顧客がインターネットで情報収集する現代において、ビジネスの成功にはホームページの運用が欠かせません。しかし、ホームページを制作するのは簡単なことではありません。多くの職種が関与し、場合によっては数か月以上かかる長期プロジェクトになることもあります。
ホームページの制作方法には大きく分けて「自社制作」と「制作会社への依頼」の2つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、あなたのビジネスに最適な選択肢を見つけることが重要です。
本記事では、ホームページ制作の基本からその主な流れ、自社制作と制作会社への依頼の違い、そして各選択肢のメリットとデメリットについてわかりやすく解説します。
そもそもホームページ制作には、どのような工程が必要であり、どのような方法で行えるのでしょうか。ここからは、ホームページ制作の基礎と制作方法を見ていきましょう。
ホームページ制作とは、インターネット上で情報を発信するためのウェブサイトを作成する過程を指します。
ホームページは企業の顔とも言える存在で、オンライン上でのブランディングやマーケティング、情報提供の中心となります。たとえば、インターネットが普及した現代においては、消費者は検索をして商品サービスの情報収集をし、購入するかどうかの決断をします。ホームページがなければ、インターネットで情報収集するユーザーとの接点を失うことになるのです。
ホームページの制作プロセスには、デザインの企画、コーディング、コンテンツ作成、テスト、公開といった一連の作業が含まれます。
このプロセスは、単なるウェブページの作成にとどまらず、ユーザーエクスペリエンスの向上やSEO対策、モバイルフレンドリーなデザインなど、多岐にわたる要素を考慮しなければいけません。。現代において、企業の信頼性やブランドイメージは、そのホームページの出来栄えに大きく左右されます。そのため、見た目の美しさだけでなく、使いやすさや機能性も重視した総合的なアプローチが求められます。
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ホームページを制作する方法は大きく分けて、自社制作と制作会社への依頼の2つがあります。それぞれの方法には異なる特徴とメリット・デメリットがあります。
自社制作の場合、CMSまたはHTML・CSSを使ってゼロからコードを書いて制作します。
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、HTMLやCSSなどのプログラミング知識がなくとも、ホームページの構築から運用管理まで効率よく行えるツールです。多くのCMSは、ドラッグ&ドロップ操作でホームページを構築し、テンプレートも用意されているため、自社にITに精通した人材がいない場合、更新頻度が高いホームページを制作する場合などは、CMSを導入するのが現実的でしょう。
出典:WIX
一方、HTMLとCSSを使って制作する場合は、より細かいカスタマイズが可能で、自由度の高いデザインが実現できますが、高度なプログラミングスキルが必要で、制作には時間と労力がかかります。
制作会社に依頼する方法では、プロのウェブデザイナーやエンジニアが制作を担当するため、高品質なウェブサイトを納期内で作成できます。
制作会社はクライアントの要望をヒアリングし、それに基づいた提案を行うため、ホームページの具体的な完成イメージや活用イメージができていなくとも、自社に適したホームページの構築が行えるでしょう。
たとえば、マーケティング戦略に基づいたデザインや、SEO対策を施した構造など、専門知識を駆使してウェブサイトを最適化します。また、制作後のサポートや運用代行も提供される場合が多く、ウェブサイトの運用に不安がある場合に有益です。
どちらの方法にも一長一短があり、自社のリソースや目的に応じて最適な方法を選択することが重要です。
自社に適したホームページを制作するためには、目的の明確化や要件定義など複数のステップを踏まなければいけません。ここでは、ホームページ制作から公開までの基本的な流れをご紹介します。
ホームページ制作プロジェクトの成功には、多くの専門職の連携が欠かせません。まず、ウェブディレクター、デザイナー、フロントエンジニア、システムエンジニアなどが関与するプロジェクトチームを編成しましょう。
中でも、プロジェクトマネージャーの存在は重要です。プロジェクトマネージャーは、制作計画の立案から進捗管理、各メンバーのタスクチェックまでを一手に引き受けます。プロジェクトマネージャーがいることで、チーム全体の作業がスムーズに進みます。
また、プロジェクトの進行状況を把握し、スケジュールを厳守するための管理も行うため、プロジェクトマネージャーがいなければ、納期に遅れるリスクが高まるでしょう。
外部にホームページ制作を依頼する場合、外部の制作企業がプロジェクトマネージャーを設置することが多いですが、自社の経営陣とのコミュニケーションを取ることは難しいため、自社にもプロジェクトマネージャーを配置し、上層部との連携を図ることが重要です。
プロジェクトマネージャーを設置したら、自社のリソースを確認し、ウェブディレクターやデザイナー、フロントエンジニアなどのメンバーを選定します。この時点で、自社リソースの状況が把握できるため、外部に依頼するかどうかの判断が容易になるでしょう。
外部に委託する場合でも、まずは自社でホームページ制作の企画を行う必要があります。制作会社に丸投げしてしまうと、完成品が自社のイメージと大きく異なるリスクが高まります。そのため、ホームページの目的、予算、希望公開時期の3つを明確にしておくことが重要です。
ホームページの目的は、経営方針やマーケティング部門の全体目標から逆算して考えましょう。
たとえば、新型コロナウイルス感染症の影響で新規リードが減少している場合、新たな潜在顧客を獲得するためにホームページを活用することが考えられます。この場合、オンラインコミュニケーションが重要な役割を果たすため、SEOや事例コンテンツ、自社の強みを訴求するコンテンツを通じて、自社の認知度を高める施策を立案できるでしょう。
予算は、ホームページの目的や規模に応じて設定します。制作会社に見積もりを依頼し、その内容を精査することで、必要な費用を明確にしましょう。また、予算にはデザイン費用、開発費用、保守費用など、各項目を細かく設定しておくことが重要です。
希望公開時期は、プロジェクト全体のスケジュールを考慮して設定します。無理のないスケジュールを組むことで、質の高いホームページを制作することができます。プロジェクトのマイルストーンを設定し、各ステージでの進捗を確認する仕組みを作ることが理想です。
これらの要素が明確になることで、サイト全体の方向性が定まり、ターゲットに対して効果的な情報発信が可能となります。
自社で制作しない場合は、ホームページ制作を依頼する会社を選定します。企業規模にかかわらず、自社にホームページ制作のノウハウがない場合は、制作会社に依頼することをおすすめします。その理由としては、ホームページ制作が円滑に進むケースはまれなためです。
たとえば、デザインが完成しても上層部の承認が得られずにやり直しになるケースや、競合分析が不十分で目標設定がずれ、期待した効果が得られないリスクがあります。これらのリスクを軽減するためにも、専門の制作会社に依頼することがおすすめです。
日本には多くの制作会社があり、それぞれに強みや特徴があります。WACUL株式会社の調査によれば、既存の取引先に依頼する場合の成功率は30%に対し、新規パートナーに依頼する場合の成功率は50%に上ります。これから考えると、新規パートナーを開拓することが効果的です。
出典:WACUL株式会社
制作会社を選定する際の基準としては、以下のポイントを考慮しましょう:
複数の制作会社にRFP(提案依頼書)を送付し、具体的な提案を受け取ります。RFPには、プロジェクトの目的や要件、予算、スケジュールなどを詳細に記載します。各社の提案内容を比較検討し、自社のニーズに最も合致するパートナーを選定しましょう。
制作会社を選定したら、秘密保持契約書(NDA)や個別契約を締結し、機密情報の漏洩を防ぎます。契約前に詳細な要件を再確認し、双方が合意した上で契約を締結することが重要です。
要件定義は、ホームページ制作において重要なステップです。この段階で、ターゲットユーザー、必要な機能、デザインの要件、コンテンツの種類と量、SEO対策、アクセス解析ツールの設定などを具体的にまとめます。
要件定義書を作成することで、プロジェクトの方向性や必要な機能を明確にし、開発途中での齟齬や変更を最小限に抑えることが可能です。具体的には、ユーザーがどのような情報を求め、どのような行動を取るかを分析し、それに基づいて必要な機能やコンテンツを洗い出します。
これにより、ユーザーが求める情報をスムーズに発見できるホームページ設計が可能です。
要件定義が完了したら、次はホームページの設計に取り掛かります。
この段階では、サイトの構造やデザイン、コーディングの仕様を具体化していきます。まず、サイト全体の構造を明確にするためにサイトマップを作成しましょう。これにより、各ページの配置やナビゲーションの流れが視覚的に把握できるようになります。
次に、ページごとのレイアウトや情報の流れを視覚的に表現するためにワイヤーフレーム(各ページの設計図)を作成します。このワイヤーフレームを基に、具体的なビジュアルデザインに進んでいきます。ビジュアルデザインの段階では、ブランドガイドラインに基づいて色使いやフォント、画像などの視覚要素を統一し、ユーザーにとって魅力的で使いやすいデザインを目指します。
サイトマップ、ワイヤーフレーム、ビジュアルの方向性が定まったら、この段階で最終決定権のある上層部へ確認をとるようにしましょう。そうすることで、ホームページの開発後に大幅なやり直しが生じるリスクを軽減できます。プロジェクトメンバーが問題ないと判断しても、上層部から承認が得られないというケースは多々あるため、本格的な開発へ進む前に承認を得るのは重要なプロセスです。
設計が完了し、上層部から承認を得られたら、実際の開発とコーディング作業を行います。このフェーズでは、デザイナーとエンジニアが協力して、デザインを実際のウェブページに変換します。各ページのレイアウトを実装し、必要な機能を組み込みます。
たとえば、コンタクトフォームやショッピングカート、検索機能など、ユーザーが利用するインタラクティブな要素を開発します。開発が完了した後は、機能や表示のテストを行いましょう。
テストでは、ユーザーが実際に使用する環境でウェブサイトの動作を確認し、問題点を修正します。ブラウザ間の互換性やレスポンシブデザインの確認も重要です。また、パフォーマンステストを実施し、サイトの速度や応答性をチェックします。セキュリティテストも行い、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを評価し、対策を講じる必要があります。
受け入れテストは、発注側企業(特に上層部)が行う検証タスクです。
このテストでは、実際のユーザーが使用する環境でウェブサイトの動作を確認し、要件を満たしているかをチェックします。UATを通じて、最終的な修正や調整を行い、実運用に向けた準備を整えます。
テストでは、ユーザーエクスペリエンスを重視し、ナビゲーションの使いやすさやコンテンツの読みやすさを確認しましょう。また、全ての機能が正しく動作することを確認し、バグや不具合がないかを徹底的にチェックする必要があります。
UATの結果を基に、必要な修正や改善を行い、最終版のホームページを完成させます。
すべてのテストが完了し、問題が解決されたら、いよいよホームページを公開します。公開の際には、サーバーへのアップロードやDNS設定の変更などの技術的な作業が必要です。また最終チェックを行い、全てのリンクや機能が正しく動作することを確認します。
運用開始後も、ユーザーデータを元に改善を続けます。たとえば、新しいコンテンツの追加や既存コンテンツの更新、デザインの微調整などを行い、サイトの品質を維持します。また、アクセス解析を通じてユーザーの行動を把握し、コンテンツの最適化や機能の追加を行います。
セキュリティ対策やバックアップの管理も欠かせません。これにより、長期的な視点でウェブサイトの品質とユーザー満足度を維持することができます。定期的なレビューを行い、サイトのパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスを継続的に向上させる努力を続けましょう。
ホームページ制作会社に依頼する際には、いくつかの重要なポイントを事前に押さえておく必要があります。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになり、期待通りの成果を得ることができます。
ホームページ制作プロジェクトの成功には、自社の積極的な関与が欠かせません。制作会社に丸投げせず、自社もメンバーの一員としてプロジェクトに協力する必要があります。特に、進捗の遅れや要件の変更は迅速に対応する必要があるため、プロジェクト開始前に効果的なコミュニケーション手段を決めておくことが重要です。
まず、日々の連絡や情報共有で使用するコミュニケーションツールを選びましょう。
たとえば、SlackやMicrosoft Teamsなどのツールを使用することで、リアルタイムでのやり取りが可能になり、プロジェクトの進行状況を迅速に共有できます。チャット形式でのやり取りはメールよりも迅速で、細かな調整や質問がスムーズに行えます。
次に、プロジェクト管理ツールを導入するのもおすすめです。ホームページ制作には多種多様なステップや人材が関与するため、誰がどのタスクを担当しているのかを明確にしなければいけません。AsanaやTrelloなどのプロジェクト管理ツールを用いることで、タスクの優先順位を設定したり、進捗状況を可視化できます。
出典:Asana
さらに、担当窓口を明確にしておくことも重要です。制作会社内の担当者(主にプロジェクトマネージャー)と自社の担当者を決め、窓口を一本化することで、情報の伝達ミスや混乱を防ぐことができます。この担当者同士は定期的にミーティングを実施し、進捗状況の確認や問題点のリストアップを行いましょう。
たとえば、毎週の定例ミーティングを設定し、進捗報告や課題の共有を行うことで、プロジェクトの透明性と効率性を高めることができます。
ホームページ制作には大きく分けて、フルオーダー制作とテンプレート制作の2つの方法があります。それぞれの方法には異なる特徴とメリット・デメリットがあるため、自社のニーズに合わせて選択することが重要です。
フルオーダー制作は、ゼロからウェブサイトを作り上げる方法です。この方法では、自社の要望やブランドイメージに合わせて完全にカスタマイズされたデザインと機能を実現することができます。たとえば、独自のデザインや複雑な機能を持つサイトを作りたい場合、フルオーダー制作が適しています。
メリットとしては、完全オリジナルなデザインが実現できること、細かな要望に対応できることが挙げられます。また、他社との差別化を図ることができ、ブランドイメージを強く打ち出すことが可能です。
たとえば、ECサイトで独自の購入フローを設計したり、特定の業界に特化した機能を持つサイトを構築する場合などはフルオーダー制作が有効でしょう。しかし、制作には時間とコストがかかるため、予算に余裕がある場合に適しています。プロジェクト期間が長くなることもあり、しっかりとしたスケジュール管理が求められます。
テンプレート制作は、既成のテンプレートを使用してホームページを作成する方法です。
(HubSpotのテンプレート例)
この方法では、テンプレートに自社のコンテンツを当てはめることで、比較的短期間かつ低コストでサイトを構築できます。WordPressやWixなどのプラットフォームを利用することが一般的です。
メリットとしては、制作コストが抑えられること、短期間でサイトが完成することが挙げられます。また、テンプレートはすでにデザインや機能が整っているため、技術的な知識がなくても簡単に運用できる点も魅力です。
たとえば、スタートアップ企業が迅速にコーポレートサイトを制作したい場合や、予算が限られているプロジェクトに適しています。しかし、カスタマイズの自由度が低いため、他社と似たようなデザインになってしまうリスクがあります。テンプレートを選ぶ際には、自社のブランドイメージに合ったデザインを慎重に選びましょう。
ここでは、自社でホームページを制作する方法と、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
自社でホームページを制作する方法には、主にHTMLやCSSを使って一から作成する方法と、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用する方法があります。それぞれの方法には異なる特徴があり、外注する場合と比べて以下のような違いがあります。
HTMLとCSSを使う方法では、ウェブデザインの知識が必要であり、コードを書いてウェブページのレイアウトやスタイルを設計します。カスタマイズの自由度が非常に高く、デザインや機能に制限がなく、完全にオリジナルなホームページを作成することが可能です。
しかし、HTMLやCSSを使った制作は時間と労力がかかり、技術的なスキルが求められます。そのため、ウェブ開発に精通したスタッフがいない場合は、現実的に行うのは難しいでしょう。また、複雑な機能や高度なデザインを実装するためには、JavaScriptやバックエンドの知識も必要となり、これらのスキルを持つ人材の確保が課題となります。
CMSは、ウェブサイトのコンテンツを効率的に管理・更新するためのシステムです。
WordPressやDrupal、HubSpotなどが代表的なCMSで、これらを使用することで、コーディングの知識がなくても簡単にウェブサイトを構築できます。CMSは、テンプレートやプラグインを活用することで、短期間で機能的なサイトを作成できるのが特徴です。
たとえば、上記画像はHubSpotのホームページ制作画面です。
テンプレートを選ぶことで、ホームページの大枠が完成しているため、要素を編集したり、右画面から必要な機能をドラッグ&ドロップ操作で追加したりするだけで、ホームページが完成します。
また、CMSを使用することで、コンテンツの運用や更新が容易になります。たとえば、ブログ記事の投稿や画像の差し替えなど、日々のコンテンツ更新を手軽に行うことができます。ただし、テンプレートの制約やプラグインの互換性問題が発生する場合があり、完全にオリジナルなデザインや機能を実装するには限界があります。
自社でホームページを制作する最大のメリットは、大きなコスト削減でしょう。
制作会社に依頼する場合、デザイン費や開発費などが発生し、数百万円から数千万円の費用がかかります。WACUL株式会社の調査によれば、回答者の約40%がコーポレートサイト制作にかけられる予算として100万円以上300万円未満と回答しています。
出典:WACUL株式会社
自社で制作することでこれらのコストを大幅に抑えることができます。特に、中小企業やスタートアップにとっては、限られた予算を有効活用できるため、費用対効果が非常に高い方法となります。また、外注時には見積もりや契約の手続きが必要ですが、自社制作ではこれらの手間も省け、スムーズに制作を開始できるという利点があります。
さらに、自社で制作を行うことでスタッフのスキルアップにもつながります。ウェブ開発の知識や経験を社内に蓄積することで、今後のプロジェクトやメンテナンスに役立ちます。たとえば、社内のデジタルマーケティングチームが、ウェブサイトの改善や新機能の追加に直接関与できるようになります。これにより、内製化された知識と技術は他のデジタルプロジェクトにも応用可能となり、企業全体のデジタルリテラシーを向上させる効果も期待できます。
このように、自社でホームページを制作することで、コスト削減、高い自由度と柔軟性、そしてスキルの蓄積という大きなメリットが得られます。
自社でホームページを制作することには、いくつかのデメリットも存在します。
まず第一に、高い技術的要求と学習コストが挙げられます。自社制作には、HTML、CSS、JavaScriptなどのフロントエンド技術から、PHPやMySQLなどのバックエンド技術まで、幅広いスキルが必要です。これらの技術を習得するには時間がかかり、最新の技術やトレンドを追い続けるためには、継続的な学習とトレーニングが欠かせません。
次に、時間と労力の負担も大きな課題です。
ホームページの制作には、デザイン、開発、テスト、コンテンツ作成など、各フェーズで多くの時間と細かな作業が求められるため、本業に集中できなくなるリスクが高まります。
特にリソースが限られている場合、プロジェクトの進行が遅れ、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。たとえば、重要なキャンペーンのタイミングにサイトが間に合わないと、売上機会を大きく損失することにもなりかねません。
さらに、公開後の保守と運用も自社で行う必要があります。サーバー管理、セキュリティ対策、定期的なバックアップ、バグ修正など、運用にかかるタスクは非常に多岐にわたります。これらを自社で管理することは、相当な負担となるでしょう。
特に、セキュリティ対策やトラブルシューティングには専門知識が必要であり、迅速な対応が求められます。たとえば、サイトがハッキングされた場合やサーバーがダウンした場合、即座に対処できる体制が必要です。そうでないと、顧客の信頼を失うリスクが高まります。
ホームページ制作には多くの専門職が関わり、それぞれが重要な役割を果たしています。以下に、主要な職種とその役割について詳しく解説します。
プロジェクトマネージャーは、ホームページ制作プロジェクト全体の運営、品質管理、納期管理に責任を持ちます。主な役割は、プロジェクトのスケジュール作成、各メンバーのタスク調整、進行状況の確認です。また、リスク管理や問題解決にも関与し、プロジェクトがスムーズに進行するようにサポートします。
さらに、プロジェクトマネージャーはコミュニケーションの窓口となるため、制作会社に依頼する場合は定期的にコミュニケーションをとらなければいけません。プロジェクトマネージャーのリーダーシップとマネジメントスキルがプロジェクトの成功を大きく左右し、密に連携を行うことで、期待通りのホームページを制作できるようになります。
ウェブディレクターは、ホームページ制作における要件定義やスケジュール管理、制作進行管理などの制作実務全般にかかわる業務を担当します。
ホームページの要件を理解し、それを基に具体的な企画を立て、デザイナーやエンジニアに指示を出すのが主な役割です。特に、ユーザーエクスペリエンス(UX)やユーザーインターフェース(UI)の設計において中心的な役割を果たし、サイトの使いやすさとデザインの一貫性を保つことに注力します。
また、ウェブディレクターはコンテンツの方向性を決定し、SEO対策やコンテンツマーケティングの戦略を立てることもあります。プロジェクトマネージャーと役割が似ていますが、プロジェクトマネージャーは、進捗状況の監視や問題解決を通じてプロジェクトの成功を確実にする一方で、ウェブディレクターは、ユーザーのニーズやビジネス目標に基づいた魅力的で効果的なウェブサイトを作り上げることを目指すという違いがあります。
そのため、ウェブディレクターはウェブデザインやマーケティングに関する包括的な知識が求められます。
ウェブデザイナーは、ホームページのビジュアルデザインを担当します。
ホームページのデザインにおいては、機能性と情緒性の両立が重要です。すなわち、ユーザーが使いやすいサイトデザインとブランドの世界観の表現が求められます。そのため、単にデザインに精通するだけではなく、UI(ユーザーインターフェース)とユーザーエクスペリエンス(UX)にも精通した人材をウェブデザイナーに選定することが望ましいです。
ウェブデザイナーの主な仕事は、ホームページの設計に基づいて、色使いやフォント、レイアウト、画像の配置などを決定し、視覚的に魅力的でユーザーにとって使いやすいデザインを作成することです。
フロントエンジニアは、ウェブデザイナーが作成したデザインを実際のウェブページに変換する役割を担います。
HTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を使用して、視覚的なデザインをインタラクティブなウェブページとして実装します。また、設計段階からかかわり、ユーザーにとって最適なホームページ全体の構想を考えることもあります。
フロントエンジニアの主な目的は、ユーザーインターフェースの動作やパフォーマンスを最適化し、ユーザーが快適にサイトを利用できるようにすることです。また、クロスブラウザ対応やレスポンシブデザインを実現するために、様々なデバイスやブラウザでの表示確認も行います。フロンエンジニアの技術力が、ウェブサイトの使いやすさとパフォーマンスに直結します。
システムエンジニア(SE)は、ホームページ制作をはじめとするITプロジェクトで技術的な中核を担う専門職です。特にサーバーサイドのエンジニアを総称してシステムエンジニアと呼ぶことが多く、システムの設計、開発、運用、保守など、幅広い業務に関わります。
その名の通り、システム全体の設計を行う職種であり、データベースの設計やアプリケーションの構築、インフラの設定などを行います。たとえば、eコマースサイトであれば、商品データベースの設計や注文処理システムの設計などを担当することになるでしょう。
また、システムが稼働した後も、システムエンジニアは継続的にシステムの運用と保守を行います。たとえば、突然のアクセス増加に対応するためのサーバーのスケーリングや、データベースの最適化などです。
簡単に言えば、ウェブサイトの信頼性と安定性を支えるのがシステムエンジニアの役割です。
ウェブマーケターは、ホームページを通じて集客や売上を向上させるための戦略を立て、実行します。ホームページ制作の初期段階から関与し、ホームページの目的を明確にし、それを達成するためのコンテンツの方向性や戦略などを立案するのが主な役割です。
また、ホームページ制作においては、ウェブマーケターがコンテンツの企画から制作まで担当することがあります。
ウェブアナリストは、ウェブサイトのアクセスデータやユーザー行動を分析し、改善点を見つけ出します。すでにホームページを所有している場合、既存のホームページのデータを分析し、そこから課題や改善点を抽出することが重要です。
また、ホームページのKGI・KPIの設計、Googleタグマネージャーの実装などもウェブアナリストが行います。ホームページ公開後は、Google Analyticsなどの解析ツールを駆使し、ユーザーの行動パターンやコンバージョン率、離脱率などを詳細に分析します。
これにより、サイトの強みや弱点を把握し、具体的な改善策を提案し、ウェブディレクターやマーケターが施策の実行へと移すのです。
ホームページ制作に関する重要な用語を理解することは、プロジェクトの成功にとって非常に重要です。以下に、知っておくべき主要な用語を詳しく解説します。
出典:slideshare
Webガバナンスとは、ウェブサイトの運営や管理に関する一連の方針や手続きを指します。
コンテンツの品質管理、セキュリティ対策、アクセス権限の管理、コンプライアンス遵守などを文書化することで、ホームページを安全かつ効果的に運営することが可能です。たとえば、表記ルールやアクセス権限管理、セキュリティスキャンの実施頻度などを記載します。
Webガバナンスを作成したら、ホームページ運営にかかわる全員がそのガイドラインに従って運営を行うようにしなければいけません。これにより、サイト全体の一貫性を保ち、リスクを最小限に抑えることができます。また、定期的なレビューや更新を行うことで、変化する環境や要件に対応できます。
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、ホームページのコンテンツを効率的に管理・更新するためのシステムです。代表的なCMSには、WordPress、Drupal、Joomlaなどがあります。CMSを使用することで、コーディングの知識がなくても簡単にウェブサイトを構築・運営することができます。
CMSの主な機能には、コンテンツの作成・編集・削除、メディアファイルの管理、ユーザー管理、プラグインやテーマの導入などが含まれます。また、各CMSは独自の強みを持っているのも特徴です。たとえば、WordPressは柔軟な拡張性、Drupalは高いセキュリティ、HubSpotはデジタルマーケティング全体の最適化といった具合です。
自社ニーズに合ったCMSを活用することで、効果的にホームページの運営が行えます。
ワイヤーフレームとは、ホームページの構造やナビゲーションの流れなどを簡単に示した設計図のことです。
デザインの初期段階で作成され、具体的なビジュアルデザインや開発に進む前に、基本的なレイアウトや機能を確認するために使用されます。
ワイヤーフレームのメリットは、デザインや機能に関する誤解や齟齬を事前に防ぐことができる点です。また、チームメンバーとのコミュニケーションツールとしても役立ち、プロジェクトの方向性を共有するための重要な資料となります。
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがウェブサイトを利用する際の全体的な体験を指します。たとえば、操作性、情報の見つけやすさ、コンテンツ読了後の満足度など、ユーザーの感じるすべての側面を含みます。UXデザインは、ユーザーのニーズや行動を理解し、それに基づいてホームページを最適化することを目指します。
UI(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーが直接操作する画面やページのデザインを指します。ボタンの配置、ナビゲーションメニュー、フォームのデザインなどです。UIデザインは、視覚的な魅力と操作性を重視し、ユーザーが直感的に操作できるデザインを追求します。
具体的な違いとして、UXは全体的なユーザーの体験に焦点を当て、ユーザーが目標を達成する過程をスムーズにすることを目的とします。一方、UIはその体験を実現するための具体的なインターフェースを設計します。たとえば、UXデザイナーはユーザーが簡単に情報を見つけられるようにサイト構造を設計し、UIデザイナーはその構造に基づいて美しく使いやすい画面を作成するのです。
UAT(ユーザー受け入れテスト)とは、実際のユーザーがシステムを使用して、そのシステムが要件を満たしているかどうかを確認するテストです。UATは開発プロセスの最終段階で行われ、システムのリリース前に最終的な確認を行います。
UATの目的は、ユーザーが実際の運用環境でシステムを使用し、潜在的な問題や改善点を発見することです。
ウォーターフォール開発とは、ソフトウェア開発プロセスを一連の段階に分けて順次進める手法です。
出典:ミズーリ大学
要求分析、設計、実装、テスト、納品の順に進行し、前の段階が完了してから次の段階に進みます。この手法のメリットは、計画とスケジュールが明確であり、管理が容易である点です。各段階が明確に定義されているため、プロジェクトの進行が予測しやすく、ドキュメントも充実しているため、プロジェクトの理解や引き継ぎがしやすいというメリットもあります。
一方、ウォーターフォール開発は柔軟性に欠け、変更が困難である点が挙げられます。特に開発の後半で問題が発見された場合、その修正には多大なコストと時間がかかることがあります。また、ユーザーのフィードバックを早期に取り入れることが難しいため、最終的にユーザーの期待に応えられない可能性があるのです。
このように、ウォーターフォール開発は計画的で管理がしやすい一方で、柔軟性に欠け、変更への対応が難しいという特性があります。小規模のホームページ制作には向いていますが、複数のメンバーが関与し、何度も承認の有無が行われるホームページ制作には向いていないかもしれません。
出典:RADIX
アジャイル開発とは、短期間の反復を繰り返しながら進めるソフトウェア開発手法です。プロジェクトを小さな単位に分割し、それぞれの単位を短期間で開発・リリースします。そして、上層部からのフィードバックを迅速に反映させることで、製品を継続的に改善していきます。
アジャイル開発の最大のメリットは、その柔軟性の高さです。プロジェクトの進行中に要件が変更されたり、新しい機能の追加が必要になった場合でも、迅速に対応できます。これにより、上層部のフィードバックを早期に取り入れ、ホームページの品質を向上させることができます。
一方、アジャイル開発にはいくつかのデメリットもあります。プロジェクトの全体像を把握しにくく、長期的な計画を立てるのが難しいことが挙げられます。これは、柔軟性が高い反面、細かい計画が立てにくいことに起因しています。
また、アジャイル開発は高いコミュニケーション能力とチームの協力が求められるため、チーム内の連携がうまくいかない場合、プロジェクトの進行に支障をきたすことがあります。さらに、ドキュメントが不足しがちであるため、プロジェクトの引き継ぎが難しい場合があります。これは、開発プロセスが進化する中で、変更や改善が頻繁に行われるため、ドキュメントの更新が追いつかないことが原因です。
これらの特徴を踏まえると、経験あるプロジェクトマネージャーが率いる大規模なホームページ制作に向いているといえます。
ホームページ制作は単にサイトを公開するだけでなく、その後の運用や更新を考慮する必要があります。また、制作するホームページの目的を明確にし、Webガバナンスに適切に取り組むことが重要です。以下に、ホームページ制作で特に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
ホームページは公開して終わりではなく、常に更新し続けることが重要です。そのため、更新作業が簡単に行えるシステムを導入することが必要です。たとえば、WordPressやJoomlaなどのCMSを活用すると、コーディングの知識がなくても、ブログの更新やニュースの投稿、商品の追加などを簡単に行えます。
また、定期的なメンテナンスの計画を立てることも大切です。セキュリティアップデートやバグ修正をスケジュールに組み込み、サイトの安全性を常に確保しましょう。
たとえば、ECサイトでは、顧客の個人情報や決済情報を扱うため、最新のセキュリティパッチを適用し、脆弱性スキャンを定期的に行うことで、不正アクセスのリスクを低減できます。さらに、定期的にコンテンツを見直し、最新情報を提供することで、ユーザーにとって常に有益なサイトを維持することができます。
ホームページ運用では定期的な更新が重要だからこそ、気軽に更新できる設計を意識しましょう。
ホームページの制作において、目的を明確にすることが何よりも重要です。目的が不明確だと、デザインやコンテンツが一貫性を欠き、ユーザーにとって分かりにくいサイトになってしまいます。
まず、ホームページ運用のゴールを具体的に設定しましょう。たとえば、新規顧客の獲得を目的とするなら、問い合わせフォームやニュースレターの登録ボタンの設置、さらに商流が複雑なBtoBなら事例コンテンツや分かりやすい製品ページも必要となるでしょう。
また、ターゲットとなるユーザー(ペルソナ)を明確にし、そのユーザーのニーズや行動パターンを理解することも重要です。健康食品を販売するサイトの場合、健康志向の高い30代から40代の女性がターゲットになるかもしれません。ターゲットの関心に合わせたレシピや健康情報を提供し、サイトに訪れるユーザーに対して価値ある情報を発信することで、自社ホームページが検索結果画面の上位に表示され、購入へとつながるのです。
このようにホームページの目的が明確になることで、ターゲットとするユーザーが判明し、最適なホームページデザインやコンテンツ内容などが明らかになるのです。
Webガバナンスは、ホームページの運営や管理に関するガイドラインやポリシーを策定し、それに従ってサイトを管理することです。
まず、ホームページのセキュリティを確保するための対策を講じることが必要です。たとえば、ECサイトでは、SSL証明書の導入により、ユーザーの情報を暗号化し、安全に通信を行います。また、定期的にセキュリティパッチを適用し、脆弱性スキャンを行うことで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを低減することも必要でしょう。
アクセス権限の管理も重要です。サイトにアクセスできるユーザーの権限を適切に管理し、不要な権限を持つユーザーを排除することで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを減らします。たとえば、複数の担当者がコンテンツを管理する場合、編集権限を持つユーザーと閲覧のみの権限を持つユーザーを明確に分けることで、誤操作や情報漏えいの防止につながります。
また、公開するコンテンツの品質を一定に保つための基準を設け、レビューや承認プロセスを導入することも重要です。
明確なガイドラインとポリシーを策定し、それを実行することで、ホームページの信頼性と一貫性を高められます。
ホームページ制作には、自主制作と専門業者への依頼の2つの選択肢があります。
自主制作は、コストを抑えられるメリットがありますが、ノウハウが不足している場合は品質面で課題が残る可能性があります。一方、専門業者に依頼すれば、プロジェクトマネジメントから技術的なサポートまで一括対応が可能です。特に大規模サイトの場合は、経験豊富なチームに任せることで高品質な制作と納期遵守が期待できます。
いずれの場合も、ホームページは継続的な更新が不可欠です。そのため、制作の段階からCMS(コンテンツ管理システム)を導入し、効率的な運用体制を構築しておくことが重要となります。