営業とマーケティングの連携が上手くいっている企業は多くのメリットがあります。
営業部門とマーケティング部門の連携がされている企業はマーケティング施策から208%も多くの収益を創出するというデータもあります。近年注目されているRevOps(レベニューオペレーション)、ABM(アカウントベースドマーケティング)を実施する際も、営業部門とマーケティング部門間での密な連携、協力は欠かせません。
しかしながら、多くの企業がサイロ化された組織運営に課題感を感じているのが現状です。上手く連携が出来ていない理由は数多くありますが、各部門でのシステム連携が上手くいっておらず情報が共有されていないことが一つとして挙げられます。社内の連携が上手くいっていると答えた会社の96%が営業とマーケティング間のシステム連携、データ共有がされていると答えました。
そこで今回のブログ記事では、HubSpot、Salesforceと異なるシステムを部門ごとに利用している企業に向けてシステム連携に関してわかりやすく解説をしました。ぜひHubSpotとSalesforceを連携する際に参考にしてください。
HubSpotとSalesforce連携とは
HubSpotとSalesforceの連携について解説する前に、まずはHubSpotとSalesforceについてそれぞれどういったシステムであるのか解説します。
HubSpotとは
出典:HubSpot
HubSpotは、全世界で多くのビジネスに採用されているマーケティングやセールス、コンテンツ管理、カスタマーサービスをつなぐために必要な機能やリソースを備えたクラウドベースのシステムです。
顧客体験を高める情報を全て一元管理することができ、UIにも一貫性があるので、社内の定着もスムーズに進行できるというメリットがあります。
初めてCRMを導入する企業、無料または低予算でスタートしたい中小企業、様々な機能をカスタマイズしたい大企業に幅広く活用されているシステムになります。
HubSpot考え方と強み
HubSpotの根底には「インバウンドマーケティング」という考え方があります。インバウンドマーケティングは、顧客が必要としている価値のあるコンテンツを提供することで、長期的な良好な関係を築いていくマーケティング手法です。
最近ではインターネットの普及により消費者の行動が変化しています。現在では顧客が自主的にインターネットを活用して情報収集することができるので、従来の企業視点の一方的なプロモーションでは顧客は見向きもしなくなりました。このような理由から、インバウンドマーケティングが注目を集めています。
インバウンドマーケティングでは、コンテンツマーケティングやSEOなどを活用することで、比較的低コストで高品質なリードを獲得できます。また、顧客が自発的に情報を求め、接触してくるため、興味を持っている高品質なリードが獲得できるのも大きな利点です。
このインバウンドマーケティングはHubSpot社によって提唱されました。そのため、HubSpotはこのインバウンドマーケティングを実施する上で必要な機能がそろっており、インバウンドマーケティングを体現したシステムになります。
HubSpot製品群
画像参照:HubSpot
HubSpotの製品は主に5つのHub(ハブ)と、完全無料のHubSpot CRMで構成されています。
- Marketing Hub:見込み客を惹きつけ、リードに転換するためのマーケティングプラットフォーム
- Sales Hub:営業活動を効率化し、円滑な業務プロセスを構築するための営業支援プラットフォーム
- Service Hub:既存顧客の満足度を向上させ、長期的な関係を築くためのカスタマーサービスプラットフォーム
- Content Hub:一人ひとりの顧客に最適な情報を届けるWebサイトやコンテンツ制作を構築するためのCMS機能をコンテンツマーケティング機能を搭載するプラットフォーム
- Operations Hub:摩擦のない顧客体験を支援するオペレーション支援プラットフォーム
そして、この5つのハブが連携する中心にHubSpot CRMというサービスが存在します。CRMに蓄積された顧客データをそれぞれのHubで活用することで、最適なメッセージ、体験を顧客に届けることが可能です。このHubSpot CRMは最大5ユーザーまで完全無料で利用することができ、顧客情報を一元管理することができます。
Salesforceとは
出典:セールスフォース・ジャパン
Salesforceは、2000年にマーク・ベニオフによって設立されたクラウドベースのCRMの先駆者です。
営業、マーケティングからEコマースといった幅広い製品ラインナップを持っており、全ての情報をワン・プラットフォームで一元管理、共有することが可能になります。
複雑なカスタマイズやセグメンテーションが可能なツールなので大規模な顧客基盤をもつ大企業におすすめなツールとなります。使いこなすには知識や経験が必要になるツールではありますが、複雑かつ、細かなニーズや要望に対応が可能となっています。
Salesforce考え方と強み
Salesforceは、CRMのクラウド市場においてトップシェアを誇り、多くの企業がSalesforceのシステムを活用しています。
Salesforceの強みとしては高度なセグメンテーションや複雑なカスタマイズが可能であることがあげられます。また、製造、金融、医療業界といったそれぞれ特有のニーズに対応するべく、業界別ソリューションを提供しており、幅広い企業でのビジネス成長に貢献しているクラウドシステムになります。
セールスと企業名にも入っているとおり、営業支援ツール(SFA)で有名な会社であり、営業チームはリードの追跡からクロージング、顧客サポートに至るまでのプロセスを一元管理できるため、効率を大幅に向上させることが可能となります。
会社のコアバリューとして「カスタマーサクセス」を掲げており、サービスを契約してもらうだけではなくて、ビジネスの成長を実感してもらい使い続けてもらうことに重きをおいています。
Salesforce製品群
引用:Salesforce Customer 360 製品一覧 | セールスフォース・ジャパン
Salesforceの製品は非常に幅広く、「Customer 360」を中心に多岐にわたるビジネスニーズに対応した製品があります。Customer 360は、カスタマー360度ビューとも呼ばれ、顧客に関するすべての情報を管理するサービスを意味します。
- Sales Cloudは、営業チームの活動を強化し、効率的なリード管理と営業成果の向上を目指すサービスです。主な機能として、商談管理や営業支援、売上予測、テリトリー管理などがあります。
- Service Cloudは、カスタマーサポートとサービス部門を強化し、顧客満足度の向上を促すサービスです。主な機能として、ケースの管理やアナリティクス、ワークフローの自動化などがあります。
- Marketing Cloudは、マーケティングオートメーションと顧客エンゲージメントを中心とした製品で、ターゲットとなる顧客に対して適切なアプローチが可能です。
このほかにも、Commerce Cloud、Community Cloudなど、企業の様々な部門や業務に適合するサービスが揃っています。
HubSpotとSalesforce連携とは
HubSpotとSalesforce連携においては、SalesforceのSales CloudとHubSpotのMarketing Hubを連携させるケースが多くなっています。
SalesforceのSales Cloudは、企業の営業プロセス全体を強化し、リード管理から顧客サポートまで一元管理できるツールです。一方、HubSpotのMarketing Hubは、リード生成から顧客エンゲージメントの最適化、マーケティング効果の分析など、インバウンドマーケティングの各ステージをサポートしてくれるツールです。
この2つを連携させることで、営業とマーケティングの間でシームレスなコラボレーションが可能になります。マーケティング部門で生成されたリードは、Sales Cloudに自動的に連携され、営業チームが迅速に対応可能です。また、営業チームがリードに対して取ったアクションの履歴やステータスもMarketing Hubで確認可能になるため、マーケティング戦略の見直しや効果測定効果も見込めます。
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HubSpotとSalesforceを連携をするケースとは
HubSpotとSalesforceの連携が必要になるケースは以下の通りです。
- データ共有の欠如により営業とマーケティング部門の連携が取れていない
- 顧客情報が営業部門に共有されておらず営業機会の損失に繋がっている
- システム間の情報をマニュアルで移行している
それぞれについて解説します。
データ共有の欠如により営業とマーケティング部門の連携が取れていない
ビジネスでは営業とマーケティングの連携が非常に重要です。
営業とマーケティングの連携が取れていないと、質の悪いリードをトスアップしてしまったり、部署間の責任の押し付け合いが発生してしまったりする可能性があります。
HubSpotとSalesforceを連携させることで、営業部門とマーケティング部門の部門間の情報共有と連携が可能になります。具体的には、HubSpotで生成されたリードをリアルタイムでSalesforceに送信することも可能です。
これにより、営業チームは最新のリード情報に基づいて迅速に行動を起こすことが可能となります。また、マーケティングチームも、Salesforceの商談に失注や受注割合から、マーケティング戦略を練り直すこともできます。
顧客情報が営業部門に共有されておらず営業機会の損失に繋がっている
マーケティング活動を通じて収集された顧客情報が営業部門と共有されていないと、営業機会の損失につながります。
HubSpotとSalesforceを連携させることで、マーケティング部門が収集した顧客情報を営業部門とリアルタイムで共有することが可能です。
これにより、営業チームはマーケティング活動で得られた情報をもとに、より具体的で最適化された提案を行うことができるようになります。結果として顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
システム間の情報をマニュアルで移行している
システム間の情報を手動で移行する作業は、エラーが生じやすく、時間と手間がかかります。HubSpotとSalesforceを連携することで、ヒューマンエラーを限りなく減らすことが可能です。
また、自動化を行い情報をリアルタイムで反映されるようにすることで、全社レベルでの情報共有と意思決定のスピードが向上する効果もあります。
企業全体の効率と生産性を向上させるためにも、システム間の情報をマニュアルで移行しているなら、HubSpotとSalesforceを連携させましょう。
HubSpotとSalesforceを連携するメリット
HubSpotとSalesforceを連携するメリットは以下の通りです。
- 両ツールの強みを活かすことができる
- 営業とマーケティングの連携強化
- 顧客データ一元化
- リード管理とナーチャリングの最適化
それぞれについて解説します。
両ツールの強みを活かすことができる
HubSpotとSalesforceは、それぞれが異なる強みがあります。HubSpotは優れたインバウンドマーケティングツールで、Salesforceは世界をリードするSFAシステムです。
HubSpotとSalesforceを連携させることで、HubSpotの優れたマーケティング機能とSalesforceの高度な顧客管理能力を同時に利用することができます。
営業とマーケティングの連携強化
HubSpotとSalesforceを連携させることで、営業とマーケティングの間の連携を強化することができます。
データをリアルタイムに共有することで、営業部門とマーケティング部門の両チームは同じ情報に基づいて行動することが可能です。同じ情報をもとに行動することで、顧客に対するアプローチには一貫性が生まれます。その結果、顧客満足度の向上も期待できます。
顧客データ一元化
HubSpotとSalesforceを連携させることで、顧客データを一元管理することが可能になります。これにより、情報の透明性と整合性が確保され、誤った情報に基づく意思決定や重複した作業を避けることができます。
リード管理とナーチャリングの最適化
HubSpotはリードの生成とナーチャリングにおいて効果を発揮するツールです。一方、Salesforceはリードの管理と営業プロセスの効率化に強みがあります。
この2つのツールを連携させることで、リードの生成から管理、ナーチャリング、最終的なクローズまでのプロセス全体を最適化できます。
マーケティングROIの向上や営業部門の業務効率化を目指すなら、SalesforceとHubSpotの連携を行いましょう。
HubSpotとSalesforce連携ステップを解説
HubSpotとSalesforce連携方法を解説します。
前提条件から解説するので、順番に読み進めてください。
連携するための前提条件
HubSpotとSalesforceを連携するためには、以下の製品エディションの契約とHubSpotアカウントでAccount Access権限を持つ必要があります。連携前に要件をクリアしているか確認しましょう。
- Marketing Hub:Professional、Enterprise
- Sales Hub:Professional、Enterprise
- Service Hub:Professional、Enterprise
- Operations Hub:Professional、Enterprise
- CMS Hub:Professional、Enterprise
Salesforceアカウントでは以下の権限やライセンスを持つ必要があります。
- APIアクセスが可能なSalesforce Edition、またはSalesforce Professional
- Salesforceシステム管理者であるか、HubSpot連携権限セットが割り当てられていること([Available Permission Sets(利用可能な権限セット)]セクションで、[HubSpot Integration Permissions(HubSpot連携権限)]が選択されている)。
- 以下の全てのユーザープロファイル管理権限が付与されていること
- APIが有効化されている。
- 「セットアップと構成の表示」が有効化されている。
- HubSpotに同期するオブジェクト(アカウント、キャンペーン、コンタクト、リード、または商談)についての「すべてを変更する」ことが許可されている。
- Modify Metadata権限が付与されている
- 「AppExchangeパッケージのダウンロード」権限が付与されている。
- Customize Applicationのプロファイル権限が付与されている。
Step1:HubSpotでSalesforceアプリをインストール
- HubSpotアカウントにログインします。
- 「アプリマーケットプレイス」をクリックします。
- アプリマーケットプレイスで「Salesforce」を検索します。
- 「Salesforce」アプリのページを開き、「インストール」ボタンをクリックします。
- 必要な許可を与え、指示に従ってインストールを完了します。
→Salesforceへログインしていない場合はログインが求められます。
Step2:SalesforceにHubSpotをインストール
- [Salesforceパッケージのインストールを開始]をクリックします
- インストールのプロセスに従い、必要な許可を与えてインストールを完了します。
※インストールには少し時間(10分程度)を要します。終了したらメールで通知が来るので慌てずにお待ちください。
Step3:HubSpot VisualforceモジュールをSalesforceに追加
※このプロセスをスキップして後から設定することも可能です。
- [SalesforceにHubSpotを追加する]をクリックします。
- Salesforce上で歯車マーク→「設定」をクリックし設定画面を開きます。
- 「オブジェクトマネージャ」から追加したいオブジェクトページレイアウト画面を開きます。
- 「ページレイアウト」を選択し、ツールバーから「セクション」を希望の場所へドラッグ&ドロップしてください。
- 左側にあるツールバーから「Visualforceページ」を選択し、「HubSpot_Embed__[オブジェクトタイプ]_V2アイテム」を先ほど作成したセクションへドラッグ&ドロップしてください。
- [保存]をクリックしてレイアウトの変更を適用します。
Step4:HubSpotとSalesforceデータ同期設定を選択
- HubSpot内で「Salesforce」アプリを開きます。
- 「推奨されるセットアップ」または「詳細セットアップ」をクリックします。
- 同期のルールを選択し、設定します。例: 常にSalesforceを使用、双方向同期
- 選択したデータ同期設定を確認後、[セットアップを終了して同期を開始する]をクリックします。
HubSpotとSalesforce連携やデータ移行する際の注意点
HubSpotとSalesforce連携やデータ移行する際の注意点は以下の通りです。
- プロパティーのマッピング
- 同期ルール
- オブジェクト名の違い
それぞれについて解説します。
プロパティーのマッピング
HubSpotとSalesforceを連携させる際には、プロパティーのマッピングを間違えないように注意してください。
プロパティーはレコードに情報を保存するフィールドのことです。連携を行う時に、全てのプロパティーを自動で紐づけることはできません。間違ったマッピングを行ってしまうと、データの生合成が取れなくなってしまいます。
自社で対応するのが難しい場合には、SalesforceとHubSpotの連携に詳しい企業にマッピングの連携作業を依頼をするようにしてください。
同期ルール
HubSpotとSalesforceの間でデータを同期する際には、同期ルールを正しく設定しましょう。これは、どのデータがどのように、そしていつ同期されるべきかを定めるものです。
同期ルールは「空白でない限りSalesforceを優先」「常にSalesforceを使用」「双方向」「同期しない」の4つがあります。
それぞれの説明と適した場面について、以下の表にまとめました。
オブジェクト名の違い
HubSpotとSalesforceは、それぞれ独自のオブジェクト名を持っています。例えば、HubSpotでは「コンタクト」と呼ばれるものが、Salesforceでは「リード」や「取引先責任者」という名前で呼ばれます。
SalesforceとHubSpotのオブジェクト名の違いを理解し、それらがどのように連携されるかを把握することが大切です。
以下にSalesforceとHubSpotのオブジェクト名をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
本記事では、HubSpotとSalesforceを連携することがおすすめなケースやメリット、具体的な連携手順について解説しました。
HubSpotとSalesforceを連携すると両ツールの強みを活かすことができ、営業とマーケティングの連携強化ができるといったメリットがあります。
プロパティのマッピングや同期ルール、オブジェクト名の違いなど連携する時に注意しないといけないポイントがいくつかありますが、きちんと連携設定ができればビジネスに良い影響をもたらすでしょう。
しかし、システムの連携には様々なトラブルが付き物でもあります。連携の際にトラブルなどに遭遇してお困りの際には、ぜひ弊社にお問い合わせください。