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HubSpotにするかSalesforceにするか、は多くのBtoB企業が直面する決断です。2024〜2026年にかけてAI機能が急拡張されたことで、両者の差はさらに複雑になりました。機能・価格・移行コスト・企業規模適合性の4軸で、実際に「どちらを選ぶか」を判断するための情報を徹底整理します。
この記事のポイント
- HubSpotはマーケ〜営業一体型・低TCO・内製運用しやすい(中堅企業向け)
- SalesforceはAIカスタマイズ性と大規模対応が強み。TCOが高く専任管理者が必要
- 「現在のメインCRMにどれだけのデータが蓄積されているか」が最重要基準。移行コストはライセンス1〜2年分相当を見込む
HubSpot AIとSalesforce Einsteinを比較する前に:整理すべき前提
「HubSpot AIとSalesforce Einsteinはどちらが優れているか」という問いには、正確には「優劣」ではなく「どちらが自社の現状と目指す姿に合っているか」という答えが適切です。
両者は異なる設計思想を持っています。HubSpotは「マーケ〜営業〜CSの一気通貫データ基盤の上にAIを乗せる」アプローチ、SalesforceはEinsteinを「膨大なCRMデータと高いカスタマイズ性の上にAIを乗せる」アプローチです。
この記事ではBtoB企業が「どちらを選ぶか・乗り換えるべきか」を判断するために必要な具体的な情報を提供します。
HubSpot AIの全体像:Breeze AIとは
HubSpotは2024年に自社のAI機能群を「Breeze AI」として統一ブランド化しました。Breeze AIは3つのレイヤーで構成されています。
Breeze Copilot(AIアシスタント)
- HubSpotの全製品(マーケ・営業・CS)にまたがるチャット型AIアシスタント
- コンタクト・ディール・会社レコードの要約、次のアクション提案、メール文章生成に対応
- 自然言語で「このリードの過去のやり取りをまとめて」「この商談の次のステップは?」と質問できる
- 利用可能プラン:Starter以上(機能は段階的に拡充中)

Breeze Agents(自律型AIエージェント)
- Prospecting Agent:ターゲット企業の情報収集・アウトリーチメール生成を自律実行
- Customer Agent:カスタマーサポートの一次対応を自動化
- Content Agent:コンテンツ企画〜執筆〜SEO最適化を自動化
- Social Agent:SNS投稿計画・生成・スケジュール管理の自動化

Breeze Intelligence(データエンリッチメント)
- 旧Clearbit Enrichmentを統合。メールアドレス・企業名から300以上の属性情報を自動補完
- 「購買意向(Intent)データ」:HubSpotのWebサイトを訪問した企業のシグナルを検知
- クレジット課金制(プランによって付与クレジット数が異なる)
Salesforce Einstein AIの全体像
SalesforceのAI機能「Einstein」は2016年に開始された長期投資の成果として、現在は営業・マーケ・CS・データ分析の全領域に組み込まれています。
Einstein Copilot → Agentforce(AIエージェント)
- 2025年にEinstein CopilotからAgentforceにリブランド。単なるアシスタントを超えた「自律実行型エージェント」へ進化
- Atlas Reasoning Engine:複雑なタスクを複数ステップに分解し、自律的に実行するアーキテクチャ
- Agent Builderでプログラミングなしにカスタムエージェントを構築可能
- 価格:$2/会話(2025年以降の新課金モデル)

Einstein Scoring(スコアリングAI)
- Einstein Lead Scoring:リードの成約可能性スコア(Sales Cloud Enterpriseに含む)
- Einstein Opportunity Scoring:商談ごとの成約確率スコア
- Einstein Behavior Scoring(Pardot):最近のエンゲージメントに基づく購買準備度スコア
Einstein Analytics → Tableau CRM
- Sales CloudのAI予測分析ツールがTableau CRMに統合
- 過去のパイプラインパターンから将来の成約予測を高精度に算出(Einstein Forecasting)
- Einstein Conversation Insights:営業通話を分析し、競合言及・価格交渉シーンを自動検出
Einstein Studio(カスタムAIモデル)
- 自社のデータでカスタムAIモデルを学習させ、Salesforceのワークフローに組み込む
- 特定業界・製品に特化した予測モデルの構築が可能
- DataRobot・H2O.aiなどのMLプラットフォームとの連携もサポート

機能別詳細比較
リードスコアリングの比較
| 比較軸 |
HubSpot(予測スコア) |
Salesforce Einstein Lead Scoring |
| 必要プラン |
Sales Hub Professional以上 |
Sales Cloud Enterprise以上 |
| 学習データ |
HubSpot CRM内のデータ |
Salesforce CRM+外部データ統合可能 |
| 特徴量の種類 |
行動・属性・エンゲージメント |
行動・属性・サードパーティデータ |
| スコアのカスタマイズ |
限定的(設定ベース) |
高い(Einstein Studioで独自モデル可) |
| スコア更新頻度 |
リアルタイム(行動ごと) |
定期バッチ(通常日次) |
| 必要な学習データ量 |
受注・失注各100件以上 |
200件以上(公式推奨) |
コンテンツ・メール生成AIの比較
| 比較軸 |
HubSpot(Breeze Content Agent) |
Salesforce Einstein(Einstein GPT) |
| コンテンツ生成機能 |
◎ ブログ・LP・メール・SNSの全方位 |
○ 主に営業メール・商談サマリー |
| SEO最適化 |
◎ キーワード分析・メタ生成まで一体 |
△ SEO特化機能は限定的 |
| ブランドボイス反映 |
○ ブランドキット設定で参照 |
○ プロンプトテンプレートで設定 |
| マーケコンテンツ対応範囲 |
◎ マーケ全領域に対応 |
△ 主に営業・CS用途が中心 |
データ統合と分析の比較
| 比較軸 |
HubSpot |
Salesforce |
| データの一元管理 |
◎ マーケ・営業・CSが同一CRM |
○ 製品間連携が必要(Pardot、Service Cloud等) |
| 外部データ統合 |
○ Breeze Intelligence(旧Clearbit) |
◎ Data Cloud(大規模な外部データ統合) |
| BI・レポート機能 |
○ カスタムレポート(標準的) |
◎ Tableau CRM(高度な分析) |
| 分析のカスタマイズ性 |
中(設定ベース) |
高(Apex・SOQL・Tableau等) |
価格の詳細比較
| 項目 |
HubSpot |
Salesforce |
| AI機能が含まれる最低プラン |
Sales Hub Professional:月10,800円ユーザー(年払い) |
Sales Cloud Enterprise:月21,000円/ユーザー(年払い) |
| Agentforce/Breeze Agents |
プラン内包 or 別途(要確認) |
$2/会話(Agentforce) |
| データエンリッチメント |
Breeze Intelligence(クレジット課金) |
Data Cloud(要見積もり) |
| 管理者コスト |
低(内製運用しやすい) |
高(Salesforce Adminが必要) |
| 実装コスト(初期) |
低〜中(3〜6ヶ月) |
高(6〜18ヶ月、パートナー活用前提) |
| TCO(3年間の総所有コスト) |
中(ライセンス+運用コスト合計) |
高(ライセンス+管理者人件費+カスタム開発) |
移行コストの現実:SalesforceからHubSpotへの切り替えを検討する際の注意点
移行の主要コスト項目
- データ移行:コンタクト・ディール・カスタムオブジェクトのクレンジング・マッピング・移行作業(通常2〜4ヶ月)
- カスタマイズの再現:Salesforceで構築したカスタム機能・レポートをHubSpotで再設計(一部は再現不可能な場合も)
- ユーザートレーニング:Salesforceに慣れたユーザーへのHubSpot操作教育(1〜2ヶ月)
- 並行運用期間:完全移行前の両システム並行期間のライセンス二重払い(通常3〜6ヶ月)
Salesforceを残してHubSpotをマーケ用に追加する「ハイブリッド構成」の現実
HubSpot(マーケ)+Salesforce(営業)の構成を選ぶ企業もいます。この場合の課題:
- HubSpot←→Salesforceの公式同期機能(無料)はあるが、リアルタイム同期ではない(15〜30分遅延)
- カスタムフィールドの同期設定に管理工数がかかる
- データの「どちらが正」の定義が曖昧になるリスク
ハイブリッド構成はデータ統合コストが発生するため、長期的には「どちらかに統一」を目指すロードマップが望ましいです。
どちらを選ぶか:シナリオ別判断基準
HubSpotを選ぶべきケース
- 従業員数100〜2,000名規模で、専任のSFDA管理者を置く予算・人材がない
- マーケ〜営業〜CSのデータを一元管理したい
- コンテンツマーケティングにAIを活用したい(Breeze Content Agentの強み)
- HubSpotをすでにマーケに使っており、営業に拡大したい
- ITリソースが少なく、内製運用が前提
Salesforceを選ぶべきケース
- 従業員2,000名以上の大企業で、複雑な営業プロセスのカスタマイズが必要
- すでにSalesforceに大量の顧客データと業務プロセスが構築されており移行コストが見合わない
- AIモデルをカスタム学習させたい(Einstein Studio)
- グローバル展開で多言語・多通貨・多リージョンの複雑な要件がある
- SAPやOracleなどのERPとのデータ連携が必須
よくある質問(FAQ)
Q1:HubSpotとSalesforceのAI機能、精度はどちらが高いですか?
「精度」は単純に比較できません。AIの精度は「どれだけ良いデータがどれだけの量あるか」に依存します。Salesforceは長年のエンタープライズ利用で大量の学習データと高度なカスタマイズが可能な分、適切に設定された場合は高精度を出せます。HubSpotは設定のシンプルさと「すぐ使える」利便性で、中堅企業での実用精度では十分な水準を出せます。自社のデータ量・運用体制・予算に応じて「適合度」で判断することを推奨します。
Q2:SalesforceからHubSpotに移行した企業の成功事例はありますか?
複数の中堅BtoB企業がSalesforce→HubSpot移行を実施しており、共通する成功要因は:(1)移行前のデータクレンジング徹底、(2)HubSpotで再現できない機能の事前棚卸し、(3)営業チームへの十分なトレーニング期間の確保、(4)6ヶ月の定着フォロー計画の実施、です。移行コストの見積もりは、一般的にライセンスコストの1〜2年分相当の実装・運用コストを見込む必要があります。
Q3:HubSpotとSalesforceを両方使い続けることはお勧めですか?
短期的な移行期間中は合理的ですが、長期的には「データのサイロ化」と「管理コストの二重化」が発生するためお勧めしません。どちらかを「システムオブレコード(唯一の真実の情報源)」に定め、他方はその参照系として位置づける、またはどちらかへの完全統合を3〜5年のロードマップとして描くことを推奨します。
Q4:HubSpotのAIは日本語コンテンツに対応していますか?
Breeze CopilotおよびContent Agentは日本語での入出力に対応しています。ただし英語と比較すると精度にやや差があります。日本語コンテンツの最終品質担保には人間の編集者によるレビューが必要です。Salesforce EinsteinのAI機能も日本語に対応していますが、Einstein Conversation Insights(通話分析)の日本語対応状況は機能によって異なります。
Q5:どちらのツールも「試してから決める」ことはできますか?
HubSpotはFreeプランから始められ、CRM・マーケ・営業の基本機能を無料で試せます。AIの高度な機能(予測スコア・Breeze Agents)はProfessionalプランでのトライアルが必要です。Salesforceは通常30日間のトライアルが提供されますが、本格的なEinstein AI機能の評価には実際のCRMデータとある程度の設定が必要なため、パートナー経由でのPoCを推奨します。