顧客データに基づいたマーケティング施策の展開が重要ですが、自社の顧客データベースは適切に管理できているでしょうか。Sansan株式会社の調査によれば、「顧客データベース」の整備ができている企業は全体のわずか24.3%であり、BtoBマーケティングで成果が出ている企業ほど整備・活用が進んでいるとのこと。
顧客管理に有効なのが、CRMやSFAツールです。しかしCRMシステムに登録される連絡先は多岐にわたり、マーケティングメールの購読を停止した顧客から一度だけサービスを利用した顧客まで含まれているため、多くがマーケティング活動において本質的なターゲットとはなり得ません。
HubSpotでは、マーケティングメールや広告キャンペーンにおける主要な対象となる「マーケティングコンタクト」に対して、戦略的に予算を集中させることが可能です。このアプローチにより、不要なリソースの浪費を防ぎ、より効果的なマーケティング活動を展開できます。
本記事では、HubSpotのマーケティングコンタクトの基本的な知識、異なるプランで利用可能なコンタクトの数、コンタクトの数をどのように確認するか、さらにマーケティングコンタクト対象外の連絡先を設定する方法について、詳細に解説していきます。
HubSpot マーケティングコンタクトとは?
HubSpotのマーケティングコンタクトは、マーケティング活動に設定できるコンタクトのことです。この機能を使用することで、Eメール配信や広告キャンペーンのターゲットとして、特定のコンタクトを設定ができます。
まずは、マーケティングコンタクトの詳細と対象外のコンタクトについてみていきましょう。
HubSpotのマーケティングコンタクトとは
出典:HubSpot Japan
HubSpotのマーケティングコンタクトは、CRMに保存された連絡先の中からマーケティング活動に関連するコンタクトを識別・管理するための機能です。この機能の主な目的は、マーケティング活動に直接関係するコンタクトに限定して費用を発生させ、それ以外のコンタクトを無料で大量に保存することです。
Marketing Hubにおける特定の機能は、マーケティングコンタクトに対してのみ機能します。具体的には、フォーム送信後のフォローアップメール、マーケティングEメール、広告ツールのコンタクトリストオーディエンス、Eメールの送信、広告オーディエンスへの追加や削除など、ワークフローにおけるマーケティングアクションなどです。
たとえば、HubSpotのMarketing Hubを購入した場合、マーケティング活動に使うコンタクトの数に上限が設定されます。マーケティングEメールや広告などのマーケティングツールを通じてエンゲージするコンタクトは「マーケティングコンタクト」としてカウントされ、これらのコンタクトは企業の契約費用に影響を与えるのです。
逆に、マーケティングを行わない予定のコンタクトは「マーケティング対象外のコンタクト」として分類され、これらはコンタクトにカウントされないため、課金されません。
マーケティングコンタクトの管理においては、コンタクトがマーケティング対象または対象外に設定されるタイミングを理解し、必要に応じてコンタクトのステータスを更新することが重要です。
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HubSpotのマーケティング対象外のコンタクトとは
HubSpotの「マーケティング対象外のコンタクト」とは、CRMシステムには保存されるものの、マーケティング活動には直接関わらない連絡先を指します。これには、マーケティングEメールの配信を停止した人や、営業担当者などが含まれます。これらのコンタクトは、マーケティング活動において直接エンゲージメントを行う予定がないため、マーケティングEメールや広告のターゲティングから除外されます。
マーケティング対象外のコンタクトを設定することで、コンタクトを課金対象から除外することが可能です。請求可能なコンタクト数の上限にはカウントされず、特定のツールの使用も制限されるため、コスト管理とマーケティング活動の効率化に役立ちます。
HubSpotに新しいコンタクトが追加された場合、既定でマーケティング対象または対象外に設定されます。この既定の設定は、HubSpotのさまざまなツール(フォームやチャットフロー)によって作成され、特定のツールによってはデフォルト設定を変更することも可能です。
既にCRMに存在するコンタクトについても、手動でマーケティング対象外に設定できます。これにより、既存のコンタクトを必要に応じてマーケティング対象外として分類し、コスト管理とマーケティング活動の効率化が実現されます。
料金プランごとのマーケティングコンタクト数
HubSpotのMarketing Hubでは、コンタクト数の上限は、使用するプランによって変わるため、プランを選択する際には、マーケティング活動に必要なコンタクト数を十分に考慮することが重要です。ここからは、Marketing Hubの3プランにおけるマーケティングコンタクト数の違いをご紹介します。
以下は、HubSpotのMarketing Hubの各プランに関する概要を表にまとめたものです。(2024年2月時点)
Starterプラン
Marketing Hub Starterプランは、月額2,160円〜で提供され、1,000件のマーケティングコンタクトが含まれています。上限コンタクト数を超えた場合、1,000件あたり2,160円でマーケティングコンタクト数を追加することが可能。Eメールの送信数はマーケティングコンタクト数の5倍までと定められています。
このプランは、スモールビジネスやスタートアップ企業に適しています。限られた予算の中で効率的にマーケティング活動を行いたい企業にとって、1,000件のコンタクトで始められるStarterプランは費用対効果が高い選択となるでしょう。また、成長段階にある企業が、顧客ベースの拡大に伴いマーケティングのスケールアップを図る際にも、追加コンタクトの購入によって柔軟に対応できる点が魅力です。
Professionalプラン
Marketing Hub Professionalプランの月額料金は96,000円〜で、2,000件のマーケティングコンタクトが含まれています。このプランでは、コンタクトの単位が5,000件で、追加のマーケティングコンタクトには5,000件あたり¥26,966円の料金がかかります。また、Eメールの送信数はマーケティングコンタクト数の10倍までです。
Professionalプランは、マーケティングオートメーション、カスタムレポーティング、セグメンテーション、リードスコアリングなどの高度な機能を提供します。これらの機能は、ターゲット顧客へのパーソナライズされたマーケティングキャンペーンの実施、潜在顧客の行動や興味関心に基づいた精度の高いマーケティング戦略の展開に役立ちます。
特に、成長段階にある企業や複数のマーケティングチャネルを活用して総合的なマーケティングキャンペーンを展開したい企業におすすめのプランです。
Enterpriseプラン
Marketing Hub Enterpriseプランは、大規模な企業や複雑なマーケティングニーズを持つ組織に最適なプランです。月額料金は432,000円〜で、10,000件のマーケティングコンタクトが含まれています。コンタクトの単位は10,000件ごとで、追加のマーケティングコンタクトには10,000件あたり12,000円の料金がかかります。さらに、Eメールの送信数はマーケティングコンタクト数の20倍まで可能です。
Enterpriseプランは、カスタマイズ可能なオブジェクトやレポーティング、予測リードスコアリングなどの機能を備えており、大規模なデータベースと複雑な顧客管理を効率的に扱うことができます。また、多層的な組織構造に対応するための機能や、高度なセキュリティとユーザー管理オプションも提供されます。
Enterpriseプランは、企業が持つ広範な顧客データを活用して洗練されたマーケティング活動を行うことを可能にします。パーソナライズされた顧客体験の提供、効果的なリード生成、精密なターゲットマーケティングなどを通して、長期的な顧客関係の構築を実現できるでしょう。
マーケティングコンタクト数を確認する方法
HubSpotでマーケティングコンタクトの数を確認する方法は下記のとおりです。
HubSpotアカウントにログインし、右上に表示されるアカウント名 > [アカウントと請求] の順に選択。
出典:HubSpot
[概要] タブの [製品と追加オプション] の、Marketing Hubの部分にマーケティングコンタクト数と配信したEメールの数が表示されます。この情報は毎日更新されます。
また、マーケティングコンタクトをリアルタイムでモニタリングするためにダッシュボードを作成することも可能。
[レポート] > [ダッシュボード] の順にクリック。
右上の [ダッシュボードを作成] をクリック。
ダッシュボードライブラリーから [マーケティングコンタクト] ダッシュボードを選択。
その後、ダッシュボードに含めるレポートを選択して、必要に応じてダッシュボードの名前をカスタマイズし、アクセスを許可するユーザーを設定します。
[ダッシュボードを作成] をクリックして完成。これで [レポート] タブより、マーケティングコンタクト数をリアルタイムで確認できるようになりました。
マーケティングコンタクトから対象外のコンタクトへ移行する方法
Marketing Hubでは、定期的にマーケティングコンタクトを対象外のコンタクトへ移行し、超過料金の発生を抑えることが重要です。ここからは、手動と自動でマーケティングコンタクトを対象外にする方法をご紹介します。
手動でマーケティングコンタクトへ変更する方法
HubSpotで手動でコンタクトをマーケティング対象外に設定する方法は以下の通りです。
HubSpotアカウントにログインし、右上に表示されるアカウント名 > [アカウントと請求] の順にクリック。その後 [使用と制限] をクリックし、[マーケティングコンタクトを管理] を選択します。
まずは [反応がないコンタクト] で、バウンスが発生したコンタクトや配信登録を解除したコンタクトが自動的に選択されます。これらのコンタクトは、マーケティング施策に反応していないため、マーケティング対象外に設定しましょう。
次は [フィルターおよびリスト] で、フィルターまたはリストを使用してマーケティング対象外に設定するコンタクトを選択します。マーケティングコンタクトから外すコンタクトを選択したら、[コンタクトを更新] をクリックして完了です。
また、[コンタクト] ページから、コンタクトをマーケティング対象外に設定することも可能です。
手順は、コンタクトページで対象のコンタクトを選択し、[その他] ドロップダウンメニューから [マーケティング対象外のコンタクトに設定] を選択するだけです。
特定のコンタクトをマーケティングコンタクトの対象外にしたい場合は、この方法がおすすめです。
ワークフローを活用してマーケティングコンタクトへ変更する方法
ProfessionalまたはEnterpriseプランの場合、ワークフローを活用することで、特定の条件や行動に基づいてコンタクトを自動でマーケティングコンタクトまたは対象外へと変更できます。手順は以下の通りです。
[自動化] > [ワークフロー] の順にクリック。
[ワークフローを作成] > [ゼロから作成] の順に選択。
まずはワークフローをトリガーする条件を設定します。これには、特定のフォームの送信、ウェブサイト上での特定の行動、または特定の属性を持つコンタクトなどが含まれます。
トリガーに応じたアクションを設定します。マーケティングコンタクトへ変更する場合、[マーケティング] > [マーケティングコンタクトのステータス] の順にクリック。
[マーケティングコンタクトに設定] または [マーケティング対象外のコンタクトに設定] を選択します。
ワークフローの詳細設定を調整し、必要に応じて追加の条件やアクションを追加します。
すべての設定が完了したら、ワークフローを有効にして完了です。
ワークフローを活用することで、マーケティング活動におけるコンタクトの管理を自動化し、より効率的かつ効果的にマーケティング活動を行うことができます。特に、大量のコンタクトを扱う企業にとっては、このような自動化は時間の節約と効率の向上に大きく貢献します。
マーケティングコンタクトの指定方法
ここでは、既定設定でマーケティングコンタクトの対象または対象外となるコンタクトについて解説します。既定設定とは、HubSpotに新しく追加されたコンタクトがマーケティングコンタクトとして扱われる、またはマーケティング対象外として扱われるかの初期設定のことです。
特に既存のコンタクトをHubSpotに追加する際、規定設定でマーケティングコンタクトとして登録される場合があるため、注意が必要です。
既定でマーケティングコンタクト対象
既定でマーケティングコンタクト対象となるのは、HubSpotフォームツールで作成されたコンタクト、またはHubSpot以外のフォームで作成されたコンタクトです。具体例としては、Webサイト上のさまざまなフォームを通じて入力された情報から生成されるコンタクトが含まれます。これには、製品やサービスに関する問い合わせフォーム、ニュースレター登録フォーム、イベントやウェビナーへの登録フォーム、プロモーションや特別オファーへの応募フォームなどがあります。
HubSpotでは、これらのコンタクトを自動的にマーケティングコンタクトとして扱うことで、効率的なマーケティング活動の実施を支援します。
既定でマーケティングコンタクト対象外
既定でマーケティングコンタクト対象外となるのは、以下の通りです。
特定の作成方法やツールの使用によっては、コンタクトがデフォルトでマーケティング対象外になることがあることに注意が必要です。
HubSpotマーケティングコンタクトの注意点
HubSpotマーケティングコンタクトには以下2つの注意点があります。
- マーケティング対象外のコンタクトに変更できるのは月に1回のみ
- 上限を超えると即時課金対象
ここからは、各注意点の詳細を見ていきましょう。
マーケティング対象外のコンタクトに変更できるのは月に1度のみ
「マーケティング対象外のコンタクトに変更できるのは月に1度のみ」というルールがあります。これは、特定のコンタクトをマーケティング活動の対象外に設定する際の重要な制限事項です。
たとえば、ある月にコンタクトがマーケティングコンタクトとして設定されている場合、そのステータスを同じ月内にマーケティング対象外に更新することは可能です。しかし、このステータスの変更が実際に反映されるのは次の更新日以降となります。つまり、マーケティング対象外に設定したいコンタクトがあれば、月初にその変更を行う必要があり、その月の残りの期間中はそのステータスを変更することはできません。
このルールは、HubSpotの料金体系と密接に関連しています。HubSpotでは、マーケティングコンタクトの数に基づいて料金が計算されるため、コンタクトのステータスを頻繁に変更することによる料金の不透明性を防ぐ目的があると考えられます。また、ユーザーがマーケティング活動の計画と予算を効果的に管理するためにも、このような制約が設けられているのでしょう。
この制限を理解しておくことは、HubSpotを使用する上でのコスト管理やマーケティング戦略の立案において重要です。特に、限られた予算内で最大限のマーケティング効果を得ようとする企業にとっては、どのコンタクトをマーケティング活動の対象にするかを慎重に選定し、月ごとのコンタクトのステータス変更を計画的に行う必要があります。
マーケティングコンタクトの上限を超えると即時課金対象となる
マーケティングコンタクト数が契約上の上限を超えた場合、コンタクト契約数は自動的に次のレベルにアップグレードされます。この変更は即座に行われ、超過した翌日から日割り計算の追加料金が発生します。
たとえば、Starterプランでは1,000件のマーケティングコンタクトが上限です。契約から3か月目に1,050件のコンタクトが発生した場合、自動的にアップグレードの課金が発生し、追加された50件に対して日割り計算で料金が加算されます。この追加料金は、超過した翌日から適用され、月末までの日数に応じて計算されます。たとえば、月の半ばに超過した場合、その月の残りの半分に対して追加料金が課されることになるのです。
仮にアップグレードから2か月後に、マーケティングコンタクト数が1,000件未満になっても、利用料金は変わりません。ダウングレードができるのは年に1回の契約更新日です。また、ダウングレードは自動的に適用されないため、契約更新時にHubSpotの担当者に問い合わせる必要があります。
コンタクト数の上限を超えると、自動的により高いコンタクト契約数での課金が継続される、かつ契約更新付きまでダウングレードはできないため、定期的にマーケティングコンタクトのモニタリングをし、必要に応じて対象外設定をすることが重要です。
まとめ
HubSpotのマーケティングコンタクトについて理解しておくべき重要な点は以下の通りです。
- コンタクト数の上限:各プランにはマーケティングコンタクトの数に上限があります。この上限を超えると追加料金が発生します。
- 変更のタイミング:マーケティング対象外のコンタクトに変更できるのは月に1回だけです。
- 料金体系:マーケティングコンタクト数が上限を超えると、自動的に次の料金レベルにアップグレードされ、日割り計算で追加料金が発生します。
- ダウングレードの制限:契約更新時のみコンタクト数のダウングレードが可能です。
HubSpotを導入済みの場合、定期的にマーケティングコンタクトをモニタリングし、コンタクトの精査をする必要があります。HubSpotの導入を検討している場合は、機能だけではなく、マーケティングコンタクト数の上限も考慮したうえでプラン選定をしましょう。