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顧客対応エージェント(Customer Agent)の設定方法と活用シーン

顧客対応エージェント(Customer Agent)の設定方法と活用シーン

サポート部門の一次対応をAIに任せる——この構想自体は新しくありません。しかし多くの組織で頓挫してきた理由も明確です。「回答の根拠が不明」「引き継ぎが荒く顧客が二度説明させられる」「CRMに履歴が残らない」の3点です。

HubSpotの顧客対応エージェントは、この3点に構造的に対応する設計を採っています。本記事では、公式ドキュメントに基づいた設定手順と、実際にどの業務から任せるべきかの判断基準を整理します。

この記事のポイント

  • 顧客対応エージェント(Customer Agent)は、メール・ライブチャットなどのチャネルで問い合わせを自動解決するHubSpotのAIエージェントです。設定は「作成」「定義」「トレーニング」「テスト」「導入」「分析」の段階で構成されます。
  • 課金は成果報酬型で、解決済み会話1件あたり50クレジット(約0.50ドル)。「解決」とはエージェントが対応し72時間以内に有人へ転送されなかった場合、またはリードとして認定された場合を指します。
  • 公開されている顧客事例では、Sticosがチャットの91%を自動処理し75%を解決、The Knowledge Societyがメールチケットの70〜80%を解決してクローズ時間を16時間超から10時間未満に短縮したと報告されています。

顧客対応エージェント(Customer Agent)とは何か?

顧客対応エージェントは、HubSpotのAgent Hubに含まれる構築済みAIエージェントです。24時間365日、一般的な問い合わせを自動で解決し、あわせてリードの適格化とミーティング設定も担います。

何を根拠に回答するのか?

公式プロダクトページによれば、顧客対応エージェントは自社が提供したコンテンツのみを根拠として回答し、出典を明示します。取り込める形式にはPDF、会議のトランスクリプト、企業ドキュメントが含まれます。

「承認済みコンテンツのみを使い、出典を示す」という制約は、AIの回答品質を管理するうえで本質的です。汎用LLMに自社サポートを任せられない最大の理由は根拠の不透明さですが、この設計はその懸念に直接応えています。

対応チャネルは何か?

公式プロダクトページでは、チャット・メール・音声・ソーシャルの各チャネルでの対応が示されています。一方公式ナレッジベースの設定手順では、テストおよび展開の対象チャネルとしてメールとライブチャットが案内されています(2026年8月12日取得時点)。実際に利用できるチャネルはエディションとベータの適用状況によって異なるため、設定画面でご確認ください。

導入前に何を確認すべきか?

必要なサブスクリプションと前提条件

項目 内容
サブスクリプション Marketing Hub / Sales Hub / Service Hub / Data Hub / Content Hub / Smart CRM / Revenue Hub のProfessionalまたはEnterprise
クレジット HubSpotクレジットが必須(解決時のみ消費)
権限 顧客対応エージェントの編集権限
シート エージェントの作成・管理用シートの割り当て
無料試用 初回利用時は14日間の無料アクセスを選択可能

課金体系:「解決」の定義を正しく理解する

顧客対応エージェントは2026年4月に成果報酬型へ移行し、解決済みテキスト会話1件あたり50クレジット(約0.50ドル、1クレジット=約0.01ドル)が課金されます。

ここで重要なのが「解決」の定義です。公式プロダクトページでは、エージェントが対応し、72時間以内に有人対応へ転送されなかった場合、またはリードとして適格化された場合を解決と定義しています。つまり、すぐ有人に引き継がれた会話には課金されません。

この定義は予算計画に直結します。月間の問い合わせ件数に想定自動解決率を掛けることで、クレジット消費のレンジを事前に算出できます。詳細レートはHubSpot製品・サービスカタログで確認してください。

顧客対応エージェントの設定方法は?

ステップ1:エージェントを作成する

エージェント名を入力し、パーソナリティーを選択します。公式ドキュメントで選択肢として挙げられているのは、フレンドリー、プロフェッショナル、カジュアル、共感的、ウィットの5種類です。自社で設定済みのブランドボイスを適用することもできます。

BtoBで大手企業を顧客に持つ組織であれば「プロフェッショナル」が無難ですが、既存のサポート文面のトーンと突き合わせて選ぶべきです。ブランドボイスを整備済みであれば、そちらを使うほうが一貫性が保てます。

ステップ2:ナレッジソースを指定する

回答の根拠となる情報源を指定します。選択肢は2系統です。

  • 既存のHubSpotコンテンツ:ナレッジベース記事など
  • 公開URL:「関連するURLをインポート」から最大5,000件を自動クロール

公開URLの取り込みでは、スコープを「全ページ」「特定パス」「単一サブドメイン」から選択でき、含める/除外するパスをフィルタリングできます。

実務上の注意点は、古いコンテンツを混ぜないことです。廃止済みの製品ページや旧価格表がクロール対象に入っていると、エージェントは正確にその古い情報を引用します。クロール前にサイトマップを棚卸しし、除外パスを明示的に指定してください。

ステップ3:エージェントを定義しトレーニングする

公式ドキュメントでは、この段階で以下を設定するとされています。

設定項目 内容
ID管理 名前、アバター、パーソナリティー
CRMデータ CRMデータへのアクセスと更新の許可
コンテンツソース 参照する情報源の管理
アクション パスワードリセットなど、エージェントが実行できる操作
ガイドライン 回答方針・禁止事項の確立
ハンドオフ 有人対応への引き継ぎプロセスのカスタマイズ

この4つ目「アクション」の設計が、自動解決率を大きく左右します。回答するだけのエージェントは「FAQの読み上げ」に留まりますが、パスワードリセットのような具体的操作ができるエージェントは実際に問題を解決します。

ステップ4:テスト・導入・分析

公式ドキュメントによれば、テスト環境ではクレジットを消費せずに動作を確認できます。右側のパネルでは、応答の理由、トリガー、引用したソースを検証できます。

この「引用ソースの検証」を省略すると、本番稼働後に誤った情報源を参照していたことが判明します。想定質問リストを30〜50件用意し、1件ずつ引用元を確認する工程を必ず組んでください。検証後、公式ドキュメントでは「導入」の段階で対象チャネルへ展開し、「分析」で稼働状況を確認する流れが案内されています。

有人対応との切り分けはどう設計すべきか?

自動でハンドオフを判断させる

公式プロダクトページには、「会話が人の対応を必要とするタイミングをエージェント自身が認識し、自動で転送する」機能が明記されています。ただし、判断基準は自社で設計する必要があります。

ハンドオフすべき条件の設計指針

  • 解約・返金・クレーム:金銭や契約に関わる話題は無条件で有人へ
  • 感情の強度が高い会話:不満の表明が明確な場合は早期に転送
  • ナレッジソースに根拠がない質問:推測させず「確認します」として引き継ぐ
  • 同一顧客の再問い合わせ:一度解決したはずの案件が再燃した場合は有人へ
  • 重要顧客(ABMターゲット・大口契約):CRMの属性で判定して有人優先に

最後の項目は、CRMを基盤に持つHubSpotの構造的な強みです。顧客対応エージェントがCRMデータにアクセスできるため、「契約金額が一定以上の顧客は自動対応せず有人に回す」という運用が実装できます。

どのような成果が報告されているか?

以下はHubSpotが公開している顧客事例の数値です(出典:HubSpot公式プロダクトページ、2026年8月12日取得時点)。

企業 報告された成果
Sticos チャットの91%を自動処理、75%を解決
The Knowledge Society メールチケットの70〜80%を解決、クローズまでの時間が16時間超から10時間未満へ短縮
Soundstripe チャットの吸収率79%、メール初回応答時間54%短縮、解決時間36%短縮
Nutribees サポートチケット77%削減と同時にコンバージョン率が向上

プロダクトページ全体の集計としては、月平均のチケット解決件数が77%増加、チケット解決速度が39%短縮したと記載されています。

注意すべきは、これらが各社の運用条件下での結果であることです。問い合わせの定型度、ナレッジベースの充実度、扱う製品の複雑さによって自動解決率は大きく変動します。自社の適用可能性は、テスト環境での想定質問検証で見積もるべきです。

具体的な活用シーンはどこか?

シーン1:サポート一次対応の吸収

製品の使い方、設定手順、仕様確認といった定型問い合わせを自動解決します。ナレッジベースが整備されている領域から着手するのが最も成功確率が高いパターンです。

シーン2:営業時間外の対応

24時間対応が可能になるため、夜間・休日の問い合わせを翌営業日まで放置せずに済みます。特にグローバル展開している組織では、時差による初動遅延の解消効果が大きくなります。

シーン3:リードの適格化とミーティング設定

サポート用途だけではありません。公式プロダクトページには、リードの適格化と会議予約が機能として明記されています。Webサイトのチャットで訪問者の課題をヒアリングし、条件に合致すれば商談を設定するという運用が可能です。Nutribeesの事例で「チケット削減と同時にコンバージョン率が向上」しているのは、この二面性を示しています。

シーン4:既存顧客のオンボーディング支援

導入初期に集中する「設定方法が分からない」という問い合わせを吸収することで、カスタマーサクセス担当者が本来注力すべき活用支援に時間を割けるようになります。

メリットとデメリットを公正に評価すると?

観点 メリット 留意点
回答の信頼性 承認済みコンテンツのみを使い出典を明示 ナレッジソースの鮮度管理が必須。古いページを含めると古い回答になる
コスト 成果報酬型。解決しなければ課金されない クレジットプールは他のAI機能と共有。想定件数の試算が必要
導入速度 コード不要、14日間の無料試用あり ナレッジベース未整備の組織は、その整備が実質的な前提工程になる
顧客体験 24時間対応、有人への自動転送 ハンドオフ条件の設計が甘いと「たらい回し」体験になる
CRM連携 顧客属性・履歴を踏まえた対応が可能 CRMデータの更新権限を与える場合、書き込み範囲の統制が必要

よくある質問(FAQ)

顧客対応エージェント(Customer Agent)とは何ですか?

HubSpotのAgent Hubに含まれる構築済みAIエージェントで、メール・ライブチャットなどのチャネルを通じて問い合わせを自動解決します。あわせてリードの適格化とミーティング設定も行えます。自社が提供した承認済みコンテンツのみを根拠に回答し、出典を明示する設計です。

利用にはどのプランが必要ですか?

公式ナレッジベースでは、Marketing Hub / Sales Hub / Service Hub / Data Hub / Content Hub / Smart CRM / Revenue Hub のProfessionalまたはEnterpriseと、HubSpotクレジットが必要と記載されています。加えて顧客対応エージェントの編集権限と、作成・管理用シートの割り当てが必要です。

料金はどのように課金されますか?

成果報酬型で、解決済みテキスト会話1件あたり50クレジット(約0.50ドル)です。「解決」とは、エージェントが対応して72時間以内に有人へ転送されなかった場合、またはリードとして適格化された場合を指します。すぐ有人に引き継がれた会話には課金されません。

無料で試せますか?

初回利用時には14日間の無料アクセスを選択できると公式ナレッジベースに記載されています。またテスト環境での動作確認はクレジットを消費しません。

ナレッジソースには何を指定できますか?

既存のHubSpotコンテンツ(ナレッジベース記事など)と、公開URL(1ドメインあたり最大5,000件の自動クロール)です。クロール範囲は全ページ/特定パス/単一サブドメインから選択でき、含める・除外するパスをフィルタリングできます。PDF、会議のトランスクリプト、企業ドキュメントも取り込み可能です。

間違った回答をしてしまうリスクはどう抑えますか?

3点あります。第一に、ナレッジソースから古い・誤ったコンテンツを除外すること。第二に、テスト環境で引用ソースと応答理由を1件ずつ検証すること。第三に、根拠のない質問には推測させず有人へハンドオフする方針をガイドラインに明記することです。

有人対応への引き継ぎはどう設定しますか?

設定画面の「ハンドオフプロセスのカスタマイズ」で構成します。エージェント自身が人の対応が必要な会話を認識して自動転送する機能もありますが、解約・返金・クレームなど無条件で有人に回す条件は自社で明示的に定義すべきです。

日本語での対応は可能ですか?

HubSpotは日本語版のナレッジベースドキュメントを提供しており、日本語環境での設定が想定されています。ただし言語ごとの回答品質は自社のナレッジソースの言語構成に依存します。日本語コンテンツが薄い状態では日本語での回答品質も上がりません。まず日本語ナレッジベースの整備状況を確認してください。

問い合わせの何割くらいを自動化できますか?

公開事例では70〜91%という数値が報告されていますが、これは各社の条件下での結果です。問い合わせの定型度とナレッジベースの充実度に強く依存するため、自社の想定質問30〜50件をテスト環境で検証して見積もることを推奨します。

既存のチャットボットから移行すべきですか?

ルールベースのチャットボットとは併存できます。定型的な分岐で完結する導線はルールベースのまま残し、自由記述の質問を顧客対応エージェントに回すハイブリッド構成が現実的です。いきなり全面置き換えを狙うと、既存導線の成果を落とすリスクがあります。

まとめ:設定作業は数分、設計作業は数週間

顧客対応エージェントは「数分で設定できる」と公式に謳われており、それは事実です。しかし成果を出す組織と出さない組織を分けるのは、設定画面の操作ではありません。ナレッジソースの棚卸し、ハンドオフ条件の定義、アクション権限の範囲決定——これらの設計作業に、通常は数週間を要します。

株式会社100は、HubSpot認定エリートパートナーとして400社以上のCRM導入を支援してきました。カスタマーサポート業務の棚卸しから、一次対応と有人対応の切り分け設計、稼働後のチューニングまで一貫して伴走します。

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本記事はHubSpot公式サイト・公式ナレッジベースの公開情報(2026年8月12日取得時点)に基づいて作成しています。掲載した成果数値はHubSpotが公開する各社事例であり、自社での再現を保証するものではありません。仕様・エディション要件・クレジットレートは変更される可能性があります。

田村 慶

2005年に札幌で株式会社24-7をWeb制作会社として創業、2012年からHubSpotの販売を開始。2016年にAPAC初となるダイヤモンドパートナーに昇格し、翌年にはHubSpotパートナー・オブ・ザ・イヤー(アジア地区)を受賞。2018年に24-7社の代表取締役を退任し、新たに株式会社100を創業。2019年6月からHubSpot認定パートナーに登録し、HubSpotビジネスを再開。現在は、HubSpotエリートパートナーやHubSpotユーザーグループの主催者として、HubSpotパートナー複数社へのコンサルティングと実行支援、HubSpotの導入企業のビジネス促進を中心に『HubSpot好き』を増やすための活動をしています。 2020年:HubSpot ルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞(APAC地区) 2021年:HubSpot パートナー・オブ・ザ・イヤー受賞(日本) 2023年:アジアで初めてHubSpot「Elite Partner(当時)」として認定

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