CMS(コンテンツ管理システム)の便利さの裏には、潜む危険性があることをご存じでしょうか?
WordPressをはじめとするCMSは、ITに詳しくない方でもウェブサイトの構築や管理を容易に行えるツールです。しかし、近年ではこれらのCMSを標的としたサイバー攻撃が増加しています。
想像してみてください。自社のウェブサイトがハッカーによって改ざんされ、大切な顧客データが流出してしまったら。さらに、全てのコンテンツが不正アクセスによって削除されてしまったら。その影響は甚大です。
「自社サイトは大丈夫だろう」と油断していませんか?実は、多くのセキュリティ侵害は基本的な対策が欠如していることが原因です。本記事では、CMSの脆弱性とその対策について詳しく解説します。さらに、セキュリティに強いCMSもご紹介しますので、すでにCMSを導入している方もぜひ参考にしてください。
現代のウェブサイト運営において、CMS(コンテンツ管理システム)は不可欠な存在となっています。まずは、CMSの概要と種類を見ていきましょう。
CMSとは、ウェブサイトのコンテンツ(テキスト、画像、動画など)を効率的に作成、編集、管理するためのソフトウェアです。従来、ウェブサイトの更新にはHTMLやCSS、JavaScriptなどの知識が必要でした。しかし、CMSを利用すれば、これらの専門的なプログラミングの知識がなくても、直感的にウェブサイトを運営できるようになります。
出典: WordPress
代表的なCMSとしては、WordPressがあります。WordPressは、その豊富なプラグインとカスタマイズの柔軟性から、世界中で広く利用されています。また、HubSpotやShopifyなどの企業も独自CMSを開発しており、それぞれが特定のニーズに対応しています。
たとえば、HubSpotのCMSはマーケティングやセールス機能と統合されており、顧客関係管理(CRM)との連携が強みです。一方、ShopifyはEコマースに特化しており、オンラインストアの構築と運営が容易です。
各CMSにはそれぞれ強みと弱みがあるため、自社の要件やニーズを明確にしたうえで選定することが重要です。
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CMSはその提供形態や動作方式に基づいていくつかの種類に分類されます。それぞれの種類には特有のセキュリティーリスクが存在します。ここでは、代表的なCMSの種類とそれぞれのセキュリティーリスクについて詳しく見ていきます。
オープンソースCMSとは、その名の通りソースコードが公開されており、誰でも自由に利用できるCMSのことです。代表的な例としては、WordPressやDrupalがあります。
オープンソースCMSの大きなメリットは、無料で使えることと拡張性が高いことです。多くのプラグインやテーマが提供されており、ITに詳しくない方でも容易にカスタマイズできます。さらに、コミュニティによるサポートや定期的なアップデートも魅力です。
しかし、一方でオープンソースCMSはセキュリティリスクが高いというデメリットもあります。普及率が高く、ソースコードが公開されているため、悪意のある第三者が脆弱性を見つけやすいのです。実際、WordPressを狙ったサイバー攻撃は頻繁に報告されています。
また、オープンソースCMSは運用保守コストがかかる点にも注意が必要です。たとえば、CMS本体やプラグインのアップデート、データのバックアップ、アクセスログの監視などは自社で行う必要があります。これらの作業は専門知識が求められるため、外部のサポートを受けることも検討する必要があります。
多くの企業が導入しているからといって、単純にオープンソースCMSを選定するのは危険です。導入前にはそのデメリットを十分に理解し、自社の要件やリソースに適しているかどうかを慎重に検討しましょう。適切なセキュリティ対策を講じた上で、運用を開始することが重要です。
クラウドCMSとは、SaaS(Software as a Service)型のサービスとして提供されるCMSで、企業が提供するクラウド上で運用されるものです。代表的なものには、HubSpotやShopifyがあります。クラウド型CMSの主なメリットは、豊富な機能性、高いセキュリティ、そして低い運用保守コストです。
クラウド型CMSの場合、サービス提供企業がセキュリティ管理を行うため、自社にITやセキュリティの専門知識がなくても、安心して利用できます。また、HubSpotはデジタルマーケティング全般に強みを持つ、FerretはBtoBのリード獲得に特化、ShopifyはECサイト構築に優れているといった具合に。それぞれのCMSが独自の強みを持っているのも大きな特徴です。
一方で、クラウドCMSにはベンダー依存のデメリットもあります。ベンダーが適切なセキュリティ対策を講じていなければ、不正アクセスや機密情報の流出といったリスクが生じます。したがって、CMSを選定する際には、ベンダーがどのようなセキュリティ対策を行っているのかをしっかりと確認することが重要です。
クラウド型CMSは一般的にセキュリティが高いため、自社に十分なリソースやノウハウがない企業にとっては、安全に運用できる選択肢となります。また、クラウド型CMSは自動アップデートや24時間の監視体制など、運用保守の負担を大幅に軽減できるため、特に中小企業にとっては便利です。
パッケージCMSとは、企業向けに提供されるエンタープライズソリューションです。
パッケージ型CMSは、高度なカスタマイズ性と強力なセキュリティ機能を備えており、自社のニーズに応じた専用のセキュリティ対策を実装することが可能です。たとえば、CMS内で不正な操作が検出された際には、即座にセキュリティチームに警告を発するシステムを構築することができます。
しかし、パッケージ型CMSにはいくつかのデメリットもあります。導入費用が非常に高額であること、一度導入すると簡単には他のCMSに移行できないことが挙げられます。このため、導入前には慎重な検討が必要です。
パッケージ型CMSは、自社に十分なリソースがあり、高度なカスタマイズやセキュリティが求められる大規模サイトや金融業界などに特に適しています。たとえば、大手銀行や政府機関などの高いセキュリティ基準を必要とする組織では、パッケージ型CMSの導入が有効です。
静的CMSは、静的サイトジェネレーター(SSG)を使用して事前に生成されたHTMLファイルを提供する方式のCMSです。データベースを使用しないため、SQLインジェクションなどのデータベース関連の脆弱性がなく、セキュリティリスクを低減できます。また、静的ファイルのみを配信するため、パフォーマンスが高く、サーバーの負荷も軽減されます。
静的CMSの主なメリットは以下の通りです。
一方で、静的CMSにはいくつかのデメリットもあります。コンテンツの更新にはビルドプロセスが必要であり、動的なコンテンツ配信には向いていません。たとえば、ブログの記事を追加したり、ウェブサイトのテキストを変更するたびに、サイト全体を再生成する必要があります。これには時間がかかり、頻繁な更新が求められるサイトには不向きです。
また、リアルタイムでのユーザー入力データの表示や、頻繁に変わるニュースや在庫情報の更新などのインタラクティブな機能の対応も難しい場合があります。
静的CMSはそのシンプルさが魅力で、個人のポートフォリオのように更新頻度が低いウェブサイトに適しています。
近年、CMSに関連したセキュリティ事故が増加しています。以下では、具体的な事例を取り上げ、それぞれの事件の背景と影響について詳しく解説します。
出典: WordPress
2020年2月、WordPressの「ThemeGrill Demo Importer」プラグインに重大な脆弱性が発見されました。脆弱性とは、システムやソフトウェアに存在するセキュリティ上の欠陥や弱点のことであり、サイバー攻撃の入り口となります。
このプラグインは、ThemeGrillのテーマを使用しているサイトにデモコンテンツをインポートするためのツールですが、脆弱性により未認証の攻撃者がサイトを完全に乗っ取ることができる状況にありました。2020年2月15日に脆弱性情報が公開されると、攻撃者は管理者権限を取得し、データベースの全内容を削除したり、サイトの設定をデフォルトに戻したりする被害が発生したのです。
ThemeGrillは迅速に対応し、2月16日に脆弱性を修正した最新バージョンをリリースしましたが、それでも脆弱性の悪用報告が続きました。最終的に、2月18日に再度修正版を提供し、問題を解消しました。
この事例からわかるように、プラグインを迅速にアップデートすることがいかに重要かがわかります。アップデートが遅れると、致命的な攻撃を受け、コンテンツがすべて削除されるなどの大きな被害を被る可能性があるためです。
プラグインを導入する際は、開発元の信頼性を確認することが必須ですが、ThemeGrillのような人気ベンダーであっても攻撃対象となるリスクは十分にあります。そのため、常に最新のバージョンを使用し、脆弱性が報告された場合は迅速に対策を講じることが重要です。
2021年、Webマーケティングを展開するジオコード株式会社のウェブサーバーが不正アクセスを受け、企業サイトが改ざんされました。この事件では、同社が利用していたWordPressの脆弱性を突かれ、サーバー内の一部ファイルが改ざんされました。
改ざんされたサイトは、パソコンからのアクセスが拒否され、スマートフォンからアクセスすると自動的に不正なeコマースサイトに誘導されるようになっていました。幸いにも同社は顧客情報の流出を否定していますが、このような不正サイトでユーザーが個人情報やクレジットカード情報を入力すると、企業は大きな責任を問われ、顧客からの信頼を失うことになります。
この事件を受けて、ジオコード株式会社は以下の対策を講じました。
このような対策により、同社はセキュリティ体制を強化し、再発防止に努めています。この事件は、ウェブサイト運営におけるセキュリティ対策の重要性を再認識させるものであり、他の企業も同様の対策を講じることが求められます。
2023年、サイバーセキュリティ企業Sucuriによれば、WordPressをはじめとしたCMSが複数のマルウェアに同時感染するケースが多発していると報告されました。これらのマルウェアは、Webサイトにさまざまな悪影響を与えます。主なマルウェアの種類とその影響は以下の通りです。
これらのマルウェア攻撃は、主にインジェクション攻撃を通じて行われます。インジェクション攻撃とは、攻撃者が悪意のあるコードをWebサイトのデータベースに挿入し、ユーザーを意図しないサイトに誘導したり、検索ランキングをコントロールしたりするサイバー攻撃です。
こうした攻撃は、顧客やユーザーに直接的な被害を与えるため、迅速な対処が欠かせません。
オープンソースCMSは、その利便性と高い拡張性から多くのウェブサイトで採用されていますが、セキュリティリスクに対する懸念も少なくありません。特に、WordPressは世界中で最も使用されているCMSであり、そのため攻撃者から標的にされやすいという現実があります。
Wordfenceが2020年に発表したレポートによれば、WordPressを標的にした攻撃は「毎秒」2,800件以上にのぼります。では、なぜオープンソースCMSはセキュリティに弱いのでしょうか。
その理由の一つは、オープンソースCMSの特性にあります。オープンソースCMSはソースコードが公開されており、誰でも自由に利用・改変できます。これは利便性と拡張性を高める一方で、サイバー攻撃者がソースコードにアクセスし、脆弱性を発見しやすくするというリスクも伴います。
また、プラグインやテーマの脆弱性もセキュリティリスクを高める要因です。オープンソースCMSは多様なプラグインやテーマを通じて機能拡張が可能ですが、その中にはセキュリティ対策が不十分なものも含まれています。これらのプラグインやテーマは、セキュリティチェックが甘い場合があり、脆弱性を含んでいることが多いのです。
迅速にCMSやプラグインを最新バージョンにアップデートすることがサイバー攻撃の被害リスクを軽減する最も効果的な方法です。しかし、多くの企業が日常業務に追われ、アップデートが後回しにされがちです。実際、ジャクスタポジションの調査によれば、回答者の約半数がバージョンアップに対応できていないことが明らかになっています。
出典: ジャクスタポジション
オープンソースCMSがセキュリティ攻撃を受けやすい特性を持つことは事実ですが、最も重要なのは導入企業が適切な対策を講じることです。
オープンソースCMSは利便性が高い一方で、適切な運用保守が難しい場合があります。自社で十分なリソースを確保できない場合は、ベンダーがセキュリティ対応を行うクラウド型CMSの導入を検討するのも一つの方法です。クラウド型CMSは、ベンダー側でのセキュリティ管理が行われるため、より安全に運用できるメリットがあります。
CMSを安全に運用するためには、さまざまなセキュリティー対策を講じる必要があります。以下に、CMSをセキュリティーリスクから守るために実施すべき具体的な対策を詳しく解説します。
CMSのセキュリティーを強化するための基本的かつ最も重要な対策が、システムの定期的なアップデートです。
CMS本体、プラグイン、テーマなどを常に最新バージョンに保つようにしましょう。定期的なアップデートをする理由は、脆弱性を解消するためです。
開発者は新しいバージョンで既知の脆弱性を修正しているため、アップデートを怠ると古い脆弱性を狙った攻撃のリスクが高まります。特に、WordPressのように普及しているCMSは頻繁にアップデートが提供されるため、最新のセキュリティーパッチを適用することが欠かせません。
株式会社サイバーセキュリティクラウドが脆弱性診断をした結果、全体の約8割が危険性の高い脆弱性だったとのこと。このような脆弱性を放置しておくと、不正アクセスやサイト改ざんなどのリスクが高まります。
定期的なアップデートを行うためには、管理者が常にCMSのリリース情報に注意を払い、自動更新機能を活用することが効果的です。自動更新機能を利用することで、アップデートを手動で行う手間を省き、迅速に最新のセキュリティー対策を適用できます。
CMSのセキュリティを高めるためには、各アカウントの強力なパスワード設定が欠かせません。適切なセキュリティ対策を講じていても、パスワードが弱ければ、ユーザーアカウントが乗っ取られ、そこからCMSが危険にさらされてしまいます。
世界最大のテクノロジー企業Dellによれば、強力なパスワードは以下の条件を満たすとのこと。
また、パスワードの使いまわしを防ぐことも重要です。トレンドマイクロの調査によれば、回答者の8割以上が複数のウェブサービスでパスワードの使いまわしをしていると判明しています。パスワードの使いまわしをしている場合、1つのサービスでパスワードが流出してしまうと、他のすべてのサービスが危険にさらされます。
CMSのアクセス権限を付与する人物には、他のサービスで使用していない強力なパスワードを設定してもらうように徹底しましょう
グローバルセキュリティ企業カスペルキーが1億9,300万件の英語のパスワードを対象にした調査によれば、45%のパスワードは1分未満に解読される可能性があると判明しています。
特にAIが高度化した現代においては、強力なパスワードでも解読される可能性はあります。そこでパスワードが解読されても、攻撃者による不正アクセスを防ぐ「2段階認証(二要素認証、2FA)」を設定しましょう。
2段階認証を導入することで、ユーザーがログインする際に、パスワードに加えてもう一つの認証手段(通常は携帯電話に送られる確認コードや認証アプリのコード)が必要になります。これにより、パスワードが漏洩しても、攻撃者がアカウントにアクセスすることが非常に困難になります。
多くのCMSでは、2段階認証をサポートするプラグインが提供されており、これを導入することで容易にセキュリティーを強化できます。
SSL証明書は、インターネット上の通信を保護するための技術です。
SSL証明書を使用することで、ウェブサイトとユーザー間の通信を暗号化し、データの盗聴や改ざんを防ぐことができます。SSL証明書が導入されたサイトは、URLが「https」で始まり、ブラウザのアドレスバーに鍵マークが表示されるため、ユーザーは安心してサイトを利用し、検索エンジンの評価も向上します。
SSL証明書の導入は、ウェブホスティングプロバイダを通じて簡単に行うことができ、無料のSSL証明書を提供するサービスも増えています。特に、Let's Encryptのような無料のSSL証明書発行サービスを利用することで、コストをかけずにウェブサイトのセキュリティーを強化できます。
出典: Let's Encrypt
SSL証明書の導入後は、定期的に証明書の有効期限を確認し、期限が切れる前に更新することが重要です。証明書の有効期限が切れると、ブラウザからの警告表示が出るため、ユーザーの信頼を損なうリスクがあります。
ファイアウォールは、コンピュータやネットワークをインターネット上の悪意のある攻撃から守るための重要な防御システムです。
たとえば、ファイアウォールは家の門のようなものです。門には警備員がいて、誰が入ってくるかをチェックします。信頼できる人(友達や家族)だけが入ることを許され、不審な人や悪い人は追い返されます。これがファイアウォールの役割です。
ファイアウォールの基本機能は以下の通りです。
ファイアウォールを設定すれば、管理画面への不正アクセスのブロック、悪意のあるコードの遮断、特定の国や地域のアクセス制限などを行えます、
ファイルパーミッションの設定とは、サーバー上のファイルやディレクトリへのアクセス権を適切に管理するための重要なセキュリティ対策です。簡単に言えば、誰がファイルを見たり、変更したり、実行したりできるかを決める設定です。
適切なファイルパーミッションを設定することで、管理者以外のユーザーが重要なデータベースにアクセスできないようにし、従業員のアカウントが乗っ取られても被害を最小化できます。また、不正アクセスやデータの改ざんを防ぐことができます。
ファイルパーミッションの設定には、以下の点を考慮しましょう。
ファイルパーミッションを適切に設定することで、ウェブサイトの不正アクセスや攻撃を防ぎ、データの保護を強化できます。CMSを安全に運用するためには、定期的にパーミッションを確認し、必要に応じて更新することが重要です。
不要なプラグインは、セキュリティのリスクを増大させます。特に古くなったり、更新されていないプラグインには脆弱性が含まれている可能性が高く、ハッカーがこれを悪用して攻撃を仕掛けることがあります。そのため、不要なプラグインは削除し、潜在的な攻撃対象を減らしましょう。
また、不要なプラグインを削除することで、サイトパフォーマンスも向上します。各プラグインは追加のリソースを消費し、サーバーの負荷を増やします。Googleの調査によれば、ページの読み込み時間が1秒から3秒に増えると、直帰率が32%増加することが示されています。
不要なプラグインを削除することで、サイトの読み込み速度が向上し、ユーザーエクスペリエンスが改善されます。定期的にプラグインの使用状況を確認し、一定期間使用していないものは削除するようにしましょう。
セキュリティプラグインをインストールすることで、CMSのセキュリティーを大幅に強化できます。
たとえば、WordPress専用のセキュリティプラグイン「Wordfence Security」は、ファイアウォール、マルウェアスキャン、ログインセキュリティーなどの機能を提供します。リアルタイムでの攻撃防御やIPブロッキングなども可能です。
セキュリティプラグインを導入する際には、信頼できる開発者や企業が提供しているプラグインを導入するようにしましょう。
しかし、セキュリティプラグインは、CMSのセキュリティを強化するための有力なツールですが、それだけで完全なセキュリティを実現することはできません。そもそもセキュリティプラグインもソフトウェアであるため、脆弱性が存在する可能性があります。これらの脆弱性が悪用されると、逆にセキュリティリスクを増大させることになります。
また、適切な設定をしなければ、期待した効果は得られないでしょう。セキュリティプラグインはあくまでも対策の1つであり、そのほかの対策を組み合わせることで、総合的なセキュリティを確保することが重要です。
セキュリティスキャンは、ウェブサイトやシステムの脆弱性を検出し、潜在的なセキュリティリスクを特定するための重要なプロセスです。これにより、攻撃者が悪用する可能性のあるセキュリティホールを事前に修正することができます。
特にCMSは、プラグイン、テーマ、コアソフトウェアなど多くの要素から成り立っており、それぞれに脆弱性が存在する可能性があります。そのため、定期的にセキュリティスキャンを実施して脆弱性を早期に発見し、対策を講じることが重要です。
セキュリティスキャンは、以下のタイミングで定期的に行いましょう。
セキュリティスキャンを定期的に実施し、脆弱性を早期に発見・対策することで、ウェブサイトの安全性を高められます。
定期的なバックアップは、データの消失や改ざんからサイトを守るための基本的なセキュリティ対策です。例えば、ランサムウェア攻撃では、攻撃者がデータを暗号化し、身代金を要求します。最近では、身代金を支払ってもデータが復旧できないケースが増加しています。
代表的な事例として、出版大手のKADOKAWAが受けたランサムウェア攻撃があります。同社は犯行グループに身代金を支払いましたが、提示額が少なかったためデータの復旧はできませんでした。このように、どの企業もサイバー攻撃を受けるリスクがあるため、定期的なバックアップを実施する必要があります。
バックアップの際には、「3-2-1ルール」を適用するとよいでしょう。
出典: 警察庁
警察庁の調査によれば、被害企業の88%がバックアップを取得していたものの、そのうち71%がバックアップの取得に失敗していたと判明しています。これは、近年バックアップデータを狙った攻撃が増加しているためです。このことから、3-2-1ルールの適用が最適なバックアップ戦略と言えます。
また、バックアップを行っただけでは十分ではありません。定期的にバックアップが正常に動作しているか確認し、復元テストを行うことが重要です。これにより、万が一の際に確実にデータを復旧できることを保証します。
定期的なバックアップと3-2-1ルールの適用を徹底することで、データの消失や改ざんから企業の資産を守り、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えられます。
権限の最小化とは、各ユーザーアカウントに対して必要最低限のアクセス権限のみを付与することで、セキュリティリスクを低減する手法です。これにより、攻撃者があるユーザーアカウントを乗っ取った場合でも、重要データへのアクセスや変更が制限され、不正アクセスやヒューマンエラーによるセキュリティ事故を防ぐことができます。
CMSにおいて権限の最小化を実施するためには、まずは役割の定義を行うことが重要です。以下は、一般的なCMSでの役割とその権限の例となります。
たとえば、複数のライターがCMS上に記事を投稿する場合、以下のように権限を設定します。
このようにすることで、ライターが誤って他のライターの記事を削除するリスクを防げます。また、定期的にユーザーの権限を見直し、役割に変動があった場合や退職者が出た場合には迅速に権限を変更・削除することが重要です。
セキュリティポリシーの策定と従業員教育は、企業全体でセキュリティ意識を高め、適切な行動を促すために欠かせないステップです。最新のセキュリティソフトウェアを導入しても、従業員が簡単なパスワードを使用していたり、二要素認証を設定していなかったりすると、サイバー攻撃のリスクは依然として高いままです。こうした事態を防ぐためにも、セキュリティポリシーの策定と従業員教育が重要となります。
セキュリティポリシーは、CMS運用で守るべきセキュリティルールやガイドラインを明文化したものです。ポリシーの内容は、企業規模や業種、CMSの種類や利用状況によって異なりますが、一般的には以下の項目を網羅する必要があります。
セキュリティポリシーを策定しただけでは十分ではありません。従業員がそのポリシーを理解し、実践できるようにするために定期的な教育が必要です。
CMSを導入する際には、初期設定から運用までの各段階でセキュリティ対策を講じることが重要です。これにより、サイトの安全性を高め、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。以下では、CMS導入時に実施すべき具体的なセキュリティ対策について詳しく解説します。
CMSを安全に運用するためには、社内で適切な運用体制を整えることが不可欠です。
まずは、CMSの運用にかかわる全スタッフの責任と役割を明確にしましょう。ここでのポイントは、先に述べたように権限の最小化です。管理者や編集者などの役割、誰がどのデータにアクセスできるのかを細かく定めることで、セキュリティリスクを最小化できます。
また、システムやプラグインのアップデートは迅速に対処するのは大前提とし、セキュリティチェックの頻度も事前に定めておくとよいでしょう。そうすることで、低域的にセキュリティチェックをする文化が浸透し、脆弱性を早期に発見・修正できるようになります。
さらに、サイバー攻撃を受けた際の対処策「インシデント対応計画」の策定もすることが理想です。たとえば、マルウェアに感染した場合、迅速に感染したファイルを削除し、侵入ネットワークを遮断するなど。このようなインシデント対応計画を策定し、従業員全員に周知することで、迅速な対策を講じられるようになります。
内閣サイバーセキュリティセンターは、セキュリティ・バイ・デザインという考えを推奨しています。これは、設計・企画段階からセキュリティを意識し、トータルコストを削減するというもの。
CMSを導入する際にもセキュリティ・バイ・デザインを意識し、初期段階からセキュリティ対策を考慮した設計を行うことが重要です。たとえば、多要素認証や細かな権限設定ができるCMSを選定すれば、有料のプラグインやソフトウェアを導入する必要がなくなります。もしくは、金融などの高いセキュリティが求められる企業の場合、プラグインの使用を最小限に抑え、必要な機能は可能な限り自社開発するといったアプローチが取れるでしょう。
このようにセキュリティー対策を初期段階から組み込むことで、後からセキュリティ機能を追加する場合と比べて、開発工数とコストを大幅に削減できます。また、セキュリティーリスクを早期に特定し、対策を講じることで、より安全なCMSを構築することが可能です。
オープンソース型であれ、クラウド型であれ、どのタイプのCMSを選定するとしても、そのCMSのセキュリティ機能を確認しなければいけません。理想は、デフォルトでSSL暗号化や二要素認証、細かなアクセス権限設定などの機能が充実したCMSを選ぶことです。
オープンソース型の場合、大規模な開発コミュニティとサポート体制が整っているCMSを選びましょう。コミュニティが活発であれば、脆弱性の早期発見・修正が期待できます。
CMSを選定する際には、機能のほか、ベンダーのセキュリティ体制を確認しましょう。ベンダー側のセキュリティ体制が弱ければ、ベンダーがサイバー攻撃に遭い、自社が被害を被ることになります。見落としがちなポイントですが、情報セキュリティー対策が適切に講じられたベンダーを選定するようにしましょう。
セキュリティ対策には一定のコストがかかりますが、これを怠ると将来的に甚大な被害を受けるリスクが高まります。日本ネットワークセキュリティ協会の調査によれば、ウェブサイトから個人情報が漏洩した場合の平均被害金額は2,955万円に達し、さらにクレジットカード情報が含まれている場合は平均3,843万円という大きな金額になります。これほどの損害が発生すれば、企業の経営に深刻な影響を与えることは明白です。
「自社は狙われない」「セキュリティにかける予算がない」といった楽観的な考え方は、結果的に高い代償を支払うことにつながります。こうした被害を未然に防ぐためには、セキュリティ対策を見据えた現実的な予算設定が不可欠です。
たとえば、オープンソース型のCMSを導入する場合、毎月の運用コストを見込むことが必要です。定期的なセキュリティスキャンや脆弱性のアップデート、バックアップなどのために、適切な予算と人的リソースを確保する必要があります。
一方、クラウド型のサービスを利用する場合、大規模な運用保守コストは発生しませんが、サービス利用料やサポート費用がかかるため、こちらも予算に組み込むことが重要です。
セキュリティ対策は単なるコストではなく、企業の信頼性を維持し、将来的なリスクを回避するための重要な投資です。予算をしっかりと設定し、継続的に見直すことで、企業は安心して事業を展開することができるでしょう。
ウェブサイトの安全性を確保するためには、セキュリティ機能が充実したCMSを選定することが重要です。ここでは、代表的なセキュリティ対策が施されたCMSを紹介します。
出典: HubSpot
HubSpotの「Content Hub」は、企業向けのオールインワンCMSで、特にセキュリティ機能が充実しています。
具体的には、SSL暗号化通信、24時間365日の監視、WAFとDDoS攻撃対策、定期的なバックアップ、細かな権限付与ルールの設定、シングルサインオン(SSO)、多要素認証といった機能を装備しています。これにより、クラウド型CMSの中でもトップクラスのセキュリティ体制を実現しています。
さらに、HubSpotの「Content Hub」は使いやすさや機能面でも高い評価を受けています。モバイル向けに最適化された豊富なテンプレート、SEO推奨アドバイス、AI搭載のコンテンツ作成ツール、そしてレポートと分析機能が揃っており、多様なニーズに対応します。
HubSpotならではの強みが、CRMとの連携機能です。Content Hub経由で獲得したリード情報は自動的にCRMに保管され、CRMのコンタクト情報に基づいてパーソナライズされたコンテンツ表示が可能です。これにより、マーケティング活動が一層効率化されます。
セキュリティ、機能性、操作性の三拍子が揃ったCMSであるため、これからデジタルマーケティングに取り組む企業や、自社に十分なリソースがない企業に特におすすめです。
出典: ShareWith
ShareWithは、主に上場企業が導入しているクラウド型CMSで、その人気の理由は高度なセキュリティ対策にあります。公開サーバーと管理サーバーの分離、データセンターの分散、アクセス急増時の自動スケールアップ、自動バックアップなど、多層セキュリティを標準で提供することで、サイバー攻撃の脅威を効果的に軽減しています。
ユーザーレビューによると、ShareWithのサポート体制も高く評価されています。問い合わせデスクに連絡するとすぐに電話がかかってきて、CMS運用に関する悩みを迅速に解決してくれるとのことです。
さらに、ShareWithは大規模なサイト構築に適した機能も豊富です。ナビゲーションやリンクの自動更新、日英切り替えボタンの自動表示、SEO対策機能などが備わっており、複雑なサイト運営もスムーズに行えます。
上場企業に支持される理由は、その優れたセキュリティ対策と充実したサポート体制にあります。大規模サイトの運営を検討している企業にとって、ShareWithは信頼できる選択肢となるでしょう。
出典: Drupal
Drupalは、WordPressと同様のオープンソース型CMSで、そのセキュリティの高さから、アメリカやロンドンの政府機関、BBC、オックスフォード大学などでも採用されています。
Drupalのセキュリティが高い理由の1つは、コミュニティ主導の取り組みにあります。Drupalのセキュリティチームは、世界中の開発者と協力し、脆弱性を迅速に特定し修正する体制を整えています。これにより、新たなセキュリティリスクが発生しても迅速に対応でき、ユーザーは常に最新のセキュリティパッチを利用できます。
このチームには、コンサルタント、Drupalサービスプロバイダー、非営利、営利、教育セクターのエンドユーザーなどが参加し、9か国以上から約30人のメンバーが集まっています。
さらに、DrupalはDrupal協会と協力して、セキュリティリリースが利用可能になってからサイトが新しいパッチで完全に更新されるまでの間を保護する手頃なWAFであるDrupal Stewardも運営しています。このような包括的なセキュリティ対策により、政府系機関や世界的マスメディアからの信頼を獲得しているのです。
また、Drupalはセキュリティが高いだけでなく、WordPressよりも高度なカスタマイズ性を備えているため、大規模なサイト構築や複雑な機能を必要とするプロジェクトに適しています。しかし、適切に運用するためにはITに精通した人材が必要なため、十分なリソースがある大規模企業に向いています。
デジタルマーケティングを推進する企業にとって、CMS(コンテンツ管理システム)は欠かせないツールです。しかし、多くの企業が導入しており、CMSには機密情報が保管されるため、その分サイバー攻撃のリスクも高まります。このリスクを最小限に抑えるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
まず、迅速なアップデートを行うことで脆弱性を解消することが大切です。次に、強力なパスワードの設定と2段階認証の導入を徹底しましょう。これらの対策はコストをかけずに今すぐ実施でき、その効果も非常に大きいです。
さらに、CMSを新たに導入する際には、機能性や費用だけでなく、セキュリティの高さにも注目することが重要です。優れたセキュリティ対策を持つCMSを選ぶことで、自社の情報資産を守りつつ、デジタルマーケティングの効果を最大化できます。
これらのポイントを押さえて、セキュリティの高いCMSの導入と運用を目指していただければ幸いです。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。