米国企業と比較して日本企業はIT投資への積極性が低いと一般的に言われています。特に中小企業ではその傾向が顕著にあらわれています。実際に行われた調査によると、企業の販売管理費に占める企業のITコストを表すデジタルエンゲル係数は、米国中小企業が12.7%であったのに対して、日本中小企業は4.3%でした。
このことからも分かるように、日本の中小企業はITへの投資が十分にされておらず、デジタル化が遅れている傾向にあります。その原因としてはIT人材の不足、ITリテラシーの不足、IT投資資金の不足など数多く上げられるかと思います。
そんな中小企業でのITツール導入にはスモールスタートで少しづつ進めていくことが非常に重要です。いきなり大きく変えようとすると従業員への負荷がかかってしまったり、膨大な資金が必要になるなど、導入し定着させ成果が現れるまでに多くの障壁がうまれてしまいます。
HubSpotのCRMは最大5ユーザーであれば完全無料で永久的に使用することができ、リスクなくCRMを導入してみたいといった企業に非常におすすめなツールになっています。本記事では、そんなHubSpot CRMに関して機能、事例、登録方法など幅広く解説しています。
出典:HubSpot
HubSpotの無料版とは、米国HubSpotが提供する無料で使用できるCRMプラットフォームのことです。CRMプラットフォームをベースに、連携可能なマーケティング、営業、カスタマーサポートなどといったのツールで構成されています。
HubSpot無料版は、マーケティング、営業、サービス、ウェブサイトのツールを搭載したオールインワンのCRMです。
導入すると営業パイプラインの管理、ホームページの作成やカスタマーサポートの対応業務など、複数領域の業務を進行できるようになります。見込み客(以下、リード)や顧客からの問い合わせの際に、コンタクトごとの詳細情報を誰もが確認できるので便利です。
なおHubSpotの無料版はトライアルではなく、基本機能を永久無料で使用できます。
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HubSpot CRMは無料でありながらも、顧客管理、業務の自動化、マーケティング機能など、幅広く様々な機能が備わっています。ではなぜHubSpotは、 便利なツールを無料かつ永久に利用可能にしているのでしょうか?
無料でツールを提供する理由として、HubSpotのミッションである「Help millions of organizations grow better(何百万もの組織の成長を支援する)」が挙げられるでしょう。意味するところは「売り⼿・買い⼿・働き⼿がともに持続可能な利益を享受できる本質的な成⻑のこと」です。
実際にツールの導入コストが高く運用負担も重いと、スタートアップや中小企業は手が出せません。一方で、ビジネスや組織が成長するためにはマーケティングのデジタル化に着手する必要があります。そこでHubSpotは、1人がサインアップして価値を感じ始められるように無料版を提供しているわけです。
そこでHubSpotはスモールスタートを可能にし、成長に合わせて必要な機能を追加できる仕組みを整えました。企業文化の理想像を言語化して行動指針とする「カルチャーコード」を見ても、HubSpotの目指すところが分かります。HubSpotは顧客にとっての「最適解」を考えることを掲げているからです。
ここでは、HubSpotのツール群の全体像について見ていきましょう。
画像参照:HubSpot
HubSpotは、統合型CRMプラットフォームです。CRMと5つのツールは、同じデータベースを基盤としています。HubSpot CRMと連携できるツール群の概要と主な機能は、下図のとおりです。
そして、この5つのハブが連携する中心にHubSpot CRMというサービスが存在します。このHubSpot CRMは最大5ユーザが永久に完全無料で利用することができ、顧客情報を一元管理することができます。CRMに蓄積された顧客データをそれぞれのHubで活用することで、最適なメッセージ、体験を顧客に届けることが可能です。また、HubSpotには「表示のみシート」というHubSpotのアカウント内のデータやレポートの閲覧権限を無制限で共有できる機能が存在します。
各Hub(ハブ)は、単体の利用でも大きなメリットがありますが、組み合わせることで、相乗効果を発揮する点を押さえておきましょう。
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HubSpotでは、そもそもCRMの主な機能をずっと完全無料で使えます。さらに他の機能をもつツールと組み合わせると、驚くほどの成果を得られるでしょう。
ここでは、5つのツールの無料版でできることや無料版と有料版の違いについてご紹介します。
なおHubSpotはSaaS製品のため、料金プランと機能は定期的に変化します。最新の料金プランは、HubSpot公式サイトを確認するか、100社までお問い合わせください。
ここではHubSpot無料版のマーケティングツールで使える機能を見ていきましょう。無料でも、リードの購買意欲を醸成することを目的としたEメールの一括作成と送信、効果分析が可能です。
出典:HubSpot|無料ツール
出典:HubSpot|マーケティングソフトウェア
Marketing Hub有料版では、より高度なマーケティング施策を展開できる機能が備わっています。
出典:HubSpot|価格表「Marketing Hub」
出典:HubSpot|マーケティングソフトウェア
月額に含まれるコンタクト数とは、「マーケティングコンタクト」のことです。HubSpotでは、CRM上に存在するコンタクトの中でも「マーケティングコンタクト」のみに広告配信のターゲットやメールマーケティングを実施することができます。
ここでは、HubSpot無料版のセールスツールで使える機能を見ていきましょう。リアルタイムで営業活動を追跡・分析したり、リードを見落とすことなく確実に追跡したりできます。
出典:HubSpot|無料ツール
出典:HubSpot|営業支援ソフトウェア
Sales Hub有料版では、データを整理してより短時間でクローズする取引を増やすために必要な機能が備わっています。
出典:HubSpot|価格表「Sales Hub」
出典:HubSpot|営業支援ソフトウェア
ここでは、HubSpot無料版のサービスツールで使える機能を見ていきましょう。顧客とのやり取りはすべて共有受信トレイで管理できるようになります。チケット機能やレポート機能などを活用することで、スピーディに顧客を支援可能です。
出典:HubSpot|無料ツール
出典:HubSpot|カスタマー サービス ソフトウェア
Service Hub有料版では、ヘルプデスクが顧客にすぐれたサービスを提供できるよう支援する機能が備わっています。
出典:HubSpot|カスタマー サービス ソフトウェア
ここでは、HubSpot無料版のContent Hubで使える機能を見ていきましょう。誰もが直感的にウェブサイトやブログページを作成可能です。
出典:HubSpot|無料ツール
出典:HubSpot|CMS(コンテンツ マネジメント システム)
Content Hub有料版では、コンテンツを作成・管理するマーケティング担当者を支援する機能が備わっています。
出典:HubSpot|価格表「CMS Hub」
出典:HubSpot|CMS(コンテンツ マネジメント システム)
ここでは、HubSpot無料版のオペレーションツールで使える機能を見ていきましょう。
出典:HubSpot|無料ツール
出典:HubSpot|オペレーション支援ソフトウェア
Operations Hub有料版では、部門横断的にビジネスプロセスを効率化するために必要な機能が備わっています。
出典:HubSpot|価格表「Operations Hub」
出典:HubSpot|オペレーション支援ソフトウェア
プランに応じて小規模から大規模な企業まで対応できるHubSpotですが、無料版の利用はスタートアップや今までCRMを使ってこなかった中小企業におすすめです。
以上を踏まえて、HubSpotの無料版が向いている企業の特徴を次のとおりご紹介します。
ではそれぞれについて見ていきましょう。
今までCRMツールを使用して顧客情報の一元管理に取り組んだことがない場合、HubSpotの無料版はおすすめです。顧客情報の一元化をベースに、営業・マーケティング・カスタマーサービスの効率化やホームページ・ブログ作成に取り組んでみましょう。
CRMツールがどれくらい営業とマーケティングの生産性向上に有効か、リスクを抱えずに体感できます。ITツールの利用に慣れていない担当者でも、直感的に操作できるHubSpotなら使いやすいでしょう。ツールの導入コストも運用負担もない無料版なので、さまざまな施策をじっくり試せます。
「マーケティング」「営業」「カスタマーサービス」など、部門ごとに単機能のツールを導入している企業も多いでしょう。しかしバラバラのツールを導入したために、組織内で情報共有や連携がうまくいっていないケースが多いです。
情報が孤立している状態では、ムダな工程が増えて作業効率が低下します。部門ごとに異なる単機能のツールを使いながら顧客満足度を高めていくのは、簡単なことではありません。
一方、Hubspotなら営業、マーケティング、カスタマーサービスなどそれぞれの部署のデータが一つのプラットフォームで管理されるため、スムーズな連携やカスタマイズが可能です。ツールを組み合わせることで、部門を横断して顧客情報を一元管理できるようになります。
その結果、リード・顧客とのつながりを深めるあらゆる施策を1つのプラットフォームで完結できるのです。
他社ツールのインターフェースが使いづらいと感じているなら、HubSpot無料版を試す価値があります。HubSpotは、誰もが直感的に操作できるツールを提供するためにユーザーについて深く探究し続けています。その結果、明瞭簡潔でわかりやすいインターフェースを提供できているわけです。
現在、社内でのCRM定着に課題を持っておられるのであれば、まずHubSpotの無料CRMを使ってみてはいかがでしょうか。ユーザーフレンドリーな操作性を実感できるはずです。
ここでは、HubSpotの無料版から運用を発展させていった事例についてご紹介します。
出典:株式会社プロコミット
転職支援事業を展開する同社では、Eメールマーケティングから着手し、HubSpot無料版で営業案件の管理や共有を行っています。リードをステージごとに分け、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で案件管理を行うことで、業務効率化を実現しました。
自社サイトの制作も、HubSpot導入後は社内スタッフによる運用に切り替え、本格的にインバウンドマーケティングを実践しているとのことです。
インフルエンサー事業やD2C支援事業をグローバル展開している同社は、CFO主導で営業情報の一元化を目的にHubSpotを導入しました。無料版でもコンタクトや取引パイプラインの管理ができる点に魅力を感じ導入に踏み切ったそうです。
管理者には有料アカウントを与え、それ以外のメンバーは無料版の機能を使用しています。HubSpotでコミュニケーションや進捗管理をすることで生産性が向上し、拠点によっては成長率400%を実現しました。
参考:HubSpot導入事例 | AnyMind Group株式会社
出典:LAPRAS株式会社
AIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を提供する同社は、非常に早い段階でHubSpot無料版から有料版へと切り替えました。「導入するからにはツールを使いこなそう」という共通認識のもと、HubSpotが推奨するインバウンド手法を忠実に再現するよう努力しているそうです。
サービスローンチ1年目で導入したことで、顧客のライフサイクルをみんなでフォローするという共通認識を早めに醸成できました。
ここでは、実際にHubSpot無料版を始める方法についてステップバイステップでご紹介します。
HubSpot公式サイトにアクセスします。
「無料ツールを使ってみる」から、まずは無料アカウントを作成しましょう。
無料アカウントの作成方法は、次の3つです。
Eメールアドレスを選択すると、宛先に6桁の確認コードが送付されます。確認コードを入力して、そのEメールアドレスは自分のものだと確認しましょう。
Eメールアドレスの確認が完了すれば、次はパスワードの作成です。
所定のルールに従いパスワードを作成できたら、次の画面以降は名前などのフォームを入力していきます。
名前のあとに入力すべきフォームは次のとおりです。
最後にHubSpotにおける目標や優先課題を設定していきます。目標については、スキップが可能です。
次にCRMの知見について聞かれますので、該当するものを選択してください。
最後に優先課題を設定してください。設定すれば、無料アカウントのダッシュボードにアクセスできます。
選んだ優先課題にかかわらず、すべての無料ツールにアクセスできますのであまり深く考える必要はありません。
これで無料ツールを使えるようになりました。早速、HubSpot無料版の使い勝手を試してみましょう。
すでにHubSpot無料版には、リード獲得と顧客との関係構築に必要な基本機能が備わっていることをお伝えしました。しかし、より高度なことを実現しようとすると有料プランを検討する必要があります。
HubSpot有料版の活用がおすすめな状況として下記のケースが挙げられます。
ここでは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
インバウンド マーケティングは、HubSpot自らが提唱し普及に努めてきた手法です。具体的には、価値あるコンテンツや顧客ごとのニーズに合った体験を創出して相手をひきつけます。
近年では、購入者の購買方法がオンラインへと大きくシフトしました。その結果、「検索エンジン」「SNS」「コンテンツ」から得た知識をもとに購入を決めるケースが増えています。従来のように買い手の邪魔をしかねない売り手目線のアプローチは、イヤがられる傾向にあるのです。
変化に対応するためにインバウンド マーケティング戦略を実践したいなら、HubSpot有料版が大いに役立つでしょう。無料版よりも拡張された有料版の機能を駆使すればデータの連携がより効果的になり、インバウンド戦略を実践しやすくなるからです。
HubSpot有料版なら、自社の実情に合わせたカスタマイズが可能になります。マーケティング、営業、カスタマーサービス業務の高度な自動化と部門間の連携を強化できるわけです。その結果、顧客起点のビジネスを展開できるようになるために顧客との長期的な関係を築きやすくなります。
HubSpotにはSFA機能をもつSales Hubが用意されており、セールスチームの業務効率化に役立ちます。SFAとはセールスフォースオートメーションの略で、営業支援ソフトウェアのことです。
営業組織の効率化に欠かすことのできない、リードやタスクの自動割り当て、フォローアップを自動化するシーケンスツールなどは有料版でのみ提供されています。
本格的に営業組織の効率化を目指すのであれば、有料プランを活用しましょう。
HubSpotは、Datanyzeの調べによると世界シェアの4割近くに迫るナンバーワンMA(マーケティングオートメーション)ツールとして知られています(2023年7月31日現在)。
Marketing Hubの有料版を活用すれば、混沌としたマーケティング業務の自動化が可能になります。たとえば、Eメール配信後のリードナーチャリングを自動化できます。
ほかにもMarketing Hub有料版の一部では、高度なSEOツールが提供されています。これにより、コンテンツマーケティング戦略において重要なキーワードデータやトピックの追跡が可能です。
さらにSEOツールを介してCMS Hubを組み合わせると、高い相乗効果を期待できます。Marketing Hubのみの利用と比べて、インバウンドリード数の伸び率が183%というデータもあるので参考にしてください。
手厚いサポートを受けて、HubSpotをできるだけ早く使いこなすことを優先するなら有料版がおすすめです。
HubSpotには、有料版・無料版を問わずに使用できる「ナレッジベース」「コミュニティー」があります。両方とも積極的に自ら調べたり交流したりといった手間をかければ、回答を見つけられるかもしれません。
しかし独自の開発をしたい場合は、カスタマーサポートが役立ちます。「チャット」「Eメール」「電話」によるカスタマーサポートを希望するなら有料版を選びましょう。
なお「電話」は、Starterでは利用できません。ProfessionalとEnterpriseは「電話」によるサポートの対象ですが、言語は英語のみとなります。日本語でのサポートは、言語を指定して「コールバック」をリクエストすれば受けることが可能です。
マーケティングやセールスの成果や進捗状況を把握し、正確な意思決定を行うためにはデータ分析が必要になります。HubSpot有料版なら、複雑化する課題の特定に役立つさまざまなカスタムレポートの作成が可能です。しかもドラッグ&ドロップでカスタムレポートを簡単に作成できます。
ただしデータをうまく可視化するには多少のコツが必要です。自社にあったカスタムレポートづくりがうまく行かない場合には、HubSpotパートナー企業に相談することも検討しましょう。
ここではHubSpotの無料アカウントを、有料版へと切り替える方法について見ていきましょう。有料版に切り替える際に注意しておきたい点についてもあわせてご紹介しますので、参考にしてください。
パソコンを使用して、HubSpotの無料アカウントを有料版へと切り替える手順は次のとおりです。
次に左側のメニューを確認しましょう。
なお購入プロセスは、「今すぐ購入」「営業担当者に相談する」の2種類です。
HubSpotの無料アカウントを、有料版へと切り替える際の注意点は主に次の2点です。
ではそれぞれの注意点について見ていきましょう。
自社がITツールを導入する目的を明確にしたうえで、ビジネスの成長に必要な機能やプランを比較検討しましょう。不要な支出を避けるためにも、ビジネスの置かれている状況や課題に応じて必要な機能を丁寧に洗い出すことが大切です。
「成長に必要なすべての機能を使えるようにしたい」「すでに利用しているツールの機能を補完する目的で導入したい」など企業ごとにさまざまな導入目的があるでしょう。HubSpot有料版なら、どのようなビジネスニーズにも柔軟に対応できます。
HubSpot有料版を導入する際はもちろん、運用しはじめるとわからない点が数多く出てきます。より高機能な有料版のHubSpotを短期間で使いこなすためには、使い方のトレーニングが必要です。
そのためHubSpotには、導入支援担当者や技術サポートチームがいます。そこで導入支援やプロフェッショナルサービスを活用して、HubSpotへの移行やキャンペーン開始のサポートを受けることも検討しましょう。また運用中に出てきた不明点については、電話やEメールでカスタマーサポートチームからのサポートを受けられます。
実際に成果をあげるためには、自社に最適化した設計が必要です。そこで専門家集団であるHubSpotパートナー企業に相談し、コンサルティングや実践的な支援を受けることも検討してみましょう。
本記事ではHubSpotの無料CRMに関して解説をしました。HubSpotは「使いやすさ」と「高度な機能」を兼ね備えた、成長企業に最適なCRMプラットフォームです。
スモールスタートしやすい環境を整えるために、HubSpotは惜しみなく次のようなお役立ち資料やノウハウを無料公開しています。ぜひこちらもご参考にされてみてください。
HubSpot無料版は、さまざまなビジネスの拡大を手助けする機能を搭載しています。上手く活用することで、営業管理、マーケティング活動、カスタマーサポートへの問い合わせ管理まで幅広く対応可能です。まずは、リスクを削減し、スモールスタートでHubSpotを利用してみてはいかがでしょうか。