあります。事前に、次の4つの事項を確認しておきましょう。
HubSpotの導入には、社内での適切なトレーニング・管理体制を築くことが不可欠です。
導入の担当者として、プロジェクトリーダー・トレーニング責任者・データ移行担当者・システム管理部門の役割や責務を明確に定めておくようにしましょう。
また、日常の運用に関しても、HubSpotの要望を受け付ける部門と実践する開発部門を分けて確保することが重要です。
要件定義とは、プロジェクトの初期段階で必要な機能や要件を整理する作業です。HubSpotの各製品とそれぞれのプランは、異なる機能を提供しているため、導入目的やマーケティング戦略をもとに必要な機能を特定し、最適な製品・プランを選定する必要があります。
要件定義を行っておくことで、導入後に必要な機能が不足することや、逆に過剰な機能が搭載されていることを防げるため、スムーズかつ無駄のない導入が可能になります。
HubSpot導入の目的を言語化しておくことも大切です。自社の課題を整理し、明確な目的を定めることで、プロジェクトを効果的に進められます。
目的を共有せず進めると、成果にもつながりにくく、プロジェクトが迷走する可能性もあるため、具体的な問題を特定し、解決すべき領域を明確にしておきましょう。
例えば、リードジェネレーションの向上や、マーケティング業務・営業業務の効率化など、改善すべき課題を特定し、目標を言語化し社内で共有することがポイントです。
社内で言語化された導入目的がしっかりと共有されていれば、明確な目的意識のもとプロジェクトを進めていくことができるでしょう。
HubSpotは初期段階から使いやすいツールですが、自社の要件に応じて最適な形にカスタマイズすることでより大きな成果に結びつきます。
社内でツールの活用が難しい場合は、必要に応じてHubSpotの専門家に相談することも検討するとよいでしょう。HubSpotでは、無料e-Book・ウェビナー・トレーニングリソースなど、充実したサポートを提供しています。
また、HubSpotの公式パートナーへ相談することで、導入時に必要なサポートや効果的な活用方法について具体的なアドバイスを受けることも可能です。
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HubSpotのパートナー制度とは?おすすめの認定パートナー一覧や、依頼メリット、プログラム制度をわかりやすく解説
HubSpotは無料のCRMツールを軸に、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けのツールを統合したクラウド型のプラットフォームです。
HubSpotが提唱するインバウンド思想は、顧客のニーズに合った情報や適切なコンテンツを提供することで、信頼関係を築きながら問題解決を目指すものであり、顧客満足度向上を目指すフライホイールモデルを採用しています。
HubSpot製品は、インバウンドマーケティングを推進したい企業や、初期費用を抑えて事業成長にあわせて拡張していきたい企業におすすめです。また、使いやすさやサポートの充実にも定評があるため、社内でのシステム定着化に懸念がある企業や、今までCRMやSFAなどのツールを活用したことがない企業にとっても、導入しやすいツールといえるでしょう。
本記事でご紹介した導入事例や、導入を成功させるためのポイントも参考に、自社でのHubSpot導入を検討していただけると幸いです。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。