情報システム部門から「CRMのバックアップはどうなっていますか」と聞かれて、即答できる営業企画の担当者は多くありません。HubSpotはクラウドサービスであり、インフラの冗長化はベンダー側の責任範囲です。しかし「誤って一括更新をかけて旧値が消えた」「退職者が所有していたレコードをまとめて削除してしまった」といった事故は、ベンダーの冗長化では救えません。救えるのは、自社が外部に持っているスナップショットだけです。
一方で現場からは、別の相談が同じ頻度で上がってきます。エクスポートしたCSVをExcelで開いたら日本語が化けた、電話番号の先頭のゼロが消えた、日付が勝手に別の日になった、というものです。どちらもHubSpotの不具合ではなく、エクスポートの仕様とExcelのファイル解釈の組み合わせで起きています。
本記事では、HubSpotのエクスポートにどういう種類があり、何がどこまで出て、どの上限に当たるのかを整理したうえで、定期バックアップの運用設計と、Excelで開いたときの3つの典型的な事故への対処をまとめます。あわせて、個人情報保護法の観点からエクスポート権限とファイル保管に何を決めておくべきかも扱います。記載内容は2026年10月23日時点のものです。
目次
最初につまずくのが、ここです。社内で「エクスポート」と言ったとき、人によって指しているものが違います。画面からCSVを落とすことなのか、アカウント全体のバックアップを取ることなのか、特定のコンタクト1件の個人データを開示用に出すことなのか。この3つは、機能も権限も目的も別物です。
エクスポートできる対象は、アカウント関連情報、コンテンツ、CRMデータ、データ管理、マーケティングコンテンツ、レポートというカテゴリごとに一覧化されています。まずこの一覧を開いて、自社が必要としているものがどのカテゴリに属するのかを特定するところから始めてください。
レコードのエクスポートは、ビュー単位で現在のプロパティ値と関連付けを取り出す操作です。HubSpotの外でデータを分析したり、社外の関係者と共有したり、スナップショットのレポートを得るための機能で、全プランで利用でき、必要なのはエクスポート権限です。
対してバックアップは、復旧を目的とした別機能です。意図しない変更・削除・データ損失が起きたときに復旧可能なスナップショットを得るための機能で、実行にはスーパー管理者権限が必要、対象プランも限られます。
私たちがクライアントのデータガバナンスを設計する際は、この2つを明確に分けて台帳化しています。業務でCSVを落とすのは日常業務、バックアップは統制です。同じ「エクスポート」という言葉で両方を運用ルールに書くと、権限設計が破綻します。
CRMレコード以外のエクスポートは、アカウント移行や解約時に必要になります。HubSpotアカウント間で全データをマージする方法は存在せず、資産を移す最善の方法はエクスポートしてからインポートまたは再作成することです。移行の見積もりを作る際は、この前提を最初に共有してください。
| 対象 | 主なエクスポート手段 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| CRMレコード | ビューからのエクスポート、バックアップ、Exports API | 関連付けの含め方で列構成が変わる |
| セグメント(リスト) | リストからのエクスポート | セグメントのエクスポートでは関連レコードを出せない。関連付けが必要ならビューをエクスポートする |
| プロパティ定義 | プロパティ定義のエクスポート | 棚卸しの起点。未使用プロパティの特定に使う |
| プロパティ履歴 | プロパティ履歴のエクスポート | 値を持ったことがあるレコードのみが対象 |
| タスク | タスクのエクスポート | ビュー単位。タスクのプロパティと関連レコードIDが出る |
| ウェブコンテンツ | ウェブコンテンツのエクスポート | 移行・解約時に必要。CRMデータとは別工程になる |
| 特定コンタクトの個人データ | コンタクトデータのエクスポート | 開示請求への対応用。機微な内容を含むため共有範囲を限定する |
この表のうち、棚卸しの起点になるのはプロパティ定義のエクスポートです。使われていないプロパティが数百残っているポータルでは、レコードのエクスポートをかけるたびに不要な列が増え、ファイルが扱いにくくなります。
「全部出してください」という依頼を受けたとき、実際に何が出るかを把握していないと、後から「この項目が入っていない」というやり取りが発生します。押さえておくのは、既定で出る範囲と、カスタマイズで変えられる範囲の2つです。
既定では、ビューに含まれるプロパティと関連付けだけがファイルに含まれます。関連付けについては、1つの関連付け列あたり最大1,000件の関連レコードIDと、関連レコード名が出力されます。
カスタマイズを開くと、含める範囲を変えられます。プロパティについては、ビュー内のプロパティと関連付け(既定)、レコード上の全プロパティ(関連付けなし)、全プロパティと関連付け、の3択です。関連付けについては、関連レコード名、最大1,000件(既定)、すべての関連レコード(CSVのみ)から選べます。
列の並び順も選択によって変わります。ビュー内のプロパティのみをエクスポートした場合はビューで設定したプロパティ順、全プロパティをエクスポートした場合はアルファベット順(Record IDのみ先頭)、全プロパティと関連付けの場合は関連付けが末尾に付きます。移行や突合で列位置に依存する処理を組む場合は、この違いが効いてきます。
複数のメールアドレスを持つコンタクト、複数のドメインを持つ会社については、すべてを含めるチェックボックスが別に用意されています。既定ではすべては出ません。名寄せや重複調査を目的にエクスポートするなら、必ずここを有効にしてください。
エクスポートには技術的な制限があり、大規模ポータルでは、これが実務上のボトルネックになります。
| 項目 | 上限・挙動 | 設計への影響 |
|---|---|---|
| 実行回数 | ローリング24時間で最大300回、同時実行は最大3件。超過分はキューに入る | 定期エクスポートを自動化する場合、手作業の分と合算して設計する |
| 分割 | CSV・XLSXで1,000,000行超、XLSで65,535行超の場合は複数ファイルがzipで届く | 後続処理を1ファイル前提で組むと失敗する |
| 圧縮 | CSVは結果が2MBを超えると自動でzip化される | 自動取り込みの処理に解凍ステップが必要になる |
| 列数 | XLSは256列、XLSXは16,384列。超過分の列はファイルに含まれない | 列数が多いならCSVを選ぶ。CSVには列数の制限がない |
| 所要時間 | 大規模なエクスポートは完了まで数時間かかることがある | 締め切り直前の実行を前提にしない |
特に注意すべきは列数の超過です。列が切り捨てられてもエラーにはならず、ファイルは正常に届きます。プロパティ数が多いポータルでXLSXを選ぶと、気づかないまま欠損したファイルを配ることになります。私たちは、エクスポートの標準フォーマットをCSVに固定し、Excelで直接開く運用は後述の手順とセットで案内しています。
エクスポートを実行すると、ダウンロードリンクを含むメールが届きます。このダウンロードリンクは30日後に期限切れになり、過去のエクスポートはエクスポートログに3年間表示されたあと、自動的に削除されます。
この2つの期間は、監査対応で意味を持ちます。「誰がいつ何をエクスポートしたか」はログで3年間追える一方、ファイルそのものは30日で取得できなくなります。つまり、エクスポートしたファイルの保全は自社の責任です。保管ルールを決めないまま運用すると、個人データを含むCSVが担当者のローカルPCに散在する状態になります。
ここからは復旧を目的としたバックアップの話です。レコードのエクスポートでも代用はできますが、オブジェクトごとに手で回す運用は続きません。HubSpotには専用の機能があり、プランによって可能な頻度が変わります。
CRMデータバックアップは、Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Data Hub・Content HubのStarter、Professional、Enterpriseで利用できます。頻度の要件は次のとおりです。StarterまたはProfessionalのサブスクリプションでは週に1回、Enterpriseのサブスクリプションでは24時間に1回のバックアップが可能です。さらに、定期バックアップのスケジュール設定はEnterpriseのみで、週に1回または隔週のいずれか、曜日を指定して実行できます。
手動バックアップは、設定のデータ管理配下にあるBackup & Restoreから実行します。完了すると通知が届き、そこから14日以内にファイルをダウンロードできます。ダウンロードされるzipファイルには、オブジェクトごとのCSVが含まれます。レコードが存在しないオブジェクトのファイルは含まれません。
この「14日」という保持期間は、運用設計上の要注意点です。Enterpriseで毎日バックアップを走らせても、HubSpot側に残るのは14日分です。長期保管が必要なら、自社のストレージへ退避する仕組みを別に用意する必要があります。
バックアップに含まれるオブジェクトは、コンタクト、会社、取引、チケット、カスタムオブジェクト、製品、通話、会話、タスクです。そして、ここが肝心なところで、関連付け(associations)とアクティビティデータは含まれません。
この仕様を知らずに「バックアップがあるから大丈夫」と判断すると、復旧時に取引とコンタクトのつながりが失われていることに気づきます。関連付けまで含めて保全したいなら、関連付けを含めたビューのエクスポートを併用する設計が必要です。私たちがバックアップ方針を作るときは、「バックアップ+関連付けを含むエクスポート」の2本立てを標準にしています。
もう一点、機微情報の扱いにも注意が要ります。Sensitive Dataを格納するプロパティがある場合、その値はCRMデータバックアップに含まれるため、バックアップファイルは安全な場所に保管する必要があります。また、処理中に行われたレコードやプロパティの変更は、エクスポートされたデータに反映されない場合があります。
バックアップの実行にはスーパー管理者権限が必要です。HubSpotの権限体系のなかでスーパー管理者は限られた人数に絞るのが原則であり、バックアップの実行者も自動的に限定されます。
問題は、ダウンロードしたファイルの置き場です。HubSpot側のインフラはAWS上で運用され、データセンターの所在地も米国東部・西部、カナダ、オーストラリア、EU(ドイツ)から割り当てられます。しかし、ダウンロードした先の管理は完全に自社の責任範囲です。
私たちが保管ルールを設計するときに決めているのは、保管先(アクセス制御のかかった社内ストレージに限定)、保持期間(世代数で定義)、アクセスできる役割、そして廃棄の手順の4点です。この4点を文書化していないと、個人情報保護法上の安全管理措置を説明できません。安全管理措置の具体的な内容は個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の別添に、組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置として整理されています。HubSpot側のセキュリティー設定はHubSpotセキュリティー設定とはも併せてご覧ください。
月次・週次で同じエクスポートを人が実行する運用は、担当者が変わった時点で止まります。定期運用にするなら、APIで自動化するか、スケジュール機能に寄せるかのいずれかになります。
エクスポートの開始は、/crm/v3/exports/export/async へのPOSTで行います。OAuthアクセストークンで認証する場合、アプリをインストールするユーザーは crm.export スコープを付与するためにスーパー管理者である必要があります。
リクエストで指定できる主なフィールドは、exportType(VIEWまたはLIST)、format(XLSX・CSV・XLS)、exportName、language、objectType、associatedObjectType、objectProperties です。関連オブジェクトは1リクエストあたり最大4つまで含められます。言語にはJAを含む複数が用意されています。
自動化を設計する際、私たちがまず確認するのは実行回数の上限との関係です。ローリング24時間で300回という上限は、オブジェクトごと・ビューごとに細かく分けて回すと意外に早く到達します。対象を絞って回数を抑える設計が必要です。
バックアップよりも粒度の細かい復旧手段として、プロパティ履歴のエクスポートがあります。過去の値を復元する用途に使え、直近14日間のCRM変更を一括で復元する機能も別に用意されています。
ただし履歴の保持件数には上限があります。保存されるリビジョン数の上限はオブジェクトによって異なり、コンタクトのプロパティは最大45件、会社・取引・チケット・カスタムオブジェクトのプロパティは最大20件です。これはHubSpot内での変更とAPI経由の変更の両方を含めた数です。
つまり、1つのプロパティを頻繁に書き換えるワークフローがあると、履歴は短期間で上限に達し、古い値は追えなくなります。重要なプロパティについては、履歴に頼らず定期エクスポートでスナップショットを残す設計が必要です。プロパティ設計の考え方はHubSpotプロパティーとはに整理しています。
ここからは現場でもっとも相談が多い領域です。結論から言えば、3つの事故はいずれもHubSpot側ではなくExcelがファイルをどう解釈するかで決まります。そして、すべて回避できます。
前提として、Excel自体にも上限があります。1枚のワークシートの行数と列数の上限は1,048,576行×16,384列です。HubSpot側の分割挙動がこの値に合わせられているのは、そのためです。
日本語が化けるのは、ファイルの文字セットとExcelが想定する文字セットが一致していないときです。テキストインポートウィザードでは、手順1の「ファイルの配信元」でテキストファイルに使われている文字セットを選択できます。たとえばコンピューターが文字セット1251(キリル文字、Windows)に設定されていても、ファイルが文字セット1252(西ヨーロッパ文字、Windows)で生成されているなら、設定を1252に変更する必要があります。
日本語環境で起きるのも、これと同じ構造です。したがって回避策は、CSVをダブルクリックで開かず、文字セットを明示して読み込むことです。具体的には、データタブの「テキストまたは CSV から」でファイルに接続してインポートします。
Excelでテキストインポートウィザードを強制的に実行したい場合は、拡張子を .csv から .txt に変更してから開く方法もあります。古いバージョンのExcelが混在する組織では、この手順を手順書に書いておくと問い合わせが減ります。
Excelで .csv ファイルを開くと、Excelは現在の既定のデータ書式設定を使って各列の解釈方法を決めます。そのため、.csv ファイルのデータ列の書式がMDYでExcelの既定のデータ形式がYMDである場合は、テキストインポートウィザードを使う必要があります。
つまり、月と日の順序が入れ替わるのは、Excelがファイル側の並び順を知らないまま解釈するためです。ウィザードの手順3では、列のデータ形式として「日付」を選び、日付ボックスでYMDやMDYといった日付の種類を指定できます。
変換が意図しない結果になる可能性がある場合、Excelは列を「全般」としてインポートします。日付列が文字列のまま取り込まれたように見えるのは、この挙動です。取り込み後は、文字列形式の日付を日付形式に変換する機能で直せます。
電話番号や郵便番号、社内コードの先頭ゼロが消えるのは、Excelがその列を数値として解釈するためです。先頭のゼロを含む数値の列をテキストに変換して先頭のゼロを維持したい場合は、テキストインポートウィザードを使います。
手順としては、ウィザードの手順3でその列を選択し、列のデータ形式として「テキスト」を指定します。すべての数字の列をExcelのテキスト形式に変換する場合も、同じく「テキスト」を選びます。
私たちがクライアントに手順書を渡すときは、この3つをまとめて「CSVはダブルクリックで開かない」という1行のルールにしています。例外を認めると、手順を守らない人が必ず出ます。そして、ダブルクリックで開いて保存し直したファイルを再インポートすると、桁落ちした電話番号がそのままCRMに書き戻されます。
エクスポートは単独では完結しません。多くの場合、加工して戻すところまでが一連の作業です。そして、戻すとき(インポート)には別の上限が待っています。
インポートファイルの要件は、ファイル形式が .csv、.xlsx、.xls、列数は1,000列未満、外国語文字を含む場合はUTF-8エンコードであることです。
サブスクリプション別の上限もあります。無料ツールの場合は、ファイルサイズ20MBまで、1日あたり50回まで、1日あたり500,000行まで、同時実行は3件まで(うち10,000行を超えるものは2件まで)です。Smart CRMまたはStarter・Professional・Enterpriseのサブスクリプションがある場合は、ファイルサイズ512MBまで、1日あたり500回まで、1日あたり10,000,000行まで(1ファイルあたり1,048,576行)、インポートAPI経由では1日あたり80,000,000行までです。これらの上限はローリング24時間で適用され、特定の時刻にリセットされるわけではありません。
ここで効いてくるのが、エクスポート側の分割挙動です。1,000,000行を超えるエクスポートは複数ファイルに分かれて届きます。インポート側の1ファイルあたりの上限が1,048,576行であることを考えると、分割されたファイルをそのまま戻す運用が自然な形になります。無理に結合する処理を挟むと、Excelの行数上限に当たります。
APIでインポートする場合は、Imports APIの仕様に沿って組みます。インポート全般の実務的な注意点はHubSpotにデータをインポートする方法で解説しています。外部システムとの往復を前提にするなら、CSVの手運用ではなくHubSpot Data Studioのようなデータ統合の仕組みを検討する段階かもしれません。
エクスポートは、CRMの中にある個人データを外に出す操作です。したがって、機能の話として閉じることはできません。日本国内で事業を行う以上、個人情報保護法の枠組みのなかで運用ルールを決める必要があります。
個人情報保護法第33条第1項により、本人は個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求できます。同条第2項では、請求を受けたときは本人が請求した方法により遅滞なく開示しなければならず、その方法による開示に多額の費用を要する場合その他困難である場合には書面の交付による方法とすることが定められています。
電磁的記録の提供による開示が請求できるという点が、実務上の要です。CRMからのエクスポートは、この請求に応じるための具体的な手段になります。HubSpotではこうした請求に通常30日以内に対応すべきとされており、データリクエストマネージャーから直接エクスポートできます。
エクスポートできる内容は、既定のコンタクトプロパティとその履歴値です。加えて、カスタムコンタクトプロパティと履歴、コンタクトのアクティビティ(メール・メモなど)、関連付けをそれぞれチェックボックスで追加できます。コンタクトデータのエクスポートは個人データを含むため、意図した目的のためにのみ本人と共有してください。
請求の受付窓口そのものをHubSpot上に作ることもできます。設定するのはデータプライバシーリクエストページです。削除請求に応じる場合は、永久削除にブロックリスト機能が伴う点に注意してください。
エクスポートしたファイルの紛失は、個人データの漏えいに該当し得ます。法第26条に基づく報告には、期限が具体的に定められています。速報については、報告対象事態を知った時点から概ね3日から5日以内が「速やか」の日数の目安であるとされています。確報については、規則第8条第2項として、当該事態を知った日から30日以内(規則第7条第3号に定める事態である場合は60日以内)に報告しなければならないと定められています。
この期限から逆算すると、エクスポートのログが重要になります。何が、いつ、誰によって、どの範囲で持ち出されたのかを即座に特定できなければ、速報の内容が埋まりません。前述のとおり、エクスポートログは3年間保持されます。インシデント対応手順には、このログの参照先を明記しておいてください。
あわせて、ガイドライン(通則編)には法第23条の安全管理措置、法第24条の従業者の監督、法第25条の委託先の監督が定められています。外部パートナーにエクスポート権限を渡す場合は、委託先の監督という枠組みのなかで契約と確認手順を整える必要があります。漏えい等報告の義務化を含む改正の経緯は個人情報保護委員会「令和2年 改正個人情報保護法について」にまとまっています。
必要な権限は操作ごとに異なります。レコードのエクスポートにはエクスポート権限、コンタクトデータのエクスポートにはスーパー管理者またはCRMエクスポート権限、プロパティ履歴のエクスポートにはCRMエクスポート権限と対象オブジェクトのEdit All権限が要ります。
私たちが権限を設計するときの原則は、エクスポート権限を職務ではなく業務単位で付与することです。「営業は全員エクスポート可」ではなく、「月次レポート作成の担当者」「データ移行プロジェクトのメンバー」といった単位で付与し、業務が終われば回収します。権限セットの作り方はHubSpot権限とはで解説しています。
最後に、私たちがクライアントのエクスポート・バックアップ運用を整備するときの順序を示します。機能の設定から入ると、必ず後戻りします。先に決めるのは目的と保管です。
各工程の所要期間はポータルの規模と既存ルールの有無で変わるため、ここでは順序と完了条件のみを示します。
| 順序 | 決めること | 完了条件 |
|---|---|---|
| 1 | 目的の分類(日常業務・復旧・開示対応・移行) | 社内文書で4つの目的が別物として定義されている |
| 2 | 目的ごとの対象データと粒度 | 関連付けとアクティビティを含めるかが目的ごとに決まっている |
| 3 | 頻度と世代 | プラン要件(週1回/24時間に1回)と整合した頻度が決まっている |
| 4 | 保管先・保持期間・廃棄手順 | ダウンロード後のファイルの置き場とアクセス権が文書化されている |
| 5 | 権限の付与・回収ルール | エクスポート権限の保有者一覧と棚卸しの頻度が決まっている |
| 6 | ファイル取り扱い手順 | CSVをダブルクリックで開かない手順が手順書に入っている |
| 7 | インシデント時の参照先 | エクスポートログの確認手順が報告フローに組み込まれている |
この順序で整備しておくと、情報システム部門や監査から質問が来たときに、画面を開かずに答えられる状態になります。AI活用を前提としたデータ基盤の整備についてはAI-Ready基盤の作り方、他システムからの移行を伴う場合はSalesforceからHubSpotへの移行ガイドも併せてご覧ください。
エクスポートとバックアップについて現場からいただく質問のうち、本文の流れには乗らないものをまとめました。
インフラの冗長化と、自社が復旧に使えるバックアップは別の話です。顧客データは災害復旧とバックアップの目的で、同じ地域内の他のデータセンターにも複製されます。一方、誤った一括更新や削除から自社の判断で戻すための機能はCRMデータバックアップです。前者はサービス継続のため、後者は運用事故のためのものと整理してください。
CRMデータバックアップの対象は、Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Data Hub・Content HubのStarter、Professional、Enterpriseです。無料ツールのみのアカウントで同機能が使えるかについて、公式ドキュメントに明示的な記載は確認できませんでした。無料ツールの範囲で運用する場合は、レコードのエクスポートを定期的に実行し、関連付けを含めたファイルを自社で保管する方法になります。
列構成と値の形式が要件を満たしていれば戻せますが、そのままの再投入は推奨しません。列数は1,000列未満、外国語文字を含む場合はUTF-8エンコードという要件があります。全プロパティをエクスポートしたファイルには計算プロパティやHubSpot側で自動計算される項目が含まれるため、更新対象の列だけに絞ってから投入してください。また、Excelで開いて保存し直したファイルは、文字コードや先頭ゼロが変化している可能性があります。
エクスポートのダイアログでCustomizeを開き、プロパティの範囲で「全プロパティと関連付け」を、関連付けの範囲で「すべての関連レコード」を選びます。すべての関連レコードを出せるのはCSVのみです。なお、セグメントのエクスポートでは関連レコードを出せないため、関連付けが必要な場合はビューのエクスポートを使ってください。
既定の設定では、1つの関連付け列あたり最大1,000件の関連レコードIDが出力されます。これを超える場合は、「すべての関連レコード」のオプションを選び、ファイル形式をCSVにする必要があります。大口顧客や代理店を多数抱える製造業のポータルでは、この上限に当たるケースが実際にあります。
ダウンロードリンクは30日後に期限切れになり、過去のエクスポートはログに3年間残ります。期限が切れたファイルの再ダウンロードが可能かについて、公式ドキュメントに明示的な記載は確認できませんでした。運用としては、同じ条件で再度エクスポートを実行するのが確実です。そのうえで、必要なファイルは受領後すぐに社内の保管先へ移す運用に切り替えてください。
プロパティ履歴のエクスポートで過去の値を確認でき、直近14日間のCRM変更を一括で復元する機能もあります。ただし履歴のリビジョン数には上限があり、コンタクトのプロパティは最大45件、会社・取引・チケット・カスタムオブジェクトのプロパティは最大20件です。更新頻度の高いプロパティでは、古い値がすでに失われている可能性があります。まず履歴をエクスポートして、復元可能な範囲を確認してください。
個人データを含む場合、委託先の監督の枠組みで管理する必要があります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)には、法第25条として委託先の監督が定められています。実務としては、渡す範囲を目的に必要な列と行に限定し、受渡しの方法と保管・廃棄の条件を契約で定め、作業完了後に削除の報告を受ける形にしてください。コンタクトデータは機微な性質のため、意図した目的のためにのみ共有してください。
本記事に記載したHubSpotの仕様・上限値・サブスクリプション要件、Microsoftの製品仕様、および個人情報保護委員会のガイドラインの記述は、2026年10月23日時点の各公式ドキュメントおよび法令の内容に基づいています。