
AIツールを導入したものの、AI活用が今どの段階にあるか、また会社全体として本当に成果につながっているか、気になったことはありませんか?
「AI導入の迷子」状態から脱却し、全社的な成果につなげるために必須なのが、AI成熟度モデル(AI Maturity Model)という考え方です。これは、AI活用において「自社がどの段階にいるのか」を客観的に把握し、次のステップを明確にするためのツールです。
先日、弊社では全社員がHubSpot AcademyのAI資格を取得いたしました。この取り組みを通じて改めて実感したのは、AI活用において「自社がどの段階にいるのか」を客観的に把握することの重要性です。
AIツールの導入は進んでいるものの、多くの企業様が「AIツールはいくつも導入したけれど、会社全体として本当に前進しているのか分からない」という共通の課題を抱えています。
なぜ今、AI成熟度モデルが必要なのか?
AIの実証実験(PoC)は成功した。チャットボットも導入した。生成AIも使い始めた。でも、これらがバラバラに動いていて、全社的な成果につながっているか見えない。そんな「AI導入の迷子」状態から脱却するために必要なのが、AI成熟度モデルという考え方です。

AI成熟度モデルの役割
AI成熟度モデルは、企業のAI活用レベルを客観的に評価し、次のステップを明確にする「羅針盤」のようなものです。登山に例えれば、今自分が何合目にいて、頂上までどんなルートがあるかを示す地図といえます。
活用で得られるメリット
私たち自身も、HubSpotのAI成熟度モデルを活用することで、「AIを使う」段階から「AIと共に働く」段階への道筋を明確にできました。このような成熟度モデルは、組織全体でAIに対する共通認識を持ち、リソースを戦略的に集中させるためにも極めて有効です。
主要な5つのAI成熟度モデルとその使い分け
世界的に認知されているAI成熟度モデルには、それぞれ異なる強みがあります。自社の抱える課題に応じて、最適なモデルを活用しましょう。
1. IDC MaturityScape:全社の現在地を知る
2. Accenture The Art of AI Maturity:成長につなげる
- 特徴: 1,200社の分析から、AI活用で成果を出している企業(Achievers)の共通点(戦略・人材・責任あるAI・基盤)をバランスよく整備していることを明らかにしました。
- 推奨される課題: 売上や新事業創出を重視する経営者の方など、「技術導入だけでなく、ビジネス成果に直結させたい」場合に特に参考になります。
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参考情報: Accenture レポート
3. Google Cloud AI Adoption Framework:総合的な設計図
4. Microsoft MLOps Maturity Model:運用を安定させる
- 特徴: モデルの開発から運用、監視、改善までの実務要件をLevel 0〜4で明確化。PoC後の本番運用に焦点を当てています。
- 推奨される課題: 「PoCは成功するのに、本番環境で安定稼働しない」という、多くの企業が直面する壁を乗り越えるための指針です。
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参考情報: Microsoft Learn
5. AWS Generative AI Maturity Model:生成AIを段階的に展開
- 特徴: 生成AIの導入を4段階(構想→実験→本番投入→全社展開)で整理。生成AIを「遊び」から「ビジネス活用」へ昇華させる道筋を示します。
- 推奨される課題: 「ChatGPTなどの生成AIの利用を全社的に拡大したい」場合に適しています。
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参考情報: AWS Documentation
AI戦略を策定する実践的な3ステップ
これらのモデルをどう活用すればよいでしょうか。私たちが推奨するAI戦略を策定するための3ステップをご紹介します。
| ステップ |
実施期間の目安 |
実施内容と目的 |
【ステップ1】 現在地の把握 |
1〜2週間 |
IDCの5段階モデルで全社の現状を評価。経営層、事業部門、IT部門それぞれの視点で評価し、認識のズレを可視化します。 |
【ステップ2】 目指す姿の設定 |
2〜4週間 |
Accentureの「Achievers」の特徴を参考に、1年後の到達目標をビジネス指標(売上向上、顧客満足度など)と紐づけて設定します。 |
【ステップ3】 ロードマップの策定 |
1〜2ヶ月 |
Google Cloudの6テーマでボトルネックを特定し、四半期ごとの実行計画を立案。特に、人材育成とデータ整備は時間がかかるため、早期着手が鍵となります。 |
AI Agent × CRMで加速する顧客体験の進化
私たちが提唱している「AI Agent×CRM」の観点から一つ付け加えさせてください。
AI成熟度を高める際、顧客接点の改善は最も成果が見えやすい領域の一つです。例えば、HubSpotのようなCRMプラットフォームにAI Agentを組み込むことで、顧客対応の自動化から始まり、予測分析、パーソナライズされた提案まで、段階的に高度化できます。
重要なのは、一足飛びに高度な活用を目指すのではなく、成熟度モデルに沿って着実にステップアップすること。小さな成功体験を積み重ねながら、組織全体のAI活用能力を高めていくことが重要です。
今すぐできるアクション提案
今週、ぜひ試していただきたいのは、自社のAI活用状況を簡単に評価してみることです。
以下の3つの質問について、一度考えてみてください。
- AI活用は部門個別か、全社横断か?
- 成功指標は技術的な指標か、ビジネス指標か?
- PoCで終わっているか、本番運用まで進んでいるか?
これらの答えから、自社がどの成熟度レベルにいるか、おぼろげながら見えてくるはずです。
まとめ:AI成熟度モデルは旅路の羅針盤
AI活用の「現在地」を把握することは、AI戦略を成功させるための最初の、そして最も重要な一歩です。
今回ご紹介したAI成熟度モデルは、「AIツールの導入」で終わらず、「ビジネス成果への貢献」へと確実に道筋を描くための羅針盤となります。
AI活用の旅に「正解」はありません。しかし、「現在地」を知り、「目的地」を定め、「道筋」を描くことで、組織全体として確実に前進できます。変化を恐れるのではなく、この羅針盤を使って戦略的に一歩を踏み出しましょう。