
企業のDX推進において、AIの活用はいかに具体業務へ「実装」するかのフェーズに移行しています。特にHubSpotにおいては、新ブランド「Breeze」の拡充により、専門知識がなくとも高度な業務自動化が可能になっています。
本記事では、HubSpotの最新アップデートの中から、社内業務の負荷を劇的に変える「カスタムアシスタントのプロンプト作成機能」と、営業プロセスの可視化を支える「議事録ツール」の活用戦略について、実機検証の知見を交えて解説します。
1. カスタムアシスタント構築のハードルを打破する「プロンプト生成」
これまでHubSpot内でカスタムアシスタントを構築するには、アシスタントの振る舞いや対話シナリオ、学習データの定義、初回メッセージの設定など、多くの項目を手動で設定する必要がありました。この「設定の重さ」が、導入の大きな障壁となっていたのは否めません。

しかし、今回のアップデートにより、「どのようなアシスタントを作りたいか」をプロンプトとして入力するだけで、設定の大部分をAIが肩代わりしてくれるようになりました。
実際に検証したAIの生成能力

「会社の問い合わせアシスタントを作成します。目的は会社データを理解し、従業員からの質問に回答することです。会社データや業種の洞察を活用して質問に回答する必要があります。」といった内容をサンプルとして入力し、検証を行いました。その結果、以下のような実用的な構成案が自動生成されました。

- 具体的な指示出し: アシスタントへの指示欄には、人間がゼロから考えるのは難しい具体的なプロンプトがすでに入力された状態になります。
- 網羅的な対応カテゴリー: 以下の項目が自動で設定され、回答が困難な場合は専門部署へエスカレーションするフローまで構築されていました。
- 人事・労務関連: 育児休暇の申請手順、有給休暇の取得方法、就業規則の確認
- 社内ポリシー: 経費精算ルール、リモートワーク規定、セキュリティポリシー
- 業務手続き: 各種申請フロー、承認プロセス、担当部署の案内
- FAQ対応: 従業員からのよくある質問への回答
運用のための「最後の一押し」
もちろん、これだけで100%完璧というわけではありません。回答の精度を担保するためには、設定画面から具体的な資料(PDFやURL等)を追加し、ファイル名や内容に合わせてプロンプトを微調整する作業は必要です。
しかし、ゼロから設定する手間に比べれば、構築のきっかけとして非常に強力なアップデートです。Starterプランから利用可能なため、Slack等での個別対応に苦慮している組織は、まず社内向けアシスタントとして試してみる価値が十分にあります。
2. 営業のブラックボックス化を防ぐ「HubSpot議事録ツール」
「tl;dv」や「Notta」といった外部の営業議事録ツールが普及して久しいですが、実はHubSpot標準機能としても議事録ツールが存在します。まだ「存在感が薄い」と言わざるを得ない状態ではありますが、CRMとの密接な連携が最大の強みです。
HubSpotの最新情報より拝借
ツールの特徴と利用条件
このツールは、CRMに保存されている外部コンタクトとのZoom、Google Meet、Microsoft Teamsのミーティングに対応しています。利用には以下の要件を満たしている必要があります。
- 対象: Sales Hub Professional以上のシートが付与されていること
- 設定: カレンダーをHubSpotに接続していること
- 条件: ミーティングに最低1人の外部コンタクト(顧客)が関連付けられていること
【利用上の注意点】 ヘルプ記事によれば、現時点でGoogle Meetでの利用は日本語未対応となっています。導入の際は自社の利用環境を確認してください。
今後の期待値

HubSpotの最新情報より拝借
記録されたミーティングは、HubSpot内の「コーチングプレイリスト」に追加され、他の録画データと同様に一元管理が可能です。
正直なところ、先行する専用ツールと比較すると「まだ荒削り」な部分は見受けられます。しかし、HubSpotのこれまでの開発スピードを鑑みれば、今後数ヶ月のアップデートで利便性が飛躍的に向上する可能性を秘めています。CRM内で全てが完結する利点を活かし、営業チームのナレッジ共有を加速させる一手として注目すべきツールです。
▶︎詳細な情報については下記をご覧ください
議事録ツールでミーティングをレコーディングしてメモを作成する
まとめ:AIによる「社内知見の標準化」と「営業プロセスの可視化」
今回のアップデートから見えてくるのは、AIを「特別な技術」から「日常のツール」へと昇華させようとするHubSpotの戦略です。
- 「社内知見の標準化」: プロンプト生成によるカスタムアシスタント構築で、属人化したナレッジを組織の共有資産へ。
- 「営業プロセスの可視化」: 議事録ツールを通じて顧客との対話をデータ化し、チーム全体のスキル向上へ。
完璧な自動化を一度に目指すのではなく、まずはAIが生成するプロンプトを「土台」として活用し、スモールスタートで組織の生産性を引き上げていく。こうした現実的かつ戦略的なアプローチが、今後のビジネス成長の鍵となります。
本記事の要約版ポッドキャストエピソードを、以下よりご視聴いただけます。