近年、Webサイトはビジネスにおいて必須のツールとなっています。総務省の「令和4年通信同行利用調査」でも、9割以上の企業が自社Webサイトを開設しているという結果がでています。
しかし、Webサイトと一口に言っても、その種類は目的に応じて多岐にわたります。単に「Webサイトを作ろう」と考えるだけでは不十分で、自社のビジネスゴールに合わせて、最適なWebサイトの種類を選定する必要があるのです。
本記事では、代表的なWebサイトの種類とその特徴、作成時の留意点などを詳しくご紹介します。Webサイトを新規で立ち上げる方はもちろん、既存サイトのブラッシュアップを検討されている方も、ぜひ参考にしてください。
Webサイトを構築する上で最も重要なことは、そのWebサイトを通じて達成したい明確な目的を設定することです。
Webサイトには様々な種類が存在し、情報提供、顧客コミュニケーション、ブランディング、商品販売など、それぞれ異なる役割と機能を持っています。したがって、Webサイト構築に先立ち、「このサイトを立ち上げる目的は何か」という根本的な問いに答えなければいけません。
目的を明確にするには、自社のビジネス全体の目標や現在の事業ステージから逆算し、その目標達成にWebサイトがどのように貢献できるかを検討します。
たとえば、すでに顧客基盤があり新規リード獲得を目指すのであれば、SEO対策を意識したオウンドメディアが有効でしょう。一方、まだ知名度が低いスタートアップ企業であれば、認知向上を目的としたコーポレートサイトと製品紹介用のLPが適切かもしれません。
このように、Webサイトの目的を明確にすることで、自社に最も適したWebサイトの種類が見えてきます。目的が曖昧であれば、的確なWebサイト構築は困難であり、構築後に大がかりな改修を強いられるリスクもあります。
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Webサイトは対象とするユーザーによって、大きくコンシューマー向けと社内向けの2つに分類されます。コンシューマー向けWebサイトは、顧客を対象にした情報提供や商品販売、ブランディングなどの目的で公開されます。一方、社内向けWebサイトは、企業内部の情報共有や業務の効率化を目的としており、従業員のみがアクセス可能です。
ここからは、コンシューマー向けWebサイトと社内向けWebサイトについて詳しく解説していきます。
コンシューマー向けWebサイトは、顧客や投資家などに向けて情報を提供するWebサイトです。製品やサービスの販売、ブランド認知度の拡大、顧客との関係構築、リード獲得などさまざまな目的のもと運用されます。一般的にコンシューマー向けWebサイトでは、魅力的な画像や動画を用いて、有益な情報を分かりやすく伝える必要があります。
一方、社内向けWebサイトは、従業員やパートナー企業などを対象としたもので、主に社内情報の共有、コミュニケーションの促進、業務プロセスの効率化を目的としています。たとえば、社内手続き書類や資料などのドキュメント、フォーラムや社内SNSなどのコミュニケーション、会議室の予約やプロジェクト・タイムラインなどのリソース管理などの機能を含んでいます。
コンシューマー向けWebサイトは外向きにブランドの魅力を最大限に発揮し、顧客とのエンゲージメントを目指す一方で、社内向けWebサイトは企業内の情報共有と業務効率化に焦点を当てています。
なお本記事では、コンシューマー向けWebサイトについて解説していきます。
コンシューマー向けWebサイトは、目的とターゲットに応じてさまざまな形があります。主要なコンシューマー向けWebサイトの種類は以下の通りです。
Webサイトを作成する際は、まずは目的とターゲットを明確にしましょう。どのような人に来てほしいのか、ターゲットはどのように自社サイトを見つけるのか、どのような情報を求めているのかなどを決めます。
Webサイト制作前には、自社の顧客像「ペルソナ」を作成することをおすすめします。ターゲットに関する深い理解がなければ、最適なコンテンツ作成やWebサイト設計はできないためです。
ターゲットを明確にしたら、目標や自社ビジネスなどを考慮してWebサイトの種類を決めます。この際、1つのサイトが複数の目的を備えることも可能です。一般的なのが、企業サイト、商品・サービスサイト、オウンドメディアが一体化しているWebサイト。この場合、1つのWebサイトで認知拡大やリード獲得、売り上げ増加などの目的を備えています。
しかし、必ずしも複数の目的を備えるのがベストとは限りません。たとえば製造業やECサイトのように取扱い製品数が多い場合、企業サイトと商品サイトなどの組み合わせをすると、ユーザーが目的の情報に円滑にたどり着けないでしょう。
重要なのは、ユーザーが求める情報やサービスにすぐにアクセスできるように設計することです。それぞれのタイプに応じたデザインと機能の最適化により、Webサイトの効果を最大限に引き出せます。
ここからは、各コンシューマー向けWebサイトの特徴と目的を事例と共に詳しく見ていきましょう。
企業サイトは、インターネット上における企業の顔ともいえるサイトであり、主に企業の概要、事業内容、最新ニュース、IR情報、採用情報などが掲載されます。デザインは企業のブランドイメージを反映したものとなり、企業の理念や方針が込められています。対象は顧客や投資家、取引先、求職者など幅広いです。
企業サイトは、事業活動における情報を網羅的にまとめる性質上、その目的は多岐にわたります。一般的に、浅く広く情報を紹介する傾向にあり、詳しくは専用の商品サイトやサービスサイトで紹介するという形式をとることも可能です。ここでは、企業サイトの主な目的を見ていきましょう。
企業サイトには、企業の基本情報や理念、ビジョン、企業文化などを掲載することが重要です。これらの情報を通して、顧客は企業が何を大切にし、どのような価値を追求しているかを理解できます。
具体的には、将来の目標や方向性を示すビジョンページ、企業の存在意義や達成目標を設定するミッションステートメント、社員の働き方や価値観を反映した企業文化ページなどがあげられます。
企業の本質的な部分を伝えることで、顧客や投資家、求職者、従業員に企業の魅力を効果的にアピールできます。
大阪市立大学大学院の研究によれば、経営理念の深い浸透が、顧客と従業員の満足度を高める重要な要因であることが確認されました。企業サイトで理念やビジョンなどを説明することで、従業員は顧客視点のアプローチをとれるようになり、結果的に顧客満足度に貢献するのです。
また、近年は商品やサービスではなく、企業理念やビジョンへの共感が重要な購買要因になっているため、その点でもコーポレートサイトの役割は大きいといえるでしょう。
製品やサービスの紹介は企業サイトの重要な部分です。ユーザーにとって分かりやすく、適切な情報量を提供しなければいけません。
たとえば取り扱う製品やサービスの数が多い場合は、カテゴリーごとに大まかな説明を行い、詳細は各製品の専用サイトやページで紹介するのが賢明でしょう。企業サイト上で膨大な情報を扱おうとすると、ユーザーが目的の情報に辿り着くのが困難になる可能性があるためです。
一方で、取扱製品数が3つ程度なら、企業サイト上で詳しく紹介する方法も考えられます。主要製品の特長、使い道、競合との違いなどをきちんと説明することで、ユーザーが製品を理解し、関心を持ってもらえます。
製品やサービスの紹介の仕方を工夫することで、ユーザーの利便性が高まり、自社の強みを効果的にアピールすることが可能です。取り扱いの広さや複雑さに応じて、適切な情報の扱い方を選ぶことが重要なポイントといえるでしょう。
最新の企業ニュース、プレスリリース、イベント情報などを発信することで、顧客や投資家などに自社の最新活動を伝えられます。たとえば、賞の受賞情報を発信すれば信頼性や権威性を高められ、セミナー情報を更新すれば多くの顧客の参加を見込めるようになります。
定期的な更新を怠ると、サイトの陳腐化を招き、企業に対する関心が低下してしまう恐れがあります。一方で過剰なニュース更新は、重要な情報が埋もれてしまう可能性があります。そのため、ニュースの内容を吟味し、適切なタイミングで発信することが求められます。
企業サイトは、投資家やメディアといった重要なステークホルダーと効果的にコミュニケーションを取るためのプラットフォームでもあります。投資家向けの情報には、財務報告、株価情報、投資家向けイベントの案内などが含まれます。
メディア向けのセクションでは、プレスリリースのアーカイブや、報道関係者が取材を依頼するための連絡先情報が提供されることが多いです。これにより、企業はその成長と成果を効果的に伝えることができ、企業価値を効果的に高められます。
名刺管理ツールやインボイス管理サービスなどを提供するSansan株式会社の企業サイトを見ていきましょう。
出典:Sansan株式会社(以下同様)
トップページの背景には、テレビCMで放映されている動画が流れています。画面上のグローバルメニューは以下の通りです。
サービスページでは、SansanやBillOneなどの同社が提供するサービスが一覧形式で紹介されています。企業サイトでは、概要程度の紹介がされており、詳細は各製品サイトで行う形式です。
会社情報ページでは、メッセージや企業理念などが紹介されています。
また、サイトはSansanのブランドカラーである青・赤・白でデザインされており、ユーザーフレンドリーなナビゲーションも魅力的です。
商品サイトは、自社商品について詳細な情報の提供を目的としています。商品の特徴、メリット、使用方法などを詳しく説明し、商材理解の促進や購買意欲の醸成などを目的にしています。
主に、商品単価の高いBtoB企業、車や不動産などの高額商材で用いられます。直接的な販売は行わず、顧客が商品について学ぶためのプラットフォームとして機能します。
商品サイトの主な目的は、商品の詳細な情報を提供し、顧客の購買意欲を高めることです。この目的を達成するため、商品の特長やメリット、使用方法、事例などを詳細に紹介し、購入における顧客の悩みや不明点を解消しなければいけません。ここからは、商品サイトの主な目的を見ていきましょう。
また、商品の仕様、サイズ、色のバリエーション、価格など、技術的詳細などの購入にあたって必要な情報を提示することで、顧客は自分のニーズに最適な選択ができるようになります。
また、カスタマーサポートへの連絡方法も記載し、電話、メール、ライブチャットなど複数のチャネルが用意されていることが一般的です。これにより、顧客は購入後のサポートを手軽に利用でき、製品に対する信頼と満足度を高めることができます。
優れた商品サイトとしてご紹介したいのが、カメラやレンズなどを販売するNikonです。Nikonは取扱製品が多数のため、個人と法人別々の商品サイトを運用しています。
出典:Nikon(以下同様)
個人向けサイトでは、カメラやレンズ、双眼鏡などを掲載。Nikonの商品サイトの優れている点は、比較機能があることです。気になる商品を複数選択すれば、製品仕様を比較できるため、納得いく購買体験へとつながります。
各製品ページでは、製品特徴や主なスペック、システム、さらには撮影サンプルまで掲載されています。顧客がカメラの比較検討をするうえで、必要な情報はすべて提供されているでしょう。
さらに、イベントレポートのようなコンテンツも用意されており、プロでない一般人の手による作例を見られるのは大きなメリットです。自分が同じ製品を使えばこのような写真が撮れるのか、具体的にイメージできる点が購買意欲を高めるはずです。
法人向けサイトでは、取り扱う製品が多岐にわたるため、業界やカテゴリ分けされた製品ラインナップから探しやすくなっています。このように、ユーザーのニーズに合わせた検索方法を用意することで、適切な製品を見つけやすくなっています。
Nikonの事例が示すように、比較機能や製品ページのコンテンツ、ユーザー視点に立った検索設計など、様々な工夫によって顧客体験が向上し、結果として購買が後押しされるのです。
Amazonや楽天市場を代表するECサイトは、顧客が製品を直接購入できるプラットフォームです。実店舗を持たなくとも、オンライン上で商品の販売を完結できます。この項では、ECサイトがどのようにして売上を生成し、顧客体験を向上させるかについて掘り下げます。
ECサイトの目的は、商品の販売だけではありません。ブランディングや販路の拡大、コストの削減など多様な目的のもと、ECサイトの運用を行えます。ECサイトの主な目的を見ていきましょう。
ECサイトの最大の目的は、インターネットを介して製品やサービスを直接顧客に販売し、収益を上げることです。そのためにECサイトでは、以下のような機能が必要となります。
こうした機能を備えることで、顧客は自宅や外出先から気軽に商品を閲覧、比較、購入できるようになります。また、リアルタイムでの情報更新や在庫管理も可能になり、最新の情報を常に提供できます。
ECサイトは地理的な制約を超えて製品を提供できるため、実店舗に比べて販路の拡大が容易です。さまざまな地域や国の顧客にアプローチし、新規顧客層を効果的に開拓できます。従来のエリアから、遠保や海外まで顧客層を広げられるのはECサイトならではの強みです。
ECサイトでは、商品の販売データや顧客の購買行動に関するデータを詳細に収集できます。これらのデータを適切に分析・活用することで、需要と供給のバランスを常に最適化し、在庫管理を的確に行えます。
さらに、マーケティング施策の効果検証やターゲティング精度の向上、商品開発の参考としても活用できるため、常にデータドリブンで意思決定をすることが可能になります。
ECサイトは、単なる販売チャネルにとどまらず、ブランドメッセージを効果的に発信し、顧客とのコミュニケーションを深める重要な媒体でもあります。
まずECサイトとSNSの連携により、SNS上でのブランド認知向上が図れます。自社製品の最新情報やキャンペーンなどをSNSで発信することで、効果的に潜在顧客を集客できます。さらに、SNSユーザーの反応を分析することで、ニーズの把握や的確なターゲティングにもつなげることが可能です。
また商品レビュー機能を設けることで、顧客同士が意見や経験を共有する場を提供できます。実際の使用者の生の声を見ることで、顧客は商品の特徴やメリットをより具体的に理解することが可能です。満足度の高い客観的な評価は、新規顧客の購買意欲を高める効果も期待できます。
ECサイトには大幅なコストダウンの効果もあります。実店舗に比べ、人件費や施設維持費などが不要となり、システム自動化の推進により無人運営も可能です。コストを最小限に抑え、リソースを成長分野への投資に重点配分できることが、ECサイトの大きな強みです。
ECサイトの運用で、商品の売り上げだけではなく、ブランディングにも成功した事例をご紹介します。keniamariliaは、着物をリメイクした1点物のアパレルアイテムを販売するブランドです。
出典:keniamarilia
このブランドを手掛けるのが、デザイナーの座波ケニア氏です。個人ブランドということもあり、座波氏は初期投資を抑えつつブランディングを行うために、ECサイトからスタートすることを選択しました。実店舗出店に比べ、ECサイトの運営では人件費や家賃などの固定費用がかからないため、リスクを最小限に抑えられるのが大きなメリットです。
しかし、ECサイトでブランディングに成功するためには、単に商品を並べて販売するだけでは不十分です。座波氏は、巧みなSNS戦略を通じてブランドの世界観や理念をファンに効果的に訴求し、コアな支持層を獲得することに成功しました。
一般的に、アパレルブランドではInstagramでの情報発信がメインとなりますが、座波氏は自身のXのアカウントで着物への思いや文化的背景、デザインへのこだわりなど、座波氏個人の人となりが伝わるコンテンツを発信しました。
このようなストーリー性の高い魅力的な投稿は、keniamariliaのブランドコンセプトや哲学に共感するファンを惹きつけ、彼らがSNSで拡散することで更なるリーチを生み出しました。
また、ECサイトのグローバル対応力も活かされ、国内のみならず海外の顧客にもアプローチが可能になりました。
このように、ECサイトとSNSを連携させることで、keniamariliaはブランド発信力を高め、商品とストーリーの両面から顧客を獲得することができました。着物や日本文化への深い理解と造詣に裏打ちされたブランドストーリーが、世界中のユーザーの心を掴んだことが、同ブランドの急成長につながったと言えるでしょう。
サービスサイトは、企業が提供する自社サービスを紹介し、顧客にその価値を理解してもらうためのWebサイトです。この項では、サービスサイトがどのように機能し、顧客エンゲージメントを促進し、サービス利用者を増やせるのかについて見ていきましょう。
サービスサイトの主な目的は、自社サービスの範囲を明確に示し、それぞれのサービスが顧客にどのような利益をもたらすかを示すことです。サービスの具体的な内容、利用方法、料金体系、そして顧客が期待できる結果など、詳細な情報を提供します。主な目的を見ていきましょう。
サービスの具体的な特徴、オプション、サービスを利用することで得られる具体的なメリットなどを紹介します。図表やイラストなどを使用して、サービスの特徴やプロセスなどを視覚的にわかりやすく説明します。これにより、顧客の理解が促進され、効果的に購買意欲を高められるのです。
商品サイトとサービスサイトで大きく異なるのは、メンバー紹介の項目の有無です。サービスサイトでは、企業やチームを構成するメンバーの顔写真、経歴、専門分野などを詳しく紹介することが重要になります。
サービスの質は人によって大きく左右されるため、顧客はサービスを購入する前に、実際に関わるメンバーの人となりや専門性を知りたいと考えるためです。メンバー紹介ページでは、一人ひとりの経歴や実績、強みなどを開示し、メンバーの信頼性や手腕をアピールしましょう。
事例紹介ページは、自社がどのようにして課題解決に取り組み、どのような成功を収めたのかを顧客の声と共に紹介するコンテンツです。具体的な事例を通じて、顧客に対しサービスが実際にどのような価値を提供できるのかを理解してもらえます。比較検討段階における顧客の多くは、事例コンテンツを参考にするため、しっかりと設置するようにしましょう。
事例紹介ページは、以下のような構成で展開されることが一般的です。
事例紹介ページで、サービスの実績と成果を具体的に示すことで、顧客を購買へと動かせるようになります。
サービスサイトでご紹介したいのが、BtoBマーケティングや法人営業を支援する才流(サイル)のWebサイトです。
出典:才流(以下同様)
グローバルメニューには、サービス、特徴、事例・実績、セミナー・イベントなどサービスサイトにおける基本的な項目が並んでいます。注目したいのがメソッドです。
メソッドページでは、同社が長年の実績から蓄積した経験やノウハウを体系化した「メソッド」を公開しており、高い透明性とサービスの質の高さをアピールしています。このようなメソッドを隠さず開示することで、顧客の信頼を大きく高めているはずです。
また、コンサルタント紹介のページも手厚く、個々のコンサルタントの経歴や実績、得意分野などが丁寧に紹介されています。顧客はこのページを見ることで、自分のニーズに合ったコンサルタントを的確に選択できるでしょう。顔写真の掲載もあり、親しみやすさも生まれています。
このように、専門的な「メソッド」と高い実績を持つコンサルタントの紹介を柱に据えたWebサイト構成は、サービスサイトとしての説得力が高いです。自社のサービスの質の高さと、サービスに直接携わるメンバーの専門性をきちんとアピールできているからこそ、顧客からの高い信頼と支持を獲得できているのだと思われます。
会員サイトは、登録ユーザーに限定コンテンツやサービスを提供し、エンゲージメントや顧客ロイヤルティを高めるためのWebサイトです。ここでは、会員サイトの目的や特徴を見ていきましょう。
会員サイトの最終目的は、顧客のエンゲージメントと満足度を高めることですが、そのほかにもコミュニティの構築やフィードバックの収集などの目的もあります。以下では、会員サイトの目的をご紹介します。
会員サイトを利用すると、一般公開されない特別なコンテンツや情報を提供できます。たとえば、専門的な調査結果、実用的な情報、限定動画など、顧客にとって価値のあるコンテンツがこれに含まれます。
こうしたプレミアムコンテンツを提供することで、顧客は自ら進んで名前やメールアドレスを登録し、会員になる動機を持ちます。つまり、既存の顧客を維持しながら新規顧客を獲得するチャンスを作り出せるのです。
会員サイトで限定サービスやコンテンツを定期的に提供すれば、顧客が継続的にサイトを訪れる理由を作り出せます。たとえば、特別な割引、会員専用のコンテンツ、カスタマイズされたサービスなどです。顧客に新しい価値を提供することで、興味関心を持続させ、競合他社への移行を防げます。
会員サイトは顧客ロイヤリティの向上にも貢献します。リワード(報酬)プログラムやポイントシステムを導入すれば、顧客は繰り返し購入やサイト訪問を行う動機を得られます。具体的な内容は、次回購入時に利用できる割引、特別なプロモーションへのアクセス、あるいは限定商品への先行アクセス権などが一般的です。
ロイヤリティプログラムは、顧客が自社との関係を価値あるものと感じるように設計されなければいけません。そうすることで、ただの一回限りの取引ではなく、顧客と継続的な関係を築けるようになり、結果的にロイヤリティの向上を見込めます。
会員サイトはまた、同じ興味や目的を持つ顧客同士をつなぐプラットフォームとしても機能します。たとえばフォーラムを設けることで、企業、顧客、公式パートナーが互いに交流し、情報を共有するコミュニティを形成できます。このようなコミュニティは顧客にとって付加価値を提供し、企業へのロイヤリティをさらに強化します。
会員サイトでは、既存顧客のデータを効率よく収集できます。たとえば、フォーラムに寄せられる顧客の声を分析すれば、商品改善の示唆が得られるかもしれません。また、ロイヤリティの高い顧客は、新規顧客よりも積極的にアンケートに回答してくれる傾向にあります
アンケート、フィードバック、ユーザー行動などの分析を通じて得られる示唆は、マーケティング施策や製品開発などに活かせるでしょう。
会員サイトの事例として、サッポロビール株式会社の「ヱビスビアタウン」をご紹介します。ヱビスビアタウンはユーザーとの直接的なコミュニケーションを目的とした会員サイトであり、ビールを好きな人たちが自由に投稿し会話できる場所です。
出典:ヱビスビアタウン
SNSでのコミュニケーションは一方通行感がありましたが、共通の価値観を持つ仲間(顧客)同士ならば活発なコミュニケーションが生まれると考えたことをきっかけに設立されました。
会員登録をした場合、投稿やコメント、会員限定イベント、キャンペーン応募などが可能になります。サイト運営においては、良いことも悪いことも含めてユーザーの本音を聞きたいとの方針から、ブランドに関する投稿以外にも自由な発言を歓迎しています。また、ヱビスブランドの担当者の考えや仕事内容など温度感のある発信ができる貴重な場となっています。
設立から半年で会員数は7万人を超え、投稿への反応も活発。特に、毎日参加できる「新春くじ」は、1.8万人以上の新規会員を獲得する記録的な施策となりました。また、「ヱビスものづくりプロジェクト」では4,800件以上の投票があり、ユーザーとの協働を実現できた例です。
今後はオンラインでのつながりを越えて、リアルな場でユーザーと交流できる機会を設けたいと考えているとのこと
LPとは、特定の商品やサービスをプロモーションするために制作された独立したWebサイトです。デジタルマーケティングにおいては、Web広告の遷移先として活用されるケースが多々あります。ここでは、LPの特徴や目的についてみていきましょう。
LPサイトの最終目的は、Web広告やメールマガジンなどから遷移したユーザーに、購入や資料問い合わせ、ウェビナー申し込みなどの特定の行動を促すことです。この目的を達成するために、LPは下記3つの役割を担います。
LPサイトでは、商品やサービスの魅力を分かりやすく伝えて、ユーザーの関心を惹きつけ、価値をアピールすることを目的としています。その際、3つのポイントを抑えることが重要です。
第一に、注目を集めるヘッドラインやキャッチコピーを作成することです。顧客の課題やニーズを的確に捉え、それに対する解決策やメリットを分かりやすく表現する必要があります。文言は簡潔で強い印象を与えるものが望ましいです。
第二に、商品やサービスの具体的な特徴を視覚的に伝えることです。商品画像や動画を効果的に活用し、テキストだけでは伝えきれない部分を補完します。
第三に、サイトの信頼性と専門性を高める工夫をすることです。実績や受賞歴、顧客の声などを掲載し、サービスの質の高さをアピールしましょう。
魅力的なデザインと分かりやすい説明で顧客の関心を引きつけ、購入ボタンやお問い合わせフォームなどの明確なCTA(行動喚起)を設置し、購買やリード獲得につなげることがLPサイトの肝となります。
特に重要なのがCTAの設置位置です。WACUL株式会社の調査によれば、BtoBサイトにおいては以下の条件を満たすLPが最もコンバージョン率が高くなるとのことです。
この調査結果を踏まえると、ファーストビューで訪問者の関心を高め、そこにCTAを設置することが肝心だと言えます。ファーストビューに全てが集約され、行動を促すきっかけが用意されていれば、ユーザーの行動を効果的に誘導できるようです。
そのためLPサイト制作では、ヒートマップツールやA/Bテストなどを活用し、ファーストビューの改善に注力することをおすすめします。訪問者の視線の動きや行動を分析し、CTAの位置や文言を最適化することで、コンバージョン率の向上が期待できるでしょう。
LPの事例として、カスタマーサポートソフトウェアを提供するZendeskをご紹介します。
出典;Zendesk
上記画像はZendeskのLPにおけるファーストビューです。まず目につくのが「Zendeskで顧客視点のサポート体制を構築」と製品の特長を端的に表したキャッチコピー。その横には、製品画像が記載されており、顧客は具体的な製品イメージを持てます。
画像の上には、これまで受賞した賞を並べることで、効果的に信頼性を醸成できています。「製品デモを観る」という分かりやすいCTAボタンも設置されており、ファーストビューで顧客の商材理解の促進から行動喚起まで行えている典型的なファーストビュー完結型のLPといえるでしょう。
オウンドメディアとは、自社が保有するメディアチャネルのことです。厳密にいえば自社で自由に管理できるチャネルを指すため、メールや紙のパンフレットなども含まれますが、デジタルマーケティングにおいてはブログを指すことが一般的です。ここでは、オウンドメディア(ブログ)の特徴と目的を見ていきましょう。
オウンドメディアの目的は多々ありますが、これからWebサイト運営に取り組む方は、認知拡大と新規リード創出の2つの目的を押さえておくべきです。
企業が成長を遂げるためには、優れた商品やサービスを提供するだけでなく、広く認知を獲得することが必須です。たとえ魅力的な製品を開発したとしても、潜在顧客に知られていなければ、販売数や顧客数の増加は望めません。
近年、顧客の商品やサービスの検索行動が大きく変化しています。従来は店頭やカタログ、広告などから情報を得ることが一般的でしたが、今日では多くの人がGoogleやYahoo!などの検索エンジンを活用しています。検索エンジンで、自分の課題や悩みに関するキーワードを入力し、解決策を探し求めるのが一般的な行動パターンとなっているのです。
このような顧客の検索行動に対応するためには、自社サイトやコンテンツを検索結果の上位に表示させなければいけません。検索エンジン最適化(SEO)に積極的に取り組み、ユーザーにとって有益なWebサイト・コンテンツを作成し、自社の認知度を着実に高めていく必要があります。
認知の獲得は販売や収益の増加に直結する重要な課題です。検索エンジンを有効活用した戦略的な認知向上施策を講じることが、企業の持続的な成長を支える基盤となります。
ターゲット層の課題やニーズにマッチした役立つ情報を提供し続けることで、自社サイトへの流入を促進できます。さらに、コンテンツを通じてユーザーの信頼を徐々に高められるのがオウンドメディアの大きな強みです。
そして、その信頼感を活かし、資料ダウンロードや製品デモ申し込みなどの導線を設けることで、段階を踏んでリード獲得に至ることができます。コンテンツに惹きつけられ、関心を持ったユーザーが、最終的にリードに転換するわけです。
質の高い情報発信から、徐々に信頼関係を構築し、適切なタイミングでリード獲得の導線を用意する。このようなアプローチこそが、オウンドメディアを活用した新規リード創出の鍵となります。
オウンドメディアの成功事例として、バックオフィス業務を効率化するサービスを提供する「Money Forward Bizpedia」をご紹介します。
出典:Money Forward Bizpedia(以下同様)
まず、見習うべきポイントは明確なターゲット設定です。経理やバックオフィス業務に従事するビジネスパーソンを対象とすることで、ユーザーの悩みや課題を正確に把握し、専門性の高い有益なコンテンツを提供しています。
また、自社製品に関するCTAを設置し、興味を持った潜在顧客をリード・顧客へと転換する仕組みを構築。さらに公認会計士などの専門家による記事の監修を行うことで、情報の正確性と信頼性を高めています。専門家の視点からのアドバイスや解説が含まれているため、読者は安心して情報を活用できるでしょう。
ポータルサイトとは、さまざまなWebサイトやWebサービスへのゲートウェイ(入り口)として機能するWebサイトのことです。代表的なのがYahoo! Japanやマイナビ転職、SUUMOです。ユーザーがインターネットを活用する際の起点となり、必要な情報やサービスにスムーズにアクセスできるよう支援します。
ポータルサイトは、インターネット上におけるあらゆる情報を集約する性質上、他のWebサイトと比べると多くの流入が見込めます。そのため、新規顧客の獲得や新たな収益源の確保などの効果を見込めるのです。ここからは、ポータルサイトの目的を見ていきましょう。
ポータルサイトの最大の目的は、ユーザーがインターネット上の様々なコンテンツやサービスに簡単にアクセスできる環境を提供することです。検索エンジン、メール、ニュース、天気情報など、日常的に必要とされるコンテンツを一か所に集約し、ワンストップで利用できるようにします。これにより、ユーザーの利便性が大幅に向上します。
充実したコンテンツやサービスを備えたポータルサイトには、多くのユーザーが訪れる可能性があります。そのためポータルサイトを自社の製品やサービスの訴求の場として活用し、新規顧客の獲得につなげられます。さらに、ユーザー行動の分析を行えば、ターゲットを絞ったアプローチも可能になります。
ポータルサイト自体を収益源とすることもできます。広告の掲載や優れたサービスの課金による収入確保などのビジネスモデルが考えられます。また、サービスの集約により生まれた新たなニーズに対応する新規サービスの開発も可能です。
ポータルサイトの例として、北米の製造業者、卸売業者、サービスプロバイダー向けのBtoBポータルサイトThomasnetをご紹介しましょう。
出典:ThomasNet(以下同様)
ThomasNetは、幅広いカテゴリにわたる詳細な製品情報とサプライヤーのデータベースを特徴としており、ユーザーは特定の材料、部品、装置、またはサービスを提供する企業を簡単に見つけられます。キーワード検索に加えて、地域や認証情報、企業の規模に基づいた検索が可能です。その結果、企業は自身のニーズに最も適したサプライヤーを迅速に特定できます。
また、業界のトレンドやニュースを提供するコンテンツも豊富に取り揃えており、ユーザーは最新の市場動向や技術革新に関する情報を手に入れられます。ユーザーは業界の変化に敏感に反応し、適切なビジネス決定を下すための示唆を得ることが可能です。
ThomasNetのもう一つの重要な機能は、サプライヤーとバイヤーの間のコミュニケーションを容易にすることです。ユーザーはサイト内で電話番号やWebサイトの確認が行えるため、見積もりや技術的な詳細を迅速に得られます。
Webサイトを立ち上げる前の計画段階は、Webサイト運用成功の鍵を握る重要なプロセスです。以下は、Webサイト制作に取り組む前に検討すべき主なポイントをご紹介します。
Webサイトは、ビジネス目標を達成するための手段の一つです。そのためWebサイトを構築する際は、まず自社の明確な目的を定め、それを達成するためのWebサイトが果たすべき役割を明らかにする必要があります。
具体的には、商品販売の増加やブランド認知度の向上などのWebサイトを通じて実現したい成果を特定します。Webサイトの目的を明確にすることで、その目的に合わせてサイトの設計、機能、コンテンツ戦略を的確に策定できるようになるのです。
戦略的なWebサイト活用に向けて、まずは自社ビジネスとWebサイトの目的を明確にすることが、最初の一歩となるでしょう。
目的を明確にしたら、ターゲットユーザーの特定をしましょう。ターゲットユーザーを特定する際は、以下の点を精査する必要があります。
具体的に、製品やサービスを販売するターゲットとなる企業の属性、規模、業種などを明らかにします。また、それらの企業や個人がどのような問題を抱え、何を求めているのかを分析します。
さらに重要なのが、ユーザーがどのような経緯や行動を経て自社サイトにたどり着くのかを把握することです。検索キーワードの分析や、サイト訪問前のユーザージャーニーを追跡することで、ユーザーの行動パターンを解明できます。
こうしたデータの収集と分析を通じて、ユーザーの属性、ニーズ、行動特性などを多角的に捉え、正確にターゲットユーザーを特定できます。
プロジェクトをスムーズに進めるためには、社内の体制を整え、適切なリソースを確保することが必要です。これには、プロジェクトチームのメンバーの選定や役割の割り当て、スケジュール管理、予算の設定などが含まれます。Webサイトプロジェクトの規模や複雑性に応じて、内部スタッフと外部リソースのバランスを取りながら体制を構築しましょう。
Webサイトの制作を自社で行うのか外部に委託するのかによって、対応が大きく変わってきます。
自社で制作を行う場合は、社内にWebサイト構築の専門知識や経験を持つ人材を確保する必要があります。ただし、スキルの維持・習得にコストがかかる点や、本業に専念しづらくなるリスクがあります。
一方で、専門の制作会社に制作を外注する場合は、高い専門性と豊富な実績を持つパートナーを見つけることが重要です。適切な制作会社を選定するには、以下のポイントに留意しましょう。
自社のリソースや要件を踏まえ、制作体制の在り方を慎重に検討しましょう。
Webサイトは、その目的や機能に応じてさまざまな種類が存在します。ビジネスの目標を達成するための重要なツールとして、適切なタイプのサイトを選択することが重要です。たとえば、製品やサービスの直接販売を目指す場合はECサイトが、情報提供や教育を目的とする場合はコンテンツ豊富なオウンドメディアが適しています。
Webサイトは、企業とユーザーをつなぐ重要な接点です。サイトの目的や期待する効果、ターゲットユーザーを明確化し、適切な種類を選択して、顧客にとって便利で有益なWebサイト構築を目指しましょう。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。