現在、さまざまなオートメーションツールが市場に提供されています。しかし、その中からどのツールを選定すればよいか迷ってしまうこともあるかもしれません。
HubSpotのシーケンス機能は、セールスの業務の一部を自動化できるため、工数を削減し営業プロセスを効率化できます。
今回は、HubSpotのシーケンス機能について、営業メールを自動化させる機能や作成方法、ワークフローとの違いについて詳しく解説します。
HubSpot シーケンスとは
そもそもシーケンス(sequence)とは、直訳すると連続・順序を意味します。
ITの分野では、あらかじめ決められた順序で「処理すること」や「手順そのもの」を指すことが多いです。
ここでは、「セールスオートメーション」や「HubSpot シーケンス」の概要を解説します。
セールスオートメーションとは
セールスオートメーションとは、営業活動を自動化するという考え方を意味します。
AIを搭載したITツールやRPAなどを活用すれば、手間がかかり重複するような単純作業を自動化します。
例えば、原稿作成業務において、手動で行っていた過去の資料からの文章のコピー&ペーストをロボットで自動化できます。営業のプレゼン資料を作成する際、必要な情報ごとに複数のWebサイトをリサーチして転記するような作業も、ロボットによって自動化できるのです。
現代はSFAやCRMのように、営業活動をサポートするさまざまなオートメーションツールが提供されています。これらのツールは、顧客情報の管理や効率的に営業活動をマネジメントする目的を持ちながら、現実に即した営業活動に役立つ実践的な機能も有している特長があります。
また、部分的にMAツールの役割も併せ持ったセールスオートメーションツールもあります。
現代の労働力不足を改善するため、このようなオートメーションツールを活用する企業が増えています。
HubSpotシーケンスとは
HubSpotシーケンスとは、コンタクト(顧客)とのコミュニケーションを自動化できる機能です。
例えば、イベント参加後の見込み顧客へのフォローアップメールや、顧客とのミーティングの予約を自動化できます。それにより、営業活動の時間短縮や機会損失の防止につながり、リードナーチャリングを効率化させます。
コンタクトへのフォローアップを自動化することで、営業担当者は本来の業務に専念できます。
営業担当者は、顧客との商談だけでなく、繰り返し発生する事務的な作業を多く抱えているケースがあります。しかし、それらの単純作業に時間を取られると、営業活用の効率低下やストレスへつながり、売上を最大化させるネックとなりかねません。
HubSpotのシーケンス機能を使うことで、営業の事務作業を削減して時間短縮を図れるだけでなく、見込み客のフォローアップ漏れを防げます。
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HubSpot シーケンスの特徴
ここでは、HubSpot シーケンスの特徴について解説します。
1対1の営業コミュニケーションを効率化
シーケンス機能を使えば、1対1の営業コミュニケーションを効率化できます。コンタクトへのメール送信を自動化でき、さらにメールの送信先を絞りこむことが可能です。
HubSpot上に登録するコンタクトは、名前、メールアドレス、性別、年齢などの詳細な情報を保存できます。
これらのデータをもとに、条件の設定によってアカウントを絞りこんだコンタクトへ適切な内容の自動メールを一斉送信できます。
例えば、50歳以上のコンタクトが対象で、健康に関する不安を解消させるようなメールを送信する、という指示をすれば、HubSpot上のデータを自動で絞り込んで自動でメール送信されます。
他にも以下のような業務を自動化できます。
・事前に用意したメールテンプレートを指定した時刻にコンタクトへ送信
・特定のWebページを閲覧したコンタクトへのメール送信
・フォローアップのリマインダー・タスクの設定
・コンタクトとのミーティングの予約
このような作業を自動化することで時間短縮だけでなく、機会損失を防止することで売上の最大化につながります。
効果の高いシーケンスの分析
HubSpotのシーケンス機能には、送信したメールの効果を分析できる機能を搭載しています。メールの開封率やクリック率、返信の状況などのデータが自動作成され、レポートとして確認し分析することが可能です。
それにより、コンタクト(顧客)は何に注目していて、どのプロセスで離脱してしまったのかなどを把握できます。次回よりその課題を改善させることでコンバージョン率の向上へとつなげます。
分析結果をもとに、メール配信のタイミングをコンタクトに適したように改善させ、シーケンスを更新することで、さらに売上の向上を図れます。
また、A/Bテストの実施により異なった内容のメールの効果を比較することで、見込み客ごとに自動配信のフォローアップタスクを設定します。それにより、コンタクトの関係を継続させて成約率の向上につなげます。
このように、コンタクトとのコミュニケーションを重ねることで最適なシーケンスを追求し、他のチームと共有によりさらに営業業務の効率化を図ります。
GmailやOutlookアプリからシーケンス登録が可能
HubSpotは他のアプリケーションと接続が可能です。例えば、HubSpot Salesは、Gmail、G Suite、Outlook、Office 365 for Windowsと連携できます。
HubSpotでは、使い慣れたGmailやOutlookアプリから直接シーケンスを登録できるため、HubSpotへログインする手間や工数を削減できます。
また、GmailやOutlookから顧客情報の確認やテンプレートの使用、ミーティング調整、AIによるメール作成なども可能です。
HubSpotシーケンスを活用できる料金プラン
ここでは、HubSpotでシーケンスを利用できる製品と、料金プランについて解説します。
HubSpotシーケンス料金プラン
HubSpotのシーケンス機能を利用できる製品は、「Sales Hub」と「Serivce Hub」のProfessionalプラン、またはEnterpriseプランです。
それぞれの違いを、以下の表にまとめます。
なお、Professionalプランは手動でシーケンスを登録する必要があります。Enterpriseプランであれば、ワークフローを活用して自動的にシーケンス登録を行うことができます。
機能の違い
使える機能についてはプランによって異なります。
プランごとの違いを確認して、自社にマッチしたプランを選定しましょう。
シーケンスを活用するために必要なこと
HubSpotのシーケンスでは、作成したメールを指定したコンタクト(顧客)へ一斉に自動送信できます。あらかじめ用意されているテンプレートを使用すれば、顧客にとって魅力的なメールを簡単に作成できます。
ただ、HubSpotのシーケンス機能を使用するためには、個人のEメールがHubSpotに接続されている必要があります。
また、シーケンス機能を利用できる権限が割り当てられていることも必要です。
シーケンスとワークフローの違い
シーケンスと似た機能に、ワークフローがあり、両者には明確な違いがあります。
シーケンスとワークフローの違い
シーケンスとワークフローの大きな違いは、これらの機能を使用するチームが異なります。
ワークフローは、マーケティングチームやカスタマーサービスチームが使用するのに対し、シーケンスは営業チームが使用します。
シーケンスはインサイドセールスなどの営業プロセスに対し、より特化した機能です。
例えば、展示会やセミナーへの来場者へのフォローメールの送信や、後日改めてアポイントを取得するためのメールを送信します。
その他、両者の異なる点について以下の表にまとめました。
達成目的
ワークフローは、Webサイトへのエンゲージを高めるため、ウェビナーへの登録を促すなどの目的があります。
シーケンスのゴールは、見込み顧客と直接的な会話をすることです。ターゲットとなる見込み客との関係強化に役立ち、1対1のコミュニケーションを自動化します。そのため、メールの返信やミーティングの予約などを促せるようになります。
送信相手
ワークフローは、初めて興味をもった見込み顧客、またホワイトペーパーをダウンロードしたリードなどに対して大規模なマスメールを送るのに適しています。
一方シーケンスは、シーケンスは最終的に直接会話をすることを目的とし、1対1のコミュニケーションとなります。
あらかじめターゲットを絞った小規模なセグメントのリードに対してメールを送信します。送信されるメールは、見込み客との直接的な関係を構築したい営業担当者に最適で、新規開拓やクロージング担当がメールを送信することが理想です。
登録アクション
ワークフローは、さまざまなアクションを行えます。例えば、フォームでコンバージョンしたり、特定のEメールを開封したりなどです。
一方のシーケンスは、メールの送信とタスクの設定のみを行えます。
登録解除
シーケンスでは、コンタクトがメールに返信する、あるいはミーティングを予約すると自動的にシーケンスから登録解除されます。返信した履歴はCRMレコードにも記録されます。
ワークフローでは、コンタクトがメールに返信しても、ワークフローから自動的に登録解除されることはありません。
シーケンス作成方法
HubSpotのシーケンス機能を使用すれば、セグメントされた顧客に対して指定したタイミングでメールを自動送信できます。コンタクト(顧客)をフォローアップするため、確認するなどのタスクの作成も自動で行えます。
コンタクトがメールへ返信する、もしくはミーティングを予約すると、そのコンタクトは自動的にシーケンスから登録解除されます。
シーケンス機能の使用後、シーケンスの登録プロパティにおいてコンタクトをセグメント化できます。さらに「自動化」タブより、コンタクトを自動で登録できるワークフローの作成も可能です。
なお、シーケンスを利用するためには、HubSpotユーザーアカウントがその要件を満たす必要があります。
「Sales Hub」のProfessional/Enterpriseプラン、または「Service Hub」のProfessional/Enterpriseプランに契約しているかを確認しましょう。
それに加え、ユーザーアカウントに個人のEメールアドレスが接続されていることを確認してください。コミュニケーションの受信トレイに接続されてるチームのEメールアドレスは、シーケンスEメールの送信に使用できません。
ユーザーアカウントに「シーケンス権限」が付与されていることも確認しましょう。
1. シーケンスを作成する
メールのテンプレートとタスクリマインダーを使用し、シーケンスを作成します。
HubSpotアカウントにてログインし、「自動化」「シーケンス」の順に進みます。
画面遷移後「ゼロから始める」をクリックします。
鉛筆アイコンをクリックして、新しく作成するシーケンス名を入力します。
2. シーケンスを手動で登録する
ここでは、シーケンスを手動で登録する方法をメインに解説します。
自動配信Eメールの追加
「自動配信Eメール」をクリックします。
右サイドメニューが現れるので、Eメールの種類を選択して、「新しいスレッドを開始する」を選択し「次:Eメールコンテンツを追加」をクリックします。
続いてメールのテンプレートを作成します。
名前、件名、本文へ必要文言を記載します。
署名を編集したい場合は「署名を編集」をクリックして設定しましょう。
また、「コンテンツの提案」横の「❷」をクリックすれば、推奨する内容を提案してくれるので参考にしましょう。
最後に「テンプレートを保存」をクリックして完了です。
「+」マークをクリックして、ステップ2へ進みます。
「ステップ2」では、「コールタスク」の設定手順を例として紹介します。
「コールタスク」をクリックします。
サイドメニューが現れるので、コールするタスクに関する詳細を設定します。
必要であれば、「優先度」「キュー」の設定、「メモ」を記載し、最後に「追加」をクリックします。
最後に、右上の「保存」をクリックすればシーケンスの登録が完了です。
3. シーケンスにコンタクトを登録する
個々のコンタクトを登録するには、コンタクトレコードまたはHubSpotのシーケンスツールのいずれかを使用できます。
ここでは、コンタクトレコードからコンタクトを登録する手順について解説します。
HubSpotアカウントで「コンタクト」タブから「コンタクト」へ進みます。
登録したいコンタクトをクリックします。
画面左の「Eメールアイコン」をクリックします。
すると、ポップアップボックスが現れるので「シーケンス」をクリックします。
ダイアログボックスが表示されたら、コンタクトを登録したい「シーケンス」をクリックします。
「タイムゾーン」を「東京」に設定し、自動送信メールは「後で送信」を選択、送信する日にちを設定します。
細かい設定を追加したい場合は、画面右上の設定より変更しましょう。
それぞれ設定が終了したら「シーケンスを開始」をクリックして完了です。
4. シーケンスを手動で登録解除する
シーケンスの登録を解除したいコンタクトの画面まで進み、左サイドメニューの「登録解除」をクリックします。
ポップアップ画面で「コンタクトを登録解除」をクリックすれば完了です。
シーケンスの利用の例
シーケンスの機能は、見込み客や顧客と直接コミュニケーションをとることを目的としています。メールへの返信やコンタクトとのミーティングの設定をゴールとしています。
ここでは、シーケンスを利用する例について解説します。
製品デモ依頼や問い合わせへの対応
シーケンスを活用することで、ホットリードの対応を抜け漏れなく行うことができます。
企業によっては、見積や提案書の作成、セミナーやウェビナーのお知らせ、商談からクロージング、既存顧客のサポートなど、さまざまな業務を営業担当者が手動で対応しているケースもあります。
これでは、製品デモの依頼や新規顧客の問い合わせなどの対応に抜け漏れの可能性があり、機会損失につながってしまいます。
シーケンスを利用すればメールの返信を自動化できるため、この課題を改善できます。また、顧客とのミーティングの予約やタスクの設定、リマインダーの通知なども自動化できるため、営業担当者はコア業務に集中できるようになるのです。
イベント参加後のフォローアップ
シーケンスは、イベント参加後の見込み顧客に対するフォローアップにも最適です。
フォローアップ時に電話でアポが取れなかったり、つながらなかったりした場合、そのコンタクトが特定のシーケンスに登録されます。
シーケンスの発動により、テンプレートで作成されたメールをコンタクトへ送信します。その上、後日コンタクトへのフォロー電話をする営業担当者が割り振られます。
フォロー電話をする日時になると、担当者にそのタスクの通知が届きます。電話がつながらなかった場合は、メールの送信やフォロー電話のタスクを4~5回繰り返します。
それによってフォロー電話の失念や、メールの未返信による機会の損失を防げるのです。
インサイドセールス
シーケンス機能は、インサイドセールスの営業活動の自動化にも適しています。
初回アプローチ後のフォローの徹底
インサイドセールスは、平日9時〜18時のコアタイムのなかで、成果が出る活動へいかに工数を集中させられるかが生産性を向上させる鍵です。
シーケンス機能を活用すれば、インサイドセールスの活動プロセス全体を管理できるので、営業担当者が迷うことなく営業活動に集中できます。
自動化によって、初回アプローチ後のフォローを徹底することで放置顧客をゼロにでき、コンタクトと長期的な関係を構築できます。
例えば、初回のメールを送信した際に、コンタクトへのフォロー活動が自動設定されます。もしコンタクトからメールの返信がない場合、3営業日後にリマインドメールを自動で送信することも可能です。
また、メールを送信した数分後(設定した時間)に、フォロー電話のタスクを自動で表示させる設定もできるため、抜けなくタスクを実行できます。
1回のアプローチではなく、4回、5回とアプローチを繰り返すことで、メールの返信率やアポイント取得率の向上を図れます。
「誰に」「何を伝えるか」が明確になる
シーケンス機能は、営業担当者が次のアクションに迷うことなく「誰に」「何を」伝えなければならないのかが明確になります。
コンタクトのその時の状況によって、対応すべき営業プロセスを自由に自動化できます。
例えば、セミナーに参加した、資料請求をした、フォームから問い合わせをしたなど、あらゆる切り口に関してシーケンスの設定が可能です。
見込み顧客は、商品やサービスに興味を持ってから、時間が経つにつれてその興味は薄れていくと言われています。
営業プロセスを自動化することで、見込み顧客にとって最適なタイミングで必要な情報を配信し、興味があるうちにアプローチすることで成約率を向上させます。
チーム内で効果の高いシーケンスを共有できる
開封率やクリック率、返信率などの蓄積されたデータを分析することで、より効果の高かったシーケンスをチーム内で共有できます。それにより、チーム全体のパフォーマンスを向上させて売上の最大化を図れます。
なお、シーケンスは一度作成して終了するのではなく、市場やコンタクトの状況、データの分析や効果の検証に基づいて定期的に更新することが重要です。
まとめ
HubSpotシーケンスとは、コンタクト(顧客)とのコミュニケーションを自動化できる機能です。
コンタクトに対して、セミナー参加後のフォローアップメールや、ミーティングの予約を自動化することで、工数の削減や機会損失の防止につながります。
それにより、1対1の営業コミュニケーションを効率化でき、さらに効果の高いシーケンスをチームで共有することでパフォーマンスを向上させます。
この記事が、HubSpotシーケンスを活用する参考となれば幸いです。