2023年9月6日から8日までボストンで開催されている「INBOUND23」。今年も注目のキーノート「HubSpot Spotlight」で、HubSpotの新機能が発表されました。
顧客と一貫したつながりを持つ企業が、さらなる成長を継続するー。
AI(人工知能)が搭載されたHubSpotは、顧客情報を蓄積するだけではなく、企業が顧客をより深く理解するためのインテリジェンスを提供します。本記事では、5つのカテゴリーでのメジャーアップデートについて概要をお伝えします。
AI搭載とエコシステムで強化された「カスタマープラットフォーム」
HubSpotのカスタマープラットフォームは、「スマートCRM」「Hubs」「コネクテッドエコシステム」の3層で構成されます。CRMだけではなく、Marketing HubやSales Hubなどの各HubにもAIが搭載されていて、顧客との強固な関係づくりを促進します。
1. スマートCRM
データを蓄積する単なる「オールインワンCRM」と違い、スマートCRMは、AIを活用してプラットフォーム全体を強化し、業務の効率化とビジネスの成長を促進します。
2. エンゲージメント Hubs
Marketing、Sales、Service、CMS、Operations、Commerceの各Hubは、カスタマージャーニー全体を通して、顧客と直接関わる部門が「顧客とつながることができる」ツールを提供します。
3. コネクテッドエコシステム
アプリマーケットプレイス、HubSpotアカデミーが提供する教育コンテンツ、コミュニティーネットワークが、顧客の課題解決をサポートし、カスタマープラットフォームを拡大します。
1. Sales Hub Refresh - 生産性&顧客との関係性を促進する営業ツール
営業を取り囲む環境は、かつてないほど困難になっています。購買者は、執拗にアプローチする営業担当者に嫌気がさす一方で、営業担当者の意欲は低下しています。チームのパフォーマンスは低迷し、予算は伸び悩み、採用もままならない。営業リーダがフォーキャストを達成することも不可能な状況です。
営業担当者は非営業活動に多くの時間を費やしていて、顧客に費やす貴重な時間には深みや洞察が欠けています。営業リーダーは、より少ない労力で目標を達成し続けることにプレッシャーを感じているでしょう。
優れた営業チームは顧客との関係性を重視し、質の高い成果を追求しています。商品を押し売りするのではなく、問題を解決するために努力し、ニーズを理解します。また、「見込客」や「顧客」ではなく一人の人間として接して共感を示します。
HubSpotのSales Hubは、顧客との関連性を通して生産性を高めます。複雑な設定がないので、導入の障壁が低く、時間のかかるタスクを自動化できます。Sales Hubは単に時間を節約するだけではありません。営業担当者のアプローチをパーソナライズし、見込み客が価値を感じるために必要なすべてのコンテキストを提供します。さらに、営業リーダーは、統合されたインサイトを活用することで、大規模な予測が可能となります。
スマートプロスペクト(見込み客リストの作成)
Sales Hubのプロスペクトツールは、商談が可能な見込み客を発掘し、関係性を重視し、パーソナライズされた営業コミュニケーションを可能にします。これにより、商談作成率が12%向上することが見込まれます。
- 営業活動管理
営業担当者のワークスペースでは、アプリを横断することなく、すべてのアクティビティーが1ページにまとめて表示されます。タスクやミーティングに集中して取り組めます。自身に割り当てられたコンタクトリスト(Lead Management)や機能が改善されたミーティングツールも、日々の営業活動を効率化します。
- スマートシーケンス
シーケンスのEメールでABテストが可能になりました。また各ステップごとの分析ができたり、取引作成率やシーケンスに影響された取引の総売上額の測定ができます。
- リードのスムーズな引き継ぎ
HubSpotフォーム送信時に、サンキューページのメッセージやリダイレクト先を最適化することで、リードを自動で選別し適切な担当者に割当を行います。
- コンテンツアシスタント
見込み客に関連性のある営業Eメールを、生成AIを使ってより早く作成できます。必要なのは、Eメールで伝えたいポイントとリサーチで得たインサイトを入力するだけです。
- モバイルプロスペクティング
HubSpotのモバイルアプリから、見込み客へのアプローチが可能です。例えば、アプリでシーケンスを管理したり、見積もり書を確認したり、QRコードの読み取りからコンタクトの作成ができます。
収益成長を加速する取引管理
顧客の満足度を高め、AIの搭載で洞察力が向上された取引管理ツールを活用することで、より多くの取引を速やかに成立させることが可能になります。これにより、取引成立数は36%、取引成立率は109%の向上が見込まれます。
- 取引検証ビュー(Deal Inspection)
取引タグ、パイプラインと取引進行速度、タッチポイントとアクティビティーの各機能により、優良な取引を見失うことは二度とありません。営業担当者はタスクの優先付けが容易になり、マネージャーは、効果的なコーチングを実施できます。
- フォーキャスティングインサイト
手動で送信したフォーキャストとAIによる予測を比較評価し、計画を達成するために必要な措置を講じます。月、四半期、年間の売上目標に対して収益がどのように推移しているか監視したり、予測の精度をあげるために、過去の予測データを活用することができます。
洞察に富んだスケールアップ
営業活動の分析とコーチングのための強力なレポーティングがあれば、プロセスの最適化や売上予測の向上により、洞察に富んだ規模拡大が可能になります。Sales Hubのレポートを使用している企業は、成約率が3.3倍向上しています。
見込み客のエンゲージメントレポート
コンバージョン率やコンタクトごとのアクティビティーを表示するレポートを活用して、改善の機会を素早く特定し、効果的な戦略を策定できます。
リードレポーティング
担当者が質の高い見込み客とどのようにコミュニケーションを取っているのか等、リード獲得から取引成立までの経緯を分析し、マーケティングと営業チームの目標に対してインサイトを提供します。
進行速度レポート(Velocity Report)
取引のジャーニーレポートでは、営業プロセスのボトルネックを特定し、商談を迅速に成立させるためのインサイトを提供します。
2. CRM カスタマイゼーション
CRMは、使いやすいだけでは不十分。柔軟にカスタマイズできるCRMは、顧客や市場の変化に対応でき、ビジネスの拡大に不可欠です。
- CRMのカスタマイズはできて当然(特にエンタープライズにおいて)
- チームが拡大するにつれ、さらにカスタマイズが必要となる
- カスタマイズは、顧客離れを防ぐ
- CRMカスタマイズは、収益を生み出し成長のポテンシャルがある
CRMをカスタマイズすると、ビジネス規模の拡大、収益、成長を促進できますが、時間、労力、コストもかかります。昨今のビジネス環境では、より少ない予算で、これまで以上に迅速に変化に対応することが求めらています。
HubSpot CRMのカスタマイズ
カスタマイズとは、CRMの中核となるデータモデルを変更することです。
データ モデル:
カスタムオブジェクト、プロパティー、関連付けラベルなどの利用において、CRM内でデータが視覚的にどう表現されるかを定義します。
設定:
各レコードのページ構成、一覧ページ、ボードビュー、条件付きレコード作成フォームなど、HubSpotで定義されている規定の設定を変更します。
拡張:
HubSpotが構築したコンポーネントを利用して、カスタム情報を表示できる新しいUI要素を作成します。これには、CRMコンポーネントやカスタムカードなどの機能の活用が含まれます。
CRM開発ツール
サードパーティーや社内システムと統合し、企業独自のビジネス要件やワークフローに合わせてHubSpotを拡張できます。HubSpot CRMのレコードページで使用するUI拡張(カスタムカード)を作成すると、より多くの情報を一元管理できます。
Reactを使用して、よりリッチでインタラクティブな拡張機能を構築し、チームの全体的な機能とユーザーエクスペリエンスを向上させます。
CRMデータコンポーネント
チームごとにレコードページの表示をカスタマイズして、担当者の生産性を高めます。利用可能な8つのCRMデータコンポーネントを使ってカスタムカードを作成し、データを視覚化できます。
- アカウントの収益を監視
レポートコンポーネントを使用して四半期ごとの収益レポートを表示し、時系列での傾向を簡単に確認できます。
- 関連コンタクトのフィルタリング
関連テーブルコンポーネントを使用すると、過去30日以内に作成され、Eメールアドレスを持つ関連コンタクトのフィルタリングされたビューを作成できます。
- 取引/チケットパイプラインステージの視覚化
ステージトラッカーコンポーネントを使用して、案件やチケットがどのパイプラインステージにあるかを視覚的に表示します。
- CRMデータコンポーネントのアクション拡張性
CRMレコードページでカスタムカードからアクションをトリガーできます。
CRMレコードページエディター
CRMレコードページエディターで、コンタクト・会社・取引・チケットなどのレコードページの中央の列をカスタマイズできます。企業ごとに、またチームごとにビジネスで必要とする重要な情報は異なります。必要な情報を適切な情報を提供することで、効率よく業務を進めることができ、優れた顧客体験を提供することができます。
3. HubSpot AIアシスタント
HubSpot Smart CRMは、AIに重点をおいています。Marketing HubやSales Hubなどの各Hubのツールにも、担当者のタスクに費やす時間を大幅に短縮するためにgrwAIが活用されています。顧客データの統合や重複の管理、顧客インサイトの取得、ソーシャル投稿などのコンテンツ作成、セールスEメール作成など、その用途はますます広がっています。
HubSpot AIアシスタント の機能
- ページのタイトルとメタディスクリプション作成
- ウェブサイトビルダー
- ソーシャルと広告の文章作成
- コンテンツアイディア生成
- コンテンツ作成アシスト(段落の作成や要約、文体変更など)
- レポート生成
- ランディングページ構築
HubSpot AIアシスタントについて詳しく見る
4. Commerce Hub
2021年にリリースされた商取引ツールが、「Commerce Hub」として機能強化+再構築されました。 Commerce Hubは、HubSpot内で支払いや請求書発行の全プロセスを実行できるようにします。企業は見積もりと支払いのツールを1つのプラットフォームに統合し、顧客の全体像を把握することで顧客インサイトを明らかにし、自動化を活用して時間とリソースを節約できます。
※Commerce Hub(HubSpotペイメント)は米国およびカナダでのみ利用が可能です。
HubSpot Commerce Hub の機能
- 請求書 [NEW]
- サブスク請求管理
- 見積書
- ペイメントリンク
- 自動請求
- HubSpotペイメント
- Stripe支払い処理
5. HubSpot SMS
※HubSpot SMSは米国およびカナダでのみ利用が可能です。アドオンとして提供され、別途オプション料金がかかります。
HubSpot SMSは、マーケティング担当者が顧客と即時的でパーソナライズされた方法でのコミュニケーションを可能にします。コンタクトのモバイル機器に直接アクセスができます。SMSの開封率は平均98%で、Eメールとは違う方法で注意を引き付け、エンゲージを高めるには適しています。HubSpotの慣れ親しんだ直感的な操作方法で、SMSキャンペーンを簡単に作成、送信、レポート作成ができます。
HubSpot SMSの機能
- 1:多数のメッセージ送信
- 「コンタクトの同意」の管理
- 直感的な編集画面
- AI コンテンツアシスタント
- SMS オートメーション(Beta)
- SMS レポート
その他の新機能については、HubSpotの「新機能のご紹介」ページもご参照ください。
まとめ
AI一色のHubSpot Spotlightでした。膨大な情報から、いかに「つながり」を見つけるか、コンテンツやEメールの作成をいかに効率よく行うか、いかに、人間がAIを利用するか。HubSpotには、ストレスなく利用できるAIが搭載されました。この数ヶ月の急激な変化がまた購買者の行動を変え、ビジネスもその変化やスピードに乗り遅れることなく、ついていかなければなりません。これからも、進化を続けるHubSpotが私たちのビジネス成長をサポートしてくれるでしょう。