企業がWebサイトを持つのが当たり前の時代となった今日、CMSも単なるWebページ更新ツールから進化を遂げています。
コンテンツ更新機能は基本であり、マーケティング機能の強化、高いセキュリティ対策、オムニチャネル配信への対応など、企業ニーズに応じた高付加価値なCMSが求められるようになったのです。
そのため、CMSの選定においては知名度やコストだけでなく、自社の課題を解決できる適切な機能を備えているかが重要なポイントとなります。加えて、CMSの導入作業自体に課題の洗い出し、ペルソナ設計、制作会社選定、要件定義などの複雑なプロセスが伴います。
本記事では、このようなCMSの導入に関する疑問を解消します。
そもそもCMSとは何か、どのように選定すべきか、具体的な導入手順は、どのようなコストがかかるのかなど、専門家の視点から丁寧に解説します。
CMSとは、HTMLやCSSの知識がなくともWebサイトの構築、運用、管理を容易に行えるようになるソフトウェアです。代表的なCMSには、WordPressやDrupal、HubSpot、Shopifyなどが挙げられます。まずはCMSの基礎知識と導入メリットを見ていきましょう。
すでにお伝えした通り、CMSはプログラミング知識がなくともWebサイトの運用・管理が行えるようになるソフトウェアです。基本機能は以下の通りになります。
CMS登場前、HTMLやCSSを直接編集してWebページ投稿や編集を行うのが一般的でした。しかし、インターネットが普及するにつれ、Webサイトを迅速に更新・管理する必要性が高まり、CMSが誕生したのです。
2000年代にはWordPressやDrupalなどの誰でも無料で利用できるオープンソース型CRMが誕生し、2010年代にはサーバーを用意することなくインターネット上で利用できるクラウド型CRM、最近ではWebサイトやスマートウォッチなどのあらゆるチャネルでコンテンツを配信できるヘッドレス型CRMが誕生しました。
現代のCRMの特徴は、Webサイトの構築や運用を容易化するのは当然であり、さらなる付加価値を提供してること。
WordPressなら高い柔軟性と拡張性、HubSpotならCMRとマーケティング機能、ShopifyならECサイト運営といった具合です。
市場には多種多様なCRM製品が出回っており、各CRMがそれぞれメリット・デメリットを持つからこそ、まずは自社の課題を明確にし、その課題を解決できる機能を備えたCMSの選定をしなければいけません。
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CMSを導入する最大のメリットは、専門知識がない担当者でも簡単にWebサイト運営ができることでしょう。従来、Webサイトの更新や修正は専門的な知識を持つ開発者に依存することが多く、これがボトルネックとなって迅速な情報発信が難しくなることがありました。
CMSを導入すれば、ドラッグ&ドロップ操作や直観的に使用できるエディタを使ってコンテンツを編集できるため、IT知識のない担当者も簡単に更新作業を行えます。
外部を通すことなく社内でコンテンツの作成から発信まで行えるため、迅速に最新情報を発信し、Webサイトの情報の鮮度を保つことが可能です。そのため、更新頻度の高いオウンドメディアやECサイト、ニュースサイトなどに向いています。
また、CMSの導入はサイト更新や編集コストを大幅に削減できます。
たとえば自社にプログラミング知識のある人材がいない場合、従来のウェブサイト運営では、コンテンツの更新や修正を外部の業者に依頼することになり、定期的に多額のコストが発生していました。CMSを導入することで、自社社員が自らコンテンツを管理し、外部委託にかかる費用を削減できます。
さらに、CMSは比較的低コストで利用できるのも特徴です。WordPressやDrupalなどのオープンソース型は無料で提供されており、HubSpotやShopifyなどのクラウド型は月額料金こそかかりますが、保守運用費用を大きく抑えられます。
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CMSの導入は、適切なステップを踏まなければ、うまく進みません。最悪の場合、完成後に大幅リニューアルを実施する必要が生じてしまいます。このようなリスクを防ぐためにも、以下ではCMS導入ステップを詳しく見ていきましょう。
CMS導入の最初のステップは、Webサイトの課題とゴールを明確にすることです。ここからは、課題の明確化とゴール設定に有効なツールをご紹介します。
自社サイトの課題を明確にすれば、CMSに求める機能が明確になり、効率よくCMSの選定が行えるようになります。課題を洗い出すのに有効なツールがSWOT分析。
自社サイトのStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を分析することで、強みを生かす機能や弱みを改善する機能などを把握できます。
出典:What is a SWOT Analysis? (And When To Use It)
たとえば上記表のような分析結果となった場合、弱み(課題)を改善するための機能として以下が必要と考えられます。
さらに、強みを生かすにはユーザーフォーラム、機会を捉えるには多言語対応機能、脅威に備えるにはアクセス権限の細かな設定やSEO対策機能などが有用でしょう。
このようにSWOT分析を行うことで、自社の実態に合わせたCMSに求める要件が明確になります。
【ペルソナ作成】
ペルソナとは、ターゲットユーザーを一人の具体的な人物像として設定したものです。実在する顧客データやユーザー調査に基づいて作成することが肝心です。担当者の想像だけでペルソナを作ると、実態から外れた顧客像になってしまい、各種施策の混乱を招く恐れがあります。
ペルソナを作成する際は、以下のような質問に答える形で顧客プロフィールを具体化していきましょう。
作成したペルソナをもとに、最適なサイト機能やコンテンツなどを検討します。たとえば以下のようなペルソナを作成したとしましょう。
こうしたペルソナができたら、以下のCMS機能が有効と考えられます。
このように、ペルソナを設定することで、ターゲットごとの具体的なニーズが明確になり、CMSの機能要件を的確に検討できるようになります。
【ゴール設定】
Webサイト運用で達成したいゴールを設定します。
自社の全体目標またはマーケティング全体目標から、Webサイトがどのように貢献できるかを考えましょう。たとえば、企業全体の目標を売上の増加としましょう。この場合、Webサイトは全体目標をサポートするために以下のゴールを設定します。
さらに、これらのゴールを達成するため以下のKPIも設定しましょう。
上記画像のように、ゴールとKPIを可視化したKPIツリーの作成もおすすめです。KPIツリーの作成により、ゴール達成に必要なアクションや目標を視覚的に理解でき、効率よくWebサイト運営を展開できるようになります。
課題解決やゴール達成につながるCMSを選定します。その際、CMSを実際に利用する現場の社員の協力を得ることがポイントとなります。
Cよくある失敗パターンとして、経営層や意思決定者だけでCMSを選んでしまい、最終的に社内に浸透しないケースがあります。CMSの本当の強みは、現場の社員が実際に使用することで発揮されます。
そのため、選定プロセスの中で、CMSの実利用者である社員に関与してもらい、現場の声を反映させることが不可欠です。課題解決やゴール達成のためには、CMSをツールとして適切に活用する必要があるため、選定段階から現場の社員と連携し、ニーズを確実に反映させることが肝心なのです。
選定の主な手順は以下の通りです。
ここからは、各手順の詳細を見ていきましょう。
【1. 必要な機能のリストアップ】
先のステップで整理した課題とゴールを踏まえて、CMSに求める機能をリストアップします。
ニュースやイベント情報などを迅速に更新したいならば操作性に優れたCMS、BtoB企業でWebサイト経由で質の高いリード数を増やしたいならばCRMやMAツールと円滑に連携できるCMS、などのように必要な機能を特定します。
予算や構築までの期間も重要ですが、最優先すべきは課題解決のための機能です。
課題解決につながる機能を備えたCMSの中で、予算や納期を満たせるものを選びましょう。
リストアップした機能要件に基づき、複数のCMSをピックアップします。
まずは市場に出回っている主要なCMSの機能を調査します。代表的なCMSには、WordPress、Drupal、Joomla、Shopify、Magento、HubSpotなどがあります。
CMSのリストアップの際には、オープンソースCMSと商用CMSの違いを理解することが重要です。
オープンソースCMSとは、ソースコードが公開されており、自由にカスタマイズできるCMSです。代表的なCMSは、WordPress、Drupal、Joomlaなどがあります。
オープンソースCMSは初期費用がかからないため、コストを抑えたい場合に有効です。また、豊富なプラグインやテーマが提供されており、機能の拡張が容易という特徴もあります。しかし、セキュリティ対策やメンテナンスに関しては、自分で対応する必要があるため、技術的な知識が求められます。
一方、商用CMSにはHubSpot、Shopify、Wixなどがあります。これらはベンダーが提供する有料のサービスで、サポートやセキュリティが充実しています。ライセンス費用こそ発生しますが、自社で保守運用する必要はありません。また、セキュリティ体制も充実しており、安心してWebサイト運用が行えるでしょう。
そのため、安定したサポートを受けたい場合に適しています。特に、ビジネス規模が大きくなったり、専任の技術者がいない場合には、商用CMSの利用が効果的です。
また、商用CMSは通常、定期的なアップデートやセキュリティパッチが提供されるため、最新の機能やセキュリティを維持しやすいという利点もあります。
各CMSを評価するために、以下の評価項目を設定します。
【コスト】
初期費用と運用費用の比較が必要です。初期費用には、ライセンス費用や導入時のカスタマイズ費用が含まれ、運用費用には、サーバー維持費、サポート費用、定期的なメンテナンス費用が含まれます。初期費用だけではなく、運用費用も考慮することで、長期的な運用コストを見積もることができます。
【機能】
先にリストアップした機能要件にどれだけ対応しているかを確認します。事前に機能のチェック表を作成することで、効率よく自社ニーズに適したCMSを選定することが可能です。
【使いやすさ】
使いやすさについては、ユーザーインターフェースの直感性や管理画面の使いやすさを評価します。複数の担当者にデモ版やトライアル版を使用してもらい、各CMSの操作性を評価してもらいましょう。これにより、運用担当者がストレスなく作業できるかどうかを判断できます。
【拡張性】
拡張性については、プラグインやモジュールの数と質、APIの利用可能性を評価します。これにより、将来的な機能追加やシステム統合が容易かどうかを確認します。特に、事業の成長に伴って新しい機能が必要になった場合に対応できるかどうかが重要です。
【サポート体制】
サポート体制については、公式サポートの有無と質、コミュニティの活発さを評価します。公式サポートが充実しているか、緊急時に迅速に対応してくれるか、またユーザーコミュニティが活発で問題解決に役立つ情報が得られるかどうかを確認します。
これらの評価項目を総合的に考慮し、最適なCMSを選定することが、効果的なWebサイト運用の鍵となります。
各CMSの無料版やデモ版を利用して、実際に操作性を確認します。
テキストや画像を使って記事を投稿し、コンテンツ管理の使いやすさを評価します。また、テンプレートやテーマを変更して、デザインのカスタマイズを試みることで、デザイン変更の自由度や操作性を検証してみましょう。
さらに、カスタマイズの確認も行います。必要な機能を追加するためのプラグインをインストールし、その設定を確認することで、CMSの拡張性と柔軟性を測定できます。
このステップで重要なのは、現場の社員にCMSの利用をしてもらうことです。各社員に評価シートを渡し、それぞれのフィードバックを参考にしましょう。
出典:無料CMSツール HubSpot Content Hub
各CMSの導入にかかる費用を見積もり、コストパフォーマンスを評価します。これにより、予算内で最適なCMSの選定を行えます。
【ライセンス費用】
商用CMSの場合、ライセンス費用を確認します。年間契約や月額契約の選択肢を比較し、どちらが自社の運用スタイルに合っているかを評価します。ライセンス費用には、初期導入時の費用だけでなく、継続的なサポートやアップデートの費用も含まれることが多いため、長期的な視点で検討することが重要です。
【初期導入費用】
インストール、設定、カスタマイズにかかる費用を見積もります。外部業者に依頼する場合は、複数の見積もりを取得し、比較検討しましょう。
【運用費用】
サーバー維持費、サポート費用、プラグインやテーマの追加費用を計算します。定期的なメンテナンス費用も考慮し、長期的な運用コストを見積もります。
各CMSのトータルコストを比較し、コストパフォーマンスを評価します。長期的な運用を見据えた場合のコストも考慮し、どのCMSが最も経済的で効率的な選択肢となるかを判断しましょう。
この比較により、初期費用が安くても長期的な運用費用が高くなる場合や、その逆の場合など、総合的なコストのバランスを見極めることが可能です。
CMS導入にかかるコストについては、後ほど詳しくご紹介します。
各CMSの総合評価を行い、最も条件に合ったCMSを選定します。関係者からのフィードバックも参考にし、実際に使用する運用担当者の意見を重視しましょう。
CMSは自社で導入するほか、制作会社に依頼をするという手もあります。制作会社はCMSの導入や設定、カスタマイズに関する深い経験と知識があり、効率的かつ効果的にCMSを利用する準備を進められます。
一方、自社で導入する場合は初期コストこそ抑えられますが、内部リソースの確保や専門知識が必要です。プロジェクトマネージャーやウェブデザイナー、デベロッパーなどの専門家を社内に抱えている場合は、この方法が適しています。
以下のいずれかに該当する場合は、制作会社の利用を検討するとよいでしょう。
制作会社を選定する際には、長期的なパートナーシップを築ける企業を選ぶことが望ましいです。そうすることで、導入後にも継続的にサポートしてもらえ、効率よくCMSを運用できるようになります。また、複数の制作会社と話をし、比較検討することが重要です。
CMSの導入において、要件定義(サイト全体の設計)は重要なステップです。ここでは、どのような機能が必要で、どの程度のカスタマイズが必要かを具体的に定義します。
要件定義が明確であればあるほど、開発プロセスがスムーズに進み、後のトラブルを未然に防ぐことができます。要件定義の内容を詳しく見ていきましょう。
まずはサイト全体のページ構成を決定します。トップページ、カテゴリーページ、商品ページ、ブログページなど、どのようなページが必要かを具体的に決めます。サイト構造を決めるうえでは、下記5つの構造種類を理解しておくと便利です。
サイト構造を決めるうえでこれらの5つの構造種類を理解しておくと、プロジェクトに適したデザインを選択するのに役立ちます。
デザインに関する要件では、ブランドカラー、フォント、ロゴの配置などを決めます。
Webサイトはインターネット上における自社の顔になるため、ブランドを意識した色使いをしましょう。海外大学の調査によれば、各チャネルで一貫したブランドカラーを使用することで、ブランド想起率が最大80%向上すると判明しています。
Webサイト運用に必要な機能を具体的に決定します。
たとえばSEO経由でのリード獲得が目的なら、フォーム作成機能やSNSとの連携、SEO支援、分析機能などが必要でしょう。さらに、メールマーケティング機能もあれば、リード獲得からナーチャリングまで一貫して行えます。
目標や課題から逆算し、WebサイトおよびCMSに必要な機能を具体化しましょう。
ユーザーが直感的に操作できるように、ナビゲーションの設計や情報の配置を決めます。具体的には、メニューの配置、ボタンのサイズと位置、文字の大きさ、行間などを設計します。
たとえば、ECサイトや製造業のように多くの商品を扱う場合、ユーザーが必要な情報にスムーズにアクセスできるように、検索機能の設置が不可欠です。
ユーザーエクスペリエンス設計の最大の目標は、ユーザーがサイト内をスムーズに移動し、情報を容易に理解できるような体験を提供することです。このためには、ユーザー視点に立ち、ニーズと利便性を常に考慮しながらデザイン作業を進める必要があります。
最後に、セキュリティに関する要件を明確にします。主なチェック項目は以下の通りです。
たとえば、CRMの管理者ページや重要な顧客情報が含まれるページに誰でもアクセスできるように設定した場合、情報漏えいや不正アクセスにつながるリスクが高まります。誰が、どの機能/コンテンツにアクセスできるのかを詳細に設定することで、情報漏えいのリスクを軽減できます。
特に、WordPressのようなオープンソース型CMSを利用する場合、安全にWebサイト運用をするためにも、詳細にセキュリティ要件の定義を行いましょう。
設計フェーズでは、具体的なデザインテンプレートの決定や管理画面の構成まで、幅広い要素が含まれます。ここでは、CMSの設計におけるステップを分かりやすく解説します。
CMSで使用するデザインテンプレートを選びます。このテンプレートは、ブランドイメージに合致し、ユーザーが求める情報を効果的に伝えることができるものでなければなりません。テンプレートの選定にあたっては、以下の要素を考慮しましょう。
CMSが提供するテンプレートを利用するほか、自社にITエンジニアやデザイナーがいるザイナーがいる、または制作会社に依頼している場合は、オリジナルのテンプレートを開発することも可能です。
管理画面の構成は、CMSの運用効率に直接影響を与え、運用担当者が日々のコンテンツ管理をスムーズに行えるかどうかを左右します。特に、コンテンツの投稿、編集、削除などの基本的な操作が簡単にできるかどうかは重要です。
商用のCMSは通常、直感的なユーザーインターフェースを備えた管理画面を提供していますが、オープンソース型のCMSや独自開発のシステムの場合、管理画面のカスタマイズや完全な新規作成が必要になることがあります。
また、CMSの種類にかかわらず、この段階で管理画面のアクセス制御とセキュリティを細かく設定しましょう。管理画面は、機密性の高いコンテンツや個人データを扱うことが多いです。ユーザー認証、ロールベースのアクセス制御、アクティビティの監視とログ記録などを組み込むことで、不正アクセスやデータ漏えいリスクを最小化できます。
事前定義した要件とテンプレートに基づいてデザインを具体化し、最終的にユーザーに公開されるページを作成します。
実際のデザイン作業に入る前に、まずはワイヤーフレームを作成してページの基本的なレイアウトを決定しましょう。ワイヤーフレームとは、ページ構造、要素の配置、ナビゲーションの流れを示す簡単な設計図です。
この段階で、ユーザーがスムーズに必要な情報にたどり着けるか、最適な体験を阻害する摩擦がないかなどを確認しましょう。
続いて、プロトタイプを作成し、実際の見た目と動作をシミュレートします。関係者やテストユーザーのフィードバックを収集し、デザインの改善を行いましょう。
ワイヤーフレームとプロトタイプが承認された後、ビジュアルデザインの要素を適用します。色彩、フォント、画像、アニメーションなど、ブランドアイデンティティを反映したデザイン要素をページに組み込みます。
デザインが完成したら、内部レビューを行い、プロジェクトの要件と一致しているかを確認。最終的な承認後、デザインをCMSに組み込み、コンテンツとともに公開準備を整えます。
CMSの導入が完了する前に、担当者への教育や今後の運用における社内体制の最終調整を行います。
公開後にリソースが不足して更新が滞ることがないように、早い段階で担当者を決定し、役割分担を明確にしましょう。運用保守体制も確認し、必要であれば外部に運用を委託することも検討します。
また、サイト更新ルールや操作方法を記載したマニュアルを作成し、更新作業の手順やルールを明文化することも重要です。マニュアルを作成すれば、関係者が迷うことなくCMSを操作できるようになり、担当者が変わってもスムーズに運用を継続できます。
このように、社内調整を十分に行うことで、CMS公開後の運用を円滑に進めることが可能です。
既存のサイトから新CMSへのデータ移行を行います。アクセス解析をし、不要なコンテンツは移行対象から外して、移行する価値あるコンテンツを選定しましょう。
この際、SEO対策の継続を怠らないように注意が必要です。特に重要なポイントは、URLの変更有無です。
URLを変更する場合、検索エンジンに蓄積されたページの評価がリセットされる可能性があります。可能な限りURLは変更しないのが理想ですが、変更をする場合はSEO価値を引き継ぐ301リダイレクトを設定しましょう。
また、メタデータの移行やサイトマップの更新と再提出なども忘れずに実施します。データ移行が完了したら、新CMSの環境で全てのコンテンツが正常に表示されるかを確認し、不具合があれば修正しましょう。よくあるのが、移行過程でリンク切れが発生し、内部リンクが正常に作動しないことです。
データ移行の主なステップは以下の通りです。
新CMSの運用を開始したら、PDCAサイクルを回しながらサイトの更新を継続します。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップを繰り返すプロセスです。これにより、継続的な改善を行い、サイトの品質を維持できます。
Google Analyticsなどの解析ツールを活用し、サイトのパフォーマンスやユーザー行動を分析し、Webサイト上における改善点を特定しましょう。たとえば、検索ランキングが高いにもかかわらず、滞在時間が短いコンテンツは、記事の冒頭でユーザーの興味関心を惹けていないという課題が考えられます。
定期的に分析をし、Webサイトの改善を行うことで、ユーザーにとって価値あるWebサイトを構築できます。
CMSの導入の過程では、いくつかの失敗ポイントがあります。以下に、失敗を防ぐための重要なポイントを詳しく説明します。
CMSを選定する際、初期費用やライセンス費用だけで導入有無を判断するのは避けるべきです。たとえば、WordPressはオープンソースで初期費用が低く、多くの企業や個人が利用しています。しかし、運用に際しては自社で対応しなければならないことが多く、特にセキュリティ対策に注意が必要です。
以下はWordPressを導入した場合にかかる主な費用です。
一方、HubSpot やShopifyなどの商用CMSはライセンス費用こそ発生しますが、メンテナンス費用やセキュリティ対策費用、カスタマイズ費用などは削減できます。
このようにCMSを導入する際は、初期費用だけではなく、長期的な運用費用も考慮しなければいけません。
さらに、CMSには様々な種類があり、それぞれに強みと弱みがあります。例えば、Drupalは高度なカスタマイズが可能で、複雑なサイト構築に適していますが、その分設定や管理が難しくなることがあります。
CMSを選定するうえで最も重要な要素は、目標達成や課題解決ができる機能を備えているかどうかです。まずは自社に必要な機能を備えたCMSを複数リストアップし、その中からコストや操作性、サポート制度、拡張性などを比較検討しましょう。
運用体制が整っていなければ、CMSを公開しても、サイトが更新されないという問題が生じる可能性があります。
公開前に運用担当者の役割を明確にし、各担当者の責任範囲を定めます。たとえば、コンテンツの作成と編集を担当するチーム、技術的なサポートを提供するチーム、SEO対策やアクセス解析を担当するチームなど、明確な分担を行いましょう。
運用マニュアルの作成も重要です。更新作業の手順やルールを明文化することで、担当者が変わってもスムーズに運用を続けることができます。
CMSの導入は多くのリソースとコストを要する複雑なプロジェクトです。
たとえ商用CMSを選んだ場合でも、Webサイトの構築、既存コンテンツの移行、運用体制の整備など、さまざまな作業が発生します。特に大規模サイトや高度な機能を備えたサイトでは、専門的な知識と経験が不可欠です。
自社にリソースがない場合は、外部の制作会社への依頼を検討しましょう。
プロの手を借りることで、高品質な仕上がりと効率的なプロジェクト進行が期待できます。CMSの設定・カスタマイズ、デザイン制作、コンテンツ移行、セキュリティ対策など、専門性の高い作業を外部に委託できるため、自社スタッフは本来の業務に専念することが可能です。
ただし、外部委託をしても、プロジェクトの進捗状況や成果物を定期的に確認し、適宜フィードバックを行うことが重要です。さらに導入後のサポートやメンテナンスも契約に含めることで、長期的に効率的な運用が可能になります。
自社の状況に応じて、プロの力を上手く活用することが、CMSを円滑に導入し、継続的に運用していくための賢明な選択肢となるでしょう。
CMSの導入にはさまざまな費用が発生します。これらの費用を正確に把握することで、正確にCMS導入プロジェクトの予算管理を行えるようになります。以下に、主要な費用項目とその平均的なコストについて詳しく解説します。
CMSのライセンス費用は、オープンソースの無償のものから有償で高額なものまでさまざまです。
オープンソースCMSは基本的に無料で利用できますが、追加のプラグインやテーマ、一部の高機能なカスタマイズに関しては有料のものもあります。たとえば、WordPressのプレミアムテーマは約5,000円から3万円程度、プレミアムプラグインは1,000円から1万円程度が相場です。
商用CMSは、充実した機能とサポートを提供しますが、継続的なライセンス費用が発生します。たとえば、HubSpot Content HubのProfessionalプランは月額54,000円から、Shopifyのプレミアムプランは月額44,000円からです。
ただし、保守運用はベンダー側が行うため、トータルの運用費用は商用CMSの方が安くなる可能性もあります。
CMSの導入とカスタマイズには、初期設定、デザインの作成、機能の追加などの作業が含まれます。自社に専門知識を持つ人材がいる場合、導入・カスタマイズ費用は大幅に抑えることが可能です。
しかし、そうでない場合は外部のプロへの依頼が必要でしょう。
外部の制作会社に依頼する場合、サイトの規模や機能の複雑さに応じて数十万円から数百万円、場合によっては数千万円に達することもあります。
たとえば、基本的な企業サイトの構築であれば50万円から100万円程度、大規模なサイトやポータルサイトの構築では200万円から500万円以上かかることがあります。
保守運用作業には、システムのアップデート、セキュリティ対策、バックアップの実施などが含まれます。保守運用作業の費用は、内部で行う場合と外部に委託する場合で異なります。
自社内で保守運用を行う場合、担当者の人件費が主なコストとなります。月額数万円から数十万円程度が一般的です。たとえば、1人の担当者が月に20時間程度を保守運用に費やす場合、その人件費がコストとして計上されます。
保守運用を外部に委託する場合、月額契約での費用が発生します。契約内容によりますが、一般的には月額5万円から20万円程度が相場です。大規模なサイトや高度なセキュリティ対策が必要な場合、月額数十万円以上かかることもあります。
CMSを効果的に運用するためには、担当者を対象にCMSの基本的な操作方法や運用ルールのトレーニングを実施します。外部講師を招いた場合、1回の研修で数万円から数十万円程度かかることがあります。
たとえば、1日8時間の集中トレーニングを実施した場合、講師料として10万円から20万円程度が相場です。
継続的な教育プログラムとして、定期的な勉強会やオンラインコースを活用します。これにより、担当者が最新のCMS機能やトレンドに対応できるようにします。年間で数万円から数十万円程度のコストがかかることがあります。
CMSを運用する中で、特定の機能を追加する追加プラグインやモジュールが必要となるかもしれません。小規模な機能拡張であれば数千円程度で済むことが多いですが、より高度なプラグインや業務用のソリューションでは数万円のコストが発生することもあります。
また、月額または年額契約となっている有料プラグインやモジュールが多いため、定期的にコストが発生します。定期的な更新が必要であり、そのための追加費用が発生することも考慮しなければいけません。
オープンソース型CMSを運用するためには、ウェブサイトデータをホストするサーバーが必要です。
共有サーバーは最もコストが低く、月額数千円で利用開始できるため、スタートアップや小規模企業に人気です。一方で、トラフィックが多いサイトや大規模な企業では、リソースを共有しない専用サーバーや柔軟性の高いクラウドホスティングを選択することが一般的ですが、これらのオプションは月額数万円から数十万円の費用がかかります。
一方、商用CMSではサーバー費用が発生しないケースが多いです。たとえば、HubSpotはプレミアムクラスのホスティングを無料で提供しています。
ドメイン名はウェブサイトのアドレスとして機能し、年間の更新費用が発生します。一般的なドメイン名は年間1,000円から数千円で取得可能ですが、希望するドメインがプレミアムドメインの場合は、数万円から数十万円の費用が必要になることもあります。ドメイン名はブランドの顔とも言えるため、選定には特に注意を払う必要があります。
ここではCMSの具体的な導入事例を紹介し、各社がどのようにCMSを活用し、目標達成をしたのかを詳しく見ていきましょう。
出典:立正大学
立正大学は、見やすく使いやすい公式サイトを実現するため、クラウド型CMS「Pattern Style CMS」を導入しました。
従来の公式サイトは、学部やキャンパスごとに情報が別々に管理されており、デザインや情報の見せ方に統一性がありませんでした。また、コンテンツ作成もHTMLベースだったため、専門知識のある職員しかコンテンツ発信ができず、情報公開に遅れが生じていたのです。
CMSの導入により、コンテンツの一元管理が可能になり、各部署の担当者が直接編集できるようになりました。テンプレート機能でデザインを統一し、タイムリーな最新情報の発信を実現。
さらに、サーバ運用はベンダー側が代行するため、大学側の運用負荷が大幅に軽減し、運用コストも約30%削減することに成功しました。
出典:外為どっとコム
株式会社外為どっとコムは、FXサービスを提供する企業です。
顧客向けサービスサイトは、前回リニューアルから時間が経ち、スマートフォンやタブレットへの対応が不十分になっていました。加えて、コンテンツ量の多さと整理状況の悪さ、デザインのトレンド遅れといった課題があったのです。
このような状況を改善すべく、同社はサイトリニューアルを決定。運用面とセキュリティ面での適切なバランスを重視し、CMS「 Movable Type SmartSync」の導入を検討しました。
リニューアルに際しては、外部制作会社に作業を依頼し、旧サイトの分析、ペルソナ設計、サイト構造の見直し、コンテンツの取捨選択、CMS管理画面のカスタマイズなどを実施してもらいました。
その結果、かつて数千ページあったコンテンツを2,000~3,000ページに適正化することに成功。更新担当者が容易にコンテンツ管理できるようになるとともに、直感的なナビゲーション構築も実現できたのです。
リニューアル後は、モバイル/PCでの統合管理が実現し、ナビゲーションの利便性が高まったことで顧客の離脱を抑えられました。担当者によるコンテンツ更新も容易になり、コールセンターへの問い合わせがほぼなくなるという成功を収めています。
株式会社サカエは、静岡県浜松市に本社を置く技術サービス・商社企業です。
創業80年の歴史を持ち、これまでは既存の取引先ネットワークを活用して案件を獲得してきました。しかし、事業の広域展開と新規顧客開拓が課題となっており、自社の価値をよりアピールするためのデジタルマーケティング強化が必要でした。
そこで2020年、HubSpotを導入し、コーポレートサイトとオウンドメディア「Engineer Knowledge」をリニューアル。HubSpotのCMSは、CRMとマーケティング機能との円滑な連携が強みです。
サカエでは、オウンドメディアで技術情報を見た顧客データをセールス部門と共有し商談創出につなげたり、非取引企業にパーソナライズメールを送るABM施策を実施しています。
その結果、下記の大きな成果が生まれました。
今後も地道な活動を重ね、新規営業案件比率10%の目標実現に向けてさらなる取り組みを図っていくとのことです。
本事例の詳細はこちらよりご確認ください。
CMSを効果的に導入するためには、まず自社の課題やゴールを明確にすることが不可欠です。そして、その課題解決に必要な機能を備えたCMSを適切に選定する必要があります。選定作業においては、実際にCMSを利用する現場の社員にも協力を仰ぎ、彼らの声を反映させることが重要です。
CMSの導入には、要件定義や設計など複雑な工程を伴うため。自社でこれらを行うのは難しい場合が多いでしょう。そういった場合は、外部の専門制作会社に依頼するのがおすすめです。経験豊富な制作会社なら、CMSの選定からカスタマイズ、設計、さらには公開後の運用までをトータルでサポートしてくれます。
課題やゴールを明確にし、現場の声を反映させ、場合によっては専門家の力を借りることで、自社にぴったりなCMSを円滑に導入することができるでしょう。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。