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HubSpotでABMを実施する方法とは?HubSpotでの設定方法、ターゲットアカウントの自動追加などABMを実施する方法解説

HubSpotでABMを実施する方法とは?HubSpotでの設定方法、ターゲットアカウントの自動追加などABMを実施する方法解説ABM(Account Based Marketing)は、マーケティングと営業が連携し、自社に利益をもたらす企業に特化してアプローチしていく戦略です。

ABMの概念は比較的古くから存在するものの、日本では近年になって大きく注目を集めるようになりました。その背景のひとつとして挙げられるのが、デジタル技術の発達です。

HubSpotの「日本の営業に関する意識・実態調査2023」によると、日本の営業組織におけるCRM(顧客関係管理)ツールの導入率は36.1%にのぼり、年々増加傾向にあることがわかっています。

ABMの成功には、営業部門とマーケティング部門の強固な連携が欠かせません。部門間の連携強化に役立つCRMやMA(マーケティングオートメーション)が普及したことで、ABMを実践する基盤が十分に整ってきたといえるでしょう。

そこで本記事では、世界のCRM市場をけん引するHubSpotを活用し、ABMを実施する方法をわかりやすく解説します。

ABMとは

ABM(Account Based Marketing:アカウント ベースド マーケティング)とは、企業を対象にアプローチを行う、BtoBマーケティングの手法のことです。以下ではABMの基礎知識を解説したうえで、ABMが注目を集めるようになった背景や、取り組むメリットを紹介します。

ABM(Account Based Marketing)とは

ABM(Account Based Marketing)とリードマーケティング 比較

ABMは「Account Based Marketing(アカウント ベースド マーケティング)」の略語で、対象企業を絞り込んだうえで戦略的にマーケティング施策を行う手法を指します。

一般的なマーケティングは、広範囲で見込み客(リード=個人)を獲得し、受注確度が高そうな案件を営業にパスする手法が一般的です。一方でABMは、マーケティング部門と営業部門が一丸となり、はじめからターゲット企業(アカウント)に照準を合わせてアプローチを行います。その企業に最適な手段やコンテンツを用意できるため、効率よく成果につなげられることが特徴です。

セミナーや展示会においては優良な見込み客の獲得が見込める一方、アプローチする企業を自社側で選ぶことができません。Webマーケティングは多数の潜在顧客へアプローチできる可能性を秘めていますが、良質なリードのみを集めることは困難です。

このような課題を解決する手段として、マーケティングの段階から自社の理想とする企業にアプローチできるABMが注目を集めています。

ABMが注目されるようになった背景

ABMはもともと、2003年に米Momentum ITSMA社が提唱した概念です。(出典:ITSMA「The Rise of Account-Based Marketing Timeline」

マーケティングの手法としては決して新しくないABMですが、なぜ近年になって注目を集めるようになったのでしょうか。その大きな要因を、以下で2つ解説します。

顧客の意思決定方法が変化した

これまでの日本においては、トップダウン方式で意思決定する企業が多数を占めていました。そのためBtoBマーケティングのアプローチは、経営者や役員などの「個人」へ行うことが一般的でした。

しかし近年では、ボトムアップ方式(現場の意見を意思決定に反映させるスタイル)を採用する企業が増加しています。企業の意思決定に関わるメンバーが増えたため、従来の手法が通用しなくなりつつあるのです。

そこで「企業全体」をアプローチの対象と捉えるABMが、現代の日本にマッチしたマーケティング手法として注目を集めるようになりました。

ツールの普及により環境が整備された

前述のとおり、ABMの概念は2000年代初頭から存在していたものの、本格的に導入する企業は限られていました。ABMにおける優良企業の見極めや、ターゲット企業へのOne to Oneコミュニケーションには多くの工数を要するためです。

しかし、近年ではCRMやMAが普及したことにより、データの分析・活用に手間やコストがかからなくなりました。

このようなツールのおかげでマーケティング・営業活動が一元管理できるようになり、一般企業におけるABM実践のハードルが下がったといえるでしょう。

ABMに取り組むメリットとは

企業がABMに取り組むメリットは、主に以下の4点が挙げられます。

  • アプローチから取引成立までの時間を短縮できる
  • マーケティングと営業の連携が強化される
  • 顧客エンゲージメントの向上が見込める
  • 投資効率が上がる

ABMは、マーケティング部門と営業部門が一丸となって対象企業を絞り込み、ターゲット企業に最適化されたコミュニケーションを実施します。そのため、アプローチから取引成立までのプロセスに無駄が生じません。

さらに、部門間が協働することで、はじめの段階から成約に至るまで一気通貫した顧客体験を提供できるようになります。ターゲット企業が「求めている内容を」「求めているタイミングで」提供できるため、自社へのエンゲージメント向上が見込めます。

結果として投じた費用に対する利益率を高くキープできることが、ABM実践の大きなメリットといえるでしょう。

ABMの効率向上に役立つITツールを導入することで、部門間の連携は一層強化されます。

HubSpot ABM機能とは

HubSpot ABM機能は、ABM実践における活動のすべてをHubSpotのプラットフォームのなかで管理できる機能です。以下では、HubSpotの概要とあわせてHubSpot ABM機能の基本的な特徴を紹介します。

HubSpotとは

HubSpotは、CRM・MA・SFA(営業支援システム)・CMS(コンテンツ管理システム)など、マーケティング・営業・カスタマーサービス向けの支援ツールを統合したプラットフォームです。2024年1月現在、世界120カ国以上で19万4,000社以上の企業がHubSpotを活用しています。(出典:HubSpot

顧客に関わるすべての情報をHubSpotに集約することで、カスタマージャーニー(顧客が商品を購入し、利用、継続するまでの道のり)を網羅した施策を実行できることが特徴です。

HubSpot社が提供する製品群は、基盤となるHubSpot CRMと、5つの「Hub(ハブ)」製品で構成されています。

HubSpot 製品群

出典:HubSpot Japan

  • Marketing Hub:見込み客を惹きつけ、リードに転換するためのマーケティングプラットフォーム
  • Sales Hub:営業活動を効率化し、円滑な業務プロセスを構築するための営業支援プラットフォーム
  • Service Hub:既存顧客の満足度を向上させ、長期的な関係を築くためのカスタマーサービスプラットフォーム
  • Content Hub:一人ひとりの顧客に最適な情報を届けるWebサイトやコンテンツを制作するためのCMS機能とコンテンツマーケティングを支援するプラットフォーム
  • Operations Hub:摩擦のない顧客体験を支援するオペレーション支援プラットフォーム

複数の製品を組み合わせると部門間の連携が強化され、より施策の効果が高まります。

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HubSpot ABM機能とは

HubSpot ABM機能とは、HubSpotが提唱する「インバウンド手法(有益な情報を提供することで見込み客を惹きつけ、信頼関係を構築して顧客へと導く手法)」とABMをかけあわせ、ターゲット企業の購買体験向上を目指す機能のことです。

以下のようなABM実践における活動のすべてを、HubSpotのプラットフォーム内で完結させることができます。

  • 自社にとって最適な顧客情報を定義し、それに合致するターゲット企業を抽出する
  • 各ターゲット企業へ最適なアプローチを実施する
  • ターゲット企業を追跡し効果を測定する

HubSpot ABM機能は、Hub製品である「Marketing Hub」および「Sales Hub」のProfessionalエディションで利用できる機能です。大部分の機能はMarketing HubとSales Hubの両方に含まれているため、マーケティング部門と営業部門は共通のツールを用いてデータを一元管理できます。

HubSpot ABM機能で可能なこと

HubSpot ABM機能で実現できることは以下のとおりです。

  • ターゲットアカウントの情報を一元管理
  • マーケティング・営業間で共通の情報の参照
  • アプローチ進捗状況の確認、レポーティング
  • ワークフローを活用したターゲットアカウントの自動追加

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

ターゲットアカウントの情報を一元管理

HubSpot ABM ターゲット企業情報一元管理

HubSpot ABM機能を活用すると、ターゲット企業(アカウント)およびその企業に属する人物(コンタクト)にまつわるすべての情報を一元管理可能です。

蓄積されたターゲット企業ごとの詳細情報に加え、自社にとっての優先度(ティア)を3段階で設定することで、企業リストをわかりやすく整理できます。

また、それぞれのコンタクトに対し「意思決定者」「予算管理者」など、組織内での役割を設定可能です。どの企業の誰にアプローチすべきかがひと目でわかり、ABM実践における効率が向上します。

マーケティング・営業間で共通の情報の参照

HubSpot ABM機能 マーケティング・営業間での共通情報の参照

マーケティング部門と営業部門は、ターゲット企業に関するすべての情報を共通の画面で確認できます。

たとえば「ターゲットアカウントホーム」では、ターゲットと定義した企業の総数や、現在進行中の取引数が一覧化されます。「ターゲットアカウントの概要」では、コンタクトへのEメール送信数や新規で追加されたコンタクト数、ミーティング数などをひと目で確認可能です。

さらにSlackと連携することで、HubSpot上で蓄積した情報を「企業名」や「取引名」で作成したSlackチャンネルに自動投稿することもできます。KPI(重要業績評価指標)やコメントを部門間で共有し、全員が一丸となって顧客のニーズに沿ったコミュニケーションを実現可能です。

 アプローチ進捗状況の確認、レポーティング

HubSpot ABM レポーティング機能

ダッシュボード画面では、ターゲット企業からの新規コンタクト流入数、コンタクトのライフサイクルステージ(顧客の検討フェーズ)割合比較、ターゲット企業ごとの自社ウェブサイトページビューなど、さらに詳しい情報を時系列で確認できます。

ダッシュボード内のレポートは、自社が取得したい情報を自由に選定して表示可能です。

ワークフローを活用したターゲットアカウントの自動追加

HubSpot ABM ワークフローを活用したターゲット企業の自動追加

ワークフロー機能を使えば、自社にとって最適な顧客情報を定義し、それに合致するターゲット企業を自動でHubSpotに登録可能です。企業の自動登録条件は、年間売上高や業種、従業員数などさまざまな項目から自由に設定できます。

さらに、AIによるターゲット企業の自動抽出機能も搭載されているため、企業リストを容易に作成可能です。

HubSpot ABM機能の料金プラン

HubSpot ABM機能は、HubSpot製品群のうち「Marketing Hub」および「Sales Hub」で活用できます。ABM機能が実装されている料金プランは「Professional」「Enterprise」に限られており、「Starter」では利用できないため注意が必要です。

HubSpot ABM機能 料金プラン

出典:製品・サービスカタログ(2024年4月時点の情報)

このように、大部分の機能は「Marketing Hub」と「Sales Hub」の両方に含まれています。そのためマーケティング・営業部門は共通の画面でデータを管理でき、部門間の共同作業が促進されます。

HubSpot ABM機能活用ステップ

ここからは、HubSpot ABM機能の活用方法を以下の手順に沿って解説します。

  1. 自社の優先先となる企業の特徴を洗い出す
  2. ターゲット企業のリスト化
  3. ターゲット企業をHubSpotへ追加する
  4. ワークフローを活用してターゲットとなるアカウントを自動追加する
  5. ターゲットアカウントのアプローチ進捗状況を確認する

1. 自社の優先先となる企業の特徴を洗い出す

まずは、自社にとって理想的な企業とはどのような企業なのかを社内で検討します。理想的な顧客プロフィールの整理例は以下のとおりです。

  • 業種・業態
  • 従業員数
  • 年間売上高
  • 所在地
  • 抱えている課題
  • 購買プロセス
  • 予算

HubSpot CRMに蓄積されている既存顧客のデータを分析することで、どのような特徴を持つ顧客が理想的なのかが明確化します。

2.ターゲット企業のリスト化

上記で洗い出した理想的な顧客プロフィールをもとに、ターゲット候補となる企業を選定します。

候補の企業が自社のターゲットとなり得るかを判断するためには、当該企業の詳細なデータが必要です。HubSpotをFORCASLBCと連携することで、自社では取得しきれなかった企業の詳細情報を自動で取得できるようになります。

たとえばeBookをダウンロードする人物が、所属企業名とEメールアドレスをフォームに入力すると、その情報はHubSpotに登録されます。すると連携プラグインがHubSpotに登録された情報をキーとして、自社フォームで回収しきれなかった従業員数や決算期などの情報を追加で自動登録します。

このようにして取得した詳細情報をもとに、対象を絞り込んだうえでターゲットとなる企業をリスト化しましょう。

さらに、AIによるターゲット推奨機能を活用すれば、HubSpotに蓄積された業界・規模・ページビューデータなどの詳細情報をもとに、既存のターゲットと類似度の高い見込み客を自動で抽出可能です。機能を活用するほどに推奨の精度は向上するため、あわせて利用することをおすすめします。

3. ターゲット企業をHubSpotへ追加する

まずは、HubSpotのABM機能を有効化します。「スーパー管理者」か「アカウントアクセス権限」を付与されたユーザーアカウントで、次の手順を実行しましょう。

「コンタクト」 > 「ターゲットアカウント」を選択します。

画面下部の「はじめに」をクリックします。

ABMの目標を設定します。

ターゲットアカウントを選択します。

ABMのセットアップが完了しました。

有効化が完了すると、以降すべての機能でHubSpotアカウントが有効になります。

4. ワークフローを活用してターゲットとなるアカウントを自動追加する

以下の手順でワークフローを活用すると、ターゲットとしたい企業を自動的にHubSpotへ登録可能です。

「自動化」 > 「ワークフロー」を選択します。

画面右上の「ワークフローの作成」 > 「テンプレートから」をクリックします。

検索窓で「定義された条件に基づいて会社プロパティーを更新」と検索します。

「テンプレートを使用」をクリックします。

自社がターゲットとしたい企業の特徴を定義し、ワークフローを設定します。

テンプレートを使用せずにゼロから作成することもできるため、自社のニーズにあわせて使い分けてみましょう。

5. ターゲットアカウントのアプローチ進捗状況の確認方法

ターゲット企業へのアプローチ進捗状況は、以下の手順で確認できます。

「レポート」 > 「ダッシュボード」を選択します。

画面右上の「ダッシュボード作成」を選択し、ダッシュボードテンプレートを表示させます。

ABM(アカウント ベースド マーケティング)を選択します。

ダッシュボードに含めたいレポートを選択し、ダッシュボード名を設定のうえ作成を完了させます。

これで、ダッシュボード上からターゲット企業に関するレポートがいつでも参照できるようになります。

 

たとえば以下のように、ターゲット企業別のコンタクトの役割(予算管理者、意思決定者など)や合計人数も一覧で表示可能です。

取引の成約に向けて「企業の誰にアプローチすべきか」を瞬時に把握できます。

HubSpot ABM活用事例

ここでは、HubSpot ABM機能を活用してビジネスを成功に導いた企業の事例を紹介します。自社の課題と照らし合わせつつ、ベストプラクティスを見つける参考にしていただけますと幸いです。

 株式会社サカエ|ABMの品質向上でメール開封率2.5倍アップ

HubSpot ABM事例 株式会社サカエ

出典:株式会社サカエ

株式会社サカエは、ロボットや画像検査装置を生産現場に提供する技術商社です。HubSpot導入以前は、顧客からの問い合わせ対応が属人化しており、取りこぼしやアプローチのムラが生じていました。

このような課題を解決すべく、従来のSFAからHubSpotへの切替を決定。Marketing HubとSales Hubを活用することで、マーケティングと営業で顧客を一元管理できるようになり、年間のコストが1/3に削減されました。

さらに、サカエが扱っているのは「ニッチ商材」であることに着目し、特定企業にアプローチを行う手段としてABMを実践します。

結果としてターゲット企業へ真に有益な情報を届けられるようになり、メール開封率の2.5倍アップに成功しました。

参考:HubSpot導入事例|株式会社サカエ

広告代理店|HubSpot×FORCASで効果的なABMを実現

同社は、マーケティングと営業の連携不足により、インバウンドで集客したリードを有効活用できずにいました。この課題を解決する手段として、部門間の連携強化を促せるHubSpotの導入を決定します。

まずはHubSpot CMSを活用してオウンドメディア(課題解決マーケティング情報サイト)を構築し、ターゲットへ有益な情報を提供する基盤を整えました。オウンドメディアから獲得したリードの情報を社内で円滑に共有するうえでは、HubSpot Sales Hubを活用しています。

さらに、上記の取り組みで蓄積したリード情報とFORCASの企業情報を連携させ、ターゲットに最適化されたコミュニケーションフローを設計。より質の高いリードを営業部門へパスすることができるようになり、ABMの品質向上を実現しました。

参考:HubSpot導入事例|広告代理店

まとめ

本記事では、HubSpot ABM機能の特徴や設定方法、導入企業の成功事例などを紹介しました。ABMを成功に導くためには、マーケティングと営業の共同作業を促進することが不可欠です。顧客に関わるすべての情報を一元管理できるHubSpotは、部門間の協働体制を構築するうえで最適な手段となるでしょう。

HubSpotを活用したABM実践で、ぜひ顧客にとって真に価値ある体験を提供していただければと思います

渋谷 真生子

株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。

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