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大企業がCRMを選ぶときに見落としがちな5つのポイント

大企業がCRMを選ぶときに見落としがちな5つのポイント

「あの時、別のCRMを選んでいれば……」。大企業のDX推進担当者から、このような後悔の声を聞くことが増えています。CRM導入から2〜3年が経過し、ユーザー数増加に伴うライセンスコストの急騰、基幹システムとの連携不全、現場への定着率の低迷——こうした問題が表面化するのは、選定段階での「見落とし」に起因するケースがほとんどです。

本記事では、エンタープライズ企業がCRMを選定する際に見落としがちな5つのポイントを、具体的な評価軸・チェック項目とともに解説します。Salesforce・HubSpot・Microsoft Dynamicsなど主要CRMを比較検討している方に特に参考にしていただける内容です。

この記事のポイント

  • 大企業のCRM選定で最も多い失敗は「機能比較表と価格のみで判断する」こと。スケーラビリティ・TCO・定着支援の質という本質的な軸が抜け落ちやすい
  • 見落としがちな5つのポイント(スケーラビリティ・API統合・定着支援・データガバナンス・TCO)を網羅的に評価することで、3年後の「ベンダーロック」と「二重投資」を防げる
  • 選定プロセスはRFI→PoC→評価→意思決定の4段階で進め、実装パートナーの評価を意思決定前に必ず実施することが成功の鍵となる

目次

  1. なぜ大企業のCRM選定は失敗するのか?典型的な判断軸の問題
  2. 見落とし①:スケーラビリティ——3年後のユーザー数・データ量を想定しているか?
  3. 見落とし②:既存システムAPI統合——基幹システムとの連携は本当に動くか?
  4. 見落とし③:定着支援の質——「導入後のサポート」が最も費用対効果に影響する
  5. 見落とし④:データガバナンス設計——「誰が何にアクセスできるか」を最初に決める
  6. 見落とし⑤:TCO(総保有コスト)——3年間の全コストを試算しているか?
  7. 大企業向けCRM選定プロセス:RFI→PoC→評価→意思決定の進め方
  8. HubSpot Enterprise Hub——大企業要件への対応状況
  9. FAQ:大企業CRM選定でよく聞かれる質問

なぜ大企業のCRM選定は失敗するのか?典型的な判断軸の問題

大企業のCRM選定プロジェクトが失敗に終わる根本的な原因は、「短期的な機能要件と初期コストの比較」に終始することです。選定委員会が作成するRFP(提案依頼書)の多くは、「商談管理ができるか」「メール配信と連携できるか」といった機能チェックリストで埋め尽くされており、3年後・5年後の運用コストや組織への定着可否は後回しにされがちです。

実際、ITR(IT Research)の調査によると、CRM導入企業の約42%が「期待した効果が得られなかった」と回答しており、その主な理由として「現場の使いこなし不足(61%)」「システムの硬直性(38%)」「コスト超過(29%)」が挙げられています

典型的な失敗パターンを整理すると以下のようになります。

失敗パターン 選定段階での判断 3年後の現実
価格最優先 初期ライセンス費用が最安 カスタマイズ費用・運用費用で総コストが2倍以上に膨張
機能チェックリスト 要件項目を最多カバー 実際には使われない機能が8割、現場は別のツールを使い続ける
ブランド信仰 「大企業はSalesforce」という先入観 複雑なカスタマイズに疲弊し、管理者不在で運用停止
IT主導の選定 技術要件・セキュリティ要件でのみ評価 営業・マーケが使いにくく定着せず、IT部門だけが使うツールに
デモ環境評価 ベンダーが整えたデモで「使いやすい」と判断 本番データ・本番ユーザー数での動作が全く異なる

これらの失敗を防ぐために、以下5つの「見落としがちなポイント」を選定段階で必ず評価してください。

選定失敗が「組織変革の頓挫」につながるメカニズム

CRM選定の失敗は、単なるシステム問題にとどまりません。経営層から「第二の創業」レベルのDX推進を任された担当役員にとって、CRM刷新の失敗は組織変革そのものの失敗として映ります。現場の「だから言ったじゃないか」という反応が、次の改革提案への組織的な抵抗を生み出します。

したがって、CRM選定は「ツール選び」ではなく「経営意思の実装設計」として臨む必要があります。5年間の運用を見据えた選定基準を設計することが、プロジェクト成功の前提条件です。

大企業特有の要件とは何か?SMBとの違いを整理する

大企業のCRM選定がSMBと根本的に異なる点は「複雑性の次元が違う」ことです。ユーザー数が100名を超えると、ガバナンス・権限管理・監査の問題が浮上します。1,000名規模では、部門ごとの運用ルール整合・グループ会社間のデータ統合・経営ダッシュボードへの統合といった要件が不可欠になります。

大企業が追加で評価すべき主要要件:SSO/SAML認証(Active Directory連携)、役割ベースアクセス制御(RBAC)、監査ログ(全操作の追跡)、多言語・多通貨対応、グローバルデータレジデンシー、SLA保証(99.9%以上のアップタイム)、カスタムオブジェクトと高度なAPI。

見落とし①:スケーラビリティ——3年後のユーザー数・データ量を想定しているか?

最も見落とされやすいのが「スケーラビリティ」です。CRMの初期導入は多くの場合、特定の部門(例:営業部門100名)から始まります。しかし成功すれば、マーケティング部門・カスタマーサクセス部門・インサイドセールス部門へと展開が広がり、グループ会社への横展開が求められるようになります。

この「スケール時の追加コスト」を選定段階で試算していないケースが非常に多いです。特に注意が必要なのは「ライセンスモデルの構造」です。ユーザー課金モデルのCRMは、ユーザー数が倍増すると費用が単純に倍増します。一方、コンタクト数課金・API呼び出し数課金のモデルは、利用の増加とともに予想外のコスト増を引き起こします。

スケーラビリティを評価する際の具体的な質問事項:

  • 現在100名で使い始め、3年後に500名になった場合のライセンス費用は?(見積もりを取得する)
  • コンタクト数が現在の10万件から50万件に増えた場合、追加費用は発生するか?
  • グループ会社(別法人)を追加する場合、同一ポータルで管理できるか、別ポータルが必要になるか?
  • データ保存量の上限はあるか?上限を超えた場合の対処方法は?
  • API呼び出し数の制限はあるか?基幹システム連携を増やした場合に制限に引っかかる可能性は?

HubSpotの場合、Enterprise Hubは組織内で無制限のユーザーを追加できるプランも提供しており(Sales Hub Enterprise等)、スケール時のコスト予測が立てやすい設計になっています(HubSpot Sales Hub料金ページ)。

データモデルの拡張性はどう評価するか?

スケーラビリティはユーザー数だけでなく、「データモデルの拡張性」も重要です。標準オブジェクト(コンタクト・会社・商談)だけでビジネスプロセスを表現できる企業は少なく、カスタムオブジェクトの必要性は時間とともに高まります。

評価すべき点:カスタムオブジェクトの作成数上限、オブジェクト間の関連設定の柔軟性、カスタムプロパティの上限数、API経由での外部システムからのデータ投入・取得の制限。HubSpotはEnterprise Hubでカスタムオブジェクトをノーコードで作成でき、他部門固有のデータ(例:製造業の「製品」「装置」「保守履歴」)をCRM内で一元管理するための柔軟性を持っています。

マルチテナント・グループ企業展開に対応しているか?

グループ会社を持つ大企業では「各社のデータを分離しつつ、グループ全体を一元的に把握したい」という要件が生じます。これを「マルチテナント要件」と呼びます。評価時には:グループ間のデータ分離レベルの設定方法、グループ統合ダッシュボードの実現方法、親会社管理者が各社データを閲覧できる権限設計——これらの具体的な設定方法をベンダーに確認してください。

見落とし②:既存システムAPI統合——基幹システムとの連携は本当に動くか?

大企業のIT環境は複雑です。基幹システム(ERP)、会計システム、生産管理システム、BI/DWH、グループウェア(Microsoft 365・Google Workspace)、コールセンターシステム、マーケティングオートメーション——これらが既に稼働している環境にCRMを追加する場合、「API連携の実現性」が最大のリスクになります。

ベンダーのデモではスムーズに見える連携も、実際の本番環境では以下の問題が頻発します。

  • レガシーシステムのAPI非対応:古いERPシステムはREST APIを持たず、CSV連携・バッチ処理に頼らざるを得ない
  • API呼び出し数制限:リアルタイム同期を実現しようとすると、CRM側のAPI上限に達する
  • データ型・文字コードの不整合:日本語環境特有のShift-JIS/UTF-8変換問題、日付フォーマットの差異
  • 認証方式の非互換:古いシステムはOAuth2.0非対応で、連携ミドルウェアが別途必要
  • 双方向同期のコンフリクト:CRMと基幹システムの両方でデータ更新が起きた場合の優先ルールが未設計

CRM選定時に必ず確認すべきAPI仕様:

確認項目 評価基準 HubSpotの対応状況
REST API提供 公開APIドキュメントが整備されているか 全機能をREST APIで操作可能(HubSpot API概要
Webhookサポート イベント発生時のリアルタイム通知 標準搭載・カスタムWebhook設定可能
ネイティブ連携数 主要ツールとのノーコード連携 1,500以上のアプリ連携(HubSpot App Marketplace)
iPaaS対応 MakeやZapierなどの中継ツール対応 Make・Zapier・Workato・Boomiなど主要iPaaSすべてに対応
API呼び出し上限 日次・月次の上限と超過時の対応 Enterprise:150万呼び出し/日(Privateアプリ経由)

連携PoC(概念実証)をどう設計するか?

API連携の実現性を確認するために、「連携PoC」を選定プロセスに必ず組み込んでください。具体的には、本番に近いテスト環境を用意してもらい、最も複雑な連携シナリオ(例:基幹システムの受注データをCRMの商談に反映し、CRMの営業活動ログを基幹システムの顧客マスタに書き戻す)を実際に動かして確認します。

PoC設計のポイント:本番と同じデータ量・データ構造のテストデータを使う、リアルタイム処理とバッチ処理の両方をテストする、エラー発生時のリトライ・アラートの動作を確認する。

SIer・実装パートナーの技術力が連携品質を左右する

CRM本体がいくら優れたAPIを持っていても、実装するパートナーのAPI連携技術力が低ければ品質は下がります。実装パートナー評価時には、類似規模・類似システム構成での連携実績を必ず確認してください。「SAP連携実績あり」「Oracle EBS連携実績あり」といった具体的な事例を提示できないパートナーへの発注は避けるべきです。

見落とし③:定着支援の質——「導入後のサポート」が最も費用対効果に影響する

CRM導入の成否を最も大きく左右するのは「テクノロジーの品質」ではなく「人の変化管理(チェンジマネジメント)」です。これは多くの研究が示している事実であり、McKinsey & Companyの調査でも「デジタルトランスフォーメーション失敗の主因は技術より組織・人材」とされています(McKinsey: Losing from day one)。

大企業でCRMの定着が難しい理由は構造的です。ベテラン営業担当者は「今まで自分のやり方で成果を出してきた」という自負があり、新しいツールへの入力作業を「余計な仕事」と感じます。管理職は「部下に入力させるための説得リソース」を持たず、経営層への定着状況の報告も後回しになりがちです。

定着支援で評価すべき項目:

  • トレーニングプログラムの充実度:eラーニング教材の品質・量・日本語対応、ロール別(管理者・営業・マーケ)のカリキュラム設計
  • オンボーディングの専任担当:導入初期3〜6ヶ月の専任CSM(カスタマーサクセスマネージャー)の有無
  • 変化管理支援:チェンジマネジメントのフレームワーク提供・組織内推進者育成支援
  • ユーザーコミュニティ:日本語での情報共有コミュニティ・ユーザーグループの活性度
  • 継続的なサポート:導入後の定期チェックイン・利用データ分析による改善提案

HubSpotは、HubSpot Academyによる日本語eラーニング(HubSpot Academy)、HubSpot User Group(HUG)によるコミュニティ、パートナーによる定着支援サービスが充実しています。

「定着率」をKPIとして契約に組み込む

定着支援の品質を確保するための最も効果的な手段は、「定着率KPI」をベンダー・実装パートナーとの契約に組み込むことです。具体的には:「導入6ヶ月後のDAU(日次アクティブユーザー率)が対象ユーザーの70%以上」「12ヶ月後のデータ入力完全率が80%以上」といった定量指標を合意し、達成できない場合の対応条件(追加支援・返金条件等)を明記します。

日本語サポート体制は十分か?

グローバルCRMの多くは英語中心の設計であり、日本語サポートの品質にばらつきがあります。評価すべき点:日本語サポートチームの規模と対応時間(国内営業時間対応か24時間対応か)、製品のUI・ドキュメントの日本語品質、日本法人の意思決定権(ローカライズ・価格交渉の可否)。

見落とし④:データガバナンス設計——「誰が何にアクセスできるか」を最初に決める

データガバナンスは、CRM導入後の最も厄介な問題の一つです。導入当初はゆるやかな権限設計でスタートしても、利用部門が増えるにつれて「このデータを見てはいけない人が見ている」「削除してはいけないデータが消えた」「個人情報保護法の観点でリスクがある」といった問題が噴出します。

特に大企業では以下のガバナンス要件が不可欠です:

  • 役割ベースアクセス制御(RBAC):職種・部門・チームごとのオブジェクト/フィールドレベルの権限設定
  • データ所有権の設計:「このコンタクトデータの所有者は誰か」「退職した社員のデータはどうなるか」
  • 監査ログ:誰がいつどのデータを参照・編集・削除したかの記録(コンプライアンス対応・不正調査用)
  • 個人情報保護法対応:オプトイン管理・データ削除要求への対応・同意記録の保存
  • データ品質管理:重複コンタクトの検知・マージ・クレンジングの仕組み

HubSpotのデータガバナンス機能:Enterprise Hubでは、フィールドレベルでの権限設定(特定のフィールドを特定のロールのみ表示・編集可)、チームベースのデータアクセス制御、完全な監査ログ機能を標準提供しています(HubSpot Enterprise機能)。

GDPR・個人情報保護法への対応体制を確認する

欧州顧客・パートナーを持つ企業はGDPR、国内のBtoB企業は改正個人情報保護法への対応が必須です。CRM選定時に確認すべき事項:同意管理(コンセントマネジメント)機能の有無、データ主体のアクセス請求・削除請求への対応フロー、データ処理委託契約(DPA)の締結可否、データの国外移転に関するポリシー。

データ品質管理の仕組みを最初に設計する

CRMのデータ品質は時間とともに劣化します。重複コンタクトの発生・フィールドの入力省略・古い情報の放置——これらは避けられない現象です。重要なのは「データ品質劣化を自動検知・修正する仕組み」を導入初期から設計することです。HubSpotではBreeze Intelligenceによるデータエンリッチメント(Breeze Intelligence)、重複マージツール、必須フィールド設定などで対応できます。

見落とし⑤:TCO(総保有コスト)——3年間の全コストを試算しているか?

CRM選定の最大の落とし穴の一つが「TCO(Total Cost of Ownership)の見積もり不足」です。ベンダーが提示する「月額〇〇円/ユーザー」という価格は、CRMを運用するためのコストの一部に過ぎません。大企業が3年間でCRMに支払う費用の全体像を把握しなければ、予算計画そのものが破綻します。

TCOを構成するコスト要素:

  • ライセンス費用:初年度と3年後の想定ユーザー数でそれぞれ試算する
  • 実装・カスタマイズ費用:初期設定、データ移行、基幹システム連携、カスタム開発
  • トレーニング・変化管理費用:初期研修、追加トレーニング、マニュアル作成
  • 保守・運用費用:社内管理者の人件費、外部パートナーへの継続支援費用
  • アップグレード・追加機能費用:新機能アドオン、API統合追加費用
  • 移行コスト(将来の乗り換え):ベンダーロックインリスクと将来の移行コスト

Salesforceなどのプラットフォームは、ライセンス費用の3〜5倍の実装・カスタマイズ費用がかかるケースが珍しくありません(Gartner CRM Research)。HubSpotはノーコード設定の範囲が広く、カスタマイズコストを相対的に抑えやすい設計ですが、それでも大企業向けのエンタープライズ導入では実装費用が発生します。

カスタマイズ依存度がTCOを最大化する

TCOを最も増大させるのは「過剰なカスタマイズ」です。標準機能で実現できることをあえてカスタム開発で実装すると、バージョンアップのたびに改修費用が発生し、社内に技術者を確保し続ける必要が生じます。選定時に「標準機能でどこまでカバーできるか」を明確にし、カスタム開発が必要な範囲を最小化する設計思想を持つベンダー・パートナーを選ぶことが重要です。

ベンダーロックインリスクをどう評価するか?

CRMに蓄積したデータ・ワークフロー・インテグレーションは、乗り換えコストを大きくします。ベンダーロックインリスクを評価する指標:データエクスポートのフォーマットと容易さ(CSV・API双方対応か)、プロプライエタリ形式への依存度(独自コーディング言語・設定形式)、乗り換え時のデータ移行サポートポリシー。オープンAPIを持つCRMは相対的にロックインリスクが低いとされています。

大企業向けCRM選定プロセス:RFI→PoC→評価→意思決定の進め方

5つの見落としポイントを踏まえた上で、大企業向けCRM選定プロセスの推奨ステップを紹介します。

Step1: RFI(情報提供依頼)フェーズ——候補を3〜4社に絞る

RFIは市場調査目的の文書で、詳細な技術仕様ではなくベンダーの基本情報・製品概要・参考事例を収集します。RFI段階での評価軸:自社規模・業種での導入実績数、日本語サポート体制、Enterprise向け機能の有無(SSO・監査ログ・RBAC)、価格帯の大まかな感触。

RFIの結果を基に候補を3〜4社に絞り込みます。この段階で10社以上を候補にするのは非効率であり、各社への対応に費やすリソースが膨大になります。Gartner Magic QuadrantのCRM領域(Gartner Magic Quadrant)やForrester Waveのリーダー企業から選ぶのが合理的な出発点です。

Step2: PoCフェーズ——実際の業務データで動作確認する

候補を2〜3社に絞った後、必ずPoCを実施します。PoC設計のポイント:本番に近いデータ量のテストデータを使う、最もリスクの高い連携シナリオ(基幹システム連携)を含める、実際のエンドユーザー(営業担当者・マーケ担当者)にPoC環境を使わせてUXを評価させる。

PoCの期間は4〜8週間が目安です。1〜2週間のPoC期間では表面的な評価に終わります。

Step3: 評価フェーズ——5つのポイントを定量スコアで比較する

本記事で紹介した5つのポイント(スケーラビリティ・API統合・定着支援・データガバナンス・TCO)を定量スコアで比較します。評価委員会には、IT・営業・マーケ・CS・法務・経営企画の代表者を含めることが重要です。各部門が自部門の観点からスコアリングし、加重平均で総合評価を算出します。

Step4: 意思決定フェーズ——実装パートナーの評価を忘れない

CRMベンダーを選ぶと同時に「実装パートナー」の評価が必須です。どれだけ優れたCRMを選んでも、実装パートナーの品質が低ければ導入は失敗します。実装パートナー評価のチェックリスト:自社規模・業種での具体的な導入実績(企業名・規模・課題・成果)、ベンダー公認の認定資格レベル(HubSpotの場合:Elite / Diamond / Platinum)、プロジェクトマネジメント体制(専任PM・週次報告体制)、導入後の継続支援体制(カスタマーサクセス・定着支援)。

HubSpot Enterprise Hub——大企業要件への対応状況

大企業向けCRM選定において、HubSpot Enterprise Hubが提供する主要機能を整理します。

HubSpot Enterprise Hubの主要機能一覧(大企業向け):

  • SSO/SAML:Active Directory・Azure AD連携によるシングルサインオン
  • 高度な権限管理:チーム・ロール・オブジェクトレベルの権限設定、フィールドレベルのアクセス制御
  • 監査ログ:全操作の追跡・エクスポート、セキュリティイベントのアラート
  • カスタムオブジェクト:標準オブジェクト以外の独自データモデル構築
  • サンドボックス環境:本番環境を汚さずに設定テスト・トレーニングが可能
  • 高度なレポート機能:カスタムレポートビルダー、アトリビューションレポート、予測機能
  • Breeze AI:AIによるデータエンリッチメント・スコアリング・自動化提案
  • 多通貨対応:複数通貨での商談管理・レポート集計
  • グローバルコンテンツ:多言語ランディングページ・メール対応

HubSpotは2020年以降、エンタープライズ機能を急速に強化しており、従来「大企業はSalesforce」という定説が崩れつつあります。特に「管理者の運用負荷の低さ」と「マーケ・営業・CSの一気通貫」が大企業ユーザーから高評価を得ています。

Salesforceと比較した場合のトレードオフ

「HubSpot vs Salesforce」は大企業のCRM選定で最も頻出する比較軸です。

Salesforceはカスタマイズの自由度が極めて高い反面、カスタマイズコストとApexエンジニアの確保が課題。HubSpotは標準機能の充実度とUXの使いやすさが強みで、ノーコード・ローコードで多くの要件をカバーできる反面、極めて複雑な業務フローの再現には限界がある場合も。どちらが正解かは自社の業務プロセスの複雑性・IT部門のリソース・長期的なビジョンによって異なります。

FAQ:大企業CRM選定でよく聞かれる質問

Q1. 大企業のCRM選定にはどのくらいの期間がかかりますか?

一般的に6〜12ヶ月が目安です。RFI作成・送付に1ヶ月、回答評価・絞り込みに1ヶ月、PoC実施に2〜3ヶ月、評価・意思決定に1〜2ヶ月、最終契約交渉に1ヶ月というスケジュールが多いです。社内の意思決定プロセスが複雑なほど期間は延びます。選定が長引くリスクを減らすために、早期に経営層のスポンサーシップを確保することが重要です。

Q2. CRM選定委員会には誰を入れるべきですか?

必須メンバー:IT部門(技術要件・セキュリティ評価)、営業部門の現場リーダー(UX評価・業務要件)、マーケティング部門(MA連携要件)、法務・コンプライアンス部門(データガバナンス・契約審査)、経営企画または財務(TCO・ROI評価)、経営スポンサー(最終意思決定・予算承認)。7〜10名の委員会が運営しやすいサイズです。

Q3. SalesforceからHubSpotへの移行はコストがかかりますか?

データ移行・設定移行・ユーザーの再トレーニングのコストが発生します。ただし、Salesforceの高いカスタマイズ度が移行障壁になる場合があります。移行コストの概算:コンタクト数と商談数に応じたデータ移行費用(数十万〜数百万円)、ワークフロー再設計費用、連携システムの再設定費用。移行前に「現行システムの何をそのまま移行し、何を再設計するか」の整理が必須です。

Q4. HubSpotのSLA(稼働率保証)はどの程度ですか?

HubSpot EnterpriseはSLA 99.99%のアップタイムを提供しており、稼働状況はHubSpot Status(status.hubspot.com)でリアルタイム確認できます。また、SOC 2 Type IIの認証取得済みであり、ISO 27001にも対応しています(HubSpot Trust Center)。

Q5. POCなしで導入を決定してもいいですか?

1,000名以上規模の大企業では原則としてPoCを実施すべきです。特に基幹システムとの連携が必要な場合は必須です。PoCを省略してしまうと、技術的な連携問題が導入後に発覚してコスト超過、現場のUX評価が不十分で定着失敗、などが頻繁に発生します。「急ぎたい」という要望があっても、PoC省略のリスクをステークホルダーに説明し承認を得てから進めてください。

Q6. 既存のMAツール(Marketoなど)はCRM導入後も継続できますか?

技術的には連携可能な場合が多いですが、CRMと別のMAを並走させることはデータの分断につながります。「CRMとMAを一本化するか、連携で対応するか」はTCOと運用コストを含めて評価してください。HubSpotはCRM・MA・CMSを一つのプラットフォームで提供しており、データ統合の観点から一本化のメリットが大きいです(HubSpot Marketing Hub)。

Q7. 中小規模のIT部門でもHubSpot Enterpriseを管理できますか?

はい。HubSpot Enterpriseはノーコード設定の範囲が広く、専任Apexエンジニアを必要としません。管理者認定資格(HubSpot Administrator Certification、HubSpot Academy)を取得した社内担当者が管理者として機能できます。ただし、大規模な連携開発には外部パートナーのサポートを推奨します。

Q8. CRM選定で最も後悔しやすい決定は何ですか?

「初期費用の安さで決める」と「デモだけで判断する」の2つが最も多い後悔の原因です。初期費用の安いCRMほどカスタマイズ・連携・サポートで追加費用がかかる傾向があります。また、ベンダーが用意したデモ環境は最適化されており、本番環境の複雑さを反映していません。必ずTCOベースで比較し、本番に近い環境でのPoCを実施してください。

Q9. グローバル展開予定がある場合の追加考慮事項は?

多言語対応(UI・フォーム・メール・ランディングページ)、多通貨対応、タイムゾーン対応、各国のデータローカライゼーション要件(GDPRを含む)、グローバルロールアウト時の現地パートナー体制——これらを選定段階から評価してください。HubSpotはグローバル展開に対応したマルチ言語・マルチ通貨機能を提供しています。

Q10. CRM選定の意思決定に経営層を巻き込むにはどうすればいいですか?

経営層が関心を持つ指標(ROI・競合他社との差別化・リスク軽減)でプレゼンテーションを設計することが重要です。「このCRMで何ができるか」ではなく「このCRMを導入しないと3年後に何が起きるか」というリスクフレームが経営層の意思決定を促しやすいです。また、競合他社の導入事例・Gartnerなどのアナリスト評価を根拠として活用することで、選定の客観性を担保できます。

田村 慶

2005年に札幌で株式会社24-7をWeb制作会社として創業、2012年からHubSpotの販売を開始。2016年にAPAC初となるダイヤモンドパートナーに昇格し、翌年にはHubSpotパートナー・オブ・ザ・イヤー(アジア地区)を受賞。2018年に24-7社の代表取締役を退任し、新たに株式会社100を創業。2019年6月からHubSpot認定パートナーに登録し、HubSpotビジネスを再開。現在は、HubSpotエリートパートナーやHubSpotユーザーグループの主催者として、HubSpotパートナー複数社へのコンサルティングと実行支援、HubSpotの導入企業のビジネス促進を中心に『HubSpot好き』を増やすための活動をしています。 2020年:HubSpot ルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞(APAC地区) 2021年:HubSpot パートナー・オブ・ザ・イヤー受賞(日本) 2023年:アジアで初めてHubSpot「Elite Partner(当時)」として認定

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顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
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