HubSpot Communityの「Releases and Updates」から、2026年3月の主要なアップデートを厳選して深掘り解説します。バイヤーペルソナ生成へのAI機能追加(Make My Persona AI)、AIアシスタント「Breeze Assistant」の機能強化、そしてデータエンリッチメントとバイヤーインテントの改善の3本柱です。HubSpotをもっと使いこなすためのヒントとして、ぜひご活用ください。
1️⃣ Make My Persona AIが登場
── ペルソナ生成が「数秒」に
2026年3月12日、HubSpotは無料ツール「Make My Persona」にAI機能を追加しました。新たに加わった「Make My Persona AI」では、ターゲット顧客を自然言語で説明するだけで、AIが自動的にペルソナのすべての項目を生成します。
▲ Make My Persona AIの入力インターフェース
何が変わったのか?
- AI自動生成:ターゲット顧客を一文で入力するだけで、デモグラフィック・目標・職務内容・コミュニケーション嗜好など全フィールドが即座に補完される
- 大幅なステップ削減:旧来の10項目以上のフォーム入力が、4つの質問に会話形式で答えるだけに短縮
- プロ仕様のアウトプット:共有可能・印刷可能な従来のフォーマットをそのまま継承
- レガシーモード維持:従来のステップバイステップ方式は「Legacy App」オプションで引き続き利用可能
- 無料:HubSpotユーザー以外でも makemypersona.com から無料利用可能
▲ ペルソナ生成が完了した画面。「Your Persona Is Ready」と表示され、ダウンロード・共有が可能
🔍 BtoBの現場で使えるか?── 実際に試して分かったこと
弊社で実際にMake My Persona AIを試したところ、いくつかの注意すべきポイントが見つかりました。BtoBビジネスで活用する際の率直な評価をお伝えします。
⚠️ UIは完全英語のみ:入力画面・質問文・生成されるペルソナもすべて英語です。2026年3月時点で日本語UIは未提供。入力を日本語で書いても受け付けられますが、出力は英語になるため、チーム共有時に翻訳が必要です。
【評価①】質問の仕組み ── 思ったほど「数秒」ではない
HubSpotの説明では「describe your ideal customer and watch AI instantly populate every field」とありますが、実際には4つの質問に順番に答える会話型フローです(①ターゲット顧客の説明 → ②最大の課題 → ③どう支援するか → ④製品・サービス名)。1回の入力で即座に完成するわけではありません。ただし、旧来のステップバイステップ(10項目以上のフォーム入力)と比べれば大幅に短縮されています。
【評価②】業種・役職表現 ── 北米基準のズレに注意
生成されるペルソナの役職名は「Marketing Manager」「VP of Sales」「Director of Operations」など北米基準の肩書きで出力されます。国内のBtoB企業では「マーケティング部 課長」「営業推進グループ マネージャー」「DX推進室 室長」など独自の役職体系が一般的です。そのままチーム内で共有すると「これはうちの誰のことなのか」がピンと来ない可能性があります。
同様に、業種分類も「Manufacturing」「Technology」「Professional Services」などグローバル基準であり、「建設」「商社」「素材メーカー」といった国内特有の業種区分は生成されません。
【評価③】コミュニケーション嗜好 ── 国内市場のリアリティが不足
ペルソナの「Information Sources」「Methods of Communication」項目では、LinkedIn・industry podcasts・webinars といった北米で一般的なチャネルが中心に出力されます。実際にBtoB購買者が情報収集に使う展示会・業界専門誌・メーカー代理店経由の情報・名刺交換ベースのネットワークといったチャネルは自動では反映されにくい傾向があります。
【結論】使い方次第で十分活用できる
Make My Persona AIは、「たたき台を高速に作る」ツールとして優秀です。ゼロからExcelやPowerPointでペルソナシートを作るより圧倒的に速く、構造化された出力が得られます。ただし、国内のBtoB文脈ではそのまま使うのではなく、「AIで骨格を作り → 自社の実態に合わせて役職名・チャネル・課題を手動で修正する」というワークフローが現実的です。
🎯 BtoB企業での活用ポイント
- 英語で入力 → 出力を翻訳・ローカライズして使う。役職名は自社の組織図に合わせて書き換える
- 商談後のフィードバックを基に「実態ペルソナ」をAIでたたき台作成 → 営業・マーケチームで共同修正
- 複数セグメント(決裁者・推進者・現場ユーザー)のペルソナをそれぞれ作成し、BtoB購買プロセスの全体像を可視化する
- HubSpotの「コンタクトのセグメント」や「メール配信のパーソナライズ」に活用する際は、ペルソナの属性をHubSpotプロパティに反映させることが重要
🔗 元の発表記事(HubSpot Community)を見る
2️⃣ Breeze Assistantの機能強化
── 実務で使えるAIアシスタントへ
2026年3月10日、HubSpotはAIアシスタント「Breeze Assistant」の機能強化を発表しました。「より良いインプット・より良いアウトプット・より良いUX」の3軸で改善されており、GTM業務を支援するAIアシスタントとして実用性が高まっています。
▲ Breeze Assistantの主な強化ポイント概要
① Better Input(インプットの質向上)
- ページコンテキスト理解:今操作しているページを認識し、その作業に特化した回答を返す(例:ワークフロー画面 → ワークフローに関するアドバイス)
- 役職別カスタマイズ:マーケター・営業・カスタマーサクセスなど、ユーザーの職種に応じて回答のフォーカスが自動調整される
- ブランド一貫性:自社のブランド設定(トーン・スタイル)を自動参照し、コンテンツ生成がオンブランドで出力される
▲ 閲覧中のページを認識して文脈に即した回答を返す
② Better Output(アウトプットの質向上)
- 回答精度・スピード向上:全インタラクションで高品質・高速な回答を実現
- HubSpot Academy連携:「この機能の使い方は?」と聞くと、Academyの専門コンテンツを直接参照して回答
- 自社ビジネスデータ活用:ウェブ解析・キャンペーンデータ・CRMデータを参照した、汎用ベストプラクティスではなく「自社の実態に基づく」アドバイスが可能に
▲ HubSpot Academyのコンテンツを直接参照して回答
③ Better Experience(UX強化)& Loop Marketing対応
- プロンプトライブラリの刷新:HubSpot公式プロンプト・自作プロンプト・チーム共有プロンプトを一元管理。チームで「効くプロンプト」を共有できるように
- Loop Marketing対応:HubSpotが提唱するAI時代のマーケティングフレームワーク「Loop Marketing」に関する専門知識をBreezeが習得。ICP定義・ブランドポジショニング・キャンペーンブリーフ作成をアシスト
▲ 刷新されたプロンプトライブラリ。チームでの共有が可能に
▲ Loop MarketingのエキスパートとしてBreezeが機能する
🔍 実務で押さえるべきポイント
「Breezeは使ってみたけど、何を聞けばいいかわからない」という声をよく聞きます。今回のアップデートで特に注目すべき3つのポイントを解説します。
【ポイント①】「自社データ参照」が本命の強化
最も実用的な変化は「自社CRMデータに基づく回答」です。「先月のメール開封率が低い理由は?」「このリードのリードスコアが上がらないのはなぜ?」といった自社固有の質問に、汎用ベストプラクティスではなく実データを参照して答えてくれるようになります。これにより、外部コンサルタントに依頼していた分析の一部をBreezeが代替できる可能性があります。
【ポイント②】プロンプト共有 ── 属人化防止の切り札
HubSpot運用が「詳しい人ひとりに依存する」パターンは多くの企業で見られます。今回のプロンプトライブラリ刷新では、チーム内でプロンプトを作成・共有できるようになりました。「〇〇業界向けの件名案を作って」「展示会フォローアップメールの下書き」など、実績のあるプロンプトを組織知として蓄積すれば、担当者の異動・退職時のリスクを軽減できます。
【ポイント③】Breeze Assistantの言語対応について
Breeze Assistantは日本語での質問にも対応しています。日本語で質問すれば日本語で回答が返ります。ただし、Academy連携コンテンツは英語が中心のため、Academyベースの回答は英語で返ってくることがあります。日常的な操作ヘルプ・データ分析・コンテンツ生成については、日本語でやりとり可能です。
🎯 BtoB企業での活用ポイント
- まず「自社データに聞く」から始める:「先月のフォーム送信数が減った理由は?」「どのブログ記事がリード獲得に貢献しているか?」など、今まで手動で分析していたことをBreezeに聞いてみる
- チームで使えるプロンプト集を整備する:営業向け・マーケ向け・CS向けに実績あるプロンプトを共有し、HubSpot活用の標準化を進める
- ページコンテキスト機能を日常化する:ワークフロー設定画面・メール作成画面など、作業中にBreezeパネルを開いて質問する習慣をつける
- Loop Marketingフレームワークに基づいてICPとキャンペーンブリーフをBreezeと一緒に作成する
🔗 元の発表記事(HubSpot Community)を見る
3️⃣ データエンリッチメント&バイヤーインテント新機能
── データの完全性と透明性の改善
2026年3月3日発表のアップデートでは、HubSpotのデータエンリッチメントとバイヤーインテント機能が強化されました。CRMデータの品質と、それを支える基盤の透明性・制御性が向上しています。
① より完全なデータ、すぐに使える状態で
- EU企業のコンタクトエンリッチメント強化:欧州企業の役職・会社情報・所在地情報の補完精度が向上。GDPRを意識しつつも充実したデータが取得可能に
- 部分情報でもエンリッチメント実行:以前はデータが不十分な場合はエンリッチメントが走らなかったが、メールアドレスから氏名を推測するなど、少ない情報でも処理できるようになった
- インテントシグナル10%増加:企業ニュース・活動シグナルのプライバシーフィルタを最適化し、バイヤーインテントシグナルが10%増加
- マッチ率の向上:企業マッチ率が最大95%、コンタクトマッチ率も改善
② 透明性と制御性の向上
- プロパティマッピング&エンリッチメント動作制御:「空のフィールドのみ補完」「既存データを上書き」「カスタムプロパティへのマッピング」の3モードを選択可能。「大事なデータが上書きされる心配」が解消
- スケールへの対応:HubSpotは毎週数千万件のエンリッチメントを処理。500件でも50万件でも同様に機能する
🔍 知っておくべきポイント
【現実①】国内企業のエンリッチメント精度は欧米ほど高くない
率直に言うと、HubSpotのデータエンリッチメントは国内企業の情報補完精度が海外(特に北米・EU)と比べて限定的です。企業マッチ率「最大95%」はグローバル全体の数値であり、国内の中堅・中小企業では名寄せが失敗する、あるいは補完される情報が古い・不正確なケースが見られます。これはHubSpotに限らず、海外発のデータプロバイダー全般に共通する課題です。
ただし、今回の「部分情報でもエンリッチメント実行」機能は、メールアドレスしか分からない段階でも氏名を推測するなど、データの起点を増やしてくれるため、十分に恩恵があります。
【現実②】「上書き防止」機能は多くの企業にとって朗報
CRM管理者が最も懸念していたのが「営業が手入力した正確なデータをエンリッチメントが上書きしてしまう」問題です。今回、「空のフィールドのみ補完」「既存データは上書きしない」「カスタムプロパティへのマッピング」の3モードが選べるようになったことで、エンリッチメント導入のハードルが下がりました。まずは「空フィールドのみ補完」から始めるのが安全な運用方法です。
【現実③】バイヤーインテントシグナルの国内市場での有効性
バイヤーインテント(企業のニュース・採用活動・Web行動から購買意向を推測)は、英語圏の企業ニュースが中心です。国内企業のプレスリリースや人事異動情報は現時点ではカバー範囲が限定的です。グローバル展開企業や海外企業をターゲットとする営業チームには有効ですが、国内のみのBtoB営業では過度な期待は禁物です。
🎯 BtoB企業での活用ポイント
- まず「空フィールドのみ補完」モードで導入:既存データを守りながらデータ充実化を段階的に進める
- エンリッチメント結果を必ず検証する:特に国内企業の社名・役職情報は正確かどうか、定期的にスポットチェックを実施する
- グローバル展開企業は、EU向けエンリッチメント強化の恩恵を積極的に活用する(欧州拠点の取引先データが充実)
- バイヤーインテントシグナルは海外企業をターゲットとする営業チームで最も効果を発揮する。国内営業では補助的な位置づけに
🔗 元の発表記事(HubSpot Community)を見る
4️⃣ 実務への示唆まとめ
今回の3つのアップデートは、バラバラに見えますが共通したメッセージを持っています。それは「AIを、もっと日常業務の中に」という方向性です。
- 速さ:Make My Persona AI → ペルソナ作成を「数日のプロジェクト」から「数秒の作業」へ
- 文脈理解:Breeze Assistant → 「誰が・今何をしているか」を理解してくれるAIへ
- 信頼性:データエンリッチメント → 「壊れない・信頼できる」CRMデータ基盤へ
HubSpot Communityの「Releases and Updates」は毎月複数の発表があります。日本語ドキュメントは英語版から遅れることが多いため、英語の一次情報を素早くキャッチアップすることが、HubSpot活用の差別化につながります。
株式会社100では、こうした最新アップデートをHubSpotユーザーに役立つ形で継続的にお届けしていきます。
📌 このブログは HubSpot Community の公式発表を株式会社100が独自に解説・深掘りしたものです。画像は HubSpot Community の発表記事から引用しています。元記事は各セクションの「元の発表記事を見る」リンクよりご確認いただけます。Make My Persona AIについては弊社で実際にツールを操作して検証した上での評価を記載しています。
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