営業活動を合理化し、チームの生産性向上に役立つSFA(営業支援システム)。導入することで顧客や商談の情報、営業担当者の行動などを可視化し、部門全体で共有できるようになります。
DXの推進やリモートワークの拡大といった時代背景も相まって、需要が急拡大しているSFAですが「自社にはどの製品がマッチするのだろう」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、代表的なSFA/CRMツールのベンダーであるHubSpot社のSFA「Sales Hub」の評判を、他社のSFAツールと比較してわかりやすく解説します。
世界で活用されているビジネスソフトウェアのランキングサイト「G2」の評価や口コミも紹介するため、公平性のあるスコアで製品を比較したい方はぜひ参考にしてください。
HubSpot Sales Hubとは
まずは、HubSpot社のSFAツールであるSales Hubの概要を確認しておきましょう。以下ではHubSpot社の成り立ちとあわせて、HubSpot Sales Hubの基本情報を紹介します。
HubSpot社とは
HubSpot社は、マーケティング・営業・カスタマーサポート向けのCRM(顧客関係管理)をはじめとした複数のツールを提供する米国企業です。国内においては日本法人のHubSpot Japan株式会社が設立されているほか、150社以上のHubSpotパートナーとサービスプロバイダーが存在します。
HubSpotの歴史は、マサチューセッツ工科大学の大学院で同期だったBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏とDharmesh Shah(ダーメッシュ・シャア)氏が、消費者行動の変化に注目したことから始まります。
彼らは当時「消費者は、企業による一方的な広告や過剰なアピールは望んでおらず、ただ力になってもらいたいと思っている」ということに気づきました。この考え方を根底に、顧客の支援を重視する手段として2006年に創業したのがHubSpotです。
HubSpotのミッションは、顧客の役に立ち、思いやりを大切にしながらビジネスを成長させることです。顧客にとって真に価値あるものを提供することが、結果として自社の成長にもつながるという「インバウンド」の思想を創業時から提唱し、顧客の成功を支援するプラットフォームを提供しています。
HubSpotのSFA、Sales Hubとは
HubSpot Sales Hubは、営業活動を合理化し、チームの生産性向上を支援するSFAツールです。見込み客とのコミュニケーションを円滑化できるほか、リーダーのチーム管理に役立つ高度な分析機能も搭載されています。
【主な機能】
- HubSpot CRMの全機能
- 営業活動とリードの管理
- Eメールの追跡と自動送信
- 取引とパイプラインの管理
- 見積書作成
- セールスアナリティクスとレポート
- フォーキャスト
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実際にSales Hubを導入した企業では、MRR(月次経常収益)を5倍へと成長させた事例もあります。Sales Hubにより営業活動が効率化したことで、顧客との信頼関係強化にリソースを集中できた結果といえるでしょう。
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HubSpot Sales Hubの特徴
出典:HubSpot
HubSpotは、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けの支援ツールを統合したプラットフォームです。Sales Hubを含む5つの「Hub(ハブ)」製品が、HubSpot CRMを基盤として構成されています。
以下では、HubSpot Sales Hubの主な特徴を3つ紹介します。
CRM機能が無料で提供されている
Sales Hubの基盤となるHubSpot CRMは、永久無料で利用可能です。無料ツールには以下をはじめ、50種類以上の多彩な機能が搭載されています。
マーケティング |
フォーム、Eメールマーケティング、広告管理、LP |
カスタマーサービス |
チケット管理、ウェブチャット&チャットボット、共有受信トレイ |
営業支援 |
コンタクト管理、取引パイプライン、見積もり作成、ミーティング設定 |
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム) |
ウェブサイトページ、ブログ、ドラッグ&ドロップエディター、基本的なSEO |
オペレーション |
データ同期、規定のフィールドマッピング、アプリマーケットプレイスとの連携 |
無料ツールはトライアル版ではないため、無期限で利用可能です。
ゼロからHubSpot社が自社開発
ソフトウェアの提供事業者は、買収を繰り返して自社製品に他社製品を融合している企業が少なくありません。
一方でHubSpotのプラットフォームは、ゼロからHubSpot社が自社開発しています。そのためすべての製品群のUIが統一されており、使いやすさに定評があります。導入やカスタマイズの手間を最小限に抑えられることも特徴です。
無料版からのスモールスタートが可能
上記のとおり、HubSpot Sales Hubは「まずは無料版から始めてみよう」というスモールスタートが可能です。ツールの導入が初めての組織や、現行ツールからの切替を検討している組織も、リスクを最小限に抑えて運用可能です。
有料版を利用する場合も、自社の課題や目標にあわせて必要な機能を洗い出しておくことで、コストを削減できます。一般的なCRM/SFAツールでは不必要な機能まで初期搭載されていることがありますが、HubSpot Sales Hubは自社の状況にマッチしたプランを選択可能です。
HubSpot Sales Hubの口コミ、評判
HubSpot Sales Hubは、消費者からどのような評価を得ているのでしょうか。以下では、実際にHubSpot Sales Hubを使用しているユーザーの口コミ、評判をピックアップして紹介します。
HubSpot Sales HubのG2スコア
まずは、HubSpot Sales HubのG2スコアを紹介します。G2(G2.com)とは、ビジネスソフトウェアやサービスに関するレビュー・評価を行い、ランキングを作成のうえ公表しているオンラインプラットフォームです。
実際にソフトウェアを使用しているユーザーがレビューしていることに加え、そのレビューが適切か否かを判断する仕組みも取り入れているサイトとして、世界で注目を集めています。
2024年7月時点において、HubSpot Sales HubはG2で総合評価スコア「星4.4」、1万1351件のレビューを獲得しています。
引用:G2「HubSpot Sales Hub Reviews」(2024年7月時点の情報)
ユーザーから最も高く評価されている項目は「使いやすさ」「サポート品質」「セットアップの簡便さ」となっており、ツールの導入が初めての組織にも使いやすいツールであることが伺えます。
一方、デメリットとして挙げられている項目では「セットアップやデータの反映にやや時間がかかる」「価格が高い」などが目立ちます。特にスタートアップや中小企業にとって、有料プランの価格体系は継続利用のネックになるようです。
ポジティブな口コミ、評判
G2のレビューのなかから、HubSpot Sales Hubのポジティブな口コミ・評判をピックアップします。
使いやすい UI とカスタマイズ可能なオプションにより、これまで私が使用してきたなかで最高の CRM の1つです。簡単に統合でき、カスタマーサポートも充実しています。
(投稿者:中規模市場従業員)出典:G2
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このシステムは操作が簡単で、情報を共有したり、同僚にタスクを割り当てたり、取引に関する通信の記録を保存したりするのも容易です。職場の PC と同じように、外出先でも iPad や携帯電話から簡単にシステムへアクセスできます。
(投稿者:技術管理者)出典:G2
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前職ではDynamic 365、Salesforce、Zoho、leadsquaredを使用していましたが、HubSpotはそのどれよりも優れています。カスタマイズやシーケンスの実行が非常に簡単なため、技術専門家に確認する必要がありません。
(投稿者:中規模市場従業員)出典:G2
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ネガティブな口コミ、評判
HubSpot Sales Hubのネガティブな口コミ・評判もあわせて確認していきましょう。
唯一気に入らないのは、ある連絡先を更新しているときに、例えば10ページ目にいるとすると、もう一度連絡先をクリックするか、戻るボタンをクリックした瞬間に1ページ目に戻ってしまうことです。しかし、全体的には良いプラットフォームです。
(投稿者:ビジネスコンサルタント)出典:G2
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私は特殊な営業職のため、販売の段階が標準的な営業モジュールと大きく異なります。ライフサイクルのステージがカスタマイズ可能で、私たちが必要とする営業スタイルにより合致すればいいなと思います。
(投稿者:中小企業従業員)出典:G2
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新しいチームメンバーが豊富な機能を完全に把握し、効果的に活用するには時間がかかります。また、予算が限られている中小企業にとっては、料金体系がやや高めであることも考慮すべき点です。
(投稿者:中規模市場従業員)出典:G2
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HubSpot Sales Hubを利用している企業の特徴
HubSpot Sales Hubは、実際にどのような企業において活用されているのでしょうか。以下では、HubSpot Sales Hubを活用している企業の「従業員数」と「業界」を、G2の統計をもとに紹介します。
従業員数
引用:G2「Compare HubSpot Sales Hub and Salesforce Sales Cloud」(2024年7月時点の情報)
G2の「Reviewers' Company Size(レビュアーの企業規模)」を参考にすると、HubSpot Sales Hubを利用している企業規模の割合は、以下のようになります。
企業規模 |
従業員規模 |
割合 |
中小企業 |
50人以下 |
62.4% |
中堅企業 |
51〜1000人 |
33.8% |
大企業 |
1000人以上 |
3.8% |
従業員数50人以下の企業が6割を超えており、小規模ビジネスにおいて広く活用されていることがわかりました。HubSpot Sales Hubは専門知識が不要で、誰にとっても使いやすいことから、専任のIT人材が在籍していない中小企業でも導入のハードルが低いことが読み取れます。
業界
引用:G2「Compare HubSpot Sales Hub and Salesforce Sales Cloud」(2024年2月時点の情報)
G2の「Reviewers' Industry(レビュアーの業界)」による、HubSpot Sales Hubを利用している業界の割合は以下のとおりです。
業界 |
割合 |
コンピューターソフトウェア |
16.0% |
情報技術とサービス |
12.2% |
マーケティング・広告 |
10.2% |
金融サービス |
4.1% |
教育管理 |
3.1% |
その他 |
54.3% |
HubSpot Sales Hubは、コンピューターや情報技術を専門とする業界以外でも幅広く活用されていることがわかります。設定に手間がかからないこと、操作を直感的に理解しやすいことが、さまざまな業界から支持されている理由だと伺えます。
他社SFAツールとのスコア比較
HubSpot Sales Hubと、他社のSFAツールにはどのような違いがあるのでしょうか。以下では、国内外で活用事例の多い「Salesforce Sales Cloud」「Zoho CRM」「Dynamics 360 Sales」と、HubSpot Sales HubのG2スコアを比較しそれぞれの特徴を整理していきます。
Salesforce Sales Cloud
Sales Cloudは、米Salesforce.comが提供するCRM/SFAプラットフォームです。国内外でトップレベルのシェアを誇る汎用性の高さが特徴で、非常に多機能かつカスタマイズ性にも優れています。
Sales CloudとHubSpot Sales Hubを比較した、2024年2月時点におけるG2の総合評価スコアは以下のとおりです。
引用:G2「Compare HubSpot Sales Hub and Salesforce Sales Cloud」(2024年7月時点の情報)
|
レビュー数 |
総合評価スコア |
Salesforce Sales Cloud |
20,280件 |
星4.3 |
HubSpot Sales Hub |
11,351件 |
星4.4 |
レビュー担当者による総評では「HubSpot Sales Hub の方が使いやすく、設定・管理がしやすいと感じた」とされています。また、製品サポートの品質や機能のアップデートなどに関しても、HubSpot Sales Hubの方がより好ましいという評価を得ています。
具体的に、HubSpot Sales Hubの方が高スコアを獲得している項目は「MA機能全般」「カスタマーサポート」「メール追跡ソフトのカスタマイズ」などです。
一方で「販売分析ソフトのデータソーシング/予測分析」「CRMソフトのレポート・分析/プラットフォーム」などの項目は、Sales Cloudの方が良い評価を得ています。
HubSpot Sales HubとSales Cloudの大きな相違点は、導入されている企業の規模です。Sales Cloudの中小企業における導入実績は21.7%と低く、大部分を中堅企業・大企業が占めています。
Sales Cloudは多機能かつ柔軟なカスタマイズ性が特徴なため、設定や運用について専門的な知識・スキルが必要となります。専任の人材を確保できるような、ある程度規模の大きい組織に適しているといえるでしょう。
Zoho CRM
Zoho CRMは、世界で25万社が導入しているCRMツールです。SFAの機能も充実していることに加え、低コストで運用できるプランが用意されていることも特徴として挙げられます。
Zoho CRMとHubSpot Sales Hubを比較した、2024年2月時点におけるG2の総合評価スコアは以下のとおりです。
引用:G2「Compare HubSpot Sales Hub and Zoho CRM」(2024年7月時点の情報)
|
レビュー数 |
総合評価スコア |
Zoho CRM |
2,642件 |
星4.1 |
HubSpot Sales Hub |
11,351件 |
星4.4 |
Sales Cloudと同様、レビュー担当者による総評ではHubSpot Sales Hubの方が全般的に評価されています。
「SFA機能全般」「MA機能全般」「価格」など、多くの項目でHubSpot Sales Hubの方が高スコアを獲得していますが、「販売分析ソフトの予測分析」「生成AI機能全般」などはZoho CRMの方が評価を得ています。
また、Zoho CRMを導入している組織は中小企業が62.1%を占めており、大企業での実績は比較的少ないことが特徴です。導入企業の規模は、HubSpot Sales Hubの特徴と似通っています。
Zoho CRMは他製品と比較して価格が手頃で、企業の成長にあわせてアップグレードできることから、小規模な組織にも導入しやすいことが読み取れます。
Dynamics 360 Sales
Dynamics 365 Salesは、米Microsoft.comが提供するビジネスアプリケーションパッケージ「Dynamics 365」のなかのCRM/SFAツールです。OfficeやOutlookなどとシームレスに連携できることから、Microsoft製品を使い慣れた組織には導入しやすいツールだといえます。
Dynamics 365 SalesとHubSpot Sales Hubを比較した、2024年2月時点におけるG2の総合評価スコアは以下のとおりです。
引用:G2「Compare Dynamics 365 Sales and HubSpot Sales Hub」(2024年7月時点の情報)
|
レビュー数 |
総合評価スコア |
Dynamics 365 Sales |
1,587件 |
星3.8 |
HubSpot Sales Hub |
11,351件 |
星4.4 |
レビュー担当者による総評ではHubSpot Sales Hubが全般的に評価されており、ユーザーからの評価においてもほとんどの項目でHubSpot Sales Hubの方が高スコアを獲得しています。
一方、Dynamics 365 Salesの方が評価されている項目としては「CRMソフトのカスタマイズ」「サンドボックス/テスト環境」などが挙げられます。
Dynamics 365 Salesは拡張性が高く、小規模ビジネスでは豊富な機能を持て余す可能性があります。HubSpot Sales Hubと比較して規模の大きい企業の導入割合が高くなっていることからも、社内でMicrosoft製品を利用している中堅〜大企業に適したツールだといえるでしょう。
まとめ
本記事では、HubSpotのSFA「Sales Hub」の評判を、他社のSFAツールと比較して紹介しました。Sales Hubは無料版からスモールスタートできることやUIのわかりやすさなどから、小規模事業者を中心に業界を問わず高く評価されているSFAです。
活用しやすい企業の特徴や価格、強みはツールごとに異なります。ぜひ本記事の内容を参考に、自社に適したSFAを選定してみてください。