日本の企業における営業効率の課題は、グローバル基準で見ても顕著であり、特にマッキンゼーが発表したレポート「日本の営業生産性はなぜ低いのか」によると、日本はG7諸国中で営業の生産性が最も低いとされています。営業の生産性を低下させる業務の1つに、ミーティング日程決めがあるのではないでしょうか。
顧客や社内のミーティング調整は、複数回にわたるメールのやり取りや、相互のスケジュールを確認する過程で、多くの時間が費やされます。これは明らかに生産性を損なう業務であり、より効率的な方法が求められています。
HubSpotのミーティングツールは、面倒なスケジュール調整を効率化することで、営業担当者がより本質的な業務に専念できるよう支援します。では、具体的にHubSpotのミーティング機能はどのようにして営業効率を向上させるのでしょうか?
本記事では、HubSpotのミーティング機能を使用して、効率的にスケジュールを管理し、営業の生産性を向上させる方法を詳しく解説します。ミーティング設定機能の活用方法、そのメリット、そして実際の活用手順とともに紹介するので、ぜひ参考にしてください。
HubSpot のミーティング設定機能
ビジネスにおいて時間は貴重な資源であり、その効率的な管理は業務の生産性向上に直結します。HubSpotのミーティング設定機能は、自社と顧客の双方にとって時間の節約とスムーズなミーティングの調整を可能にします。まずはHubSpotとミーティング設定機能の基本知識を見ていきましょう。
HubSpotとは
HubSpotは、マーケティング、セールス、カスタマサポートなど、ビジネスのさまざまな面を最適化することを目的としたプラットフォームです。CRM(顧客関係管理)システムを核に、Sales Hub、Marketing Hub、Service Hubなどのソフトウェアを展開しています。これらの製品群はCRMと連携しているため、顧客に関するあらゆるデータをもとに、戦略を立てることができます。
出典:HubSpot
多くの企業では、セールスやマーケティング、カスタマーサポートなど各部門が別々のツールを導入しているため、部門間で円滑な情報連携ができていないという課題が生じています。HubSpotを導入すれば、組織全員が1つのCRMで顧客データを確認し、一貫した体験を提供できるのです。
また、HubSpotはユーザーインターフェースに優れているため、初めてCRMを導入する企業やITに精通した人材が少ない企業でも容易に使いこなせるようになるでしょう。
HubSpotのミーティング設定機能とは
出典:HubSpot Japan
HubSpotのミーティング設定機能は、顧客とのミーティングを簡単かつスムーズに設定するためのツールです。Sales Hubの一部として提供され、無料で利用できます。
ミーティング設定機能は、ユーザーのGoogleカレンダーやMicrosoft 365カレンダーなどとの連携によって機能し、ミーティング可能な時間帯を効率的に顧客と共有できます。顧客は共有されたリンクを使用し、都合の良い時間を選択するだけで、ミーティングの予約を完了できるのです。
ミーティング設定機能の最大のメリットは、従来のメールや電話による日程調整にかかる時間と労力を大幅に削減できる点でしょう。ミーティングのスケジューリングが効率的に行えるようになり、生産性の向上へとつながります。
また、ミーティングが設定されると、その情報は自動的に関連するすべてのメンバーのカレンダーに反映されるため、ダブルブッキングを防ぐだけでなく、全ての関係者がスケジュールを把握し、効率よく商談準備を行うことが可能です。
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HubSpot ミーティング設定機能の3つの種類
HubSpotミーティング設定機能には、以下3つの種類があります。
ここからは、各ミーティングの種類について見ていきましょう。
1対1ミーティング
1対1ミーティングは、個別のコミュニケーションに特化したスケジューリング機能であり、特にパーソナライズされた対応が必要な状況で価値を発揮します。たとえば、個別の商談において、顧客の具体的なニーズに合わせた提案や情報を提供する際に、1対1ミーティングは効果的でしょう。
カスタマーサービスでは、特定の顧客の問題解決やフォローアップに焦点を当て、個々の顧客に対して最適なサポートを実施することが可能になります。また、従業員との個別面談においても、1対1ミーティング機能は役立ちます。
グループ
グループミーティング設定機能は、複数の参加者が関わる集団会議を効率よくスケジュールするためのツールです。この機能は、チームミーティング、プロジェクトの打ち合わせ、部門間協議など、多くのステークホルダーが関与するさまざまなシチュエーションに最適です。グループミーティングは、特に以下のようなユースケースでその価値を発揮します。
- 上司の招待:重要な商談や戦略会議に上司を招待し、意思決定プロセスに参加させることができます。
- 専門家の参加:コンサルテーションコールや特定のテーマの議論に、その分野の専門家を招くことが可能です。
- 同僚との共同参加:特定のプロジェクトを共有している同僚と共に、全ての会議や電話対応に参加します。
グループ機能の主な強みは、参加者全員のカレンダーから共通の利用可能時間を自動的に抽出し、全員が参加可能なミーティング時間を提案することです。これにより、従来必要だった複数のスケジュールの個別調整という手間が省かれ、スムーズな会議計画が実現されます。
ラウンドロビン
ラウンドロビン機能は、複数のミーティングホストが存在する状況で、最も適切なホストを自動的に割り当てる機能のこと。特に、セールスチームやカスタマーサポートチームなど、多くのメンバーが顧客対応を行う場合に有効です。顧客は自分に都合の良い時間帯を選択し、システムが利用可能なホストの中から自動で一人を選出し、ミーティングを割り当てます。
この機能の活用により、顧客は簡単に担当者とのミーティングをスケジュールでき、顧客満足度の向上が期待できます。また、待ち時間の削減と迅速な対応は、顧客体験の全体的な改善に貢献するでしょう。
ラウンドロビンのユースケースとしては以下のようなものがあります。
- プロスペクトや顧客へのリンク共有:プロスペクトや顧客に対して、自社の任意の担当者とのミーティング時間を予約できるリンクを送信します。これにより、顧客は自分のスケジュールに合わせて容易にミーティングを設定できます。
- ウェブサイトへのリンク追加:ウェブサイトに「空きがあるチームメンバーとの時間を予約してもらう」ためのリンクを追加します。このアプローチにより、ウェブサイト訪問者は直接ミーティングをスケジュールでき、効率的なリード獲得が可能になります。
- 「デモをリクエスト」フォームの代替:「デモをリクエスト」フォームを自社の任意の担当者とのミーティング時間を予約できるリンクに置き換えることで、ユーザーは直接デモのスケジュールを設定できます。
ラウンドロビン機能を活用することで、顧客に対して迅速かつ効率的なコミュニケーションを提供し、顧客ロイヤリティとビジネスの成長を促進できます。
グループとラウンドロビンの違い
グループミーティングとラウンドロビンミーティング設定の主な違いは、参加者の選定プロセスにあります。
グループミーティングでは、あらかじめ定められたメンバー「全員」が参加します。全員の共通の空き時間を見つけ、全参加者が出席できる時間を確保することが目的です。そのため、固定された参加者がいる商談やチームミーティング、部門間の協議などに適しています。
一方、ラウンドロビン設定は、顧客や利用者がミーティング時間を選択すると、システムは利用可能なホストの中から自動的に最適な人を選出するのです。そのため、柔軟なスケジューリングを可能にし、顧客に幅広い選択肢を提供します。ラウンドロビンは、セールスチームやカスタマーサポートチームなど、複数のメンバーが顧客対応を行う場合に有効です。
HubSpotのミーティング設定機能を活用するメリット
HubSpotのミーティング設定機能は、ビジネスの日程調整プロセスを変革し、数多くのメリットをもたらします。主なメリットは以下の通りです。
- 無駄なやり取りの削減
- 異なるタイムゾーンにも対応
- ミーティング設定までの離脱を削減
ここからは、各メリットの詳細を見ていきましょう。
無駄なやり取りの削減
従来のミーティング設定では、参加者間での多数のメールや電話のやり取りが必要でした。特に、複数名が参加する場合、ミーティング調整が大きな負担となります。
出典:Salesforce
Salesforceが世界38カ国、7,700人以上の営業担当者を対象に実施した調査によると、営業担当者が実際に営業活動に費やす時間は1週間のうちわずか28%に過ぎず、その大半は案件管理やデータ入力などの他の業務に費やされていることが明らかになりました。
HubSpotのミーティング設定機能を活用することで、管理業務や過剰なコミュニケーションに費やす時間を削減し、実際の営業活動に使える時間を増やすことができます。ユーザーは簡単に自分の利用可能な時間を共有し、顧客にリンクをクリックして都合のよい時間帯を選択してもらうだけです。これにより、無駄なやり取りを削減し、自社と顧客はより生産的なタスクに集中できるようになります。
異なるタイムゾーンにも対応
グローバル化が進展する現代ビジネスにおいて、異なるタイムゾーンへの対応は不可欠です。HubSpotのミーティング設定機能を活用すれば、異なるタイムゾーンにある顧客やチームメンバーとのミーティングを効果的に計画できます。
たとえば、アメリカにいる企業が日本の顧客とミーティングを設定する際には、アメリカ企業側にはアメリカ太平洋時間、日本企業には日本時間で利用可能時間が表示されるのです(厳密にはコンタクトのコンピューターに設定されているタイムゾーンが適用されます)。
異なる国や文化の中で働く人々の間で、ミーティング時間の調整は複雑な業務となります。HubSpotのミーティング設定機能を使用することで、異なるタイムゾーン間でのスムーズなコミュニケーションが実現し、より円滑にグローバルなビジネス活動を推進できるでしょう。
ミーティング設定までの離脱を削減
HubSpotのミーティング設定機能は、シンプルで使いやすいインターフェースのため、ユーザーがミーティングの設定プロセスにストレスを感じることなく、迅速にミーティングをスケジュールできます。
顧客やその他の参加者にとっても、共有されたリンクをクリックし、自分にとって都合の良い時間帯を選択するだけの簡単な操作で、ミーティングを設定することが可能。この手軽さは、ミーティング設定における障壁を大幅に減らし、より多くの参加者がミーティングに参加する可能性を高めます。
また、HubSpotのミーティング設定機能には、リマインダーや自動的なカレンダー同期などの機能があります。これらの機能により、忙しい参加者がミーティングを忘れてしまう問題を防げるのです。
HubSpotミーティング機能を活用するやり方
最後に、HubSpotミーティング機能を活用するために、以下4つの手順をご紹介します。
- HubSpotとカレンダーを接続
- 1対1のミーティングカレンダーを作成
- グループ、ラウンドロビンのミーティングカレンダーを作成
- ミーティングリンクの共有
カレンダーをHubSpotに接続する
まずはHubSpotと業務で使用するカレンダーを連携しなければいけません。HubSpotはGoogle / Gmail、Microsoft Outlook、およびMicrosoft Exchangeとの同期に対応しています。カレンダーを同期することで、連携したカレンダー上にミーティング可能な時間帯が表示されるため、日程調整が容易になります。それでは連携手順を見ていきましょう。
HubSpotアカウントにログインし、[設定] > [全般] > [カレンダー] に進み、[カレンダーを接続] をクリック。
接続するカレンダー(Google、Outlook、Exchange)を選択し、画面の指示に従いカレンダーの接続を実施。
これでHubSpotと選択したカレンダーが同期され、ミーティングのスケジュール設定が容易になります。
ミーティングカレンダーを作成する(1対1)
ミーティングを設定するためには、[セールス] > [ミーティング] の順にクリックし、[スケジュール設定ページを作成] をクリック。
[1対1] を選択。
まずは下記項目を入力して、ミーティングの概要を作成します。
- 内部名:内部管理のために使用。Eメールに挿入するリンクの名称になる
- 主催者:ミーティングの担当者
- イベントタイトル:カレンダーで共有されるミーティングのタイトル。パーソナライズトークンを使用することで、「会社名/姓様とのお打合せ」のように設定可能
- 場所:ミーティングの場所やビデオ会議リンクを追加。リンクの追加には、ZoomやTeamsなどとHubSpotの連携が必須
- キャンセルして再スケジュール:ミーティングのキャンセルまたは再スケジュールのリンクをカレンダーに表示
- 説明:招待者に表示されるミーティングの説明
次に [スケジュール設定タブ] を開き、下記項目を入力します。
- スケジュール設定のタイトル:スケジュール設定ページでカレンダーの上に表示されるタイトル
- 期間オプション:訪問者が予約できるミーティングの長さ
- 自分のタイムゾーン:空き状況の判断に使用されるタイムゾーン
- 空き状況ウィンドウ:ドロップダウンメニューを設定して、ミーティングのセットか可能な曜日と期間を指定
[追加設定] をクリックすると、画像や通知時間などの設定ができます。
[自動化] タブでは、確認メールやリマインダー通知の自動化設定ができます。
最後に [スケジュール設定ページを作成] をクリックして完了です。
ミーティングカレンダーを作成する(グループ、ラウンドロビン)
グループ、ラウンドロビンを利用するには、HubSpotのServiceまたはSales HubのProfessionalまたはEnterpriseプランの契約が必要です。また、有料シートが割り当てられたユーザーのみがミーティングを追加できます。
グループまたはラウンドロビン形式のミーティングカレンダーを作成するには、複数のメンバーが関与するミーティングを設定します。グループミーティングやラウンドロビン形式のミーティングカレンダーを作成する手順は以下の通りです。
1対1のミーティングを作成するのと同様に、[ミーティング] タブを開き、[スケジュールページ設定を作成] をクリック。
[グループ] もしくは [持ち回り(ラウンドロビン)] を選択。
基本的な設定項目は [1対1] のミーティングと同じです。グループとラウンドロビンの場合は、[概要] タブでチームメンバーを追加する必要があります。
グループミーティングでは、参加する全員のカレンダーから共通の利用可能時間を見つけ出し、ラウンドロビンでは複数のホストの中から自動的に最適なホストが割り当てられます。
これらの手順に従って、グループやラウンドロビン形式のミーティングカレンダーを作成することで、複数のメンバーが関与するミーティングの日程調整を容易に行うことができます。これにより、効率的なコミュニケーションとスムーズなスケジューリングが実現され、チーム全体の生産性の向上に寄与します。
ミーティングリンクの共有
ミーティングをHubSpotで作成した後、そのミーティングリンクを顧客やチームメンバーと共有し、都合の良い日時にミーティングをスケジュールできるようにしましょう。以下は、ミーティングリンクの共有方法です。
[ミーティング] タブにアクセスし、共有したいミーティングの [リンクをコピー] をクリック。
Eメールを作成し、リンクをメール本文に貼り付けます。このメールを対象となる個人またはグループに送信します。受信者はリンクをクリックすることで、利用可能な時間帯を確認し、ミーティングをスケジュールできます。
もしくはEメール作成画面からリンクを共有することもできます。[ミーティング] オプションをクリックし、共有するミーティングリンクを選択すれば、メールにリンクが自動的に挿入されます。
また、ミーティングリンクは、ウェブサイトやSNSに設置することも可能です。これにより、より幅広いオーディエンスにリンクを公開し、簡単にミーティングをスケジュールする機会を提供できます。
まとめ
本記事では、HubSpotのミーティング設定機能の特徴、メリット、および設定方法について詳しくご紹介しました。ビジネスにおいて、特に顧客との商談の日程を調整する際に繰り返されるスケジュールのやり取りは、セールスチーム/カスタマサポートと顧客双方にとって大きな手間となり得ます。
HubSpotのミーティング設定機能を利用すれば、無駄なやり取りを削減しながら、効率よくミーティング調整が可能です。結果的に、生産性の向上と顧客体験の改善へとつながるでしょう。
異なるタイムゾーンに対応したスケジュール設定、ミーティングリンクの簡単な共有方法、そしてグループやラウンドロビン形式のミーティング設定は、日々の業務における効率性を大幅に向上させます。本記事で紹介した内容を参考に、HubSpotのミーティング機能を積極的に活用し、よりスムーズで生産的なビジネス運営を実現してください。