株式会社グローバルインフォメーションが公開した市場調査(米Grand View Research実施)によると、世界のCMS市場は2023年から2030年までの間に、年率10.3%で成長し、2030年までに約572億9000万米ドル(2023年現在の為替レートで約8兆6363億5292万円)に達すると推計されています。
代表的なCMSの一つとして、HubSpotの「Content Hub」があります。Content HubはWebサイトの構築や、テキスト・画像・コンテンツ管理の基本機能を備えたCMS機能を搭載した、コンテンツ制作、管理プラットフォームです。
HubSpot CMSの導入を検討しているものの、自社に適しているかどうかの判断に迷っている企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、HubSpot CMSの特徴や口コミ・評判について解説します。HubSpot CMS Hubを利用している企業の特徴や他のCMSとのスコア比較、活用事例などもご紹介しますので、HubSpot CMSの導入を検討する際の参考にしていただけると幸いです。
HubSpot CMSは、Webサイトの制作や管理、運営に必要な機能が一つに集約されたプラットフォームです。
SEOやレスポンシブデザインなどの機能が組み込まれているほか、HubSpotが提供する他のツールやCRMとの連携もスムーズに行うことが可能です。
まずは、HubSpot CMSの運営会社であるHubSpot社と、HubSpotのCMSである「Content Hub」のサービス概要を確認していきましょう。
HubSpot社とは、Brian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏とDharmesh Shah(ダーメッシュ・シャア)氏によって設立されたアメリカの企業です。
マーケティング、セールス、カスタマーサービス向けに、インバウンドマーケティングの考え方に基づくソフトウェア製品「HubSpot」を開発・販売しています。
同社の製品とサービスは、CRM(顧客関係管理)システムを基盤とした、CMS(コンテンツ管理システム)、マーケティングオートメーション(MA)ツール、営業支援システム(SFA)などです。HubSpotの業務ツールを統一することで、顧客情報の一元管理を実現できます。
また、無料で利用できるプランも充実しており、日本語でのカスタマーサポートや導入支援にも対応しています。
「Content Hub」とは、HubSpotが提供するCMS機能を搭載したコンテンツマーケティングソフトウェアです。HubSpot CRMと連携可能であるため、訪問者に合わせて動的なウェブページを作成し、デスクトップとモバイルのそれぞれの顧客に対して最適なコンバージョンを促進することが可能です。
特に、プログラミングなどの専門知識がない方でも使いやすい設計となっています。
Content HubのCMS機能は、以下の通り
開発者やカスタムコードなしで、簡単にページの作成・公開・更新が行えます。AIを活用したコンテンツアシスタントでは、検索エンジン向けに最適化されたコンテンツを素早く作成でき、質の高いユーザーやデータを収集しやすくなります。
また、用意されたウェブサイトテーマを使用することや、必要に応じてカスタム開発を行うことが可能です。無料のブログ作成ツールを使用して、質の高い記事を公開することで、広範な対象層にアプローチできます。
Content Hubには基本的なCMS機能に加え、SEOやチャットボット、Eメールマーケティングなど、ウェブマーケティングで役立つツールが搭載されています。そのため、ウェブサイトで収集したユーザーデータをHubSpotのCRMに統合することで、マーケティングや営業戦略の立案に役立てられます。
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・【新機能解説】HubSpot Content Hubとは?CMSとコンテンツマーケティングの機能を解説
HubSpot Content Hubは、ウェブサイトの制作を効果的かつシンプルに行うための特徴的な機能を備えています。
ここでは、その中でも注目すべき4つの特徴について解説します。
一般的なCMSを使用する場合、ページの配置やデザインの変更には開発者の協力が必要です。しかし、HubSpotのContent Hubなら、専門的な技術やプログラミングの知識がない場合でも、直感的なドラッグ&ドロップエディターを活用してウェブサイトの作成が可能です。
開発者の協力や複雑なカスタムコードなしに、魅力的で使いやすいサイトを手軽に構築できます。これにより、コンテンツの更新や新しいページの追加を、スムーズかつ迅速に行えます。
HubSpotのCMS Hubはウェブサイトを構築するだけでなく、リード(見込み客)の創出を積極的にサポートしているCMSです。
通常、マーケティングに関するデータを報告するためには、さまざまなツールを連携させる必要がありますが、Content Hubでは追加の接続作業なしに、セッション数や獲得したリード・顧客の数などを簡単に確認できます。
Content Hubで蓄積された情報はHubSpot CRMに集約され、マーケティングチーム、営業チーム、カスタマーサポートなど、企業内のさまざまな部門で共有・活用が可能です。
例えば、マーケティングチームは、統合されたデータから得たユーザー情報を利用し、ターゲットを絞ったアプローチを実施することで、新しいリードを創出しやすくなるでしょう。
さらに、メールの一括送信の効果分析機能も組み込まれており、活用することでマーケティングの成果を最大化することができます。
安定したウェブサイトの構築には、セキュリティの確保が不可欠です。HubSpotのContent Hubにはクラウド上でのホスティングが組み込まれており、セキュリティの確保やサーバーのメンテナンスはHubSpotが行うことになっています。
そのため、利用者はサーバーやセキュリティに関する別途の契約が不要であり、安心してウェブサイトの運用に集中することが可能です。
Content Hubでは、世界中に広がるCDNを活用することで、グローバルな範囲でのウェブサイトの高速な読み込みと99.999%の稼動率を確保しています。
また、Content Hubで作成された全てのウェブサイトは、24時間365日無休のセキュリティーチームと、ウェブ アプリケーション ファイアウォール(WAF)によって保護されています。
Content Hubには、リード(見込み客)に対して個別に適したコンテンツを提供するための、パーソナライズ機能が備わっています。
ユーザーの行動や特定の属性に基づき、ウェブサイト上の体験を最適化し、よりターゲットに近い情報を提供することが可能です。これにより、ユーザーエンゲージメントの向上やコンバージョン率の向上が期待できます。
HubSpot Content Hubの口コミや評判についてG2.comの情報をもとにご紹介します。G2.comとは、利用者が使用したビジネスソフトウェアやクラウドサービスについての評価やレビューを投稿できる、世界最大規模のビジネスソリューションの評判サイトです。
口コミの中に「CMS Hub」といった記載がありますが、HubSpot社は2024年4月に「Content Hub」と改名したためです。
HubSpot CMS HubのG2スコアは、2024年2月時点では5つ星のうち4.5(1,563件のレビュー)の評価となっています。
まずは、G2に投稿されているHubSpot CMS Hubの口コミや評判の中から、ポジティブな内容を見てみましょう。
HubSpot CMSを使うことで、ウェブサイトの移行において専門家のような感覚が得られました。使いやすく柔軟なプラットフォームであるため、簡単にカスタマイズが可能です。すぐに使えるテーマと新しい編集ツールを組み合わせ、素敵なページを手軽に作成できました。UIが分かりやすいため、マーケティング担当者でも開発リソースを必要とせず、コンテンツを自在に変更できます。(検証済みのレビュー担当者 エンタープライズ) |
HubSpot CMSのカスタマーサポートは驚くほど素早く、効果的です。すべての質問に完璧な解決策が提供されないこともありますが、総合的なサポートエクスペリエンスは一流です。HubSpot CMSの利点は、ポータル全体でのシームレスな統合にあり、多くのサードパーティアプリケーションがほぼ不要になる点だと思います。(検証済みのレビュー担当者 中規模市場) |
HubSpot CMS Hubは、コンテンツ管理業務を自動化し、作業を簡素化するのに最適なツールだと思います。広範なドキュメントとサポート的なコミュニティに支えられており、ソーシャルメディアとの統合により時間と労力を節約できます。デザインマネージャーのプレビュー機能は革新的で、コンテンツがどのデバイスでも見栄えよく表示されます。(検証済みのレビュー担当者 中小企業) |
HubSpot Content Hubの良い点として、コンテンツ管理業務を自動化し、時間と労力を節約できる点や、ウェブサイトの移行しやすさ、使いやすさなどがあげられていました。
続いて、HubSpot CMS Hubに関するネガティブな口コミ、評判も確認してみましょう。
CMS Hubではコンテンツの追加は簡単に行えますが、セットアップや変更の際には、カスタムコーディングが必要です。(検証済みのレビュー担当者 エンタープライズ) |
時々、テンプレートオプションのデザイン要素に一部制約があることが欠点かもしれません。(検証済みのレビュー担当者 中小企業) |
欠点として、一部の高度な機能を追加すると高額になる可能性がある点があげられます。また、他の特定のツールとの統合が若干難しいこともあります。小さなバグには遭遇しますが、通常は大きな問題を引き起こしません。(検証済みのレビュー担当者 中小企業) |
HubSpot Content Hubはコンテンツの追加が容易ですが、一方でセットアップや変更時にはカスタムコーディングが必要な点が、デメリットとして指摘されています。また、テンプレートデザインに一部の制約があり、高度な機能の追加には費用がかかることについても意見が寄せられていました。
スタートアップから大企業まで、さまざまな企業がHubSpotを利用し、ビジネスの成長を目指しています。
ここでは、HubSpot Content Hubを利用している企業の特徴について、従業員数・業界・用途の3つの項目に分けてご紹介します。
2024年2月時点でG2に掲載されている情報を参考にすると、HubSpot CMS Hubを利用している企業の従業員数は、以下の通りです。
従業員数50名以下の中小企業がもっとも多く利用しており、全体の50~60%を占めています。従業員数1000名以上の大企業は76社と、全体の5%ほどです。
総合すると、従業員数50名以下の中小企業、または1000名以下の中規模市場を中心に利用されていることがわかります。
HubSpot Content Hubを利用している企業の主な業界分布は、2024年2月時点では以下の通りです。
HubSpot CMS Hubを利用する企業は、主にコンピューターソフトウェア、マーケティング、ITサービス関連の分野に集中しています。そのほかクリエイティブな業界や、健康・保険・教育など専門性の高い分野でも広く採用されています。
HubSpot CMS Hubの用途として、以下のようなものがあげられています。
ウェブサイトの構築・管理が主な用途となっており、WebOpsとしても活用されているようです。WebOpsとは、ウェブサイト全体のタスクや業務、ITアプリケーションとサービスのウェブ上でのオペレーションを意味します。
HubSpot CMS Hubと、他社CMSとのスコアを比較することで、定量的な評価・判断を行いやすくなります。
代表的なCMSとして、下記3つのサービスの概要とスコアをご紹介します。
引用:WordPress
WordPress(ワードプレス)は、オープンソースのブログソフトウェアであり、コンテンツ管理システム(CMS)としても利用されています。
W3Techsの調査によると、WordPressは2023年6月時点で、全ウェブサイトの43.1%で利用されているとのことです。
HubSpot CMS HubとWordPressのスコア比較は、2024年2月時点では以下の通りです。
スコアはContent Hubの方が0.1ポイント高く、レビュー数はWordPressの方が多く投稿されています。HubSpot Content Hubの方が高いスコアの項目として、次の特徴や機能があります。
WordPressの方が、スコアが上の項目は以下の通りです。
使用されている業界は、HubSpot Content Hubは「コンピューターソフトウェア16.2%」「マーケティングや広告12.6%」「情報技術とサービス12.4%」であり、幅広い業界で採用されていることがわかります。
WordPressは、「マーケティングや広告11.6%」「情報技術とサービス6.5%」「コンピューターソフトウェア5.6%」と、特にマーケティング分野での高い利用率を示しています。
出典:Compare HubSpot CMS Hub vs. WordPress.org | G2(2024年2月時点)
引用:Wix.com
Wix.com(ウィックス)は、1億人以上のユーザーが利用するホームページ作成ツールであり、CMSとしても活用できます。
HTMLやCSSなどのプログラミング言語の知識が不要で、直感的にWebサイトを作成できるという特徴があります。
無料版と有料版のサービスを提供しており、有料版では独自ドメインの設定や広告非表示の選択ができ、プレミアムサポートも利用可能です。
HubSpot CMS HubとWix.comのスコア比較は、2024年2月時点では次の通りです。
スコアはContent Hubの方が0.3ポイント高く、レビュー数はWix.comの方がやや多めです。
HubSpot Content Hubの方がスコアが上の項目は、以下です。
Wix.comの方がスコアが上の項目としては、次のような内容があります。
企業の規模によって利用傾向に違いが見られ、小規模ビジネス(従業員50名以下)では、HubSpot Content Hubが54.0%、Wixが79.3%の利用率を示しています。
一方で、中規模市場(51~1000名)では、HubSpot Content Hubが40.9%、Wixが15.3%の利用率となり、大企業(1000名以上)では、HubSpot Content Hubが5.1%、Wixが5.4%の利用率を示しています。
出典:Compare HubSpot CMS Hub vs. Wix | G2
引用:Webflow
Webflowは、アメリカのサンフランシスコに拠点を置く企業であり、Webサイトの構築とホスティングに特化したソフトウェアサービスを提供しています。
同社のCMSを使用することで、Webサイトのデザイン、構築、展開を容易に行うことが可能です。
W3Techsによると、Webflowは上位1000万のWebサイトの内、0.6%で利用されています。
HubSpot Content HubとWebflowのスコア比較は、2024年2月時点では次の通りです。
スコアはContent Hubの方が0.1ポイント高く、レビュー数もContent Hubの方が3倍ほどです。
HubSpot Content Hubの方がスコアが上の項目は、以下の通りです。
これに対し、Webflowの方が以下の項目ではスコアが上です。
利用者の会社規模は、小規模ビジネスと大企業ではWebflowが高い利用率を有し、中規模市場ではHubSpot Content Hubが主流です。
業界別に見ると、HubSpot Content Hubの主な利用業界は、コンピューターソフトウェアやマーケティングや広告であるのに対し、Webflowの主な利用業界はデザイン系の業界で利用されていることが分かります。
出典:Compare HubSpot CMS Hub vs. Webflow | G2
実際にContent Hubを活用している事例を、2社ご紹介します。
引用:株式会社サカエ
静岡県浜松市に本拠を置く株式会社サカエは、伝動・油空圧機器から検査装置まで取り扱う技術商社です。
2020年11月にHubSpot CMS Hubを利用してコーポレートサイトをリニューアルし、同時にデジタルマーケティングを強化しました。
主な取り組みはコーポレートサイトのHubSpotでの構築と、オウンドメディアの開始・内製化です。結果として、技術情報に特化したオウンドメディアが有効なお問い合わせを生み出しています。
出典:問い合わせ240%アップ 顧客のための専門的な情報から生まれるコンタクト | HubSpot 導入事例
引用:株式会社ハーモ
昭和37年創業の株式会社ハーモは、プラスチック成形に必要な製品を国内で生産する老舗メーカーです。
同社では当初、新規案件の伸びを課題としており、営業改革に注力していたそうです。そこで、見込み客や顧客とのオンライン接点を増加させるため、CRMとCMSが一体化しているHubSpotを導入し、営業活動に特化したマーケティングサイトを構築しました。
HubSpotのMarketing Hubのトピッククラスター機能を活用し、ブログや記事の設計を効果的に行っている事例です。
HubSpot CMSは、Webサイトの構築やコンテンツ管理などの基本機能を備えたCMSです。2024年2月時点でのHubSpot Content HubのG2スコアは、5つ星中4.5であり、1,563件のレビューがあります。
その他のCMSのスコアと比較すると、CMS Hubの方が0.1~0.3ポイント高く、口コミや評判も良い内容が多い傾向があります。
企業規模や業界、導入の目的によって各CMSが選ばれているため、本記事で紹介した口コミや評判、スコア比較を参考に、HubSpot Content Hubの導入を検討してみてはいかがでしょうか。