顧客管理を効率化し、売上向上を目指す企業にとって、適切なCRMの導入は欠かせません。しかし、「HubSpotとZoho CRM、どちらを選ぶべきか?」と悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。
CRMは単なる顧客情報の管理ツールではなく、営業やマーケティングの生産性を大きく左右する重要なシステムです。誤った選択をしてしまうと、必要な機能が不足したり、コストが想定以上にかかってしまったりする可能性があります。では、なぜ多くの企業がCRM選びで迷ってしまうのでしょうか。
その原因の一つは、CRMごとの違いがわかりにくいことにあります。HubSpotはマーケティングとの連携を強みとし、直感的な操作性に優れています。一方、Zoho CRMは柔軟なカスタマイズ性とコストパフォーマンスの高さが魅力です。しかし、料金体系やサポート体制、各機能の詳細を正しく理解していないと、導入後に「思っていたのと違う」と感じることもあります。
本記事では、HubSpotとZoho CRMの料金プラン、機能、口コミを徹底比較し、それぞれのCRMがどのような企業に適しているのかを解説します。この記事を読むことで、貴社のビジネスに最適なCRMを選択し、業務効率を向上させるための最適な方向性を見つけられるでしょう。
HubSpotとZohoの具体的な違いを見ていく前に、まずは両ツールの開発背景や基本的な特徴を見ていきましょう。CRMは一見すると似ているものが多いですが、開発背景や哲学を理解することで、違いが明確になることが多々あります。
出典:HubSpot
HubSpotは2006年に米国で設立され、CRMを軸にセールス、マーケティング、カスタマーサポートなど、フロントオフィスの業務を支援するプラットフォームを提供しています。
設立の背景には、従来のアウトバウンド型マーケティング(電話営業や大量のメール配信)が消費者に敬遠されるようになったという市場の変化がありました。この流れを受けて、「顧客にとって価値ある情報を提供し続けることで、信頼関係を構築し、最終的に選ばれる」というインバウンドマーケティングの概念が生まれます。HubSpotは、この考えを実現するためのマーケティングツールとして誕生したのです。
インバウンドマーケティングの考え方は急速に広まり、多くの企業がSEOやメールマーケティングなどの手法を活用し始めました。しかし、ここで一つの課題が浮上します。それは、営業とマーケティングの分断です。マーケティングチームが獲得したリードが営業チームに適切に共有されず、成約につながらないという問題が発生していました。
当時、SalesforceをはじめとするCRMはすでに市場に存在していましたが、以下のような課題がありました。
こうした課題を解決するため、HubSpotは2014年に永久無料のCRMの提供を開始しました。特に中小企業のニーズに応える形で広まり、市場シェアを拡大。さらに、Sales HubやService Hubといった新機能を次々と追加し、現在もより多様なビジネスニーズに対応できるプラットフォームへと進化しています。
出典:Zoho
Zohoは1996年にアメリカで設立されたIT企業です。設立当初は大企業向けのネットワーク管理ソフトを提供していましたが、2000年代初頭のITバブル崩壊を契機に、中小企業向けの低価格なSaaSソフトウェアの提供へとシフトしました。
2005年には、SalesforceやSAPなどの高価格で操作が複雑なCRMに対抗する形でZoho CRMをリリースしました。Zohoは特に価格の安さとカスタマイズ性の高さを重視しており、これが現在でも同社の大きな強みとなっています。
この点はHubSpotと似ていますが、両者の開発コンセプトには明確な違いがあります。
Zoho CRMは中小企業向けに低コストで導入できることを重視しており、コア機能として営業支援や顧客管理を強化しています。また、HubSpotがインバウンドマーケティングを提唱する前に開発されたため、マーケティング機能よりも営業支援に強みがあります。
一方、HubSpotはインバウンドマーケティングを軸に、営業とマーケティングの連携を重視して開発されました。この傾向は現在も続いており、価格帯はZohoのほうが低価格ですが、マーケティング機能の充実度ではHubSpotが優れています。
また、Zohoはコスト面でのメリットをさらに強調するため、最大3ユーザーまで利用可能な無料プランを提供しています。この無料プランには、基本的なリード管理、商談管理、ワークフロー設定などの機能が含まれており、小規模なチームやCRMを試してみたい企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
両ツールの機能には多くの共通点がありますが、細かな違いが実際の運用での効果を大きく左右します。ここではHubSpotとZoho CRMのそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
HubSpotは、インバウンドマーケティングを軸に、顧客との関係を築き、長期的な信頼を獲得するための多くの機能を備えています。リードの獲得から育成、顧客への転換までを一貫してサポートできる設計が特徴です。ここでは、HubSpotの主な特長について紹介します。
まずは操作性の高さ。HubSpotのユーザーインターフェースは視覚的に優れており、直感的に操作できるため、ITリテラシーが高くないユーザーでも容易に使いこなせます。また、無料プランからプレミアムプランに至るまで、基本的な機能が統一されているため、企業の成長に応じてスムーズにプランをアップグレードできる点も魅力です。
次に、機能の充実度がHubSpotの強みです。HubSpotには「Hub」と呼ばれるソフトウェアがあり、ユーザーは自身の課題に応じてHubの選択を行えます。以下が主なHubとその機能です。
HubSpotのCRMは、これらの各Hubと統合されており、営業部門がマーケティング部門の顧客対応履歴を確認するなど、部門間のスムーズな情報共有が可能です。社内の連携が強化され、業務の効率化と顧客満足度の向上が期待できます。
Zoho CRMは、高いカスタマイズ性と拡張性を備えたCRMツールです。標準搭載されている機能が豊富なだけでなく、ユーザーが自社の業務フローに合わせてカスタムフィールドやレイアウトを柔軟に設定できるため、多様な業種・業態に対応できます。
Zoho CRMの大きな特長の一つが、カスタマイズ性の高さです。顧客情報の登録項目はもちろん、ドラッグ&ドロップ操作でレイアウトまで変更できます。さらに、Zohoは50以上のビジネスツールを提供しており、それらと円滑に連携することが可能です。このカスタマイズ性の高さは、Zoho CRM の大きな強みとなっています。
営業支援機能の充実度もZoho CRMの特徴です。
HubSpotがマーケティング機能を強みとしているのに対し、Zoho CRMは営業向けの機能に重点を置いています。案件管理、フォローメールの自動送信、売上予測、スコアリングなどの機能を低コストで活用でき、営業業務の効率化を強力に支援します。ただし、マーケティングオートメーション機能についてはHubSpotほど充実しておらず、コンテンツ作成や広告管理といった機能は限定的です。そのため、マーケティング主導の施策を重視する企業は、他のマーケティングツールと組み合わせて活用するのが望ましいでしょう。
もう一つの強みは、コストパフォーマンスの高さです。無料プランでも基本的な顧客管理や営業支援機能を利用でき、初期コストを抑えて導入できます。また、有料プランにおいても競合のCRMと比較して低価格でありながら、多機能なパッケージが提供されているため、コストを重視する企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
HubSpotとZohoの両社は無料プランを提供していますが、有料プランにおける機能や価格に違いが見られます。ここでは公式サイトからの最新情報をもとに、それぞれの料金プランを比較します。(※2025年2月時点の情報)
HubSpotは、2025年2月時点で無料プランからエンタープライズ向けのプランまで、段階的な料金体系を採用しています。提供される機能は「Marketing Hub」「Sales Hub」「Service Hub」などのカテゴリーにわかれていますが、ここではZoho CRMと比較的機能が似ている「Sales Hub」の料金プランを紹介します。
Zoho CRMは、2025年2月時点で無料プランから最上位のUltimateプランまで、5つの料金プランを提供しています。企業の規模や必要な機能に応じて、柔軟に選択できる点が特徴です。
HubSpotとZohoは、CRMに留まらず、多種多様なソフトウェアを提供しているという共通点があります。ここでは両社の製品群とその特徴について詳しく見ていきましょう。
HubSpotは「Hub」と呼ばれる各種製品を展開し、それぞれがCRMを起点にシームレスに統合される設計となっています。2025年2月時点で発表されているHubは以下の通りです。
それでは、これらが連携することでどのような相乗効果が生まれるのでしょうか。
多くの企業にとって、マーケティング、営業、カスタマーサポートの連携は課題のひとつです。たとえば、マーケティングチームが獲得したリードが営業チームに適切に引き継がれなかったり、営業が成約した顧客情報がカスタマーサポートに共有されず、スムーズな顧客対応ができないケースが少なくありません。
Marketing Hub、Sales Hub、Service Hubを組み合わせれば、これらの課題を解決し、顧客体験の質が向上します。
Marketing Hubで獲得したリード情報はCRMに自動保存され、Sales Hubを通じて営業チームにリアルタイムで通知されます。これにより、ホットリード(関心度の高いリード)に対して迅速にアプローチすることが可能です。
さらに、成約後の顧客情報はService Hubと連携されるため、カスタマーサポートチームは過去の商談履歴をもとに、より的確なサポートを提供できます。
このように、マーケティング、営業、カスタマーサポートのデータを一元管理することで、顧客の購買プロセス全体をスムーズに連携させ、一貫した顧客体験を届けられます。
Zohoは、CRMを中心に、営業、マーケティング、カスタマーサポート、データ分析など、あらゆるビジネスプロセスをサポートするために幅広いアプリケーションを提供しています。以下は、代表的な製品の一覧です。
出典:ゾーホージャパン株式会社
このように、ZohoはHubSpotよりも多くの製品を展開しており、個別の業務に特化したツールを組み合わせて利用できる点が特徴です。一方で、各製品が独立しているため、一つのツール内ですべての機能を完結させることは難しく、特定の機能を利用するには複数のツールを組み合わせる必要があります。
たとえば、HubSpotのMarketing Hubには、メールマーケティング、フォーム作成、広告管理などの機能が統合されていますが、Zohoでは「Zoho CRM」と「Zoho Campaigns」「Zoho Forms」などを組み合わせなければいけません。これにより、必要な機能だけを選んで利用できるため、コストを抑えやすいというメリットがあります。
幅広い機能を一つのプラットフォームで管理したい場合はHubSpotが適していますが、特定の業務に限定してツールを導入したい場合はZohoのほうが低コストで運用できます。 たとえば、「メールマーケティングだけを行いたい」という企業であれば、Zoho Campaigns単体を導入すれば済むため、HubSpotのMarketing Hubよりも費用を抑えられるでしょう。
このように、Zohoは用途に応じて柔軟にツールを組み合わせられる点が魅力です。導入を検討する際は、自社の業務ニーズに合わせて最適な製品を選ぶことが重要です。
CRMツールの導入の際、ベンダーがどのようなサポート体制を提供しているかの確認が欠かせません。初期設定やトラブルシューティング、活用方法に関する質問が発生した際、迅速な対応が必要なためです。ここでは、両社のサポート体制を比較してみます。
HubSpotは、充実したサポート体制を提供しており、特にオンラインリソースの豊富さやユーザーコミュニティの活発さが高く評価されています。無料ユーザーから有料プランの企業まで、それぞれのニーズに応じたサポートオプションが用意されているため、スムーズな運用が可能です。
無料プランとStarterプランでは、基本的に自己解決が前提となります。その理由は、これらのプランがシンプルな機能構成となっており、設定の手間が少なく、トラブルが発生しにくいためです。そのため、ナレッジベースやHubSpotアカデミーを活用することで、ほとんどの問題を解決できます。
一方、Professionalプラン以上では、より高度な機能を活用するため、迅速なサポートが求められます。そのため、電話サポートが提供され、専門スタッフによる対応を受けることが可能になります。
また、自己解決が難しい場合は、コミュニティフォーラムの活用が有効です。 HubSpotのコミュニティフォーラムでは、HubSpot社員のほか、公式パートナーや経験豊富なユーザーが活発に情報を共有しており、具体的な活用方法やトラブルシューティングについてアドバイスを受けられます。ナレッジベースやHubSpotアカデミーで解決できない場合は、フォーラムで質問してみるのもよいでしょう。
このように、HubSpotはユーザーのレベルやニーズに応じた多様なサポート体制を提供しており、初心者から上級者まで安心して利用できる環境を整えています。
Zoho CRMは、オンラインサポートを中心に提供しています。
ナレッジベース、ビデオチュートリアル、フォーラムなどのオンラインリソースが整備されており、基本的な操作方法や設定手順を自分で学ぶことが可能です。
有料プランに加入すると、メールによる問い合わせサポートが利用でき、技術的な問題や設定に関する質問に日本語で対応してもらえます。ただし、どのプランにおいても電話サポートは提供されていません。
Zoho CRMのサポート体制はオンラインリソースが充実しており、自己解決できる仕組みが整っています。一方で、電話サポートが限定的であるため、直接サポートを希望する場合は上位プランを検討するか、Zohoの認定パートナー企業のサポートを活用するのも一つの選択肢となるでしょう。
実際にCRMツールを使用したユーザーの口コミは、導入を検討する際に重要な参考材料となります。両社の製品がどのように評価されているか、ユーザーの実体験にもとづいた意見をIT ReviewやG2から調査し、特徴的なポイントを分析します。
以下表は、G2に掲載されているユーザーが評価するHubSpotとZoho CRMの比較表です。(2025年2月時点)
【メリットの比較】
【デメリットの比較】
HubSpotは、使いやすいインターフェースやインバウンドマーケティングの支援機能において高い評価を得ています。しかし、一部のユーザーからは、上位プランの価格の高さやカスタマーサポートの対応に関する不満も指摘されています。
以下に、主な口コミをポジティブ・ネガティブの両面から整理しました。
【ポジティブな評価】
【ネガティブな評価】
Zoho CRMは、コストパフォーマンスの高さとカスタマイズ性において多くの支持を得ています。一方で、UIの使い勝手や初期設定の難しさ、Zohoエコシステム内の連携に課題を感じる声もありました。
以下に、ユーザーの評価をポジティブ・ネガティブの両面から整理しました。
【ポジティブな評価】
【ネガティブな評価】
ここまでさまざまな角度でHubSpotとZohoを比較してきましたが、「結局、自社にはどっちが最適?」と悩む方は多いはずです。そこでここからは、HubSpotとZohoがそれぞれどのような企業に適しているかを解説します。
HubSpotは、直感的な操作性と豊富な機能を兼ね備えたCRMプラットフォームであり、特にマーケティングオートメーションや営業プロセスの最適化を重視する企業に向いています。
Zohoは、低コストでカスタマイズ性に優れたCRMソリューションを提供しており、特にコストパフォーマンスを重視する企業や、業務フローに合わせた柔軟な設定を求める企業に適しています。
HubSpotとZohoは、それぞれ独自の強力な機能を備えたCRMツールですが、特定のビジネスニーズに応じて両ツールを併用することで、さらに業務効率を高めることが可能です。ここでは、両ツールが連携可能な仕組みと、連携によって得られるメリット、そして具体的な設定方法について解説します。
HubSpotとZoho CRMを連携することで、営業とマーケティングデータ管理を一元化し、業務の効率を向上できます。
たとえば、マーケティング部が使うHubSpotで獲得したリード情報を営業が使うZoho CRMと同期させれば、マーケティング活動から営業活動へスムーズに引き継ぐことが可能になります。営業担当者がリードの詳細情報を即座に確認できるため、商談のスピードが向上し、成約率の向上にもつながります。
また、Zoho CRM側で更新した顧客情報もリアルタイムでHubSpotに反映されるため、データの一貫性が保たれ、常に最新の情報にもとづいた対応ができます。
この連携機能を活用すれば、たとえばマーケティングはHubSpotを導入し、複雑な営業プロセスでカスタマイズが必要な営業はZohoを導入するなどの使い分けが行えます。もしくはバックオフィス業務も効率化したい場合は、Zoho CRMを導入し、必要に応じてHubSpotのHubを導入するなど自社に適した導入ができるのです。
HubSpotとZoho CRMを連携することで、ツール間のデータがリアルタイムで同期され、営業とマーケティングの連携が強化されます。リード情報、商談状況、顧客アクションのデータなどが自動的に共有されるため、部門間のスムーズな連携が可能になります。
たとえば、営業担当者がZoho CRMでリードのステータスを「商談中」に変更すると、その情報がHubSpotにも反映されます。マーケティングチームはそのリードに対して適切なフォローアップを実施できるようになります。
また、Zoho CRMで「失注」となった商談の情報をHubSpotと同期することで、マーケティングチームはそのリードをリターゲティング対象として再分類し、新たなマーケティング施策を展開できるでしょう。逆に、「成約済み」のリードデータがHubSpotに反映されることで、アップセルやクロスセルの対象として特定の商品やサービスのプロモーションの自動配信を行えます。
このように、リアルタイムでデータ変更が反映されることで、営業とマーケティングの連携が強化され、より効果的な施策の実施が可能になります。
それでは、HubSpotとZohoの連携手順を見ていきましょう。
まずは、HubSpotアカウントにログインし、アプリマーケットプレイスから「Zoho CRM」を検索してインストールします。
インストール後、画面の指示に従いHubSpotとZoho CRMの連携を実施します。
HubSpotとZoho CRMは一見似ていますが、誕生の背景が異なるため、それぞれの強みも異なります。
HubSpotは、インバウンドマーケティングの支援を目的に誕生し、営業とマーケティングの連携を強化するCRMへと進化しました。Zoho CRMは、Salesforceをはじめとした高額なCRMの代替として誕生し、低コストで営業支援に特化したツールです。
そのため、HubSpotはインバウンドマーケティング機能に強く、営業やマーケティング、カスタマサポートとの円滑な連携に強みを持ち、Zoho CRMは低コストで営業管理ができるCRMという強みを持っています。
価格やサポート体制なども異なるため、自社のニーズに合わせて比較検討し、最適なCRMを選びましょう。
渋谷 真生子
株式会社100(ハンドレッド)のマーケター。新卒でグローバルヘルスケア企業で営業を経験し、セールスフォースにてBDRとして地方企業の新規開拓に携わる。コロナ渦でインバウンドマーケティングの重要性を実感し、アイルランド ダブリンにあるトリニティカレッジの大学院にてデジタルマーケティングの学位取得し現在に至る。最近はかぎ針編みにハマり中。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
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