
HubSpot・Marketo・Account Engagement(旧Account Engagement)のどれを選ぶべきか──MAの選定はAI機能の差だけでなく、既存CRM環境・価格・運用体制によって大きく変わります。「マーケ担当者が日常的にAIを使えるか」という観点も含め、各ツールのAI機能を実用面から比較します。
この記事のポイント
- HubSpotは生成AI機能・設定のシンプルさ・マーケ〜営業一体化が強み。中堅企業に費用対効果が高い
- MarketoはエンタープライズAI分析が深いが専任管理者が必要。Account EngagementはSalesforceネイティブ連携に特化
- MAのAI精度は「蓄積されているデータ量」に依存する。データの多いCRMに連携するのが基本
MAツールのAI機能比較:なぜHubSpot・Marketo・Account Engagementを比べるのか
マーケティングオートメーション(MA)ツールのAI機能は、2023〜2026年にかけて各社が大幅に強化しています。HubSpotはBreeze AIを、MarketoはAdobe Senseiを、Account Engagement(現Account Engagement)はSalesforce Einsteinを統合しました。
この記事では「AIを使って何ができるか」という実用面に絞り、コンテンツパーソナライゼーション・リードスコアリング・メール最適化・分析の4軸でHubSpot・Marketo・Account Engagementを比較します。
HubSpot Marketing Hub AI(Breeze)の全機能
コンテンツ生成AI
- Breeze Content Agent:キーワードと目的を入力→ブログ記事・LP・メールの本文を自動生成
- Breeze Copilot:各エディターに内蔵されたインラインAIアシスタント。文章の生成・要約・トーン変更をその場で実行
- ソーシャル投稿生成:ブログURLから各SNS最適化投稿文を自動生成
- AIによるA/Bテスト最適化:メール件名・CTAのA/Bテストで、AIが統計的に優位なバリアントを自動選択

(HubSpot Japan:無料AIコンテンツ生成ツール)
リードスコアリングとパーソナライゼーション
- 予測リードスコア(Likelihood to close):Sales Hub連携で機能。過去の成約データからAIがスコアを自動計算
- スマートコンテンツ:業種・地域・ライフサイクルステージに応じてWebページ・メールのコンテンツを自動変更
- Breeze Intelligence(旧Clearbit):企業・コンタクト情報の自動エンリッチメント(クレジット課金)
分析・レポートAI
- マーケティングアトリビューション:マルチタッチアトリビューションでどのチャネルが成約に貢献したかをAIが分析
- Breeze Agentによるデータ分析:自然言語で「先月のメールキャンペーンで一番効果が高かったセグメントは?」と質問→AIが分析結果を返す
Marketo Engage(Adobe Sensei)のAI機能
主要AI機能
- Predictive Audiences:過去の行動データからAIが類似リードを発見し、キャンペーンのターゲットセグメントを自動提案
- AI-Powered Lead Scoring:行動スコア+人口統計スコアを組み合わせたAIスコアリング。カスタマイズ性が高い
- Send Time Optimization:個人ごとに最もメールを開封しやすい時間を学習し、最適な送信時刻を自動調整
- Content AI:コンテンツパフォーマンスを分析し、セグメントごとに最適なコンテンツを推奨
- Adobe Firefly統合:Adobe Creative Cloudとの連携で、生成AI画像をマーケティングコンテンツに活用

(Adobe:ADOBE MARKETO ENGAGE 強力なマーケティングオートメーション)
Marketoの特徴
Marketoは「エンタープライズ向けのMAとして複雑なリードライフサイクル管理」が強みです。大規模なBtoB企業(売上1,000億円以上クラス)で複数の製品ライン・複数の国・複数の営業チームが関与する場合に真価を発揮します。Adobe Experience Cloud(Analytics、Target、Experienceマネージャー)との統合でデジタルエクスペリエンス全体をAIで最適化できる点が差別化ポイントです。
Marketoの弱み
- 価格:月額$1,000〜数万ドルと高価で、中堅企業には過剰スペックになりやすい
- 学習コスト:専任のMarketo管理者が必要なレベルの複雑さ
- UIの古さ:HubSpotと比較してUIが複雑で、マーケターが直感的に使いにくい部分がある
Salesforce Account Engagement(旧Account Engagement)のAI機能
主要AI機能
- Einstein Lead Scoring(Account Engagement版):Account Engagementのエンゲージメントスコアとアイデアルカスタマープロフィールを組み合わせたAIスコアリング
- Einstein Behavior Scoring:最近の行動パターン(エンゲージメントの増加・減少)を分析し、購買準備度を算出
- Engagement History Dashboards:SalesforceのCRMにマーケティングのエンゲージメントデータをダッシュボードとして表示(Salesforce連携前提)
- Einstein Send Time Optimization:個人ごとの最適メール送信時刻をAIが学習・自動調整
- Einstein Copy Insights:メール件名の感情トーンを分析し、クリック率との相関を表示

(Salesforce Japan:B2Bマーケティングオートメーション)
Account EngagementのSalesforce連携の深さ
Account EngagementはSalesforce CRMとネイティブで統合されているため、「マーケのエンゲージメントデータ」と「営業の商談データ」を組み合わせたAI分析が得意です。営業が「このリードは過去にどのコンテンツに反応したか」をSalesforceのリード画面でそのまま確認できます。
Account Engagementの弱み
- Salesforce専用設計:Salesforce以外のCRMとの連携は想定されていない
- コストの重なり:Salesforce Sales Cloud + Account Engagement(Account Engagement)の両方が必要なため、コストが積み上がりやすい
- 生成AI機能はHubSpotに後れ:コンテンツ生成・Copilot系の機能はHubSpotの方が先行している(2025年時点)
3ツールの詳細比較表
| 機能軸 |
HubSpot Marketing Hub AI |
Marketo(Adobe Sensei) |
Account Engagement(Einstein) |
| コンテンツ生成AI |
◎ Breeze Content Agent |
△ Adobe Firefly統合(画像中心) |
△ Einstein Copy Insights(分析中心) |
| リードスコアリングAI |
○ 予測スコア(Sales Hub連携) |
◎ Predictive Audiences(高カスタマイズ) |
◎ Einstein Behavior Scoring |
| 送信時刻最適化 |
○ 一部プランで対応 |
◎ 個人別最適化 |
◎ Einstein Send Time |
| Webパーソナライゼーション |
◎ スマートコンテンツ |
○ Web Personalization(別製品) |
△ Salesforce連携が前提 |
| CRM統合 |
◎ ネイティブ(HubSpot CRM) |
○ Salesforce/Dynamics連携 |
◎ Salesforceネイティブ |
| 分析・アトリビューション |
○ マルチタッチアトリビューション |
◎ Revenue Cycle Analytics |
○ Engagement History |
| 価格帯(目安) |
月$800〜(Pro、2,000コンタクト) |
月$1,000〜(要見積もり) |
月$1,250〜(Growth) |
| 導入・運用難易度 |
低〜中 |
高 |
高(Salesforce管理者必要) |
HubSpotのAI機能がMarketoやAccount Engagementと異なる点:本質的な差
違い①:生成AIの「深さ」
HubSpotは生成AI(コンテンツ作成・メール文章生成)に最も積極的に投資しており、マーケターが日常業務で生成AIを使う頻度が高い機能を次々とリリースしています。Marketo・Account Engagementは予測分析・スコアリング系のAIが得意な一方、コンテンツ生成AIはやや後発です。
違い②:データの「一元性」
HubSpotの最大の差別化はマーケ・営業・CSのデータが同一CRMに統合されている点です。Marketoは主にマーケデータ、Account EngagementはSalesforceのCRMデータと連携はできますが、HubSpotほど「同一データベースで完結」しているわけではありません。AIの精度はデータの網羅性と品質に依存するため、HubSpotのオールインワン構造は特にデータ統合コストの観点で優位です。
違い③:「使いやすさ」のAI民主化
HubSpotはマーケター・営業担当者がAIを日常的に使えるよう、UIのシンプルさを重視しています。Marketoは強力ですが「専任管理者」が必要なレベルの複雑さがあり、AIの恩恵を受けるのはヘビーユーザーに限られます。HubSpotは「普通のマーケターがAIを使える」という民主化を目指しています。
どのMAツールを選ぶべきか:企業規模・現状別
- HubSpotをメインCRMとして使っている:HubSpot Marketing Hub一択。データの一元化とコストの観点で最合理的
- Salesforceがメインで移行したくない:Account Engagement(Account Engagement)がベスト。Einstein連携で深い分析が可能
- 大企業で複雑なシナリオが必要:Marketo Engage。ただし専任管理者と高コストを前提に
- 今後HubSpotに統一を検討している:まずHubSpot Marketing Hub Starterから試し、段階的にProfessionalへアップグレードするロードマップが現実的
よくある質問(FAQ)
Q1:HubSpotとMarketoを同時に使っている場合、どう整理すべきですか?
双方を使い続けることは「データの二重管理」「コストの二重払い」が発生するため、基本的には統合を推奨します。Marketoに大量のシナリオ・資産が蓄積されている場合の移行は6〜12ヶ月のプロジェクトになります。移行前に「HubSpotで再現できない機能」のリストアップと、現在Marketoを使っている理由の棚卸しを行うことを推奨します。
Q2:日本語のコンテンツ生成はHubSpotで対応していますか?
はい、Breeze CopilotおよびContent Agentは日本語での出力に対応しています。ただし、英語と比較すると精度・自然さにやや差があります。日本語コンテンツの最終編集は人間のマーケターが行う前提で活用することを推奨します。
Q3:Account EngagementはHubSpotと連携できますか?
技術的にはZapierやMakeを使ってデータ連携は可能ですが、HubSpotとAccount Engagementを同時運用することはデータ重複・管理コスト増大につながるため、通常は推奨されません。どちらかに統合するか、SalesforceをメインCRMとしてAccount Engagement(Account Engagement)を使い、HubSpotとのデータ連携はSalesforce連携経由で行う方法が現実的です。
Q4:MAのAI機能を比較するとき、一番重視すべき軸は何ですか?
最も重要な軸は「自社のメインCRM環境との整合性」です。どれだけAI機能が優れていても、データが連携されていなければ精度が出ません。次に「自社マーケターが日常的に使いこなせるか(UIの複雑さ)」、最後に「価格とROIのバランス」の順で検討することを推奨します。
Q5:MAのAI機能はどれくらいのデータ量から有効に機能しますか?
リードスコアリングAIには最低数百件の成約・失注実績データが必要です。メール送信時刻最適化AIには個人ごとの送受信履歴が数ヶ月以上必要です。コンテンツ生成AIはデータ量に関係なく使えますが、精度向上にはコンテンツパフォーマンスデータの蓄積が効いてきます。一般的に「月間リード数100件未満・CRM運用歴1年未満」の段階ではAIの恩恵は限定的で、まずデータ蓄積に注力することが先決です。