マーケティング活動を効率化するためのツールとして、HubSpotのマーケティングツール「Marketing Hub」の導入を考えている方も多いでしょう。HubSpotは世界的な統合型プラットフォームであり、マーケティング・営業・カスタマーサービスなど、さまざまな側面で役立つツールやソフトウェアを提供しています。
HubSpotのMarketing Hubを導入すべきか迷っている方は、実際に利用したユーザーの口コミや評判を参考にすることで、客観的な視点で導入を検討しやすくなるはずです。ただし、口コミを検討する際には、肯定的な評価だけでなく否定的な評価も確認し、総合的に判断することが重要です。
本記事では、HubSpot Marketing Hubのサービス概要や特徴と、利用者の口コミ、利用している企業の特徴、他社マーケティングツールとのスコア比較について解説します。
Marketing Hubは、インバウンドマーケティングに必要な機能やツールが包括された、月額定額制のマーケティングソフトウェアです。
ここでは、Marketing Hubを提供するHubSpot社についての詳細な説明と、Marketing Hubの概要を解説します。
HubSpot社とは、マーケティングやセールス、カスタマーサービス向けのソフトウェア製品を開発・販売している米国の企業です。
同社は、2006年にBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏とDharmesh Shah(ダーメッシュ・シャア)氏によって設立されました。製品開発が始まった2004年は、広告の過剰なアピールに対する消費者の疲弊や興味の減退が課題視されていた時代でもあり、このような消費者の購買行動の変化に対応するためにHubSpotが立ち上げられたとされています。
HubSpotはグローバルミッションとして、「Help millions of organizations grow better(数百万の組織がより良く成長するのを支援する)」というメッセージを掲げています。ここでの「成長」は、「数字の追求だけでなく、販売者・購入者・労働者が共に持続可能な利益を得られる、本質的な成長」を意味しており、顧客と企業の間で相互に成長し合える関係を目指しているものとされています。
このようなHubSpotのビジネス活動や製品開発の基盤となっているのは、「相手に先立って価値を提供する」という「インバウンド」の考え方です。インバウンドマーケティングとは、価値のあるコンテンツを提供し、顧客が自然にブランドに関心を持つよう促すマーケティング手法です。
HubSpot社の主な製品・サービスは、インバウンドを実現するための顧客関係管理(CRM)ツールやコンテンツ管理システム(CMS)、マーケティングオートメーション(MA)、営業支援システム(SFA)、カスタマーサポートツールなどです。
HubSpotのマーケティングツールである「Marketing Hub」は、インバウンドマーケティングに必要なソフトウェアや機能がそろったプラットフォームです。活用することで、見込み客のニーズに合わせたマーケティングキャンペーンを効果的に実施し、顧客へと変換する仕組みを構築できます。
Marketing Hubでは、顧客関係やソーシャルメディアの管理、キャンペーンの自動化、電子メールマーケティングといったマーケティング活動に必要なツールやデータを、1カ所に集約して活用することが可能です。
具体的には、マーケティングキャンペーンのパーソナライズと自動化ツール、SNSアカウントの管理ツール、キャンペーン管理ツール、アナリティクスツールなどが含まれます。
また、Marketing HubはHubSpotの顧客関係管理(CRM)システムを基盤としているため、Marketing Hubで収集したマーケティングデータをもとに、営業やカスタマーサービスの各部署と連携し、各ステージで最適なコンテンツを提供するためにも役立てられます。
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HubSpot Marketing Hubには、他のマーケティングツールとは異なる特徴があります。ここではMarketing Hubの特徴を、大きく3つに分けて解説します。
Marketing Hubには、無料から利用できるプランがあり、その他に「Starter」「Professional」「Enterprise」の3つの有料プランが用意されています。
無料プランでは、メールマーケティング、ウェブチャット、SEO機能などの基本的な機能を利用できます。無料プランを利用することで、基本的な機能や操作性を試せるため、導入のハードルが低くなります。そのため、、デジタルマーケティングを初めて取り組む中小企業や個人事業者に特におすすめです。
ただし、無料プランではEメールの送信件数やHubSpotのロゴの表示などに制限がある点には注意が必要です。
Marketing Hubは、HubSpotの「インバウンド」の考え方に基づくプラットフォームであることから、当然ながらインバウンドマーケティングに強いという点が特徴といえます。
インバウンドマーケティングとは、ターゲットオーディエンスのニーズに応え、ロイヤルティの高い顧客を引き付けるマーケティング手法です。HubSpotでは、この手法は「顧客エンゲージメントとビジネス成長を促進する鍵である」と考えられています。
具体的には、価値あるコンテンツを通じて相手に合わせたマーケティングを実践し、顧客との有意義で長期的な関係構築を目指すものです。Marketing Hubは、顧客の成功が自社の成功につながるという考え方に基づき、顧客がカスタマージャーニーの各段階で成功を収めることを支援するツールやソフトウェアを提供しています。
また、HubSpotの製品は、ツールや機能がすべてCRMプラットフォーム上に集約され、相互に連携しており、複雑なシステムやデータの統合作業が不要です。そのため、簡単な操作で、インバウンドマーケティングで重要な顧客との深いつながりを構築することが可能です。
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IDC(International Data Corporation)が執筆したHubSpotのホワイトペーパーによると、Marketing Hubを利用する顧客は、3年間で505%のROIを達成していることが示されています。IDCとは、ITや通信分野における調査や分析、アドバイザリーサービス、イベントを提供しているグローバル企業です。
また、HubSpotの年次ROIレポートでは、HubSpotの利用者が次のような成果を達成していると記載されています。
HubSpotのMarketing Hubを利用することで、より多くのリードを獲得し、取引の機会を増やし、最終的により多くの取引を成立させていることが分かります。
さらに、自動化とAIを活用したキャンペーンにより、以下の成果が得られたことも明らかになっています。
自動化とAIを用いたキャンペーンの導入により、キャンペーンの立ち上げ時間が大幅に短縮され、業務の効率化につながっているようです。リード獲得に関連する費用も減少し、マーケティングにおける費用対効果とリソースの配分が改善されています。
新しいマーケティングツールの導入を検討する際には、実際の利用者の口コミや評判を参考にすると良いでしょう。ここでは、HubSpot Marketing Hubの口コミと評判について、ポジティブ・ネガティブな内容の両方をフラットな視点でご紹介します。
HubSpot Marketing Hubの口コミ・評判を、「G2.com」の内容をもとに見ていきましょう。
G2.comとは、ビジネスソフトウェアやサービスに特化した米国のレビューサイトです。実際にソフトウェアを利用しているユーザーによる信頼性の高いレビューや評価が行われており、ランキングが公表されています。
さらに、レビューの適切性を確認する仕組みも導入されており、利用者目線からのフィードバックをもとに、優れたソフトウェア製品やサービスを効率的に比較検討することができるため、公平性の高いサイトといえます。
HubSpot Marketing HubのG2スコアは、2024年5月時点では以下の通りです。
まずは、G2に寄せられている、HubSpot Marketing Hubのポジティブな口コミ、評判をご紹介します。
HubSpotを使った感想としては非常に満足しています。自動化されたワークフローによって、ソーシャルメディアの管理、広告の制作、Eメールの送信などが簡単に行えます。主に、キャンペーンや広告の管理、メールの自動送信、改善のための分析に活用しています。 レポート機能だけでなく、メールの開封率やクリック率などのメトリクス(数値化された活動データを、管理に活用できるよう指標化したもの)も正確で使いやすいです。また、レポートの取得やダッシュボードの作成も手軽で参考になります。 出典:G2.com |
新しいドラッグアンドドロップエディターとワークフローの機能追加が好評です。外部プラットフォームのデータを HubSpot と同期し、マーケティングキャンペーンで活用しています。 Marketing Hubは、技術的な知識がなくても比較的簡単に利用できます。ワークフロー機能により、電子メールキャンペーンを自動化し、ユーザーは戦略的な取り組みに専念できます。 当社では、ウェブサイトのホスティングをWordPressからHubSpotへ移行したことで、コンテンツの編集や追加が容易になりました。ABMキャンペーンや一斉メール送信もシステム内で実施し、リード育成とコンテンツ作成のための時間を節約しています。 出典:G2.com |
HubSpot Marketing Hubのセットアップ時には、ダウンタイムを最小限に抑えつつ、切り替えや設定を容易に行えます。 ダッシュボードから迅速かつ簡単にレポートを取得し、アクティビティを追跡できるのが特徴です。マーケティングプログラムの迅速な拡張を希望する人におすすめしたいです。 また、カスタマーサービスチームと製品チームの実践的なアプローチに感銘を受けました。レポート共有機能は、マーケティングプロセスやキャンペーンを営業がサポートする際に役立ちます。カスタマージャーニーの確認やアクティビティの計画も簡単です。 出典:G2.com |
ツールの評価について先入観をもたずに判断するためにも、ネガティブな口コミ、評判も確認しておきましょう。
時々、必要な機能がプラットフォームに欠けていると感じることがあります。テンプレートやランディングページ、メールの移行は可能ですが、フォームや連絡先のプロパティの移行はできません。そのため、運用環境によっては、キャンペーンやアセットの分析機能が制限されることがあります。 HubSpotの全体的な使用感の良さと比べると、レポートツールは直感的ではなく、履歴が30日間までという閲覧制限もあります。 出典:G2.com |
連絡先パイプラインの不足により、リード生成に問題が発生しており、独自に対処する必要がありました。 また、フォーラムでの提案がなかなか実装されず、HubSpotの利用者の多くがその存在を知らないため、改善のためのアイデアが活かされていないように感じます。HubSpotの機能向上に関する情報を広く共有できれば良いと考えています。 出典:G2.com |
未処理・未加工データの管理が改善されれば良いと感じます。現状では、必要な洞察を得るために、レポートを再作成してダウンロードする必要があります。 ほかには、営業活動のキャンペーン設定にもっと柔軟性が欲しいです。例えば、営業担当者の活動を電話やメール、LinkedInメッセージ、チャットなどをキャンペーンレベルで追跡し、その活動にタグを付けてキャンペーンに関連付ける機能があれば良いと思います。 出典:G2.com |
実際に、どのような企業がHubSpot Marketing Hubを利用しているのでしょうか。
HubSpot Marketing Hubを利用している企業の特徴をご紹介しますので、自社の課題やニーズと照らし合わせながら参考にしてみてください。
G2のレビュー担当者の企業規模を参考にすると、2024年3月時点でHubSpot Marketing Hubを利用している企業の従業員数は、従業員50名以下の小規模ビジネスが多いことが分かっています。
引用:G2(2024年3月時点の情報)
G2では、企業規模を以下の3つに区分しており、そのうち小規模ビジネスのレビュー数は53.0%を占めています。
なお、中規模ビジネスは41.2%、大規模ビジネスは5.8%となっており、小規模・中規模が9割以上を占めています。
これは、HubSpot Marketing Hubが無料で始められる点や、ビジネス規模に応じた拡張性があることから、スタートアップ企業や中小企業などでの利用率の高さにつながっていると考えられます。
HubSpot Marketing Hubのレビュー担当者の業界分布は、2024年3月時点では以下の通りです。
引用: G2(2024年3月時点の情報)
「コンピューターソフトウェア」や「マーケティングや広告」の業界で、利用者が多いことが分かります。
HubSpot Marketing Hubの利用目的は、ツールのカテゴリーを参考にすると、次のような目的があげられていました。
主に、アカウントごとのデータ管理やマーケティングの自動化など、効果的なマーケティング戦略の展開により、顧客や見込み客との関係を築くために活用されているようです。
HubSpot Marketing Hub以外にも、さまざまなマーケティングツールがあります。
ここでは、3つの代表的なマーケティングツールとのスコアを、2024年3月時点でのG2の情報をもとに比較し、解説します。
Adobe Marketo Engageは、アドビ株式会社が提供するマーケティング オートメーション ツールです。マーケティング業務の自動処理やコンテンツ管理、リード獲得・育成、ABM(アカウント ベースド マーケティング)の機能を統合したソリューションとして提供されています。
Adobe Marketo EngageとHubSpot Marketing Hubとのスコア比較は、以下の通りです。
2024年3月時点では、Adobe Marketo Engageのスコアは5つ星のうち4.1で、HubSpot Marketing Hubの方が高くなっています。
レビュー数は、Adobe Marketo Engageが、HubSpot Marketing Hubの4分の1程度です。
Adobe Marketo Engageの口コミやレビューでは、以下の点が長所としてあげられています。
一方で、学習曲線(練習の量と反応時間の関係を示す曲線)や費用の高さ、直感的に理解しにくい点を短所としてあげている声も見られました。
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引用:Marketing Cloud Account Engagement
Marketing Cloud Account Engagement(旧称:Pardot)は、米セールスフォースが提供する、BtoB向けのMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
見込み客の発掘や育成、評価を行うための機能を備えており、ウェブサイトから有望な見込み客を発掘し、受注確度が高い見込み客の情報を営業部門に提供する際に役立ちます。
2024年3月時点での、Marketing Cloud Account EngagementとHubSpot Marketing Hubとのスコア比較は、以下の通りです。
Marketing Cloud Account Engagementのスコアは、5つ星のうち4.0で、HubSpot Marketing Hubの方が高い結果となっています。
両ツールの大きな違いとして、利用している企業のビジネス規模が異なります。
企業規模を比較すると、HubSpot Marketing Hubでは大規模ビジネスの利用が極端に少ないのに対し、Marketing Cloud Account Engagementは中規模がもっとも多く、大規模の割合が比較的大きいことが分かります。
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Dynamics 365は、マイクロソフト社が提供する業務アプリケーションです。企業の活動を効率的に管理するために、さまざまな業務領域のシステムを統合的に提供しており、その中でも、マーケティング領域を支援するのがDynamics 365 Marketingです。
Dynamics 365 MarketingとHubSpot Marketing Hubとのスコア比較は、以下の通りです。
2024年3月時点でのDynamics 365 Marketingのスコアは5つ星のうち3.8で、HubSpot Marketing Hubの方が0.6ポイント高い結果でした。
Dynamics 365 Marketingの利用者の企業規模は、他のツールよりも大規模ビジネスの割合が大きめで、大・中規模ビジネスで活用されていることが分かります。
HubSpotのMarketing Hubは、インバウンドマーケティングに必要な機能やツールが包括されたマーケティングソフトウェアです。無料から始めることができ、ビジネスの成長に合わせて機能を拡張できます。
Marketing Hubの口コミや評判では、使いやすさや他のツールとの連携・統合しやすさ、タスク管理のしやすさなどが長所として高く評価されていました。
他のマーケティングツールと比較しても、HubSpot Marketing Hubは優れた口コミと評判を持っており、特に従業員数が50名未満の小規模ビジネスで広く活用されています。
自社のビジネスの種類や特性に合わせ、導入を検討する際には口コミなどを参考に検討してみてください。