今回はHubSpot社も採用するフライホイールの考え方を解説し、それに基づきインバウンド手法について考えます。
HubSpotをご利用の方は、「フライホイール」というHubSpotの考え方をご存知の方も多いでしょう。フライホイールは、日本語に訳すと「はずみ車」となります。しかし、フライホイールも、はずみ車もイメージが湧きにくいのではないでしょうか。
似た概念にスパイラルがあります。螺旋状にまわりながら広がっていくイメージで、「負のスパイラル」といった表現がよく使われます。負のスパイラルは、悪影響がどんどん連鎖して、状況が悪くなっていくようなことを指しますが、フライホイールが目指すのは、負のスパイラルの反対の「正のスパイラル」です。よい影響が回転しながらエネルギーを蓄え、そのエネルギーが次の回転に広がる好循環です。
HubSpotでは、「Attract(惹きつける)」「Engage(信頼関係を築く)」「Delight(満足させる)」の3つの段階で見込み客や顧客に情報やサービスを提供し、顧客満足を推進力として成長していくことをフライホイールモデルと呼んでいます。顧客の困りごとに対して情報を提供して惹きつけ関係を築く、顧客とのコミュニケーションを通して満足度を上げていく、満足した顧客が次の新しい顧客を口コミで連れてくる、結果として利益が出て再投資できる、そしてより大きな活動ができるという循環です。
参考:フライホイール
https://www.hubspot.jp/flywheel
フライホイールは、マーケティングだけでなく、営業、カスタマーサービス、さらに経営までも含めて考え方のベースになります。顧客との関係を1回だけでなく、継続的に維持していくものとして捉え、何度もこのサイクルを繰り返していくという考えです。
フライホイールを実現しようとすると、「インバウンド手法」でマーケティング、営業、カスタマーサービスを実践していくことになります。顧客の課題に向き合い、必要とされる時に手を差し伸べられるように準備しておくこと、顧客が課題に気づく前にその課題を明確化し、解決方法をコンテンツ化し、Webサイトに掲載しておく、それがインバウンド式の手の差し伸べ方です。顧客が必要な時に、必要な情報を得られるように、コミュニケーションしやすいチャネルに事前に用意しておきます。
なお、フライホイールがマーケティング、営業、カスタマーサービス、経営の考え方のベースとなるように、インバウンド手法もマーケティング活動にとどまりません。営業、カスタマーサービスまで含めて連携して実践するものです。
日本の組織の場合、マーケティング、営業、カスタマーサービスがそれぞれ別の部署になっていて、コミュニケーションが分断されてしまうケースが少なくありません。顧客がマーケティングの段階で伝えた情報を営業担当者にまた伝える、カスタマーサービス担当者にまた伝えるという状況は、顧客体験としては最悪です。
組織の分断を防ぐ一つの解決策として、チームとして一人の顧客を支援していくポッド型体制があります。マーケティング、営業、カスタマーサポートまでが一つのチームになって、顧客のジャーニーに合わせて主担当が変わるものの、同じメンバーがサポートし続けることで一貫した顧客体験を提供できます。フライホイールを実践するなら、組織体制まで踏み込むことになります。
組織を根本から変えるのは難しいかもしれません。また、ポッド型組織がよいのか、The MODEL型がよいのかは業種やビジネスモデルによっても変わるでしょう。最適な組織の形は、顧客の購買行動の変化によって変わっていくでしょう。大事なことは自分たちに顧客を合わせるのではなく、自分たちを顧客に合わせていくということです。
顧客が必要な時に必要な情報を最適な手段で提供するには、顧客の情報を取得して、何に困っているのか、何を知りたいのか、あるいはこれからどういう情報を必要とするのかを想定して、その答えを用意しておくことになります。
今回は、フライホイールの概念について説明しました。フライホイールを実践するには、組織そのものの変革も含めて、部門横断で取り組む必要があります。部門で断絶せずに連携してフライホイールを回すことで、顧客満足度を上げていくことができます。
【100式】インバウンド手法を支える「フライホイール」を、あらためて考えてみる。(この記事)
【100式】HubSpot導入するなら、顧客が嫌がるアプローチを見直そう