企業の営業活動では、複数の案件を同時に抱えるため、案件ごとの進捗状況が把握できないといった課題を感じている方も多いでしょう。適切に案件を管理できていなければ、営業コストが増大し、営業利益が下がってしまいます。特に組織的な営業活動を行うためには、効率的な案件・商談管理が欠かせません。
その中で役に立つのがHubSpot Sales Hubの「案件・商談管理機能」です。本記事では、HubSpotの案件・商談管理機能の概要や特徴、使い方、他のSFAツールとの比較、さらに実際の企業事例を通して、活用するメリットを詳しく解説します。営業活動の効率化に課題を抱えている方はぜひ本記事を参考に、HubSpotを活用してみてください。
HubSpotの案件・商談管理機能とは
HubSpot(ハブスポット)は、あらゆる企業のビジネスの成長を支援するCRMプラットフォームです。かんたんな操作で豊富な機能を利用でき、ビジネスの成長に合わせて機能を拡張できることから、現在では世界中120カ国以上で19万4,000社以上を超える企業が利用しています。
ここでは、HubSpotの基本的な概要と、案件・商談管理機能とはどんなものなのか、かんたんに解説します。
HubSpotとは
HubSpotは、マーケティング、営業、コンテンツ管理、カスタマーサービスといった、あらゆる業務を1つにつなぐ統合型CRMプラットフォームです。ユーザーフレンドリーなインターフェースと豊富な機能が特徴で、基本的な機能は最大5名まで無料で利用できることが大きな特徴です。
有料プランでは、ビジネスの成長や用途にあわせて、さらに豊富な機能を利用することが可能です。例えば、広告管理やウェブサイトのトラフィック分析、顧客関係管理、ヘルプページ作成まで、ビジネスのあらゆる面をカバーする多くの機能が備わっています。
これらは、基盤となるCRMデータベースに接続されているため、顧客がどういった状況にあるか、常に最新情報を引き出すことが可能です。したがって、企業はHubSpotを活用することで、より効率的かつ効果的なアプローチを実現できるようになります。
HubSpotの案件・商談管理機能とは
参照元:HubSpot
HubSpotは、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub、CMS Hub、Operations Hubといった、5つの製品で構成されています。その中で、Sales Hubの「案件・商談管理機能」は、進行中の取引や進捗状況の可視化、営業収益の予測、取引のスコアリングなどを行うことができる機能です。
これらの機能を利用することで、取引の追跡、管理、レポート作成が容易になり、営業サイクルの最適化に貢献します。また、取引レコードの作成、営業活動の自動化、カスタムレポートの作成など、多岐にわたる機能が提供されています。
これにより、営業マネージャーは各営業担当者の活動状況や、取引の進捗をリアルタイムで把握できるため、営業チームの課題の特定や戦略立案、チームのパフォーマンス改善に向けたサポート体制の強化へとつなげることが可能です。その結果、将来的な収益の向上や顧客生涯価値(LTV)の向上が期待できるでしょう。
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HubSpotの案件・商談管理の特徴
近年のビジネスシーンは変化のスピードが早く、いかに適切なタイミングで見込み客にアプローチするかが成功の鍵を握ります。その中で、HubSpotの案件・商談管理機能を活用すれば、進行中の一つひとつの取引を詳細に把握し、営業サイクルを最適化することが可能です。
ここでは、HubSpotの案件・商談管理の特徴を詳しく解説します。これらの特徴を理解することで、チームの営業パフォーマンスを向上させる道筋が見えてきますので、ぜひ参考にしてください。
収益の予想が可能
参照:HubSpot
HubSpotの案件・商談管理機能を使用すると、収益の予測が可能です。進捗管理を通じて、各案件の現在の状況をリアルタイムで把握できるため、売上の見込み額を正確に算出できます。
例えば、100万円の売上が見込まれる案件が進捗率70%の場合、その売上見込み額は70万円となります。営業担当者が抱える全案件の売上見込み額を合計することで、営業チームの目標達成の可否を早期に判断することが可能です。これにより、営業チームはより戦略的なアプローチを取ることができ、収益の最大化に貢献します。
無料プランでも活用が可能
HubSpotでは、無料プランと有料プランがありますが、案件・商談管理機能は最大5名まで無料プランでも利用できます。無料プランでは、取引の追跡や管理のほか、基本的なレポート作成などの機能も利用できるため、初期投資を抑えながら営業活動の効率化を図ることが可能です。
したがって、小規模なビジネスやスタートアップなど、予算に制約のある企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
HubSpotのモバイルアプリにて外出時での確認可能
出典:HubSpot Japan
HubSpotのモバイルアプリを使用することで、場所を問わず案件・商談の管理が可能です。モバイルアプリを利用することで、営業担当者は移動中やリモートワーク時など、オフィス外でもリアルタイムに取引情報を確認し、迅速な対応を行うことができます。
例えば、商談の合間に取引状況を確認したり、最新の情報に更新したりすることが可能です。営業マネージャーは、担当者から直接報告をもらわなくとも、アプリ上でリアルタイムに状況を確認できるため、必要に応じたサポートを行うことが可能です。
セールスオートメーションで商談相手の行動の通知を受信
HubSpotの案件管理・商談管理機能では、セールスオートメーションを利用して、商談相手の行動にもとづく通知を受け取ることが可能です。この機能により、見込み客が重要な行動(例:Eメールの開封や資料のダウンロードなど)を行った際に、営業担当者に即座に通知されます。
例えば、見込み客がWebサイト上の価格表を閲覧した場合、営業担当者はそのタイミングで即座に連絡できるため、最適なタイミングでアプローチが可能です。この自動化された通知システムにより、商談機会の取りこぼしを防ぎ、成約率の向上をもたらします。
HubSpot 案件・商談管理 料金プラン
HubSpotの案件・商談管理機能は、ビジネスの規模やニーズに応じて選べる複数の料金プランを提供しています。ここでは、無料プランと有料プランでできることに加え、有料プランの詳細について解説します。
Sales Hub 無料プランで可能なこと
無料プランでは、HubSpot各製品群の基本的な機能を利用できます。これには、Sales Hubの案件・商談管理機能のほか、コンタクトの管理、基本的なレポート作成などが含まれます。
個人や小規模なビジネスや、スタートアップに適しており、はじめてSFAやCRMを導入する企業にも最適です。無駄なコストをかけずに営業活動の効率化を図ることができます。
無料プランでできることは、HubSpotのサイトもあわせてご覧ください。
参考:HubSpot 無料ツール
Sales Hub 有料プランで可能なこと
有料プランでは、無料プランの機能に加え、営業プロセスの自動化、カスタムレポートの作成、電子署名などの高度な機能が利用できます。有料プランは、Starter、Professional、Enterpriseといった3つのプランが用意されており、上位プランになるほど高度な機能が利用できるようになります。
例えば、Enterpriseプランでは、最上位のセールス機能、拡張されたカスタマイズオプション、高度なセキュリティ機能などが提供されます。これらの有料プランは、より大規模なビジネスや、複雑な営業プロセスを持つ企業に適しています。
参照:HubSpot
HubSpotで案件・商談を管理する方法
ここからは、実際にHubSpotを利用して効果的に案件・商談を管理するための方法を詳しく解説します。
取引を作成する
HubSpotでは、取引を作成することで、見込み客の管理や商談進捗を追跡できるようになります。取引の作成は、HubSpotのダッシュボードから直接行うことができ、必要な情報を入力して取引を追加します。
- ダッシュボードから「セールス」>「取引」を選択します
- 取引画面の右上にある「取引を作成」をクリックします
取引パイプラインとステージを設定
HubSpotでは、取引ステージをカスタマイズして、自社のセールスプロセスに合わせた取引パイプラインを作成できます。各ステージは、見込み顧客が営業プロセスのどの段階にいるかを示し、営業担当者やマネージャーが適切なアクションを取るための基準となります。
- 取引名、パイプライン、取引ステージなど必要事項を入力します
- 入力が完了したら、「作成」をクリックします
出典:HubSpot
取引ステージのプロパティのカスタマイズ
HubSpotでは、取引ステージごとに表示されるプロパティをカスタマイズできます。これにより、特定のステージで必要な情報を強調し、営業チームが重要なデータに素早くアクセスできるようになります。また、特定のステージでのプロパティ入力を必須にすることも可能です。
- 編集するプロパティに移動します
- ステージの行で、「条件付きステージのプロパティ」列にカーソルを合わせ、「プロパティを編集」を選択し、編集を行います
- 編集が完了したら、左下の「保存」をクリックします
取引ステージの設定とカスタマイズについては、HubSpotのナレッジベースもご覧ください。
参考:HubSpotナレッジベース
取引のタスク自動化設定
HubSpot Sales Hubでは、取引ステージに応じたタスクの自動作成機能があります。これにより、特定のステージに達した際に自動的にタスクが生成され、営業チームが適切なタイミングで必要なアクションが可能です。
- HubSpotのダッシュボードから設定アイコンをクリックします
- 左のサイドメニューの中から、「オブジェクト」>「取引」の順にクリックします
- 「パイプライン」タブをクリックし、「パイプラインを選択」の右にあるドロップダウンメニューから自動化するパイプラインを選択します
- 自動化タブをクリックします
- 取引ステージから、自動化するタスクを選択します
自動化設定については、HubSpotのナレッジベースもご覧ください。
参考:HubSpotナレッジベース
取引カードをカスタマイズする
HubSpotでは、取引カードの見た目や表示される情報をカスタマイズすることができます。これにより、営業チームが一目で重要な情報を把握し、迅速に対応することが可能になります。
- 取引画面から、「取引をボードで表示」に切り替えます
- 「ボードアクション」>「カードを編集」を選択します
出典:HubSpot
- カードのスタイルは「既定」または「コンパクト」のいずれかから選択できます。
- 既定:プロパティ、名前、値が表示されます
- コンパクト:プロパティの値のみ表示されます
- その他、タグの表示有無、取引アクティビティー情報、無効マークを付ける時間枠の設定を行い、編集が完了したら、「保存」をクリックします
取引カードの編集方法については、HubSpotのナレッジベースもご覧ください。
参考:HubSpotナレッジベース
取引のクレジット分割の設定
HubSpotでは、取引のクレジット分割を設定することも可能です。これにより、取引の収益を複数の期間や部門に分割して割り当てることができ、収益の管理と予測の精度を向上させることができます。
例えば、ノルマがある営業担当者が、影響を受けた売上をすべてクレジット化する必要がある場合に有効な機能です。
- HubSpotのダッシュボードで、歯車の設定アイコンを選択します
- 左のサイドメニューから「オブジェクト」>「取引」の順にクリックします
- 「ユーザー間で取引を分割する」にチェックをいれます。
※クレジット分割設定はSuper admin権限を持つユーザーのみ行うことができます。
他社SFAの商談管理機能とHubSpotとの違い
HubSpotは、独自の機能と使いやすさにより、営業活動を効率化するSFA(営業支援システム)として多くの企業に選ばれています。しかし、市場には他にも多くのSFAツールが存在し、それぞれに特徴があります。
ここでは、HubSpotと他の主要なSFAツールであるSalesforce Sales Cloud、eセールスマネージャー、Kintoneとの違いを見ていきましょう。
Salesforce Sales Cloud
出典:Salesforce Sales Cloud
Salesforce Sales Cloudは、AIを搭載した高度な営業支援CRMで、営業効率の最大化を目指します。このプラットフォームは、自動化機能、データ分析、AIによる洞察提供など、営業プロセスを全面的にサポートする機能を備えています。
例えば、モバイル対応、ワークフロー自動化、ファイル同期などの営業活動のアシスト機能が充実しており、データ分析による売上予測や意思決定のサポートも行います。HubSpotと比べて、Salesforce Sales Cloudはよりカスタマイズ性が高く、複雑なビジネスニーズに対応するための多様な機能を提供します。一方、その機能の豊富さゆえに、設計に専門知識を必要とする場合や、カスタマイズによって利用料が高額になる可能性もあります。
その点、HubSpotは使いやすさとシームレスな統合性に重点を置いているため、特に予算に限りがある営業チームや、手軽にSFAを導入したいという企業ニーズを満たします。
eセールスマネージャー
出典:eセールスマネージャー
eセールスマネージャーは、日本で開発されたCRM/SFAで、シングルインプット・マルチアウトプットに特化しています。これにより、一度の情報入力で複数の機能に自動反映され、営業活動に関するあらゆる情報の一元管理が可能になります。
初期設定がシンプルで導入のハードルが低く、特に日本のビジネス環境に特化した機能設計がされているのが特徴です。またマーケティングと営業をスムーズにつなぐ連携機能や、BIツールとの連携による高度な分析まで行える点は魅力でしょう。
しかし、プランによって機能に制限があり、下位プランでは案件・商談管理機能を利用できません。一方、HubSpotは案件・商談管理機能を無料版から使えるため、スモールスタートに適しています。
Kintone
出典:Kintone
Kintoneはサイボウズ社が提供するノーコード・ローコードのグループウェアで、プログラミング知識がなくても業務アプリを簡単に作成できます。厳密にはSFAではないのですが、案件管理や顧客管理を行うために利用するユーザーもいます。散在するデータや煩雑な業務プロセスを効率化し、営業現場のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。
Kintoneの最大の特徴は、ユーザーが自由にアプリを作成できる点です。これにより、特に小規模な企業や特定のニーズを持つビジネスに適しています。しかし、その柔軟さゆえに、操作や設計が複雑になりがちです。一方、HubSpotはマーケティング、セールス、カスタマーサービスを一元管理できる包括的なプラットフォームを提供しているため、手軽に利用できます。
Hubspotで案件管理を行なった事例
HubSpotの案件管理機能は、多くの企業において業務効率化に大きく貢献しています。ここでは、HubSpotを活用して成功を収めた二つの企業の事例を紹介します。これらの事例は、HubSpotの機能がどのように実際のビジネスシーンで役立っているかを具体的に示しています。
顧客情報の一元化による業務効率化を実現|イベントレジスト株式会社
出典:イベントレジスト株式会社
オンラインのイベントプラットフォーム「EventRegist」を運営するイベントレジスト株式会社。同社では、マーケティングと営業の分断により、既存顧客との継続的な関係構築に課題を抱えていました。
そこで、Marketing Hubを導入後に、顧客情報の一元管理と営業プロセスの課題解決のためにSales HubとService Hubを追加導入しました。HubSpot製品を導入したことで、イベントレジストではマーケティングと営業の分断を解消し、既存顧客への継続的なアプローチを強化することができました。また、顧客満足度の向上にもつながり、新規顧客の獲得にも貢献しました。
HubSpotの導入により、営業とヘルプセンターのプロセスにおける課題を解決し、事業成長に柔軟なメンテナンス性を実現しました。特にSales Hubの導入は、営業プロセスの透明化と効率化に大きく貢献し、顧客情報の一元管理を実現しました。
参考:HubSpot導入事例|イベントレジスト株式会社
営業担当者の工数削減と顧客関係性構築に成功|レバレジーズ株式会社
出典:レバレジーズ株式会社
人材系のサービスを含む30以上のサービスを展開するレバレジーズ株式会社。同社では、事業部ごとに顧客情報や営業進捗を管理していたため、同一の見込み客に対してバラバラにアプローチすることでコミュニケーションミスが発生していました。
CRMやSFAの必要性を感じた同社は、必要最低限の機能を備えたHubSpotを導入しました。HubSpot CRMとSales Hubの導入により、複数事業部の顧客情報が統合され、営業工数の削減とコミュニケーションミスの減少を実現しました。
HubSpot導入により、顧客との関係性を構築しやすくなり、タスクの引き継ぎがスムーズになり、他事業部の営業ログがすぐに確認できるようになりました。特にSales Hubは、営業メンバーのタスク管理とアクティビティの統合を可能にし、顧客ごとのステータスが明確になり、より効果的なアプローチが可能になりました。
参考:HubSpot導入事例|レバレジーズ株式会社
HubSpotで案件を管理する際の注意点
HubSpotで効果的に案件管理を行うためには、いくつかの重要な注意点があります。これらのポイントを押さえることで、HubSpotの機能を最大限に活用し、営業プロセスの効率化と成果の最大化を図ることができます。
まずは営業プロセスの整理を行う
HubSpotを導入する前に、まずは自社の営業プロセスを整理し、明確化することが重要です。営業プロセスの各ステップを明確にし、それぞれのステージで必要なアクションや情報を特定することで、HubSpotの設定を最適化できます。これにより、HubSpot内での案件管理がスムーズになり、営業チームの生産性向上につながります。
各ステージで必要な情報の入力を必須にする
HubSpotのSales Hubでは、各ステージで必要な情報の入力を必須化することが可能です。これにより、営業プロセスの標準化を図ることができます。
必要な情報が各ステージで確実に入力されることで、データの一貫性が保たれ、正確な案件管理と分析が行えるようになります。ただし、ProfessionalとEnterpriseプランでのみ利用可能となっているため、注意してください。
営業メンバーのトレーニング
HubSpotを最大限に活用するためには、営業メンバーがツールの使用方法を理解し、適切に活用することが必要です。定期的なトレーニングとサポートを提供し、営業チーム全員がHubSpotを効果的に使用できる状態を保つことが重要です。
継続的な評価と改善
営業プロセスは常に進化しています。HubSpotでの案件管理プロセスも、定期的に評価し、必要に応じて改善することが重要です。市場の変化やチームのフィードバックに基づいて、プロセスを調整し、最適化することが求められます。
まとめ
本記事では、HubSpotの案件・商談管理機能について、その特徴や使い方、他のSFAツールとの比較、実際の事例、そしてHubSpotで案件を管理する際の注意点について詳しく掘り下げました。
HubSpotの案件・商談管理機能は、収益予測の可能性、無料プランでの利用のしやすさ、モバイルアプリによる外出時の確認の容易さ、そしてセールスオートメーションによる通知受信など、多岐にわたる特徴を持っています。これらの特徴は、営業活動の効率化と収益の最大化に大きく貢献します。
本記事で紹介したポイントを踏まえることで、HubSpotを用いた案件管理がより効果的になり、営業活動の成果を高めることが期待できます。