MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み客の創出から購買意欲の醸成、商談までの一連のマーケティングプロセスを自動化するための手法やツールを指します。
株式会社Nexalが2023年5月に実施した「MAツール実装調査」によると、国内企業約63万社のうち、MAを導入している企業は9,444社となっており、導入率は1.5%という結果が明らかになっています。特に、上場企業におけるMA導入率は14.6%に達しています。
MAツールを導入することでマーケティングや営業の効率が向上し、作業時間の短縮やリード管理の改善を進められるため、結果的に売上や利益の増加が期待できます。
MAの導入には多くのメリットがありますが、ただ導入するだけでは失敗する可能性もあります。成功するためには、適切な導入ステップを踏み、失敗を避けるためのポイントを押さえておくことが重要です。
本記事では、MA導入の基本と導入ステップ、失敗を回避するポイント、ツールの選び方、導入事例について解説します。
現代のビジネス環境では、顧客に対する適切なタイミングでのアプローチが重要視されており、MA(マーケティングオートメーション)はそれらのマーケティングプロセスを効率化し、自動化するツールとして注目されています。
ここでは、MAの基本的な定義や機能と、注目されている理由、代表的なMAツールについて詳しく解説します。
MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み客の創出から購買意欲の醸成、商談化までの一連のマーケティングプロセスを効率化し、自動化するツールやその概念を意味します。
企業が受注数を増やすには、できるだけ多くの商談機会を確保することが重要ですが、多くの場合、情報収集や競合商品との比較が行われた上で、予算や購入時期などの条件が整った段階でようやく商談に進むことになります。
特にBtoBの分野では、初めて接触してから商談に至るまでに数カ月~数年かかることも少なくなく、見込み客一人ひとりに対して定期的に連絡を取り続け、商談の準備が整う時期を待つことが求められます。
しかし、営業担当者が数百~数千人の見込み客に対して個別に電話で状況確認を続けるのは非効率であり、商談のタイミングを逃してしまうと、結果として競合商品が選ばれるリスクもあります。
MAツールを活用することで、「顧客情報のリスト化」「メール配信」「ホットリードの抽出」などの作業を自動化し、マーケティングや営業活動の効率を高め、生産性を向上させることが可能です。
MAツールの主な機能として、以下が挙げられます。
以上の機能を効果的に活用することで、企業はマーケティングと営業のプロセスを最適化し、顧客とのエンゲージメントを強化することで、より高い成約率と持続的な成長を実現することができます。
(MAのイメージ)
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国内のMA市場は、2014年以来拡大を続けています。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2020年のDMP/MA市場規模は543億円でしたが、2026年には865億円にまで成長すると予測されています。
MA(マーケティングオートメーション)を導入する企業が増加し始めた背景には、インターネットの普及とそれに伴う法人営業手法の変化があります。
令和4年に行われた消費者庁の「消費者意識基本調査」によると、20代の消費者は商品やサービスに関する情報収集の際、「SNSでの口コミ・評価(52.3%)」や「公式サイト(30.8%)」を重視していることが分かっています。
引用:令和4年版消費者白書 第1部第2章 【特集】 変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組|消費者庁
また、株式会社グリーゼの「BtoB製品購入プロセスにおける Webマーケティングの重要性(2023年版)」のアンケート調査によると、見込み客の約8割が、営業担当者との商談に至る時点ですでに製品やサービスの選定を完了していることが明らかになっています。
この傾向から、営業担当者から導入検討段階のリードへの接触のタイミングが以前よりも難しくなっているといえます。
そのため、多くの企業がリードとの初期接触を自動化し、適切なタイミングで最適な情報を提供するために、MAの導入を急速に進めていると考えられます。
代表的なMAツールとして、以下が挙げられます。
これらは、世界的にトップクラスのMAツールとして知られています。
また、日本国内での代表的なMAツールには、以下のようなものがあります。
MAツールには国内・海外問わず多くの製品があり、それぞれ異なる特徴を持っています。それらの違いを理解した上で、自社のニーズに最適なツールを選ぶことが重要です。
MA(マーケティングオートメーション)を導入することで、時間やリソースの最適な配分、顧客データの一元管理、商談機会の増加など、さまざまなメリットがあります。ここでは、MAの導入の具体的なメリットについて解説します。
MAを導入することで、マーケティング業務の効率化と自動化が進み、大幅な作業時間の短縮を実現できます。
例えば、リードジェネレーションやリードナーチャリングなど、従来は手作業で行われていた業務を自動化することで、マーケティング担当者はより戦略的な業務に集中することができるようになり、全体の生産性を向上させることが可能です。
効率化と自動化による作業時間の短縮は、チーム全体での業務負担を軽減し、迅速な意思決定や施策の実行にもつながります。これにより、マーケティング活動全体のスピードが向上し、市場の変化や競合他社の動きに対しても迅速に対応できるようになるため、企業としての競争力の強化が期待できます。
リード管理は、MA導入の大きなメリットの一つです。営業やマーケティングの領域における「リード(Lead)」とは、「潜在的な顧客や見込み客」を意味します。
リードはまだ取引が成立していない段階ですが、商品やサービスに対して興味を示しているか、関心を持っている可能性があるため、営業活動やマーケティング活動のターゲットとなります。
MAツールを活用することで、獲得したリード情報を一元管理し、効率的にセグメント分けすることができます。
1st Penguin株式会社が実施した「MA導入に関するアンケート調査」では、現在のMAサービスに対する期待機能として、68.4%の回答者が「セグメントごとのマーケティング強化」をもっとも重視していると答えました。
引用:1st Penguin株式会社 プレスリリース|総務の森
リードは、その属性や行動履歴に基づいてリードの温度感を把握し、購買意欲が高い「ホットリード」と、それほど購買意欲が高くない「コールドリード」に区分できます。
リードを購買意欲の度合や行動・属性で区分することで、営業担当者はもっとも効率的なタイミングでアプローチを行うことが可能になり、商談の成功率を高めやすくなります。
また、MAツールにはスコアリング機能が備わっており、リードの行動や属性に基づいてスコアを付与することも可能です。このスコアに基づき、営業部門は優先的にアプローチすべきリードを識別し、フォローアップの効率化を図れます。
さらに、MAツール上のリードの情報はリアルタイムで更新されるため、状況に応じた柔軟な対応が可能となり、リード管理の精度が向上します。
MAツールの導入により、顧客体験の向上も期待できます。これは、顧客の購買プロセスに合わせたパーソナライズされたコンテンツを提供することで、顧客にとって最適な情報を最適なタイミングで届けることができるようになるためです。
顧客満足度が向上することで、結果的にリテンション率(顧客維持率)の改善にもつながります。
例えば、メールマーケティングにおいては、顧客の興味関心に応じたコンテンツを自動配信することで、顧客との関係性を深めることが可能です。
リピート購入を促進するためのキャンペーンを適切に実施することで、顧客のロイヤルティを高め、長期的な関係を築くことにつながります。さらに、顧客の購買履歴や行動データを活用することで、クロスセルやアップセルの機会を逃さず、売上の増加にも貢献します。
MA導入のメリットとして、データに基づいたマーケティング戦略の強化もあげられます。
MAツールでは、顧客の行動データやキャンペーンの効果測定データをリアルタイムで収集・分析できるため、マーケティング施策の効果を迅速に評価し、次の施策に反映させることが可能です。
これにより、マーケティング施策のPDCAサイクルを効率的に回すことができ、より精度の高い戦略を構築できます。
また、データを活用することで、顧客のニーズを的確に把握し、よりパーソナライズされたマーケティング施策を展開することが可能になります。そのため、マーケティングのROI(投資対効果)を最大化し、企業の成長を促進することが期待できます。
MA(マーケティングオートメーション)の導入は、単なるツールの追加ではなく、企業のマーケティング戦略全体を見直し、効率化するための重要な機会といえます。MAの効果を最大限に引き出すためには、計画的にステップを踏む必要があります。
ここでは、MA導入のステップとその具体的な手順を詳しく見ていきましょう。
MAの導入を成功させるためには、まずその目的と目標を明確に設定することが不可欠です。MAツールの導入がビジネスにどのように貢献するのか、その具体的な目的を言語化しましょう。
例えば、「リード獲得数を月間で20%増加させたい」「マーケティングキャンペーンの効果を測定し、ROIを30%改善したい」といった具体的な目標を設定します。
リードの創出や購買意欲の醸成、営業効率の向上、マーケティング活動の自動化など、最終的な目的によって導入するMAツールの機能や設定が大きく変わります。
また、MA導入にあたってはペルソナ(ターゲット顧客像)やカスタマージャーニー(顧客の購買プロセス)を言語化することも重要です。
ペルソナを具体的に定義することで、どのようなリードをターゲットにするのかが明確になり、その結果としてMAツールの機能や設定が最適化されます。
具体的には、ターゲット顧客の業種・役職・課題・ニーズなどを詳しく設定し、それに基づいてMAツールの設定を行います。
カスタマージャーニーの明確化は、顧客がどの段階でどのようなアプローチを必要とするかを把握し、適切なタイミングでのマーケティング施策を設計するために役立ちます。顧客が認知から購入に至るまでのステップを洗い出し、それぞれのステップでMAツールをどのように活用するかを決定しましょう。
次に、MAツールの選定を行います。ツール選定は、MA導入の成功を左右する重要なステップの一つであるため、以下の要素を慎重に考慮する必要があります
①必要な機能の洗い出し
課題の解決や目的を達成するために必要な機能を洗い出しましょう。導入の目的に応じて、リードの獲得・管理・育成・分析など、どの機能が必要なのかを明確にします。
具体的には、リードの自動スコアリングやメールキャンペーンの自動化、カスタマーサポートの統合など、自社のニーズに合わせた機能を持つツールを選ぶことが重要です。
②既存のシステムとの連携可否
既存のCMSやSFA(営業支援システム)との連携が可能であるかも確認しておく必要があります。
MAツールが既存のシステムとスムーズに統合できるかどうかは、導入後の運用効率に影響します。データの一貫性や統合の容易さを考慮し、システム間での連携が可能なツールを選ぶことが求められます。
③導入費用
導入にかかる費用も重要な検討要素です。ツールの初期費用や月額費用、追加機能やサポートのコストなど、予算に見合った選定を行うことが重要です。
また、長期的なコストパフォーマンスも考慮し、導入後の維持管理費用やアップグレードのコストも含めて検討することが大切です。
これらの点を意識し、自社の課題の解決や目的達成につながるMAツールを選定しましょう。
事前にMA導入計画を策定しておくことで、導入プロセスがスムーズに進み、ツールの効果を最大限に引き出すことができます。
実際に、MAサービス導入後に効果を実感できなかった人へのアンケートでは、期待通り出なかった点として、73.7%の回答者が「導入後の業務フローの想定が不十分だった」ことを挙げています。
引用:1st Penguin株式会社 プレスリリース|総務の森
導入計画の策定では、はじめに導入スケジュールを作成しましょう。ツール導入の準備から実施、運用開始までにかかる具体的な時間を見積もり、スケジュールを設定します。
スケジュールには、ツールの選定・設定・テスト・トレーニングなどのプロセスを含め、全体の進行状況を把握できるようにすると良いでしょう。
次に、役割分担とチーム編成を行います。MAツールの導入には、プロジェクトマネージャーやIT担当者、マーケティング担当者など、複数の関係者が関わることになります。
それぞれの役割を明確にし、各担当者がどのタスクを担当するかを決定しておきましょう。適切なチーム編成を行うことで、導入プロジェクトが円滑に進行し、社内での協力体制が整います。
さらに、社内での運用体制の検討も重要です。導入後にツールを効果的に活用するためには、運用体制を事前に整えておく必要があります。
運用体制が検討されずに導入された場合、ツールが実際には活用されず、結果的に無駄になってしまうことがあります。運用体制を考える際には、日常的な運用方法やメンテナンス、サポート体制なども含めて検討しましょう。
MA導入の4つめのステップとして、データの準備があります。正確で整理されたデータがなければ、MAツールの効果を十分に発揮することはできません。
データのクレンジングや整備を行うことで、ツールの運用がスムーズになり、リードや顧客の管理が容易になります。
具体的には、次のような準備をしておくと良いでしょう。
これらの準備をしっかり行うことで、MAツールの導入後に得られるデータの質が向上し、効果的なマーケティング施策の実施が可能になります。
MAツールの導入後には、実際にツールを使用するチームメンバーへのトレーニングが不可欠です。十分な教育を行うことで、ツールの機能や操作方法を理解し、効果的に活用するための環境が整います。
例えば、以下のような取り組みが有効です。
これらの施策を実施することで、チームがMAツールを最大限に活用し、マーケティング活動の効率を大幅に向上させることができます。
MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入には多くのメリットがありますが、導入時に失敗してしまうケースも少なくありません。失敗例を理解することで、MA導入の成功に向けた対策を講じやすくなるはずです。
ここでは、MA導入時にある失敗例について、具体的な要因とその影響を解説します。
MA導入時に失敗する理由として、目標が曖昧なまま導入を進めてしまうことがあげられます。導入の目的が曖昧なまま進めると、ツールの機能や効果を十分に活用できず、期待した成果が得られないことがあります。
例えば、MAツールの導入目的が「リードの獲得」や「営業効率の向上」といった漠然としたものであると、どの機能を重視すべきか、どのような施策を行うべきかが不明確になってしまいます。
また、自社が目指すべき顧客数や市場規模を把握せずにツールを導入すると、ツールの選定や設定において適切な判断ができなくなります。少数のリードに対してはシンプルなツールで十分かもしれませんが、大規模な顧客数を扱う場合は、スケーラブルな機能が求められます。
市場には多くのMAツールがあり、それぞれのツールには異なる機能やUI(ユーザーインターフェース)を持っています。そのため、ツールの選定を間違えると、導入後の効果に大きな影響を与える可能性があります。
株式会社SEデザインが実施した「マーケティングオートメーションの導入・利用状況調査」では、多くの企業が使いやすさを重視してMAツールを導入しているにもかかわらず、ツールへの不満として「使い方が難しい」という回答がもっとも多い結果となりました。
引用:マーケティングオートメーションの導入・利用状況調査結果|株式会社SEデザイン|PR TIMES
この結果から、MAツール選定において「使いやすさ」が非常に重要なポイントであることが理解できます。
ツール選定においては、運用担当者のスキルや運用経験と、ツールの難易度を考慮する必要があります。運用担当者が使いこなせない機能が多いツールを選んでしまうと、十分な活用ができず、結果として効果を引き出せないことになります。
また、既存のCRM(顧客関係管理)システムやSFA(営業支援システム)との連携しやすさも重要なポイントです。ツールの選定時に拡張性や互換性を考慮せずに導入すると、データの統合がうまくいかず、業務の効率化が図れません。
さらに、自社の顧客数やニーズに応じた機能の選定も欠かせません。例えば、ABM(アカウントベースドマーケティング)機能が必要な場合や、メールマーケティングに強いツールが求められる場合には、その機能が充実しているツールを選ぶべきです。
自社の要件に合致しないツールを導入すると、機能の不足や操作の難しさが問題となり、十分な導入効果が得られなくなってしまうでしょう。
MAツールの導入には、チーム内の協力体制の構築が不可欠です。チーム内での情報共有やサポート体制を構築し、各メンバーが自分の役割を理解し、効果的に協力することが求められます。協力体制が整っていないと、ツールの導入が形骸化し、実際の業務での活用が進まないことになりかねません。
また、ツールの効果を最大限に引き出すためには、運用担当者がリソースを割いてツールの活用方法を学習し、実際の業務に適用するための教育やトレーニングなどを受ける必要があります。運用体制を整えるためのリソースがあるかどうかを、事前に確認しておくことが重要です。
MAツールを効果的に活用するためには、データの準備ができていることが前提条件となります。データ準備が不足していると、ツールの機能を最大限活用できず、導入効果が限定的になってしまいます。
データ準備には、社内環境でのデータ集約の場所の確保や、データの入力・更新の文化の形成なども含まれます。具体的には、社内のデータ管理体制を見直し、データが一元的に集約されているか、データ更新のプロセスが確立されているかを確認する必要があります。
データが散在している場合やデータの品質が低い場合、施策の精度が低くなり、MAツールの活用が進まず、結果的に投資効果が低下する恐れがあります。
MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入によって、企業のマーケティング戦略を強化できる可能性がありますが、成功するためには慎重な準備と戦略的なアプローチが求められます。
ここでは、MA導入を成功させるためのポイントを3つご紹介します。
MAツールの選定は、導入の成功を大きく左右する重要なプロセスです。ツール選定の際には、以下の点に注意を払いましょう。
①機能のニーズに合わせた選定
株式会社イノベーションが行った「MAツール活用状況に関する実態調査」によると、MAツールに搭載されている各機能について、51%以上の回答者が「活用していない」と答えています。
引用:株式会社イノベーション - MAツール活用状況に関する実態調査|PR TIMES
「サイト来訪分析機能」や「フォーム作成機能」は多く利用されている一方で、「LPO機能」や「チャットボット機能」はあまり活用されていないことが明らかになりました。
必要な機能がないと業務に支障が出ますが、不要な機能は十分に使いこなせない恐れがあるため、まずは自社に必要な機能を明確にし、それに合ったMAツールを選ぶことが大切です。
②UIと使いやすさ
ツールのUI(ユーザーインターフェース)が優れているかどうかも、選定のポイントです。複雑すぎるUIや操作が難しいツールは、運用担当者にとって負担が大きくなり、効果的な活用が難しくなります。実際の運用シナリオを想定し、使いやすさや直感的な操作性を評価しましょう。
③導入前のテスト
選定したツールが自社のシステムや業務フローと適合するかどうかを確認するために、導入前にテストを行うことが推奨されます。テスト環境でのシミュレーションを実施し、データの取り込みや機能の動作確認を行うことで、導入後のトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、既存のCRMやSFAツールとの連携については、システム間の連携がスムーズに行えるかをチェックしておきましょう。
MA導入は、マーケティング部門だけで行われるのではなく、営業部門とも密接に関わるプロジェクトとなります。
そのため、営業部門との連携を強化し、ツールの利用方法やリードの活用方法についての理解を深めることが重要です。これにより、営業チームがMAツールから受け取るリード情報やインサイトを基に、効率的な営業活動が可能になります。
また、MAツールの導入前に、営業部門と十分なコミュニケーションを図り、ニーズや期待される効果を把握する必要があります。営業部門の意見を反映させることで、ツールが実際の業務に即した機能や設定を提供できるようになります。
導入後も定期的にフィードバックを受け取り、ツールの使い方や改善点について共有することで、営業部門との関係を築きやすくなります。
さらに、ツールの使い方や活用方法に関する教育を行い、営業部門が適切にツールを使えるよう支援を行うことも重要です。導入後のサポート体制を整え、問題が発生した際に迅速に対応できる環境を整えておきましょう。
MAツールの効果を最大限に引き出すためには、コンテンツを充実させることもポイントです。見込み客のフェーズに応じたコンテンツを提供することで、リードの育成やエンゲージメントを高めることができます。
例えば、認知フェーズでは役立つ情報やホワイトペーパーを提供し、検討フェーズでは詳細な製品情報やケーススタディを用意することで、見込み客の関心を引き続けることができます。
しかし、実際のところ、株式会社ラクスがBtoB企業の営業担当者を対象に実施した「新規開拓の現状や課題点」に関する調査では、約9割の回答者が、マーケティングにおけるコンテンツ制作の工程に「課題がある」と感じていると回答しています。
導入後の施策をスムーズに進めるためにも、MA導入前に見込み客のフェーズごとに必要なコンテンツを準備しておくと良いでしょう。
ブログ記事・メールニュースレター・ホワイトペーパーなど、コンテンツの種類や形式を検討し、ターゲットに合わせたコンテンツを作成しておきましょう。
また、コンテンツは定期的に更新し、最新の情報やトレンドを反映させることで、常にリードに対して価値のある情報を提供することができます。
コンテンツの更新や新規作成を行う際には、見込み客の反応や行動データを分析し、その結果に基づいてコンテンツを最適化することが重要です。これにより、リードのニーズにより的確に応えることができ、エンゲージメントの向上につながります。
適切なMA(マーケティングオートメーション)ツールを選ぶことで、マーケティング活動の効率化と効果を最大化することが可能です。ここでは、MAツール選定の際に押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
MAツールは、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)と連携して使用されることが一般的です。そのため、MAツールを選定する際には、自社の既存のシステム環境や将来的な拡張性を考慮することが重要です。
MAツールがCRMデータと統合されることで、リード情報の一元管理や、顧客の購買履歴に基づくパーソナライズドキャンペーンが可能になります。一方で、連携機能が不足していると、データの断片化や情報の不整合が発生する可能性があります。
自社の既存の環境を考える際には、現在のビジネスニーズだけでなく、将来的な成長や変化も考慮に入れることが重要です。
今後新たな機能が必要になる場合や、ビジネスの規模が拡大する可能性がある場合、ツールの拡張性が高いものが求められます。拡張性のないツールを選んでしまうと、後々必要な機能を追加できず、柔軟に対応できなくなる恐れがあります。
ツールが提供するアドオンやプラグイン、APIなどの機能をチェックし、将来的なニーズに対応できるかどうかを評価・検討しましょう。
MAツールは複雑な機能を備えていることが多く、導入初期には多くの学習や試行錯誤が必要です。MAツールを効果的に活用するには、ツールの使い方やトラブルシューティングに関するサポートが欠かせないため、提供されているカスタマーサポートの充実度を確認しましょう。
具体的には、オンラインチャット・電話サポート・メールサポート・ユーザーコミュニティなど、さまざまなサポートチャネルが提供されているかを調べると良いでしょう。
サポートの応答時間や対応の質も重要な要素です。サポートが不十分な場合、トラブルが発生した際に適切な支援が得られず、業務に支障をきたすことがあります。
また、自社でのトレーニングやサポートが必要な場合、ツールの提供するトレーニングリソースやマニュアルが充実しているかも確認しましょう。導入前に提供されるトレーニングプログラムや、導入後のサポート資料が整っているかをチェックすることも重要です。これにより、ツールの導入や運用がスムーズに進められます。
MAツールは、利用できる機能やビジネス規模に応じて価格帯が大きく異なります。そのため、価格面でも慎重な検討が必要です。
スターティアホールディングス株式会社が実施した「マーケティングオートメーション意識調査」では、MA非導入企業の主な理由として「導入費用が高い」「月額費用が高い」が上位に挙げられています。
引用:マーケティングオートメーション意識調査 |Cloud CIRCUS調べ|スターティアホールディングス株式会社
特に、2017年から2021年までの5年間は、MAの導入を見送る理由として「導入費用が高いから」という回答がもっとも多く見られました。
MAツールとして、無料で利用できるものから、月額数十万円以上する高価格なものまで、幅広い価格帯の製品が提供されています。
中には、無料のトライアル版やデモ版を提供しているツールもあるため、導入前に実際に使ってみることをおすすめします。これにより、ツールが自社のニーズに合致しているかを確認することができます。
なお、導入目的に応じて必要な機能を洗い出し、その機能を提供するツールの中から選定することが大切です。価格が安いからといって、必要な機能が不足しているツールを選んでしまうと、後々の追加費用や機能の制限に悩まされることがあります。
導入目的を明確にし、必要な機能を備えたツールの中から、コストパフォーマンスが良いものを選ぶことが重要です。
MAツールの選定では、他社の導入事例や実績を確認することもポイントです。
同業種や類似のビジネスモデルを持つ企業がどのようにツールを活用しているかを調べることで、ツールの実際の使い勝手や効果を把握することが可能です。成功事例や失敗事例を分析し、自社のニーズに合った活用方法を見つけるための参考にしましょう。
また、市場での評価やユーザーのフィードバックを確認することで、ツールの信頼性や安定性を判断することができます。レビューや評価サイト、業界フォーラムなどを活用して、ツールに関する情報を集めると良いでしょう。
実績ページの例)Salesforce
MAツールにおけるAI(人工知能)機能の有無は、選定基準の重要な要素の一つです。
AI機能は、マーケティングキャンペーンのパーソナライズや効果測定において重要な役割を果たします。AIを活用することで、リードの行動予測やセグメンテーションの精度が向上し、より効果的なマーケティング施策を実施することが可能になります。
例えば、AIによるリードスコアリングやパーソナライズされたコンテンツの提供、予測分析などがあげられます。
AI機能が今後ますます重要になる中で、導入を検討しているツールがAI機能をどの程度備えているかを確認することが重要です。将来的なトレンドに対応できる柔軟性を持つツールを選ぶことで、長期的に見ても有用なマーケティング戦略を実施することができます。
AI機能の例)HubSpot
MA(マーケティングオートメーション)は、さまざまな業界で導入され、その効果が証明されています。ここでは、MAツールを活用して成功を収めた4つの実際の導入事例を紹介します。
HubSpotの「Marketing Hub」は、企業のマーケティング活動を効率化するための統合型MA(マーケティングオートメーション)ツールです。
セールスとマーケティングのDX支援を行う株式会社Kaizen Platformでは、コンテンツマーケティングのプロジェクトと並行して、Marketing Hubの導入を進めました。
同社は強力な営業力を持ちながらも、体系的なマーケティング施策が不足しており、デジタルマーケティングのKPI設定や数値測定が十分に行われていないという課題がありました。過去の施策は定性的なレポートにとどまり、MAツールも単発のメルマガ配信にしか利用されていない状況でした。
Marketing Hubの導入にあたり、まずペルソナの設定を行い、精緻なペルソナと購買プロセスに基づいたマーケティング施策を強化するアプローチが採用されました。営業チームを巻き込み、ペルソナと購買プロセスの情報収集を行い、1週間の準備期間の後に統合作業を実施。最終的に、一つのペルソナを3週間かけて完成させました。
HubSpot導入後は、コンテンツマーケティングとMAのシナリオを同期させ、アポ獲得・商談・受注の向上を実現しました。導入以前と比較して、動画事業のインバウンド経由アポ獲得数が2020年度比で140%、商談が215%、受注が264%と大幅な増加を達成しています。
一方、UX事業ではSEO効果が薄かったものの、コンテンツマーケティング経由の受注は2.5倍に増加しました。ペルソナの明確化により、自社コンテンツの品質が向上し、案件化できる見込み客を効果的に引き込めたと考えられます。
出典:HubSpot導入事例|株式会社Kaizen Platform
引用:Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot) - セールスフォース・ジャパン
Salesforceの「Account Engagement」(旧Pardot)は、BtoB企業向けに設計されたMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
地域密着型の広告代理店である株式会社マーケティングデザインは、特にスポーツクラブ向けの販促活動に強みを持っています。
同社は「広告費以上の集客効果」を掲げ、これまでに累計1000店舗以上のスポーツクラブを手掛けてきました。ビジネス成長の過程で、Salesforceの各種製品「Sales Cloud」「Account Engagement(旧Pardot)」「Tableau CRM」「Sales Cloud Einstein」「Quip」「Service Cloud」を順次導入してきたといいます。
2015年にマーケティングオートメーションツール「Account Engagement(旧Pardot)」を導入した同社は、各見込み客に合わせたカスタマイズメールの配信や、ウェブ上での行動をリアルタイムで把握し、最適なタイミングで営業活動を行うことができました。
その結果、見込み客の数は一気に10倍以上に増加し、問い合わせ後の顧客訪問件数も年間20件から、2016年には185件、2017年には214件にまで急増しました。
このような成果を上げた後、同社はさらに成長を遂げるため、2017年に「Sales Cloud Einstein」を導入しています。拡張性の高いサービスにより、アップセルの度にさまざまな効果が現れている事例といえます。
出典:Salesforce導入事例|株式会社マーケティングデザイン
Adobeが提供する「Marketo Engage」は、企業のマーケティング活動を統合的に管理し、自動化するためのMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
2018年11月、株式会社ニューズピックスはAdobe Marketo Engageを導入しました。導入の背景には、2018年9月に行ったウェブサイトの大幅なリニューアルがあったといいます。
同社ではSalesforceはすでに導入済みで、「Email to Lead」アプリケーションを使ってGoogleスプレッドシートからリード情報を登録していましたが、ウェブサイト経由以外のリードについては手動で登録していました。この状況を改善するために、Adobe Marketo Engageの導入が決定されました。
導入前は、マーケティング担当者が各部署で自由に設定を行った結果、同じ項目が上書きされる問題や、知らない条件でキャンペーンが実行される問題が発生していましたが、現在は、各部署の項目を適切に使い分けつつ、共通化できる部分を統一することで、メンテナンスの負担を軽減する計画を立てているとのことです。
MAツールの導入が効率的なマーケティング運用をサポートし、業務の改善に寄与した事例です。
出典:Adobe Marketo Engage導入事例|株式会社ニューズピックス
株式会社データXが提供する「b→dash」は、日本国内の企業向けに設計されたMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
株式会社クレディセゾンは、ペイメントビジネス、ファイナンスビジネス、資産運用ビジネスなど、多岐にわたる事業を展開する中で、b→dashを導入しました。同社では顧客ニーズの多様化と、それに応じた社内外の施策の増加により、多くの施策を実施し、膨大なデータを準備するのに多くの工数がかかり、精緻なPDCAサイクルを回すのが難しくなっていました。
b→dashを選んだ理由は、セキュリティレベルが高く、大量のメール配信に対応できるシステムを提供し、データ統合の基盤としても優れている点だったといいます。
また、メール配信、Push通知、BI(ビジネスインテリジェンス)分析など、必要な機能を「All in One」というサービスを通してスピーディに導入できることと、充実したサポート体制が整っていることも決め手となりました。
b→dash導入後は、細かい施策や分析が可能となり、1カ月かかっていたメール配信の期間が最短2日に短縮され、開封率やクリック率の大幅な改善を実現しました。今後は、メールの内容や配信ターゲットの精度をさらに向上させていく予定とのことです。
MAツールの導入により施策の実施スピードと精度が向上し、マーケティング効果が大幅に改善されたことが理解できる事例です。
デジタルマーケティングの進化と競争が激化する現代において、MA(マーケティングオートメーション)の導入は企業にとって必須のプロセスとなっています。
ただし、目的や目標が不明確なままMAツールを導入すると、プロジェクトが失敗するリスクがあります。
MAは万能のツールではなく、自社のマーケティング施策をサポートするための手段であることを理解することが重要です。必要な機能やコスト、期待できる効果を慎重に検討し、適切に活用することが求められます。
MAの導入前には、自社のマーケティング状況を徹底的に見直し、具体的な課題を明確にしておきましょう。また、人員のリソースや将来的な見通しを考慮した運用計画を立てることもポイントです。
これらのステップでMA導入を成功に導き、自社のマーケティング課題を効果的に解決しましょう。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。