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HubSpotのライフサイクルステージ徹底解説|定義・使い方・ベストプラクティス

HubSpotのライフサイクルステージ徹底解説|定義・使い方・ベストプラクティス

マーケティングや営業活動において、顧客がどのフェーズにいるのかを正しく把握することは非常に重要です。たとえば、獲得したリード(見込み客)に対し適切なタイミングでアプローチすることで商談化につながりやすくなりますし、契約後の顧客に対して最適な情報を提供することで顧客満足度の向上へとつながります。

HubSpotでは、この顧客フェーズの可視化と管理を効率化するために「ライフサイクルステージ」という機能を提供しています。この機能により、見込み客から既存顧客、さらには自社のファン(エバンジェリスト)までを一貫して管理できるため、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの連携を高める鍵となるでしょう。

本記事では、ライフサイクルステージの基本的な概念や役割から、HubSpotのライフサイクルステージの設定方法や活用方法、運用時の注意点までを詳しく解説していきます。これからHubSpotを導入する方はもちろん、すでに使っているが運用に課題を感じている方にも役立つ内容となっていますので、ぜひご参考にしてください。

HubSpotのライフサイクルステージとは?

顧客との関係性は、すべてが同じではありません。たとえば、最初に接点を持ったばかりの見込み客と、すでに複数回の商談を重ねているリード、契約後の顧客では、提供すべき情報やコミュニケーションのアプローチも異なります。

こうした顧客の状態を「ステージ」として分類・管理するフレームワークが「ライフサイクルステージ」です。HubSpotでは、このライフサイクルステージを管理する機能を備えており、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスにいたるまでの一貫した顧客管理が可能になります。

ここでは、ライフサイクルステージの基本的な概念やビジネスにおける役割、そしてHubSpotのライフサイクルステージ機能について見ていきましょう。

ライフサイクルステージとは

先述したとおり、「ライフサイクルステージ」とは、顧客との関係性や購買プロセスの進捗に応じて、リードや顧客を段階的に分類・管理するフレームワークを指します。たとえば、「見込み客(リード)」「営業対象(SQL)」「顧客」「ロイヤルユーザー(エバンジェリスト)」などが挙げられ、企業のビジネスモデルに応じて定義されることが一般的です。

ライフサイクルステージを適切に管理することにより、フェーズに応じた最適な対応が可能になります。

  • 見込み客に対して、ナーチャリング施策を展開する
  • 商談中のリードに対して、最適な情報提供を行い成約につなげる
  • 既存顧客に対して、アップセルやサポート施策を展開する

このようにライフサイクルステージは、顧客理解の精度を高め、成果につながるマーケティング・営業活動の土台として機能します。

HubSpotのライフサイクルステージとは

HubSpotのライフサイクルステージとは

画像出典:HubSpotナレッジベース

HubSpotでは、「ライフサイクルステージ」を管理する機能が備わっており、コンタクトや会社のフェーズを可視化・管理が可能です。デフォルトでは、「登録読者」「リード」「MQL(Marketing Qualified Lead)」「SQL(Sales Qualified Lead)」「商談」「顧客」「エバンジェリスト」「その他」といったステージが用意されていますが、企業の実態にあわせてカスタマイズもできます。

また、設定したライフサイクルステージ上のプロパティは手動で登録するだけではなく、ワークフローやインポート、外部アプリと連携することで自動更新も可能です。加えて、ステージごとの滞在期間や移行日なども自動的に記録されるため、レポートや分析にも活用できます。

したがって、HubSpotのライフサイクルステージ機能は、デジタルマーケティングやインサイドセールス体制を構築したい企業にとって、リード管理の高度化と業務の自動化を支える基盤となるでしょう。

ライフサイクルステージを管理する重要性

マーケティングやセールスにおける課題は、「どのリードに、どのタイミングで、何をすべきか」が明確でないことに起因しているケースが少なくありません。そこで、ライフサイクルステージを適切に管理することで、各部門が共通の基準で顧客フェーズを把握できるようになるため、施策の打ち手や優先順位が明確になります。

たとえば、マーケティングは「MQLの創出数」をKPIに設定し、セールスは「SQLの成約率」をKPIに設定することで、両者の連携が強化されるでしょう。

※MQL(Marketing Qualified Lead)=マーケティング活動によって創出されたリ見込み客、SQL(Sales Qualified Lead)=購買意欲が高いと判断された見込み客

また、ステージごとの滞在期間を可視化すれば、どのフェーズでボトルネックが発生しているかも分析可能です。

このように、ライフサイクルステージの適切な管理は、組織全体のプロセス改善と、効率的なリード育成・受注の鍵を握るといっても過言ではありません。

ライフサイクルステージを設定するメリット

ライフサイクルステージの管理は、単に顧客の状態を把握したり分類したりするだけにとどまりません。マーケティング、セールス、カスタマーサクセスといった各部門が共通の視点を持ち、連携を強化することで、よりスムーズなリード管理と施策実行が可能になります。

特に、HubSpotの自動化機能やレポート機能と組み合わせることで、施策の効率化やボトルネックの可視化にも大きく役立つでしょう。ここでは、ライフサイクルステージを活用することで得られる主なメリットを3つご紹介します。

マーケティングとセールスの連携強化

1つ目のメリットは、マーケティングとセールス間が共通の指標で顧客フェーズを管理できるようになることです。

マーケティングとセールスの連携が上手くいかないことは、多くの企業が抱える課題として挙げられます。その原因としては、「どのタイミングでリードを営業に引き渡すべきか?」が曖昧になっているケースが少なくありません。

そこで、ライフサイクルステージを明確に設定し、MQLやSQLといったステージごとに明確な条件を設けることで、マーケティングとセールスが共通の指標を持って連携できるようになります。

たとえば、「フォーム送信+特定ページ閲覧=MQL」と定義することで、営業は確度の高いリードだけに絞ったアプローチが可能です。このような仕組みを作ることで、マーケティングとセールス間の無駄なやりとりが減り、組織全体の成果につながりやすくなります。

効率的なフォローアップ

2つ目のメリットは、顧客のステージに応じた施策を効率的に行えることです。ライフサイクルステージの各ステージに応じたマーケティング施策や営業アクションをワークフローによって自動化し、効率的なフォローアップを実現します。

たとえば、「リード」になったタイミングでナーチャリングメールを配信したり、「SQL」に進んだタイミングで営業にタスク通知を送信するなど、フェーズごとの対応がリアルタイムで行うことが可能です。

これにより、最適なタイミングを逃すことなく、顧客にアプローチすることができ、リードの離脱を防ぐことにもつながります。また、担当者の業務負荷を軽減しつつ、対応漏れを防止できる点も大きなメリットです。特にHubSpotの自動化機能と連携することで、運用精度と対応スピードの向上を同時に実現できるでしょう。

組織全体の可視化

3つ目のメリットは、商談数や成約率などをフェーズごとに把握しやすくなることです。ライフサイクルステージを正しく管理することで、顧客の進捗状況をフェーズ別に可視化できます。HubSpotでは、各ステージに入った日付や滞在時間といったプロパティが自動的に記録され、レポートやダッシュボードに反映させることが可能です。

たとえば、「MQLからSQLへの移行率」や「SQLから商談の滞在日数」などのKPIを設定すれば、ボトルネックを特定し、改善策を検討する材料になります。また、経営層にとっても、案件の全体像やパイプラインの健全性を確認することができ、組織課題の明確や経営判断にも役立つでしょう。

このように、ライフサイクルステージの適切な管理は、現場レベルだけでなく、組織全体の意思決定を支える基盤としても重要な役割を担います。

デフォルトで用意されているHubSpotライフサイクルステージ

HubSpotでは、コンタクトや会社の関係性を段階的に管理するために、あらかじめ8つのライフサイクルステージがデフォルトで用意されています。これにより、ユーザーは初期段階からスムーズに顧客管理を始めることができます。

各ステージは、リードの興味関心レベルや営業プロセスに応じて設計されており、組織内の役割や対応策を明確に分けるための指標となります。ここでは、それぞれのステージの定義と役割を簡単に解説します。

HubSpotライフサイクルステージ

画像出典:HubSpotナレッジベース

・登録読者(Subscriber)
ブログやニュースレターなどに登録し、情報提供を希望したコンタクトです。まだ具体的な行動には至っていない「潜在的な見込み客」であり、ブランドに対して最初の興味を示した段階です。

・リード(Lead)
フォーム送信や資料請求など、Webサイト上で何らかのコンバージョンアクションを行ったコンタクト。マーケティング活動によって獲得された、初期接点を持ったリードです。

・MQL(Marketing Qualified Lead)
マーケティング部門によって、営業に引き渡しても良いと判断されたリード。たとえば、特定の資料を複数回ダウンロードしたり、セミナー参加などのアクションを取った人が該当します。

・SQL(Sales Qualified Lead)
営業チームによって、実際に商談につながる可能性があると判断されたリードです。この段階では、担当者が具体的なアプローチやヒアリングを開始するフェーズに入ります。

・商談(Opportunity)
実際に商談が進行中で、HubSpot上の「取引」に関連付けられているコンタクトや会社です。見込み客から顧客へと移行する重要なフェーズです。

・顧客(Customer)
少なくとも1件の取引が成立したコンタクトや会社。顧客化した段階では、アップセルやクロスセルの機会を含めたカスタマーサクセスの戦略が求められます。

・エバンジェリスト(Evangelist)
サービスや製品に高い満足度を持ち、他の見込み客に推薦・紹介してくれる自社の「ファン」や「支持者」にあたる存在です。ロイヤリティの高い顧客です。

・その他(Other)
上記いずれのステージにも該当しない、または分類が難しいコンタクト・会社を一時的に格納するためのカテゴリーです。

これらのデフォルトステージは、HubSpotアカウント内で、手動で設定することも、ワークフローや外部アプリ連携によって自動で設定することも可能です。また、各ステージはカスタマイズ(削除・追加)も可能であるため、自社の運用方針に応じて柔軟に設計できます。

HubSpot ライフサイクルステージの初期設定・変更方法

HubSpotで適切にリードを管理するためには、ライフサイクルステージの初期設定を正しく行うことが大切です。さらに初期設定後は、自社の運用に合わせてカスタマイズを加えることで、運用の精度が高まり、部門間の連携も円滑になります。

ここでは、ステージの確認方法から、自社用に調整する方法、そしてワークフローによる変更方法までを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

プロパティ設定画面へのアクセス方法

プロパティ設定画面へアクセスする手順は下記のとおりです。

1.HubSpotにログイン後、画面右上の歯車アイコン「設定」をクリックします。

2.左側メニューから「オブジェクト > コンタクト(または会社)」を選択します。

設定 > オブジェクト > コンタクト(または会社)

3.表示された設定画面内の「ライフサイクルステージ」のタブをクリックします。

ライフサイクルステージ

4.設定されているステージが表示されます。オブジェクトが進む順序や使用箇所を確認できます。

オブジェクトが進む順序や使用箇所を確認

この画面では、プロパティの「使用履歴」「値の編集」「カスタムステージの追加」も可能です。自社のフェーズを反映したステージを自由に追加したり、並び替えたりできます。

自社に最適なライフサイクルステージの設定方法

先述したとおり、HubSpotではデフォルトで8つのライフサイクルステージが用意されていますが、自社の営業プロセスに沿ってステージをカスタマイズすることが可能です。

たとえば「無料トライアル中」「イベント参加者」など、特定のマーケティング戦略に応じた中間ステージを追加すると、より細やかな管理が実現できます。追加・編集の手順は下記のとおりです。

1.「コンタクト」から、「ライフサイクルステージ」タブを開き、ステージ一覧の最下部にある「ステージを追加」をクリックします。

コンタクト>ライフサイクルステージ>ステージを追加

2.新しいステージ名を入力し、「ライフサイクルステージを作成」をクリックします。

ライフサイクルステージを作成

3.並び順をドラッグ&ドロップで調整する。

なお、既存のデータをカスタムステージに移行する場合は、ワークフローやインポート機能を活用し、データの一貫性を保つことをおすすめします。

自動更新ルールの作り方(ワークフロー)

ライフサイクルステージの更新を、全て手動で入力するのは非常に手間が掛かり非効率です。そのようなときに、HubSpotでは自動的にステージに登録させることができます。

例えば、デフォルトでは、以下のような設定になっています。

  • コンタクト(または会社)が作成された時 :「リード」に設定される
  • 取引が作成された時:「商談」に設定される
  • 取引が成立された時:「顧客」に設定される

自動化画面

もちろん、上記の設定を変更することも可能です。たとえば、「メール開封」や「CTAクリック」などのアクションと紐づけることができます。このように、自社のマーケティング施策の成果が即時に反映される仕組みを作ることが可能です。

既存コンタクトの一括変更

すでに登録済みのコンタクトについては、一つひとつ変更しなくとも、一括で変更することが可能です。

手順:

1.コンタクト画面から、「列を編集」をクリックします。

列を編集

2.表示する列に「ライフサイクルステージ」を追加します。

ライフサイクルステージ

3.「コンタクト」画面から、ステータスを変更したいコンタクトにチェックを入れます。

4.「エクスポート」をクリックし、ファイル(CSV、XLS、XLSX形式から選択可)をダウンロードします。

チェックとエクスポート

5.ファイル内のデータを編集したら、「コンタクトを追加」>「インポート」>「ファイルからインポート」の順に選択します。

6.表示に従って、ファイルをインポートします。

7.インポートが完了すると、コンタクトのライフサイクルステージが自動的に更新されます。

インポート後|ライフサイクルステージが自動的に更新

HubSpotのライフサイクルステージを活用した主な施策例

HubSpotのライフサイクルステージ機能は、単にコンタクトを分類するためだけに用いられるものではありません。

たとえば、ステージごとに異なるアプローチを自動化したり、最適化したりすることで、マーケティング活動全体の施策が、より高度に展開可能になります。ここでは、HubSpotのライフサイクルステージを活用した代表的な施策例を3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

リードナーチャリングキャンペーン

HubSpotのライフサイクルステージを活用することで、リードナーチャリングを強化できます。

そもそも見込み客の段階(例:メルマガに登録した)では、購買意欲がまだ高くないケースがほとんどです。こうした見込み客に対しては、段階的に興味関心を高めていく「リードナーチャリング」が欠かせません。

HubSpotでは、ライフサイクルステージをトリガーとしてメール配信やコンテンツ提供を自動化できます。さらに、スマートコンテンツやスコアリング機能を併用することで、よりパーソナライズされた施策設計が可能です。

ナーチャリングによってMQLに到達させることで、営業部門にとって価値の高いリードへと進化させることができます。

施策例:

  • ホワイトペーパーやeBookの配布:フォーム送信でMQL条件を満たす
  • シナリオメールの配信:「3日おき×3通」シリーズに分けたメールを配信する
  • 動画やブログ記事のリコメンド:対象者の興味関心に応じて内容を出し分ける

セールスアラート機能

セールスアラート機能

セールスアラート機能を活用することで、SQLへ移行した際のリアルタイム通知やアラートによる、営業活動の効率化と強化に役立ちます。

見込み客がSQLに到達したタイミングで営業担当者が即座にアプローチする体制を構築することで、商談化率の向上に貢献します。HubSpotのセールスアラート機能により、営業担当者の対応スピードが向上し、取りこぼしを防ぐことができます。

また、SlackやMicrosoft Teamsといったチャットツールとも連携可能なので、営業部門全体の共有もスムーズに行うことが可能です。

活用例:

  • フォーム送信または特定ページ閲覧などSQL条件を満たした場合にアラートを出
  • SQLへ移行時に、営業担当者へSlackやメールで即時通知する
  • 「SQLに入ってから5日経過」した場合に、フォロータスクを自動で割り当てる

顧客化後のアップセル・クロスセル

ライフサイクルステージが「顧客」や「エバンジェリスト」に到達した後も、HubSpotを活用することで、効率的にアップセル・クロスセルにつなげることが可能です。

また、ライフサイクルステージに紐づく「滞在期間」や「最終更新日」などのプロパティを使って、関係構築の濃淡を分析し、再アプローチの最適化にも活用できます。

アップセルやクロスセルの機会を逃さないことは、既存顧客との関係性強化にもつながり、継続的な収益拡大および、LTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できるでしょう。

施策例:

  • 利用状況に応じたアップセル提案メール:(例)無料プラン利用中の顧客にプレミアムプランを案内する
  • 購入商品に応じたクロスセル施策:(例)購入額が一定額を超えている顧客に対してオプションプランを提案する
  • エバンジェリストへのインセンティブキャンペーン:紹介キャンペーンや成功事例インタビューの打診する

HubSpot ライフサイクルステージのベストプラクティスと運用上の注意点

ライフサイクルステージは、適切に運用すればマーケティングやセールスプロセスを飛躍的に効率化できる一方、定義が曖昧であったり、データが混在していたりすると、そのメリットを最大限に活かすことができません。

ここでは、HubSpotを活用したライフサイクルステージ管理のベストプラクティスと、実際の運用で陥りやすい注意点について解説します。日々の運用における品質担保と、長期的な顧客戦略のために、ぜひ押さえておきましょう。

マーケティング・セールス間でステージ定義を明確化

ライフサイクルステージを有効に機能させるには、「誰が・どのタイミングで・どう判断して次のステージに進めるのか」を明文化して、組織全体で共通認識を持つことが重要です。

たとえば、「MQL」を「フォームを2回以上送信し、特定ページを閲覧した人」と定義することで、マーケティングチームが営業に引き渡す基準が明確になります。定義が曖昧なままでは、引き渡されたリードに対して営業担当者が「質が低い」と感じてしまい、両部門の不和を生みかねません。

また、HubSpotのワークフローにおいても、ステージ移行のトリガー条件をシステム化するため、定義の明確化は自動化の基盤となります。

ただし、定義を明確にしたとしても、実際に運用をすると判断に迷うというケースも少なくありません。定期的に見直し、現場の感覚と乖離がないかをチェックしましょう。

データの品質管理と重複チェック

HubSpotでは、フォーム、外部ツール、MA、CRMなど複数のソースからコンタクト情報が入ってきます。それにより、データ品質の低下を招きライフサイクルステージ運用に支障をきたす可能性があるため注意が必要です。

たとえば、Salesforceや外部アプリとの同期時にプロパティが意図せず上書きされてしまい、「HubSpotで設定していたステージが消えてしまった」というケースも起きています。

また、重複データも大きな問題です。異なる部門やツールから同一顧客情報が複数登録されると、正確なステージ判断ができなくなり、ナーチャリングや営業活動に支障をきたしかねません。

さらに、ライフサイクルステージを前のステージに戻す処理には技術的制約がある点にも注意が必要です。HubSpotでは一度進んだステージを戻すには、プロパティ値を「クリア」する必要があり、これを理解せずにワークフローを設計すると意図しない動作が発生します。

したがって、ツール任せの自動化に頼りすぎるのではなく、あくまでも「データ管理の責任は人間が持つ」ということを意識しましょう。

主な対策:

  • ワークフローやAPIによるプロパティ更新ルールを明確に設計し、上書き制御を行う
  • 重複コンタクトの検出・統合機能(HubSpot標準)を定期的に実施する
  • ステージがいつ、どのツールから更新されたかを把握するため、「プロパティ履歴」から変更ソースを確認する習慣を持つ

レポート・ダッシュボード活用

レポート・ダッシュボード

画像出典:HubSpot

ライフサイクルステージを正しく管理するには、レポート・ダッシュボードを活用し、どのステージで足止めが多いかを可視化し、改善施策を考えることが大切です。たとえば、ステージごとの「進捗状況」や「滞在期間」を可視化することで、ボトルネックの発見やプロセス改善につながるでしょう。

しかし、レポート・ダッシュボードを活用する際にはいくつかの注意点があります。まず、プロパティの自動記録を正しく理解していないと、誤った分析をしてしまうリスクがあります。また、ワークフローで過去のステージに戻した場合、進捗が記録されないケースもあるため、データを移行する際はあらかじめ慎重な設計が必要です。

さらに、ダッシュボードでの集計対象が不明確だと判断を誤る恐れもあります。たとえば、MQLからSQLへの移行率が低い要因として、ステージ定義が曖昧になっている可能性もあります。見えている数字の裏にある要因を精査せずに施策を立ててしまうと、改善どころか逆効果になるため注意しましょう。

このように、正確な可視化のためには定期的なプロパティ設定の見直し、ダッシュボードの設計チェック、関係者間での数値定義の共有が必要です。したがって、数値ばかりに頼るのではなく、「なぜこうなっているのか?」「何が問題なのか?」といったように、仮説検証のための手段と捉えるようにしましょう。

まとめ

本記事では、ライフサイクルステージの基本から設定方法、活用事例、運用上の注意点まで幅広く解説しました。

ライフサイクルステージは、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスまで、顧客との関係性を段階的に把握・管理するための中核的な仕組みです。これを正しく運用することで、フェーズごとに最適なアプローチを展開できるだけでなく、部門間の連携強化や業務の効率化にもつながります。

一方、ステージ定義の曖昧さやデータ品質のばらつき、外部ツールとの連携時に発生する更新ミスや重複などの課題が運用の障壁となることも事実です。特に、進行中のステージが正しく設定されていないと、マーケティング施策や営業アプローチが無駄になってしまうリスクもあります。

そのうえでHubSpotは、ライフサイクルステージを軸にしたプロパティ管理・自動化・レポート機能を一元化して提供しており、可視化・自動化・連携の3拍子がそろった理想的なプラットフォームです。定義を明確にし、ワークフローやダッシュボードをうまく活用することで、組織横断のKPI管理やPDCAの高速化が可能になるでしょう。

ぜひ本記事でご紹介した内容を参考に、HubSpotのライフサイクルステージ機能をフル活用し、戦略的な顧客管理と部門連携を実現してください。

渋谷 真生子

株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。

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